捨てられオメガは純情ビッチ~王太子に婚約破棄されたら隣国の騎士団長に溺愛されるなんて聞いてませんが?~

夏芽玉

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2話 婚約破棄

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「ユリエルよ……」
 
 国王に声を掛けられて、跪いたまま顔を上げた。
 僕が今居るのは玉座の間だし、親しき中にも礼儀ありということで、僕は臣下の礼のポーズを取っていたからだ。
 もしここが国王のプライベート空間とかだったら、家族みたいにフランクな感じでお話をするんだけど。
 
 顔を上げたときに、国王の後ろにいるアシュリーが視界に入った。サラサラのプラチナブロンドの長髪が朝の光を反射している。サファイアの目は涙で潤んでいて、白く透き通った肌は頬だけはほんのりピンク色をしている。

 ああ、アシュリーは今日も可愛いなぁ……
 
 ちなみに、僕はダークブロンドの癖っ毛でブルーの瞳なんだけど、将来子供が生まれたとき、どっちに似ていても可愛いんじゃないかと思っている。
 顔が見れたことが嬉しくて、僕はニッコリと微笑みかけた。そしたら、アシュリーは「ひっ!」と引き攣った声を出した。
 
「今朝は何処にいた?」
「はい、アシュリーの部屋です! 先程まで一緒に居ました!」
 
 僕は、ハキハキと答えた。呼び出しがなければ、もっとふたりっきりでイチャイチャしていられたのに。とても残念だ。

「何故、そこに?」
「発情期が来たら僕たちは番になる予定なので! いつ発情期が来てもいいように、アシュリーが成人してからはできるだけ一緒に居るようにしています! それに、ずっと一緒にいたら僕の発情期が早くなるかもしれないですし!」
 
 僕がそう言ったら、アシュリーが国王の後ろでプルプルと震えた。そんな動きも小動物っぽくて可愛い。
 アシュリーは細身だけど、ちゃんとアルファらしく背が高い。それなのに、何故かよく小動物を彷彿させる動きをするんだ。それが可愛くて可愛くて仕方がない。ちなみに、僕はオメガらしく小柄なので、隣に並んだときの釣り合いもバッチリだと思っている。

「……発情期は近いのか?」
「はい! ……えぇと、予定では二ヶ月後です」
 
 発情期は三ヶ月に一回だ。勢いよく頷いたら、国王の後ろでアシュリーがぶんぶんと首を横に振っているのが見えたので、仕方なく言葉を付け足す。

「ユリエル。申し訳ないのだが……その話、白紙にさせてもらいたい」
「ええ、なんで!? どういうこと!?」

 あんまりにもびっくりして、思わず立ち上がって叫んでしまった。
 あ、やば……と思って、慌てて再び跪く。うっかり国王に対して失礼な態度を取ってしまった。だけど、この部屋には僕たち以外に人は居ないから、まぁいいかとすぐに思い直す。というか、いいことにしておいて欲しい。あ、人が居ないってのは、大臣とか貴族たちのことね。侍女とか護衛は勿論室内には居るけれど。その人たちは、ここで見聞きしたことを喋ってはいけないことになっているので、居ないものとして扱うことになっている。っていっても、実際は居るんだけど。だから、明日には王城内でこの話が噂になってるのは確実だ。
 
「実は……これは、アシュリーからの訴えなのだ」
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