いつか、愛に跪くまで

夏芽玉

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本編

【11】ハイランク

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「……次のプレイは……、」

 「来週」と言いかけて慌てて口を噤む。こんなに体調が良いのであれば、来週はプレイをしなくとも良いだろう。では、「来月」は丁度年度終わりだ。異動する人員の引継ぎや廃棄書類の片づけとか諸々で忙しいに違いない。

「……そうだな。二週間後の週末、お互いに都合のいい日でどうだ?」
「ありがとうございます!!」

 久我の顔が輝いた。
 一瞬、大好きな餌を目の前にした犬の幻影が見えた気がした。
 二週間後はオレの中での折衷案。来月まで体調は持つハズだけど、早く会いたいからだなんてことは一切ないはずだ、きっと。オレがあのGlareを欲してるだなんてそんなことは……

「……あ、あの、オレから触っていいのは……」
「……不埒な接触でなければ、許す」
「それは、今からOKということで大丈夫ですね」

 ため息をついてオレは頷いた。
 無駄に意地を張る必要もないだろう。久我は接触NGを解除したからといって急に、オレに危害を加えるようなことはしないだろう。それに害意のある奴なら、最初からルール無視で色々してくるはずだ。そういう意味では、久我は信頼するに足る人物だとオレは評価した。むしろ、全ての接触を拒絶していたせいで、昨夜、色々不都合が出てしまった感のほうが否めない。

「それで?」

 久我の調子に合わせていると、いつまで経っても本題に入れそうにない気がして、オレは話の先を促した。

「オレ達の研究では、便宜上DomやSubにランク付けをしています。ランクの基準は色々あるんですけれど、Domの場合は基本的にGlareの強さ、Subの場合はGlareへの耐性の高さです。有坂さんは、おそらくハイランク……それも最上位のSか、もしかしたら規格外なSSランク相当のSubではないかと思います。Subは自分より低いランクのGlareは感じにくいそうです」

 『強いDom』や『弱いSub』という言い回しは、今まで慣習としてあったけれど、最新の研究では科学的にそれを定義しようとしているらしい。

「オレをハイランクのSubだと思う根拠は?」
「有坂さんが昨日、オレのGlareを全部受け止めてくれたからです」

 うっとりした表情をした久我に、オレはまた話が振出しに戻るのではないかと顔を引き攣らせる。

「……ちなみに、お前のランクは……」
「一応、便宜上はSですけれど、測定値では上方に振り切っているのでSS相当です。だから、そのGlareを受け止めきれた有坂さんもSSだと思います」

 久我のいう「相性の良さ」とは、同ランクの相手という意味なのだとオレは解釈した。

「それじゃあ、長冨は……」
「ランクは現在暫定的にS・A・B・Cの4つですが、長冨さんは家系的にもAランク以上のDomに当たるはずですよ。絶対とは言えませんが、Glareの強さはある程度遺伝すると言われています。実際、長冨さんのGlareは相当強いと思いますよ。お店に変な客が来ても用心棒ガードマンなしに一人で追い返せているなら、間違いないです」

 言われてみれば、変なDomが来た時は長冨がGlare威圧で追い払っているのを見たことがあるような気がする。ちなみに、変な客がSubであればCommandを使って追い返すか、警察が来るまで大人しく待機させていた。
 しかし、久我の説明にオレは再び首を傾げる。

「仮に長冨とお前のランクが違うとして、Glareの強さにそこまで差が出るものなのか?」
「……どういうことです?」

 久我が怪訝そうな顔をして聞き返した。
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