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後日談3 嫉妬の行方
【5】……好きだよ
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目覚めて最初にオレは頭を抱えた。
とても酷いセックスをした気がする。
昨夜のことは全部覚えていた。
オレは最後はサブスペースに入ったまま久我を求め続けていた。
ていうか、そもそもDefenceのGlareで発情してるんじゃねぇよ! 自分に突っ込みを入れてみるが、全ては終わってしまったことだ。
「ぅあー、腰が痛ェ……」
身体を起こそうとしたけど、全然動かない。とくに、腰がヤバイ。
辛うじて声は出たけれど、その声もガラッガラだ。
今日が土曜日で本当に良かった。平日ならとてもじゃないがこんな体調で仕事に行く気にはなれない。
「唯織さん、大丈夫ですか!?」
目覚めていたらしい久我が、身体を起こしてオレの顔を覗き込んだ。そしてオレと視線が合うと、俊敏な動きでベッドの上に正座して、がばっと頭を下げる。うーん、礼儀正しいのは良いのだけど、全裸なので残念ながらちょっと変態っぽい。
「昨日はすみませんでしたっ」
「……何に対して謝ってんの?」
久我の頭を見ながら聞いてやる。後頭部に寝ぐせがついている。久我も今起きたところなんだろう。
「えーっと、お店で暴走しちゃったこととか、唯織さんに酷いことしちゃったこととか……」
顔を上げた久我が、じとろもどろに説明する。
「とりあえず、次の週末に長冨には詫びに行くか」
「は、はい! あの、それで、唯織さんにオレはどうすれば許してもらえますか……?」
「んー、そうだなー……」
オレは少し考える素振りをしてから、久我を手招いた。
少しオレのほうに身体を寄せた久我の首の後ろに手を回すと、更に自分のほうに引き寄せて強引にキスをした。
「……唯織さん?」
オレの気が済むまで唇を堪能してから解放してやったら、ポカンとした表情で久我が固まっていた。
「そういや昨日はキスしてねーなと思って」
「……もしかして、唯織さん、昨日のことは全然怒ってない……?」
久我が恐る恐る訊ねてくる。
自分が好き放題してしまったことを気にしているのかもしれないが、始終欲しがってたのはオレの方だと久我は気づいてないのだろうか?
まさかサブスペースに入ってたのも気づいていなかったとか言わないだろうな。流石にそんなことはないとは思うのだが。
ただ、最初にDefenseのGlareを浴びたときから自分がおかしかったという自覚があるので、なんかもう昨日の自分の感覚は怪しすぎて何もかもが信用できない。
「何に怒られたいのか知らんが」
「えーっと、『ヤりすぎだ』って怒られるかなーって……」
「途中でやめたほうが怒り狂ってたと思うけどな」
「え、あっ……そ、そうですね……?」
久我は久我で何か反省しているみたいだけど、反省しなきゃなんないのはどちらかといえばオレではないかと思う。だって、最初から酷かったのはオレの方なのだから。
「GlareとCommandはおまえのだけあればいい……てか、オレはそれしか要らねぇ。だから、他の奴にGlareなんて出すな」
「唯織さん、実はオレのこと好き過ぎでしょ」
「だから、……いつもそー言ってんじゃん」
何を今更と思ってそう口にしたら、久我が微妙な表情をしてオレを見ていた。
そういえば、久我に好きだと言葉で伝えたことはあまりなかったかもしれない。ただ、好きでもなければこんなにも久我のことを求めないし、あんなめちゃくちゃなことされても許してしまえるはずはないんだが。
「……好きだよ」
久我がマテをしている犬みたいな姿勢でオレのことを見つめてくるのでそう言ったら、途端に破顔された。
「オレも、大好きです」
