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67.緊急会議
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「ヴァランシ国は我々を馬鹿にしているのか!!」
「ジェレール王子とミア姫との婚姻で同盟を結ぶなどと言っていたが、ラグマット王国を乗っ取る気だったんだ!!」
「だからあんな国との同盟なんてするべきではなかった」
「王太子であるグエナエル様だけでなく、その婚約者のビジュ様、さらには第一王子のジェレール様に毒を盛るなんて……これは宣戦布告されたも同じこと。今すぐ戦争の準備を!!」
大広間には国の為政者たちが揃っていたので、ミア姫が近衛兵たちに連れていかれた後、急遽会議が開かれることになった。この後、ジェレール王子についての話し合いもあるため、母親である王妃もこの場から追い出された。
ラグマット王国とその隣に位置するヴァランシ国は元々仲が悪く、今まで何度も小さな小競り合いを繰り返していたらしい。
だけど、最近、南側にある帝国がきな臭い動きをしている。それで、ラグマット王国とヴァランシ国が同盟を結ぶことになった。そのためにミア姫が嫁いできたのだけど……
先程、ミア姫がグエナエルを誘惑して王太子妃になろうとしていたことを認めたため、大臣たちはそれをヴァランシ国の侵略だと受け取ったようだ。
大変なことになってしまった……
今までのお互いの国の事情もあるだろう。だけど、解決手段として国民を巻き込んで戦争をするっていうのは絶対にダメだと思う。
「ビジュ殿はどう思う?」
「え……えーっと、戦争はよくないかと……」
突然、国王に問い掛けられて、オレはしどろもどろに答えた。
何かもっといい方法があるはずなんだけど、急に言われてもどうするのが最善なのか全く思いつかない。
「それでは、こちらの国で断罪すべきということか?」
国王がそう言うと、大臣たちが口々に断罪方法を口にする。そのどれもがミア姫の命を奪うような内容ばかりだ。
下手に罪を軽くして、またグエンを誘惑しようなんてことがあっても嫌だけど、だからといって今回のことを死んで償うべきだとはどうしても思えない。
ミア姫がこの国から出ていってくれれば、それで丸く収まる気がするんだけど……
「み……ミア姫をヴァランシ国に送り返すのはどうでしょうか?」
「なんだと!? 罪人を帰国させるというのか!?」
「野放しにするなんてあり得ない」
大臣たちに一斉に反対意見を言われて、オレは怯みかけた。
「ビジュはどういうつもりでミア姫を帰らせると?」
「そ……それは……」
ミア姫が死んでしまうのは後味が悪いけれど、グエンに付きまとわれるのは嫌だからってだけなんだけど……
「そ、そうだ! 今回のことは、ミア姫の命で償うんじゃなくて、ヴァランシ国に償ってもらえばいいんだ!!」
「ヴァランシ国に?」
「そう! 本来、この国で裁くとミア姫は極刑になってしまうけれど、両国の今後の友好のためにそうはせず、祖国に帰らせることで恩を売る。そして、今回のことに関しては損害賠償を請求するのがいいと思う」
「つまり、賠償金か?」
「お金でもいいけど……土地でも、資源の優先権とかでも、貿易の税率とか……とにかく、ミア姫を引き渡す代わりに、相手が差し出せるものを。あんまり吹っ掛けすぎると、ミア姫のことを諦められてしまうかもしれないから、それなりに等しい価値のもので……」
咄嗟の思いつきだったけれど、今度は反対意見は出なかった。
「ふむ……グエナエルはどう思う?」
「最善の策かと。この方法なら、両国の争いを誘発することがないだけでなく、確実にこちらに益が出ます」
グエンにも認めて貰えたようで、オレは内心ホッと息を吐く。
「そうか。それでは、おまえだったら賠償として何を求める?」
「そうですね……私でしたら、サージュン山の開発権を」
「あの国境の山か?」
「炭酸の湧き水しか出ないぞ」
こちらの価値観についてはオレにはよくわからないので、そういったことはグエンの意見を聞くのがいいだろう。そう思ったんだけど、大臣たちはどうやら不服なようだ。
「実際狙われていたのはおまえたちだ。おまえたちが望むものを手に入れればいいと思うが……本当にそれでいいのか?」
「はい。私にはとても価値があるものなので」
「それでは、そのように交渉させよう。それから、ジェレールのことだが……王族への反逆は極刑と決まっている。ただし、反逆者が同じく王族の場合は幽閉となる。このことについて、異論がある者は?」
