ポメガバって異世界転移したら、冷酷王子に飼われて溺愛されました

夏芽玉

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65.糾弾

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 大広間には、宰相や大臣などこの国の偉い人が集まっていた。
 それだけでなく、中央の一段高い場所に設けられた席に、国王と王妃、グエンのお母さんも居る。

 えっ、ええっ……
 この国の偉い人全員が集まってる気がするんですけど……!?

 先程のジェレール王子の言い方では、ここまで大がかりな場であるようには聞こえなかった。まるで今から裁判でも行われそうな様子に、オレは顔を引き攣らせた。

「先日の婚約披露パーティーでの事件について、ジェレールから重大なお話しがあるそうです」

 オレたちが大広間に到着すると、王妃が口を開いた。

 ジェレール王子は、オレを陥れるために用意した場に自分が引っ張り出されることになるなんて想定外だっただろう。しかし、このような場を設けてしまった限り「やっぱり勘違いでした」なんて言って逃げ出すことはできなかったようだ。
 宰相に迎えに来られてここまで来たものの、口を固く結んだまま、オレたちを睨みつけている。

「何か事実を掴んだのでしょう?」

 王妃に促されても、ジェレール王子は黙ったままだ。



 ここに来るまでの間、オレはグエンに毒のことについて聞いていた。

 レナガントという薬草は、少量なら身体の血の巡りを良くする効果があるが、飲み過ぎると興奮状態になって正常な判断力を鈍らせてしまうらしい。また、副作用で視覚に異常が出ることがあるようだ。その成分は、葉より花の方に何倍もの効果がある。

 だから、ハーブティーを飲んだジェレール王子は、ティーカップの中身の色が変わったことにすぐに気づかず、失言を繰り返してしまったのだろう。

 そして、更に飲み過ぎると中毒症状を起こして死に至るわけなんだけど……今回はオレの判断力を鈍らせて、皆の前で無実の罪を認めさせようとしていたようだから、そこまでのものは用意されていないだろうとグエンは言っていた。

 ちなみにミア姫の言っていた『惚れ薬』というのは、同じくグエンの判断力を鈍らせて、どこかに連れ込んで色仕掛けでもするつもりだったのではないかということだ。
 そういえば、以前、ミア姫は『既成事実を作ってしまえばいい』なんて言っていたな……


「先程、兄上は気になる話をされていましたね。地下室で……」

 いつまで経ってもジェレール王子が黙ったままなので、大臣たちの間でひそひそ声が聞こえ始めた時、グエンが声を発した。

「そっ、そうだ!! ビジュ殿が怪しい男と会っていて……」
「違う!! 地下室で怪しい男から毒を受け取っていたのは、ジェレール王子のほうじゃないか!!」
「それは、その……」

 こんなところで、無実の罪を着せられるわけにはいかない。さっきは不意打ちで言われてしどろもどろになってしまったけれど、今度はちゃんと言い返せた。
 一方、ジェレール王子のほうは言葉が上手く出てこないようで、まごついている。

「ビジュ、そのことについて詳しく話してもらえるかな?」

 グエンに促されて、オレは頷いた。

「婚約披露パーティーの10日程前、ジェレール王子が地下室で怪しい男と会っているのを見ました。その男はジェレール王子に茶色の小瓶を渡したとき、『解毒薬は存在しない』って言っていたから中身は……」
「それは……!! 前に渡された毒がグエナエルに効かなかったから、もっと強力なものを渡すようにと……!!」

 ジェレール王子が割り込んできたが、自分の発した言葉が不味かったことに気づいたようで、慌てて口を塞いだ。

「そう。以前も、その男から手に入れた毒薬をグエンに盛ったと言っていました。その時、グエンは一日寝込んだって」
「ち……違う!! 毒をあの男から受け取ってグエナエルの食事に混ぜていたのは、全部ビジュ殿の仕業で……」

 ジェレール王子はどうしても犯人をオレに仕立て上げたいみたいだけど、言っていることが滅茶苦茶で、説得力が全くない。

「前の薬は効かなかったみたいだけど、今回のは新しいものだからグエンにも効くだろうって。それを聞いたジェレール王子は、パーティーでグエンに出すデザートに混ぜるって言っていました」

 オレの言葉を聞いて、大広間に集まった人たちの間でざわめきが広がっていく。

「相手の特徴は覚えているか?」
「フードを被っていたので顔は見ていませんが、小柄で不思議な声をした……多分、男性だと思います」

 国王に問い掛けられて、オレはそう答えた。

 そう言えば、パーティーでオレたちにデザートを持って来たのも、先程、ミア姫と一緒にハーブティーを運んできたのも同じような背恰好の人物だった気がする。
 ということは、もしかしてジェレール王子に毒を渡していたのと同一人物だったのではないだろうか?

 もっと早くに気付いていたら、先程捕まえることができたかもしれないのに……
 自分の迂闊さに唇を噛みしめるが、今更気付いてもすでに手遅れだ。

「……今の話しが本当だという証拠はあるか?」
「ジェレール王子が毒が入った容器をまだ持っていれば……茶色くて手の平に収まるくらいの小瓶です。中には液体が入っていました」
「そうか……では、ジェレールの部屋を探せ」

 国王が近衛兵に声を掛けたのを受けて、数人が大広間から出て行った。
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