勢いよく布団ごと抱き着かれる。重い。引き剥がそうとしたけれど、オレの今の体力では無理だった。しばらく、久我の好きにさせてやる。
「こうやって、オレが何をしても許してくれるのも嬉しいんですけれど……やっぱり言葉で言ってもらえるのもいいなぁ……」
布団の上からじゃれつかれて、重さと暑さにだんだん嫌気がさしてきたころ、ようやく久我が身体を離した。
「シャワー浴びたら、出ます?」
時計を見ると、そろそろ街が動き出す時間だった。
「そうだな……」
久我に身体を起こされたのだが、手を離された途端にオレはべしゃっと布団に倒れ込んだ。
「唯織さん!?」
「……やっぱもうしばらく、無理」
「で、ですねっ。あ、腰揉みましょうか!?」
「年寄扱いするんじゃねぇっ」
いや、確かにオレは久我よりは五歳年上で、あと一年と少ししたら三十路だというのも確かではあるのだが。
オレはなんとか自力で起き上がろうと奮闘した。しかし、努力の甲斐もむなしくオレの身体は自力でベッドに起き上がることはできなかった。この調子だと、起き上がれるようになるのはいつになることやら。
……結局、腰は揉んでもらった。
後日長冨のバーに2人で謝罪に行った。
あの日、長冨の対応のおかげで店自体にそんなに影響はなかったようだ。
結局被害にあったのは、あの失礼な男と相川とオレだけだったらしい。実質、一番の被害者だった相川は久我を見たとき少し怯えていたけれど、久我が元々社交的な性格をしているのもあって最終的にはなんとなく打ち解けていた。話をするときは絶対オレか長冨を間に挟んでいたけれど。
オレにとって魅力的な久我のGlareは、相川にとってはよっぽど怖いものだったらしい。
久我のGlareがオレ以外を誘惑しないと知ってオレは安堵すると同時に、些細なGlareでも感じ取ることができる相川のことをちょっとだけ羨ましいと思ったのだった。
とても酷いセックスをした気がする。
昨夜のことは全部覚えていた。
オレは最後はサブスペースに入ったまま久我を求め続けていた。
ていうか、そもそもDefenceのGlareで発情してるんじゃねぇよ! 自分に突っ込みを入れてみるが、全ては終わってしまったことだ。
「ぅあー、腰が痛ェ……」
身体を起こそうとしたけど、全然動かない。とくに、腰がヤバイ。
辛うじて声は出たけれど、その声もガラッガラだ。
今日が土曜日で本当に良かった。平日ならとてもじゃないがこんな体調で仕事に行く気にはなれない。
「唯織さん、大丈夫ですか!?」
目覚めていたらしい久我が、身体を起こしてオレの顔を覗き込んだ。そしてオレと視線が合うと、俊敏な動きでベッドの上に正座して、がばっと頭を下げる。うーん、礼儀正しいのは良いのだけど、全裸なので残念ながらちょっと変態っぽい。
「昨日はすみませんでしたっ」
「……何に対して謝ってんの?」
久我の頭を見ながら聞いてやる。後頭部に寝ぐせがついている。久我も今起きたところなんだろう。
「えーっと、お店で暴走しちゃったこととか、唯織さんに酷いことしちゃったこととか……」
顔を上げた久我が、じとろもどろに説明する。
「とりあえず、次の週末に長冨には詫びに行くか」
「は、はい! あの、それで、唯織さんにオレはどうすれば許してもらえますか……?」
「んー、そうだなー……」
オレは少し考える素振りをしてから、久我を手招いた。
少しオレのほうに身体を寄せた久我の首の後ろに手を回すと、更に自分のほうに引き寄せて強引にキスをした。
「……唯織さん?」
オレの気が済むまで唇を堪能してから解放してやったら、ポカンとした表情で久我が固まっていた。
「そういや昨日はキスしてねーなと思って」
「……もしかして、唯織さん、昨日のことは全然怒ってない……?」
久我が恐る恐る訊ねてくる。
自分が好き放題してしまったことを気にしているのかもしれないが、始終欲しがってたのはオレの方だと久我は気づいてないのだろうか?
