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本編
【30】初恋の人
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「見つけるのが遅くなってしまってすみません」
「……いや、オレも忘れてたし……」
でも、こんなこと、何故忘れていたのだろうか。
「10年間、オレのCommandを覚えていてくれたんですね。嬉しいです」
「……? あのときお前が使ったCommandはStayだけだっただろ?」
「うーん、オレもそのつもりだったんですけれど……オレがうっかり口にした願望まで唯織さんはCommandだと思ってくれたんじゃないかなと……」
「願望?」
「『オレ以外のGlareを感じないで』っていうのと、『今日のことは全部忘れてください』っていうのは……Commandじゃなかったつもりだったんですけれど」
今聞いても、流石にそれはCommandだとは思わない。
だけど、久我がGlareを出しながら呟いた言葉がCommandとして成立してしまったのは……不慣れだったオレ達の起こした、プレイ事故みたいなものだったようだ。
「オレの初恋の相手は唯織さんです。また会えて、本当に嬉しいです」
ベッドの下で久我が跪いてオレの手を取る。
片膝を立てて、もう片方は床につく。結婚式とかで、新郎が新婦にプロポーズするときのポーズだ。
「改めてお願いします。唯織さん、オレの恋人になってください」
「……オレは、パートナーと恋人が別なのは嫌なんだ」
「はい」
「……お前とのプレイは気持ち良すぎるんだよっ……だから、オレはおまえ以外とはもうプレイできる気がしねぇし……」
先ほど意識が落ちる前に、久我は10年前に出したCommandを全て解除すると言っていたので、多分、もうオレは久我以外のGlareも感じられるようになっているのだろう。だけど、それを試そうという気は今のオレにはない。
「オレとのセックスも気に入ってくれましたしね」
調子に乗ったことを言う久我のことを軽く睨みつける。
「……お前なしじゃ生きられなくなったらどーしてくれるんだ」
「責任取って、一生幸せにさせていただきます!」
「……それなら、恋人になってやってもいい」
本当は、もっと素直に頷きたかったのだが、照れ隠しに捻くれたことしか言えないオレはそうやって不遜に言うのが精いっぱいだった。
しかし、久我はそんなオレの態度でも嬉しく思ってくれたようで、飛びつくように抱き着かれてキスされた。
「ありがとうございます。唯織さん、キスしたいです」
「いや、もうしただろ」
「気が急いてしまってスミマセン。もう一回したいです」
「一回でいいんだな」
「ごめんなさい、何回でもしたいです!」
そう言うなり、キスの嵐が降ってくる。
久我とのキスは心地よい。再び二人でベッドに倒れこんで、オレは久我のキスを全て受け入れたのだった。
後日、付き合うことになったと長冨の店に二人で報告に行ったら、一言祝福の言葉をもらった後、久我だけバーを出禁になった。無意識のうちに溢れ出るGlareが営業妨害になるそうだ。
久我の隣にいるとなんか心地良いのは、うっかり漏れているGlareのせいらしい。
その後しばらくして、久我のチームの研究成果は「D/S性の相性占いができるガム」として売り出されることになった。仕組みとしては、DomならGlereの強さと、SubならGlare耐性を唾液から判定して、同じ色が出たら……つまり、同ランクなら相性が良いと定義づけたようだ。
売り出し直後は「当たる」とD/S性を持つ者の間で一時期流行ったらしいが、いつも同じ色しか出ないし、相性の良さはランクのみで決まるわけではなかったようなので、そのうちひっそりとその商品は姿を消した。
なんであの研究成果を占いガムにしてしまったのか……大企業の考えることは、よくわからない。
「……いや、オレも忘れてたし……」
でも、こんなこと、何故忘れていたのだろうか。
「10年間、オレのCommandを覚えていてくれたんですね。嬉しいです」
「……? あのときお前が使ったCommandはStayだけだっただろ?」
「うーん、オレもそのつもりだったんですけれど……オレがうっかり口にした願望まで唯織さんはCommandだと思ってくれたんじゃないかなと……」
「願望?」
「『オレ以外のGlareを感じないで』っていうのと、『今日のことは全部忘れてください』っていうのは……Commandじゃなかったつもりだったんですけれど」
今聞いても、流石にそれはCommandだとは思わない。
だけど、久我がGlareを出しながら呟いた言葉がCommandとして成立してしまったのは……不慣れだったオレ達の起こした、プレイ事故みたいなものだったようだ。
「オレの初恋の相手は唯織さんです。また会えて、本当に嬉しいです」
ベッドの下で久我が跪いてオレの手を取る。
片膝を立てて、もう片方は床につく。結婚式とかで、新郎が新婦にプロポーズするときのポーズだ。
「改めてお願いします。唯織さん、オレの恋人になってください」
「……オレは、パートナーと恋人が別なのは嫌なんだ」
「はい」
「……お前とのプレイは気持ち良すぎるんだよっ……だから、オレはおまえ以外とはもうプレイできる気がしねぇし……」
先ほど意識が落ちる前に、久我は10年前に出したCommandを全て解除すると言っていたので、多分、もうオレは久我以外のGlareも感じられるようになっているのだろう。だけど、それを試そうという気は今のオレにはない。
「オレとのセックスも気に入ってくれましたしね」
調子に乗ったことを言う久我のことを軽く睨みつける。
「……お前なしじゃ生きられなくなったらどーしてくれるんだ」
「責任取って、一生幸せにさせていただきます!」
「……それなら、恋人になってやってもいい」
本当は、もっと素直に頷きたかったのだが、照れ隠しに捻くれたことしか言えないオレはそうやって不遜に言うのが精いっぱいだった。
しかし、久我はそんなオレの態度でも嬉しく思ってくれたようで、飛びつくように抱き着かれてキスされた。
「ありがとうございます。唯織さん、キスしたいです」
「いや、もうしただろ」
「気が急いてしまってスミマセン。もう一回したいです」
「一回でいいんだな」
「ごめんなさい、何回でもしたいです!」
そう言うなり、キスの嵐が降ってくる。
久我とのキスは心地よい。再び二人でベッドに倒れこんで、オレは久我のキスを全て受け入れたのだった。
後日、付き合うことになったと長冨の店に二人で報告に行ったら、一言祝福の言葉をもらった後、久我だけバーを出禁になった。無意識のうちに溢れ出るGlareが営業妨害になるそうだ。
久我の隣にいるとなんか心地良いのは、うっかり漏れているGlareのせいらしい。
その後しばらくして、久我のチームの研究成果は「D/S性の相性占いができるガム」として売り出されることになった。仕組みとしては、DomならGlereの強さと、SubならGlare耐性を唾液から判定して、同じ色が出たら……つまり、同ランクなら相性が良いと定義づけたようだ。
売り出し直後は「当たる」とD/S性を持つ者の間で一時期流行ったらしいが、いつも同じ色しか出ないし、相性の良さはランクのみで決まるわけではなかったようなので、そのうちひっそりとその商品は姿を消した。
なんであの研究成果を占いガムにしてしまったのか……大企業の考えることは、よくわからない。
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