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本編
【2】偽物(フェイク)
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この世界には、男女以外にDom / Normal / Subの三つの第二性がある。一番多いのはNormalで全体の七割くらいらしい。それ以外がDomとSubということになる。
簡単に説明すると、Domは支配欲が強く、嗜虐的特性を持つ人が多い。Subの世話をしたり、躾やお仕置きをしたりすることを好む傾向がある。
対して、Subは被支配欲が強くて、被虐的特性を持つ人が多い。Domを信頼し、躾けられたり褒められたりすることが何よりの悦びであると感じる人が多いようだ。
それが世間の一般常識だ。
それなのに、Subに土下座しながら告白するDom?
いったいこいつは何を考えているのだろう。本当に意味が分からない。
余程のド底辺Domなんだろうか。それとも、ただの自称Dom?
いや、Subの前でそれは無意味だ。Glareが出せなければすぐにバレる。
考えてもわからない。が、こんな奴のために何かを考えるのも無駄なことだ。
オレは金輪際、こいつと関わる予定はないのだから。
「罰ゲームか何かなら、他所でやってくれ。不快だ」
「いえいえいえいえ、絶対に違います!! 本当に一目惚れしたんですってば!!」
床に正座して、両手を床につけ、顔だけ上げてなおも言い募る。
この体勢、いつまで続ける気なんだろうか?
まるで犬がお座りをしているみたいな恰好に、まるでアレをしている格好みたいだと思い至って、オレは視線を逸らす。Domはいつも跪くSubをこのくらいの視線の高さから見ているのだろうか。
「それに、オレ、パートナー居るから」
そっと、オレはネクタイを緩めて首元を晒し、現れた首輪に触れた。一般的には、首輪はパートナーから送られるものである。話はそこで終わるはずだった。
「それ、偽物ですよね?」
しかし、なおも引き下がらない相手の言葉に、軽く目を見開く。
「もし本気って言うなら、すぐにでもそのパートナーとは関係を解消してください。貴方のことを全然大事にしていないパートナーなんて、害悪でしかありません。オレが貴方を全力で満たします。だから……せめて、お試しプレイだけでもさせてもらえませんか?」
再び視線を下げれば、相手が真剣な眼差しでこちらを見つめていることに気づいた。
「お試し、いーじゃん。すれば? 部屋は空いてるよ」
「おい、長冨……」
フロアに注文を取りに行っていた長冨がいつの間にか戻ってきていたようだ。バーカウンターの内側から声を掛けられて、その無責任な発言に軽く睨みつける。
長冨恭介は、高校・大学の時の同級生で、今はここのバーの店長をしている。オーナーは別に居るので、所謂、雇われ店長だ。
「それで、今からのお試しプレイで貴方がサブスペースに入ることができたら、オレのパートナーになってくれませんか?」
「おい。お前、何言って……」
オレはお試しプレイをすることすら了承していない。それに、サブスペースだなんて。
サブスペースとは、SubがDomの支配下に完全に入ったはいってトランス状態になることを言う。余程信頼している相手か相性の良い相手じゃないと、サブスペースに入ることはないと言われている。
それを、今目の前で無様に床に座り込んでいる相手にだなんて、絶対にありえない。
簡単に説明すると、Domは支配欲が強く、嗜虐的特性を持つ人が多い。Subの世話をしたり、躾やお仕置きをしたりすることを好む傾向がある。
対して、Subは被支配欲が強くて、被虐的特性を持つ人が多い。Domを信頼し、躾けられたり褒められたりすることが何よりの悦びであると感じる人が多いようだ。
それが世間の一般常識だ。
それなのに、Subに土下座しながら告白するDom?
いったいこいつは何を考えているのだろう。本当に意味が分からない。
余程のド底辺Domなんだろうか。それとも、ただの自称Dom?
いや、Subの前でそれは無意味だ。Glareが出せなければすぐにバレる。
考えてもわからない。が、こんな奴のために何かを考えるのも無駄なことだ。
オレは金輪際、こいつと関わる予定はないのだから。
「罰ゲームか何かなら、他所でやってくれ。不快だ」
「いえいえいえいえ、絶対に違います!! 本当に一目惚れしたんですってば!!」
床に正座して、両手を床につけ、顔だけ上げてなおも言い募る。
この体勢、いつまで続ける気なんだろうか?
まるで犬がお座りをしているみたいな恰好に、まるでアレをしている格好みたいだと思い至って、オレは視線を逸らす。Domはいつも跪くSubをこのくらいの視線の高さから見ているのだろうか。
「それに、オレ、パートナー居るから」
そっと、オレはネクタイを緩めて首元を晒し、現れた首輪に触れた。一般的には、首輪はパートナーから送られるものである。話はそこで終わるはずだった。
「それ、偽物ですよね?」
しかし、なおも引き下がらない相手の言葉に、軽く目を見開く。
「もし本気って言うなら、すぐにでもそのパートナーとは関係を解消してください。貴方のことを全然大事にしていないパートナーなんて、害悪でしかありません。オレが貴方を全力で満たします。だから……せめて、お試しプレイだけでもさせてもらえませんか?」
再び視線を下げれば、相手が真剣な眼差しでこちらを見つめていることに気づいた。
「お試し、いーじゃん。すれば? 部屋は空いてるよ」
「おい、長冨……」
フロアに注文を取りに行っていた長冨がいつの間にか戻ってきていたようだ。バーカウンターの内側から声を掛けられて、その無責任な発言に軽く睨みつける。
長冨恭介は、高校・大学の時の同級生で、今はここのバーの店長をしている。オーナーは別に居るので、所謂、雇われ店長だ。
「それで、今からのお試しプレイで貴方がサブスペースに入ることができたら、オレのパートナーになってくれませんか?」
「おい。お前、何言って……」
オレはお試しプレイをすることすら了承していない。それに、サブスペースだなんて。
サブスペースとは、SubがDomの支配下に完全に入ったはいってトランス状態になることを言う。余程信頼している相手か相性の良い相手じゃないと、サブスペースに入ることはないと言われている。
それを、今目の前で無様に床に座り込んでいる相手にだなんて、絶対にありえない。
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