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後日談5 ハッピー・マリッジ / 相川湊
【1】逢えない時間
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海に面したチャペルの内装はこれからの二人を祝福する白で統一されていた。
壁は全面ガラス張りで、外には青い空と海が広がっている。扉が開いて入場してきた新郎新婦は、沢山の祝福の中で幸せそうな顔をしていた。
僕は、従妹の結婚式に列席するため3泊5日の日程でハワイに来ていた。子供の頃はよく一緒に遊んだ従妹。久しぶりに見た従妹はとても綺麗になっていた。幸せいっぱいの挙式に、僕の心も温かくなる。
従妹は母親のお兄さんの次女で、今回の結婚式にうちから参加したのは兄と僕の二人だけだった。僕の両親は仕事の都合がつかず、兄のパートナーと恭介さんも同じく仕事の都合がつかなかったので、兄と僕の二人で参加することになったのだ。
母方の親戚にはDomが多い。新婦である従妹もDomだ。新郎はSubのようだけど、新婦側の親戚のほとんどはNormalだった。二人の人生の門出をお祝いできたのは嬉しかったけれど、時折、自分の親戚側から時折漏れてくるGlareが少し辛かった……なので、僕は自分の親戚が近くにいるときはずっと、兄の後ろに隠れていた。
そういえば、兄も有坂さんと同じで、Glareにはやや鈍感なタイプだ。最初に恭介さんから有坂さんを紹介されたときに妙な親しみやすさを感じたのは、そんなところが二人ちょっと似ているからかもしれない。性格は全然違うけれど。
挙式後のガーデンパーティでは、新郎新婦の二人が揃ってあいさつに来てくれた。二人はとても仲睦まじくて、お互いが想い合っている様子がほんの短い間でも伝わってきた。みんなで一緒に写真を撮った後、他のテーブルにあいさつに向かう背中を見送る。
「いいなぁ……」
「うん、どうした?」
「あ、ううん。何でもないよ」
うっかり心の声が漏れてしまったみたいだ。兄に聞き返されて、僕は首を振った。今、とても恭介さんに会いたい気分だった。
結婚式の翌日は、兄と二人で観光をした。クルージングを楽しんだり、ショッピングモールで買い物したり……だけど、僕の心はここにあらずで、兄にも呆れられてしまった。だって、あんな幸せそうな二人を見たら、どうせだったら恭介さんと来たかったな、って思ってしまうのは仕方ないことだと思う。
帰国したら、日本は夜の7時だった。恭介さんはまだお仕事をしている時間だ。だけど、僕は早く恭介さんに会いたくて、真っすぐに帰らずにお店に立ち寄った。スーツケースやお土産なんかの荷物は宅配で送ったので、明日、自宅に届く予定だ。過保護な兄が「こんな重たい荷物を湊に持たせるわけにはいかない」なんて言って手配してくれたのだ。その時は「自分で持って帰るのに!」と思ったけれど、身軽になったおかげでこうやって恭介さんに早く会えるのだから、ラッキーだったのかもしれない。
バーのドアを開けて店に入ったら、ドアに付いたベルの音に気付いた恭介さんと目が合った。連絡もせずに来てしまったから、恭介さんはちょっと驚いた顔をしていた。本来なら、僕は空港から真っすぐに帰宅するはずだったから。だけど、恭介さんが驚いていたのは一瞬で、その後すぐにいつもの笑顔を向けてくれた。
「おかえり」
「……ただいま」
久しぶりに恭介さんの笑顔が見れて、僕はホッと息を吐いた。一緒に暮らし始めてからは、お互いに顔を合わさない日はなかったから、随分長い期間離れていたような気がする。
ああ、そういえば。初めて恭介さんを見たのも、この位置からだったな。と思い出す。その時は『いらっしゃいませ』って言われたのだけど。あの時と比べて随分近くなった二人の距離に、ふふっと口元が緩んだ。
