変態英雄が暗殺者の俺を溺愛してくる

１２．変態英雄が暗殺者の俺を溺愛してくる*

　帝国の皇帝は変態だ。

　毎晩、暗殺者俺を寝室に招き入れては、愛を囁いてくる。
　しかも、ナニをしながら噛みつきまくって喜ぶ性癖の持ち主だ。
　おかげで俺の身体は常に噛み痕だらけだ。
　腹が立ったので、噛みつき返したら酷く喜ばれてしまった。

　この変態めっ!!


　俺の暗殺はいつまで経っても成功することはなく、一年経っても、三年経っても、二人の関係は変わらなかった。

「そろそろ家族になってよ」
「嫌だね」

　今日もベッドでの攻防は続く。

「それじゃあ、一緒に住まない？」

　暗殺に失敗した俺は、今夜もジルに組み敷かれて、噛み痕を付けられまくり、尻の穴で散々アンアン言わされてしまった。最近では前を触らずに後ろだけでイけるようにもなって……って、そんなことはどうでもいい！

「なんでだよ！」
「うーん……その方が俺を殺すチャンスが増えるから、なんて理由はどう？　毎日一緒に居たら、暗殺し放題！」
「自分の暗殺をけしかけてどーすんだよ」

　つーか、暗殺し放題ってなんだ！

「あ！　そうか！　俺が依頼主になればいいのか！　俺を暗殺しろって。そしたら毎日一緒に居てくれる？」
「は？　何馬鹿なこと言って……」
「それから……人気の暗殺者を囲い込むには、世界一の報酬も用意しとかないとね」
「おいっ!!　ちょっと待て。俺は引き受けるだなんて一言も……」

　正直、こいつが皇帝になってから、国は想像以上に安定し、発展した。
　平和な国に暗殺者の需要は少ない。
　おかげで俺は商売あがったり……ほぼ失業状態だ。それなのに……

「とりあえず前金は妃の地位で、報酬は俺の遺産全部ってことでどう？」
「はぁ？」
「俺の持っているものならなんでもあげる。それに、皇帝の妃だったら地位も財産も思いのままだ」
「それって……」

　……つまり、結婚してないか？

「ふつつかものですが、末永くよろしくお願いいたします」

　だから!!　やっぱり、それは結婚するときの挨拶じゃねーか！

「暗殺を依頼するなら、今すぐ俺に殺されろ！」

　そう言ってみたものの、全裸の俺には、手持ちの武器がない。しかも先程までジルに好き勝手されていたせいで、体を起こすのも億劫だ。

「いやいや、そんな簡単には死ねないよ」
「はぁ!?」
「俺はロイクより長生きするつもりだからね」

　さっきと言っていることが矛盾してないか？

「だから、いつまでも一緒に居てね」
「殺す!!　絶対今すぐ殺す!!」
「もー、照れちゃって。可愛いんだから。そんな大声で叫ぶ元気があるなら、もう一発ヤっとく？」
「照れてないし、誰がヤるかー!!」


　その後、『妃俺を見つけて皇帝の所まで連れて行けた衛兵には賞金を与える』などというふざけたゲームを皇帝が思いついたせいで、城に忍び込むたびに兵士たちに追い回され、街で見つかれば強制デートをさせられ……城内で公認カップル扱いにされるようになるまで、そう時間はかからないのだった。


　おわり