ポメガバって異世界転移したら、冷酷王子に飼われて溺愛されました

夏芽玉

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74.王妃教育

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 あれから一週間が経った。
 ミア姫はヴァランシ国に送り帰され、二度とラグマット王国に足を踏み入れないという誓約書にサインをしたそうだ。それどころか、王室に戻ることは許されず、これからの人生は修道院で過ごすことになったらしい。彼女の勝手な振る舞いが、王家の品位を貶めるものだと判断されたようだ。
 ヴァランシ国はこの国と事を構える気は全くないようで、サージュン山の開発権もラグマット王国のものとなった。

 ジェレール王子は廃嫡された上で、王城内の塔に幽閉された。
 そのおかげで、グエンが格段に忙しくなった。今までジェレール王子がしていた仕事もすることになったのだから。

 オレは講師が決まるまでの間、ドニに文字を教えてもらった。話し言葉は自動翻訳されてしまうので、聞こえる音と目の前の文字が違う音になるのが厄介だ。一つずつ覚えていくしかないだろう。オレがこの国の言葉を覚えるまでの道のりは、気が遠くなるほど長そうだ。

 その他には、式典用の服を作るということで、採寸をされた。
 そんな服を作るということは、近々何か大きな行事に出席することになるのだろう。
 オレを取り巻く環境が目まぐるしく変わっていく。


 そして……
 ついに今日からオレの本格的な王妃教育が始まる。
 地理、歴史、法律から礼儀作法まで、覚えることはたくさんあるらしい。

 指定された部屋で、講師が来るのをオレは待った。
 だけどいつまで経っても誰も来ない。

 変だな?部屋を間違えたんだろうか?

 でも、ここまでオレを連れてきてくれたのはドニだ。間違えるなんてことはないと思うんだけど……

 誰かに聞きに行ったほうがいいのかな?

 そんなことを考えていると、ようやく部屋のドアが開いた。
 オレは挨拶をしようと立ち上がり、扉から入ってきた人物を見て固まった。

 従者を引き連れて部屋に入って来たのは、王妃だった。

 え、マジで……!?

 グエンから、講師を「王妃に頼んだ」という話は聞いていない。いや、でも、王妃教育なのだから、現王妃からレクチャーを受けるのは理に適っている……のか?

「挨拶すらろくにできないなんて」

 意外な人物の登場にオレが固まっていたら、王妃が吐き捨てるように言った。

 ひぃぃぃ、めちゃくちゃ怖いんですけれど……!?

 当然だけど、王妃の態度は友好的なものとは言い難い。

 なんでグエンはこの人に講師役を頼んじゃったんだよ!? というか、グエンがこの人に頼みごとをするというのが意外だ。もしかして、グエンが国王お父さんに頼んで、国王から王妃に依頼が行ったとか……? うーん、それなら有り得るかもしれないけれど……

 ジェレール王子が幽閉されてから、王妃も関わる政務を減らしているらしい。というか、王妃にも嫌疑の目が向けられて、事情を聞かれたりしているのでそれどころではない、といったほうが正しいのかもしれない。王妃もグルになってグエンを害そうとしていたのではないかと疑われているんだ。
 だけど証拠が何も出てこないので、今のところ王妃の扱いは表面上は今までと変わっていない。

 こんな状況になったのは、あの事件があったからで……だから、オレは滅茶苦茶恨まれてるんじゃないかと思うんだけど。王妃がオレの講師をしてくれるというのは、何か断れない事情でもあったのだろうか。まさか仕事が減って暇だったから……なんてことはないよな!?
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