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本編
【9】火曜日の朝
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トーストにサラダ、ハムが添えられた目玉焼き。ヨーグルトにはミックスベリーがちょこんと乗っていて、マグカップにはコーヒーが注がれていた。
一人暮らしの男性が用意した朝食にしては、ずいぶん彩り豊かで栄養満点だ。
「有坂さん、あーん」
「……自分で食える」
「昨日できなかった分のアフターケアくらいさせてくださいよぉ」
「不要だ」
差し出されたスプーンに乗ったヨーグルトは無視して、オレは自ら手にしたトーストに齧りついた。
昨夜、長冨のプレイバーで久我とお試しプレイをしたとき、久我はオレに触れることなく、GlareとCommandひとつだけでオレをサブスペースに導いた。
しかも使われたCommandがStopだけだったというのも信じがたい。でも、それは事実で、オレにとっては全くの想定外だった。
オレはサブスペースに入っている間、ふわふわと酔ったような状態だったが、残念ながら記憶はなくなってはいなかった。その時の出来事はベールを通して見ていたような感覚で、ぼんやりとした意識の中で覚えている。
久我を半裸に剥いて素肌に吸い付き、抱き着いているうちに約束の2時間が過ぎた。
久我が長冨に状況を説明して、VIPルームの使用時間を通常の閉店時間まで延長させてもらったが、それでもまだオレはサブスペースから抜けなかった。
仕方がないので、オレは長冨と久我にタクシーに突っ込まれて、最終的にCommandで久我の部屋のベッドに寝かされた。ベッドをオレに占領された久我は、昨夜はリビングのソファで寝たようだ。
久我が住んでるのはベイエリアにあるタワーマンションのそこそこ上の方のフロアにある1LDKの部屋だった。カーテンが開かれたリビングの窓からは、レインボーブリッジが見えている。
ここまで、久我は最初にした約束通り、自らオレに触れていない。
昨日、オレがバーを訪れたのは、体調不良解消に長冨とプレイするためだった。
長冨とのプレイの後は、必ずぶっ倒れてしまう……長冨の方が。オレが長冨のGlareを感じにくいため、長冨も全力でGlareを出してくれるのだが、長冨からするとオレにGlareを搾り取られてしまう感じになるそうだ。毎回、本当に申し訳ないと思う。
なので、長冨とプレイするのは来客が比較的少なめの月曜日の夜。バーを早めに閉めて、二階のVIPルームに籠る。
プレイが終わった後、力尽きた長冨をベッドに寝かせて、回復するまでオレが世話をする。だいたい長冨が起き上れるようになるのが翌日の昼過ぎなので、オレが昼食を準備して一緒に食べる。火曜日のカフェタイムはアルバイトに回してもらうか臨時休業になる。
店まで閉めさせてしまって申し訳ないと恐縮するが、こうでもしないと週に一度しかない公休日がまともに休めないから気にするなと長冨は言う。その後、夕方頃から夜の仕込みから長冨は仕事に復帰したりそのまま休みを取ったり……というのが毎回のルーティーンになる。
ちなみに、オレは長冨とプレイする翌日は、毎回有給を取っている。オレは公務員なので、そのあたりの融通はつけやすい。
プレイするのに毎回こんなにも苦労しているというのに、昨日のこいつとのプレイはいったい何だったのだろうか。規格外にも程がある。
一人暮らしの男性が用意した朝食にしては、ずいぶん彩り豊かで栄養満点だ。
「有坂さん、あーん」
「……自分で食える」
「昨日できなかった分のアフターケアくらいさせてくださいよぉ」
「不要だ」
差し出されたスプーンに乗ったヨーグルトは無視して、オレは自ら手にしたトーストに齧りついた。
昨夜、長冨のプレイバーで久我とお試しプレイをしたとき、久我はオレに触れることなく、GlareとCommandひとつだけでオレをサブスペースに導いた。
しかも使われたCommandがStopだけだったというのも信じがたい。でも、それは事実で、オレにとっては全くの想定外だった。
オレはサブスペースに入っている間、ふわふわと酔ったような状態だったが、残念ながら記憶はなくなってはいなかった。その時の出来事はベールを通して見ていたような感覚で、ぼんやりとした意識の中で覚えている。
久我を半裸に剥いて素肌に吸い付き、抱き着いているうちに約束の2時間が過ぎた。
久我が長冨に状況を説明して、VIPルームの使用時間を通常の閉店時間まで延長させてもらったが、それでもまだオレはサブスペースから抜けなかった。
仕方がないので、オレは長冨と久我にタクシーに突っ込まれて、最終的にCommandで久我の部屋のベッドに寝かされた。ベッドをオレに占領された久我は、昨夜はリビングのソファで寝たようだ。
久我が住んでるのはベイエリアにあるタワーマンションのそこそこ上の方のフロアにある1LDKの部屋だった。カーテンが開かれたリビングの窓からは、レインボーブリッジが見えている。
ここまで、久我は最初にした約束通り、自らオレに触れていない。
昨日、オレがバーを訪れたのは、体調不良解消に長冨とプレイするためだった。
長冨とのプレイの後は、必ずぶっ倒れてしまう……長冨の方が。オレが長冨のGlareを感じにくいため、長冨も全力でGlareを出してくれるのだが、長冨からするとオレにGlareを搾り取られてしまう感じになるそうだ。毎回、本当に申し訳ないと思う。
なので、長冨とプレイするのは来客が比較的少なめの月曜日の夜。バーを早めに閉めて、二階のVIPルームに籠る。
プレイが終わった後、力尽きた長冨をベッドに寝かせて、回復するまでオレが世話をする。だいたい長冨が起き上れるようになるのが翌日の昼過ぎなので、オレが昼食を準備して一緒に食べる。火曜日のカフェタイムはアルバイトに回してもらうか臨時休業になる。
店まで閉めさせてしまって申し訳ないと恐縮するが、こうでもしないと週に一度しかない公休日がまともに休めないから気にするなと長冨は言う。その後、夕方頃から夜の仕込みから長冨は仕事に復帰したりそのまま休みを取ったり……というのが毎回のルーティーンになる。
ちなみに、オレは長冨とプレイする翌日は、毎回有給を取っている。オレは公務員なので、そのあたりの融通はつけやすい。
プレイするのに毎回こんなにも苦労しているというのに、昨日のこいつとのプレイはいったい何だったのだろうか。規格外にも程がある。
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