まさかサブスペースに入ってたのも気づいていなかったとか言わないだろうな。流石にそんなことはないとは思うのだが。
ただ、最初にDefenseのGlareを浴びたときから自分がおかしかったという自覚があるので、なんかもう昨日の自分の感覚は怪しすぎて何もかもが信用できない。
「何に怒られたいのか知らんが」
「えーっと、『ヤりすぎだ』って怒られるかなーって……」
「途中でやめたほうが怒り狂ってたと思うけどな」
「え、あっ……そ、そうですね……?」
久我は久我で何か反省しているみたいだけど、反省しなきゃなんないのはどちらかといえばオレではないかと思う。だって、最初から酷かったのはオレの方なのだから。
「GlareとCommandはおまえのだけあればいい……てか、オレはそれしか要らねぇ。だから、他の奴にGlareなんて出すな」
「唯織さん、実はオレのこと好き過ぎでしょ」
「だから、……いつもそー言ってんじゃん」
何を今更と思ってそう口にしたら、久我が微妙な表情をしてオレを見ていた。
そういえば、久我に好きだと言葉で伝えたことはあまりなかったかもしれない。ただ、好きでもなければこんなにも久我のことを求めないし、あんなめちゃくちゃなことされても許してしまえるはずはないんだが。
「……好きだよ」
久我がマテをしている犬みたいな姿勢でオレのことを見つめてくるのでそう言ったら、途端に破顔された。
「オレも、大好きです」
勢いよく布団ごと抱き着かれる。重い。引き剥がそうとしたけれど、オレの今の体力では無理だった。しばらく、久我の好きにさせてやる。
「こうやって、オレが何をしても許してくれるのも嬉しいんですけれど……やっぱり言葉で言ってもらえるのもいいなぁ……」
布団の上からじゃれつかれて、重さと暑さにだんだん嫌気がさしてきたころ、ようやく久我が身体を離した。
「シャワー浴びたら、出ます?」
時計を見ると、そろそろ街が動き出す時間だった。
「そうだな……」
久我に身体を起こされたのだが、手を離された途端にオレはべしゃっと布団に倒れ込んだ。
「唯織さん!?」
「……やっぱもうしばらく、無理」
「で、ですねっ。あ、腰揉みましょうか!?」
「年寄扱いするんじゃねぇっ」
いや、確かにオレは久我よりは五歳年上で、あと一年と少ししたら三十路だというのも確かではあるのだが。
オレはなんとか自力で起き上がろうと奮闘した。しかし、努力の甲斐もむなしくオレの身体は自力でベッドに起き上がることはできなかった。この調子だと、起き上がれるようになるのはいつになることやら。
……結局、腰は揉んでもらった。
後日長冨のバーに2人で謝罪に行った。
あの日、長冨の対応のおかげで店自体にそんなに影響はなかったようだ。
結局被害にあったのは、あの失礼な男と相川とオレだけだったらしい。実質、一番の被害者だった相川は久我を見たとき少し怯えていたけれど、久我が元々社交的な性格をしているのもあって最終的にはなんとなく打ち解けていた。話をするときは絶対オレか長冨を間に挟んでいたけれど。
オレにとって魅力的な久我のGlareは、相川にとってはよっぽど怖いものだったらしい。
久我のGlareがオレ以外を誘惑しないと知ってオレは安堵すると同時に、些細なGlareでも感じ取ることができる相川のことをちょっとだけ羨ましいと思ったのだった。
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エロエロも最高ですが、やはり、久我ちゃんと有坂の出会いの桜のシーンが秀逸。らぶらぶなのも、エロエロはっぴーなのも、有坂がツンデレなのも久我ちゃんの執着も全部このシーンに詰まっていると思うのです。
らぶらぶえろえろハッピーな二人のお話。完結!ですが、スピンオフ、サイドストーリー含め、久我ちゃんと有坂のいろいろな番外編をもっと読みたいです(*^▽^*)
恭介さん『の』お話も楽しみですヽ(*´∀`*)ノ
感想って、完結して、改めて、きちんと書こうと思うとやはり難しい…wがんばって書いたので、乱文お許しを。
月子様
感想ありがとうございます…!!
桜のシーン気に入っていただけて嬉しいです。
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私も感想苦手です(汗)それでも、書いてくださって、ありがとうございます!!
めちゃくちゃ良かったです!
強気受け大好物なんでw
攻めは基本ドS好きなんですが、普段はワンコなのにえちの時には…ってタイプも大好きなんでw
久我さま、流石Domですよね(//∇//)
スイッチが入った時のプレイが堪りません‼︎
がっつり性癖に刺さりました。
私はハッピーエンド至上主義で、最近は最終的にはハッピーエンドでも、前半が辛く切ない物語を読むのがしんどい時もあって、どストライクな作品ってそんなにないんですよね…
ですがこのお話はとても好みな物語でした。出会いの伏線も良かったです♡
このような素敵な物語を産み出していただき、ありがとうございました♡♡
ルコ様
感想ありがとうございます…!!
久我は基本ワンコですが、性質はちゃんとDomでした(笑)
私自身、自分の萌を自分に供給するために書いているので、同志がいるとすごくすごく嬉しいです。
しかもいっぱい褒めていただいて、ほっぺた溶けそうです(笑)
こちらこそ、見つけていただいて&読んでいただいて、ありがとうございました!!
完結おめでとうございます!!
執筆お疲れ様でした(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)”
約1ヶ月間とても楽しませて頂きました。
毎日の楽しみだったので完結とても寂しいです😭
作者様の次回作をまた楽しみに待っております✨✨
なな様
感想ありがとうございます!!
また、最後までお付き合いいただいてありがとうございます…!!なな様に読んでいただけて、とっても嬉しいです…!!
次作は、長冨恭介のお話を予定しています。11月中のスタートが目標です。
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