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後日談2 VIPルーム / 相川湊

【4】上書きしちゃっていいですか?

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「部屋の入口に立ってもらっていい?」

 僕は恭介さんの指示に従って、ベッドから降りて部屋の入口に行った。

「湊、Comeおいで

 振り返った僕に、ベッドに腰を掛けた恭介さんが言った。

 確かにCommandをもらったのだけれど、恭介さんからはGlareが出ていない。
 僕は首を傾げつつも、言われた通りに恭介さんに近づいた。

Goodいいよ。次は、Kneelして座って

 やっぱりCommandをくれる恭介さんからはGlareが出ていない。
 目を瞬かせながら僕は恭介さんの足元にペタンと座った。

「……?」

 不思議に思いながら恭介さんを見上げていたら、わしゃわしゃっと頭を撫でられた。
 そして、そのまま恭介さんはボスっとベッドに寝転がってしまった。

「え……?」
「おしまい」
「えっ、えぇっ……!?」

 恭介さんが何を言ってるのか本気でわからない。

「湊も、kneelお座りはもういいよ」

 言われて慌てて立ち上がって、寝転がった恭介さんを覗き込む。

「えっ、あの……今のはいったい……?」
「んー、プレイ?」
「ええっ!? 嘘だぁ!?」
「残念ながら、本当。10年間、有坂とはこんな感じだったよ」

 苦笑しながら恭介さんが言う。

 話をよく聞いてみると、有坂さんはGlareを感じにくい体質らしく、たったあれだけの動作で恭介さんのほうがGlareを出し過ぎて倒れてしまっていたそうだ。

 バーカウンターで失礼なDomからのGlareを平然と受け流し、Commandを無視しまくっていた有坂さんの姿を思い出す。

 え、もしかして有坂さんにはあのCommand、本気で全部通じていなかったの!? そしてその後に来たGlareの塊みたいな久我さんのことを思い出して、なんだか僕は納得した。
 あのくらい強いGlareを持つ久我さんじゃないと、有坂さんのことは従えられないようだ。勿論、そこには久我さんにControl支配されたいっていう有坂さんの気持ちもあるのだろうけれど。

「そういえば、有坂さんは……」
「ああ、DefenceでGlareを異常放出している久我の首根っこを捕まえて、そのまま店を出て行ったよ」

 あのGlareの中で動けるなんて、信じられない。
 有坂さんは僕より久我さんに近いところに居たから、あの恐ろしいGlareを僕よりまともに浴びているはずなのに!!
 というか、久我さんがDefence状態になったときに、有坂さんは僕を庇ってくれた気がする。
 久我さんのGlareは規格外って聞いたことがあるけれど、そんな久我さんの本気のGlareにも怯まない有坂さんって、実は超人なのでは!? 


「なぁ、湊。癒して」

 ベッドに寝転がったまま、恭介さんが腕を伸ばしてきたので、僕もベッドに上がって恭介さんに抱き着いた。
 胸に頬を寄せると、恭介さんが僕を腕の中に閉じ込めた。恭介さんの心音と体温が伝わってきて、僕はホッと息を吐いた。

「恭介さんは……有坂さんと……」
「何?」

 口に出してしまってから、言っていいのか悩んでしまった。
 だけど、恭介さんは言い淀んだ僕の言葉の続きを促すように髪を撫でてくれた。

「……プレイしてて、楽しかったですか?」
「いや、全然」

 やっぱり、そうだよね。さっきのは、動作確認か何かの作業か……そんな感じしかしなかった。
 あれがプレイだったのだとしたら、多分、お互い何も満たされなかったことだろう。

「恭介さんのこの部屋での思い出、僕が全部上書きしちゃっていいですか?」

 僕は顔を上げて、恭介さんの目を見て言った。

「へぇ……湊が?」

 恭介さんが、目を細めて笑う。

「何をしてくれるつもり?」
「恭介さんを、全部満たしてあげたいです」
「オレは、湊といるときはいつでも満たされてるけど?」

 僕は身体を起こして恭介さんの腰に跨った。
 腕を恭介さんの顔の両側について、恭介さんを押し倒したみたいな姿勢になる。 

「今日は僕が全部するので、恭介さんはじっとしていてくださいね」
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