いつか、愛に跪くまで

夏芽玉

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本編

【21】茶色の紙袋

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「うえぇ、滅茶苦茶不味い……って、おまえは……?」 

 新しいティッシュで口を拭うと、オレは久我を見た。確かにオレも久我の口の中に出したはずなのに、その形跡がどこにもない。
 不思議に思って聞いてみると、久我が照れたような表情を浮かべた。

「唯織さんのは一滴も残さずいただきました……とても、美味でした」

 ご馳走さまでした、と自身の唇をなぞりながら言う様子を不覚にも色っぽいと思ってしまった。

「……次は絶対、全部飲んでやる」
「えっ、次っ!? またフェラしてもらえるんですか……? オレは夢でも見てるのだろうか……」
「本当に、夢だと思うか? それとも、夢ほうが都合がいいのか?」
「そんなことないです! 夢みたいに幸せだけど、唯織さんのこのぬくもりは本物です!! 唯織さん大好きです!!」

 しばらくぎゅうぎゅうと抱き着かれていたが、そのうちそっと身体が離された。

「……そろそろ服、着ますか?」
「なんで?」
「だって……お恥ずかしながら、唯織さんのこと抱きしめて匂いを嗅いでたら、幸せ過ぎてまた勃ってきちゃって……このままだと本当に襲っちゃいそうですし……」

 身体は離したものの、余程名残惜しかったのか両手をぎゅっと握ったまま言われた。

「何か問題でも?」
「も、問題は……その……まさか、こんなに唯織さんが積極的になってくれるだなんて思ってもみなかったので、何も準備してなくて。あああ、ていうか、なんで万が一のことまで考えて準備してなかったんだろう。オレって本当馬鹿! せっかく唯織さんがその気になってくれてるのに……」

 最初は照れたような顔をしていたのに、だんだん耳が下がって尻尾が垂れているお預けを喰らった犬みたいなしょんぼりとした表情に変わっていく。

「……必要なものなら持ってきた」
「えっ!?」
「今日、最初に渡した茶色の紙袋……」

 言い終わらないうちに、久我がベッドから飛び降りてリビングまでダッシュで行って、ダッシュで戻ってきた。……その様子が何かを彷彿とさせると思ったが、よく考えて出てきた答えは「投げられたボールを追いかけて行った大型犬」だった。

「唯織さん、これって……」

 ベッドの上に戻ってきた久我が、紙袋の中身を取り出した。
 長冨にメッセージアプリで色々聞いて、ここに来る前に駅前の薬局で必要なものは揃えた。不足はないはずだが……

「……前ここに来たとき、身体からでも落とすって言ったから。それとも、お前のプレイはこれで終わりか?」
「もしかして、今日は最初から身体から落とされてくれるつもりで……?」
「……もしオレを満足させられたら、落とされてやってもいい。だから、Glareをもっと出せ。手加減してんじゃねぇ。ちゃんと受け止めるから、早く全力で寄越せ」

 前回プレイしたときに比べて、圧倒的にGlareが足りない。もっと、骨の髄まで蕩けさせるような、あの強くて濃厚なGlareが欲しい。
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