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本編
7話 定位置
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その姿が見えなくなって、オレはホッと息を吐いた。同じ空間に偉い人が居ると居心地が悪い。それに社長はアルファなので、近づかれると余計に緊張する。
「……しっかし、上條さん、社長のスケジュールなんてよく把握していましたね」
オレは感心しながら言った。オレも営業部全員のスケジュールには目を通すようにしているけれど、流石に社長の一日のスケジュールなんて把握していない。しかも、あんな不意打ち訪問で対応するなんて……そんなことを考えていたら、営業部長がこっちをじっと見ていた。
「上條、この後の社長のスケジュールは30分後に会議室Aで経営会議だ。この時間から広報会議があるのは明後日だぞ」
「あ、そうでしたっけ?」
営業部長に言われて、上條さんがへにゃりと笑う。オレの中で上條さんの株が爆上がりしていたのに、一瞬で元の位置に戻った。そーゆーとこが、上條さんらしい。だけど、今回の勘違いでオレはちょっと上條さんに救われたので、心の中でその勘違いにそっと感謝した。
「あと、おまえのほうがもう出る時間じゃないのか。今日のアポ、いつもより早いぞ」
「あっ! 本当ですね!! すぐ出ます」
「資料、忘れずに持って行ってくださいよ」
「ああっ、そうだった。ありがとう!」
今の上條さんの表情で、持って行くのを忘れかけていたのだとオレは察した。一度自分のデスクに戻った上條さんが、慌ただしく出て行った。おかげで、オレは社内新聞のことをうやむやにできたことのお礼を言い損ねてしまった。
しかし、社内新聞なんかで広報されなくても、この日の社長の言動がダメ押しになって、オレたちのことを社内で知らない人は完全に居なくなったのだった。
「見た目詐欺アルファ」なんて言われている上條さんだけど、実は社内で上條さんは女子たちには結構人気だ。多少抜けた性格をしていても、愛想と顔の良さで十分魅力的だからだろう。今までも、休み時間に給湯室で女子に告白されているのを何度か見かけたことがある。
その日も終業時刻ぴったりに給湯室を通りかかったら、女の子が泣きながら上條さんに告白をしていた。オレはそれを見なかったフリをして通り過ぎた。
「……しっかし、上條さん、社長のスケジュールなんてよく把握していましたね」
オレは感心しながら言った。オレも営業部全員のスケジュールには目を通すようにしているけれど、流石に社長の一日のスケジュールなんて把握していない。しかも、あんな不意打ち訪問で対応するなんて……そんなことを考えていたら、営業部長がこっちをじっと見ていた。
「上條、この後の社長のスケジュールは30分後に会議室Aで経営会議だ。この時間から広報会議があるのは明後日だぞ」
「あ、そうでしたっけ?」
営業部長に言われて、上條さんがへにゃりと笑う。オレの中で上條さんの株が爆上がりしていたのに、一瞬で元の位置に戻った。そーゆーとこが、上條さんらしい。だけど、今回の勘違いでオレはちょっと上條さんに救われたので、心の中でその勘違いにそっと感謝した。
「あと、おまえのほうがもう出る時間じゃないのか。今日のアポ、いつもより早いぞ」
「あっ! 本当ですね!! すぐ出ます」
「資料、忘れずに持って行ってくださいよ」
「ああっ、そうだった。ありがとう!」
今の上條さんの表情で、持って行くのを忘れかけていたのだとオレは察した。一度自分のデスクに戻った上條さんが、慌ただしく出て行った。おかげで、オレは社内新聞のことをうやむやにできたことのお礼を言い損ねてしまった。
しかし、社内新聞なんかで広報されなくても、この日の社長の言動がダメ押しになって、オレたちのことを社内で知らない人は完全に居なくなったのだった。
「見た目詐欺アルファ」なんて言われている上條さんだけど、実は社内で上條さんは女子たちには結構人気だ。多少抜けた性格をしていても、愛想と顔の良さで十分魅力的だからだろう。今までも、休み時間に給湯室で女子に告白されているのを何度か見かけたことがある。
その日も終業時刻ぴったりに給湯室を通りかかったら、女の子が泣きながら上條さんに告白をしていた。オレはそれを見なかったフリをして通り過ぎた。
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