いつも座っている席には先客がいたので、僕は入口に近い席に座った。
壁は全面ガラス張りで、外には青い空と海が広がっている。扉が開いて入場してきた新郎新婦は、沢山の祝福の中で幸せそうな顔をしていた。
僕は、従妹の結婚式に列席するため3泊5日の日程でハワイに来ていた。子供の頃はよく一緒に遊んだ従妹。久しぶりに見た従妹はとても綺麗になっていた。幸せいっぱいの挙式に、僕の心も温かくなる。
従妹は母親のお兄さんの次女で、今回の結婚式にうちから参加したのは兄と僕の二人だけだった。僕の両親は仕事の都合がつかず、兄のパートナーと恭介さんも同じく仕事の都合がつかなかったので、兄と僕の二人で参加することになったのだ。
母方の親戚にはDomが多い。新婦である従妹もDomだ。新郎はSubのようだけど、新婦側の親戚のほとんどはNormalだった。二人の人生の門出をお祝いできたのは嬉しかったけれど、時折、自分の親戚側から時折漏れてくるGlareが少し辛かった……なので、僕は自分の親戚が近くにいるときはずっと、兄の後ろに隠れていた。
そういえば、兄も有坂さんと同じで、Glareにはやや鈍感なタイプだ。最初に恭介さんから有坂さんを紹介されたときに妙な親しみやすさを感じたのは、そんなところが二人ちょっと似ているからかもしれない。性格は全然違うけれど。
挙式後のガーデンパーティでは、新郎新婦の二人が揃ってあいさつに来てくれた。二人はとても仲睦まじくて、お互いが想い合っている様子がほんの短い間でも伝わってきた。みんなで一緒に写真を撮った後、他のテーブルにあいさつに向かう背中を見送る。
「いいなぁ……」
「うん、どうした?」
「あ、ううん。何でもないよ」
うっかり心の声が漏れてしまったみたいだ。兄に聞き返されて、僕は首を振った。今、とても恭介さんに会いたい気分だった。
結婚式の翌日は、兄と二人で観光をした。クルージングを楽しんだり、ショッピングモールで買い物したり……だけど、僕の心はここにあらずで、兄にも呆れられてしまった。だって、あんな幸せそうな二人を見たら、どうせだったら恭介さんと来たかったな、って思ってしまうのは仕方ないことだと思う。
帰国したら、日本は夜の7時だった。恭介さんはまだお仕事をしている時間だ。だけど、僕は早く恭介さんに会いたくて、真っすぐに帰らずにお店に立ち寄った。スーツケースやお土産なんかの荷物は宅配で送ったので、明日、自宅に届く予定だ。過保護な兄が「こんな重たい荷物を湊に持たせるわけにはいかない」なんて言って手配してくれたのだ。その時は「自分で持って帰るのに!」と思ったけれど、身軽になったおかげでこうやって恭介さんに早く会えるのだから、ラッキーだったのかもしれない。
バーのドアを開けて店に入ったら、ドアに付いたベルの音に気付いた恭介さんと目が合った。連絡もせずに来てしまったから、恭介さんはちょっと驚いた顔をしていた。本来なら、僕は空港から真っすぐに帰宅するはずだったから。だけど、恭介さんが驚いていたのは一瞬で、その後すぐにいつもの笑顔を向けてくれた。
「おかえり」
「……ただいま」
久しぶりに恭介さんの笑顔が見れて、僕はホッと息を吐いた。一緒に暮らし始めてからは、お互いに顔を合わさない日はなかったから、随分長い期間離れていたような気がする。
ああ、そういえば。初めて恭介さんを見たのも、この位置からだったな。と思い出す。その時は『いらっしゃいませ』って言われたのだけど。あの時と比べて随分近くなった二人の距離に、ふふっと口元が緩んだ。
いつも座っている席には先客がいたので、僕は入口に近い席に座った。
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