国王の言葉に異を唱える者はいなかった。
こうして、ミア姫はヴァランシ国に帰され、ジェレール王子は塔に幽閉されることが決まった。
「ジェレール王子とミア姫との婚姻で同盟を結ぶなどと言っていたが、ラグマット王国を乗っ取る気だったんだ!!」
「だからあんな国との同盟なんてするべきではなかった」
「王太子であるグエナエル様だけでなく、その婚約者のビジュ様、さらには第一王子のジェレール様に毒を盛るなんて……これは宣戦布告されたも同じこと。今すぐ戦争の準備を!!」
大広間には国の為政者たちが揃っていたので、ミア姫が近衛兵たちに連れていかれた後、急遽会議が開かれることになった。この後、ジェレール王子についての話し合いもあるため、母親である王妃もこの場から追い出された。
ラグマット王国とその隣に位置するヴァランシ国は元々仲が悪く、今まで何度も小さな小競り合いを繰り返していたらしい。
だけど、最近、南側にある帝国がきな臭い動きをしている。それで、ラグマット王国とヴァランシ国が同盟を結ぶことになった。そのためにミア姫が嫁いできたのだけど……
先程、ミア姫がグエナエルを誘惑して王太子妃になろうとしていたことを認めたため、大臣たちはそれをヴァランシ国の侵略だと受け取ったようだ。
大変なことになってしまった……
今までのお互いの国の事情もあるだろう。だけど、解決手段として国民を巻き込んで戦争をするっていうのは絶対にダメだと思う。
「ビジュ殿はどう思う?」
「え……えーっと、戦争はよくないかと……」
突然、国王に問い掛けられて、オレはしどろもどろに答えた。
何かもっといい方法があるはずなんだけど、急に言われてもどうするのが最善なのか全く思いつかない。
「それでは、こちらの国で断罪すべきということか?」
国王がそう言うと、大臣たちが口々に断罪方法を口にする。そのどれもがミア姫の命を奪うような内容ばかりだ。
下手に罪を軽くして、またグエンを誘惑しようなんてことがあっても嫌だけど、だからといって今回のことを死んで償うべきだとはどうしても思えない。
ミア姫がこの国から出ていってくれれば、それで丸く収まる気がするんだけど……
「み……ミア姫をヴァランシ国に送り返すのはどうでしょうか?」
「なんだと!? 罪人を帰国させるというのか!?」
「野放しにするなんてあり得ない」
大臣たちに一斉に反対意見を言われて、オレは怯みかけた。
「ビジュはどういうつもりでミア姫を帰らせると?」
「そ……それは……」
ミア姫が死んでしまうのは後味が悪いけれど、グエンに付きまとわれるのは嫌だからってだけなんだけど……
「そ、そうだ! 今回のことは、ミア姫の命で償うんじゃなくて、ヴァランシ国に償ってもらえばいいんだ!!」
「ヴァランシ国に?」
「そう! 本来、この国で裁くとミア姫は極刑になってしまうけれど、両国の今後の友好のためにそうはせず、祖国に帰らせることで恩を売る。そして、今回のことに関しては損害賠償を請求するのがいいと思う」
「つまり、賠償金か?」
「お金でもいいけど……土地でも、資源の優先権とかでも、貿易の税率とか……とにかく、ミア姫を引き渡す代わりに、相手が差し出せるものを。あんまり吹っ掛けすぎると、ミア姫のことを諦められてしまうかもしれないから、それなりに等しい価値のもので……」
咄嗟の思いつきだったけれど、今度は反対意見は出なかった。
「ふむ……グエナエルはどう思う?」
「最善の策かと。この方法なら、両国の争いを誘発することがないだけでなく、確実にこちらに益が出ます」
グエンにも認めて貰えたようで、オレは内心ホッと息を吐く。
「そうか。それでは、おまえだったら賠償として何を求める?」
「そうですね……私でしたら、サージュン山の開発権を」
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「それでは、そのように交渉させよう。それから、ジェレールのことだが……王族への反逆は極刑と決まっている。ただし、反逆者が同じく王族の場合は幽閉となる。このことについて、異論がある者は?」
国王の言葉に異を唱える者はいなかった。
こうして、ミア姫はヴァランシ国に帰され、ジェレール王子は塔に幽閉されることが決まった。
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