見た目詐欺アルファの優しい檻～会社の先輩とアプリでマッチングしたらいつの間にかがっつり外堀埋められて囲われていました

本編

１４話 婚姻関係

　最終的に、オレは礼二さんと結婚することを承諾してしまった。

　普段、会社では頼りない姿しか見ていないから実感はなかったけれど、礼二さんは営業部でもトップの成績なんだ。オレは、その話術を身をもって実感した。
　でも、オレが結婚に承諾したのは、礼二さんの話術の所為だけなんじゃないって本当は気づいていた。

　結婚願望なんて、オレは持ってなかった。というか、最初から諦めていた。
　オレみたいなオメガらしくないオメガを番にしたいという人なんていないと思っていたし、だから結婚なんて一生しないと思っていた。憧れる気持ちには蓋をしていた。
　それなのに、礼二さんが「どうしてもオレと結婚したい」なんて情熱的に言ってくれるものだから、グラっときてしまったんだ。しかも、オレたちはもう番になっているわけだし。

　アルファは何人でも番を作れるけど、オメガは一度番になったら、他の人とは番になれない。身体が番のアルファしか受け付けなくなるんだ。
　だから、番になった礼二さんと結婚できるのは本当は嬉しかった。オレは礼二さんのことが好きだったから。オレ自身に、断る理由なんてなかった。

　だけど、礼二さんは違う。ただの恋人ごっこの相手と事故で番ってしまっても、結婚なんてしなくてよかったのに。
　オレがあの時酔っぱらっていなかったら。発情期の兆候を感じたときに、礼二さんを誘わずにちゃんと薬を飲んでいれば、こんなことにはならなかったのに。オレのせいで礼二さんを自分に一生縛り付けることになってしまって、罪悪感でオレの心が軋んだ。


　結婚をするってオレが返事をしたあとの後の礼二さんの行動は早かった。
　その日のうちに、オレの両親に電話で番になったので結婚するという報告をして、次の週末に挨拶に行く約束を取り付けた。
　オレも礼二さんのご両親に挨拶をと思ったのだけど、「今、日本にいないからまた今度」と言われて、メールで挨拶をしただけだった。

　そして、連休明けの火曜日、二人で会社を休んで役所に結婚届を出しに行った。


　こうしてオレ、奥村茜袮は上條茜袮になった。なってしまった。