60 / 91
60.お茶会
しおりを挟む
「グエナエル様!! 今日もお会いできるなんて……奇遇ですわね」
王城に戻ると、入口でミア姫が声をかけてきた。
「ところで、ビジュ様の様子はいかがですの?」
心配そうな表情を取り繕っているが、目は爛々としている。その様子から、グエンの婚約者になることは諦めていないということがわかる。オレが毒で倒れたことは不本意な婚約パーティーがぶち壊しになっただけではなく、邪魔者まで居なくなって、ミア姫にはいいこと尽くしだったのだろう。
相変わらずと言うか、なんと言うか……
グエンの隣に立っているオレの姿は視界に入っているはずなのだが、従者か何かだと思っているのか、ミア姫はオレがビジュだとは気付いていないようだ。
「ご心配なく。この通り、すっかり良くなりましたよ」
グイっと腰を引かれて、グエンとの距離がゼロになる。
まるで見せつけるかのような行動に、オレはギョッとした。
「あら……この方はどなたですの?」
眉をひそめたミア姫が、ジロジロと値踏みするような目でオレを見る。
「ビジュだ」
「まぁ……グエナエル様の婚約者様と同じお名前なのですのね」
今日もオレはグエンから貰った赤いピアスをつけているが、ミア姫の視線は素通りした。王太子妃のピアスをつけるのは、どうやらここラグマット王国だけの習慣のようだ。
「いや、本人だ」
「……えぇと、パーティではお騒がせしてしまってすみません」
「貴方、本当に……?」
ここまで言って、オレがビジュ本人であることをようやく理解したらしい。ぎょっと目を見開いてオレを見る。
オレはパーティーの最中に人の姿に戻ったらしいので、姿は見られてると思うんだけど……いや、人の姿に戻った時は全裸だったんだ。それなら覚えてなくていい!! お願い、あの時のことは忘れて!!
「た、大変失礼いたしましたわ……ああ、そうだ!! それでは、ビジュ様が回復されたお祝いをしなければなりませんね。そうそう、美味しいお茶とお菓子がありますの。先ほど、母国から来た使者が届けてくれたものなんですけれど、ティーサロンでご一緒にいかがです?」
「いや、私は……」
「グエナエルじゃないか! 婚約者殿も元気そうじゃないか! 倒れた時は驚いたが、大したことがなくて良かったな!!」
グエンがやんわりと断ろうとしたとき、ジェレール王子が割り込んできた。
いやいやいやいや。大したことあったから。死にかけてたから、オレ。
ジェレール王子の毒のせいで酷い目にあったことを思い出して、思わず逃げ出しそうになる。そんなオレをグエンがぎゅっと抱きしめた。
「ジェレール様!! ビジュ様が回復されたお祝いをするため、お茶会にお誘いしていたところですの。ご一緒にいかがです?」
「そうか。それはちょうどいい。おまえたちに話したいことがあるからな」
ニヤニヤとした笑みを浮かべるジェレール王子を見て、なんだか嫌な予感がする。絶対ロクでもないことを企んでるに違いない。
「グエナエル様、ビジュ様!」
声を掛けられてそちらを見ると、ドニが居た。
どうやらオレたちを迎えに来てくれたようだ。
「お部屋にお茶をご用意いたしますので、どうぞこちらへ……」
やった、この場から抜け出せる!! そう思ったんだけど……
「今からオレたちと一緒に茶会をするから、それはキャンセルだ」
ジェレール王子が言い切って、今からこのメンバーでお茶会をするのは決定事項になってしまった。
王城に戻ると、入口でミア姫が声をかけてきた。
「ところで、ビジュ様の様子はいかがですの?」
心配そうな表情を取り繕っているが、目は爛々としている。その様子から、グエンの婚約者になることは諦めていないということがわかる。オレが毒で倒れたことは不本意な婚約パーティーがぶち壊しになっただけではなく、邪魔者まで居なくなって、ミア姫にはいいこと尽くしだったのだろう。
相変わらずと言うか、なんと言うか……
グエンの隣に立っているオレの姿は視界に入っているはずなのだが、従者か何かだと思っているのか、ミア姫はオレがビジュだとは気付いていないようだ。
「ご心配なく。この通り、すっかり良くなりましたよ」
グイっと腰を引かれて、グエンとの距離がゼロになる。
まるで見せつけるかのような行動に、オレはギョッとした。
「あら……この方はどなたですの?」
眉をひそめたミア姫が、ジロジロと値踏みするような目でオレを見る。
「ビジュだ」
「まぁ……グエナエル様の婚約者様と同じお名前なのですのね」
今日もオレはグエンから貰った赤いピアスをつけているが、ミア姫の視線は素通りした。王太子妃のピアスをつけるのは、どうやらここラグマット王国だけの習慣のようだ。
「いや、本人だ」
「……えぇと、パーティではお騒がせしてしまってすみません」
「貴方、本当に……?」
ここまで言って、オレがビジュ本人であることをようやく理解したらしい。ぎょっと目を見開いてオレを見る。
オレはパーティーの最中に人の姿に戻ったらしいので、姿は見られてると思うんだけど……いや、人の姿に戻った時は全裸だったんだ。それなら覚えてなくていい!! お願い、あの時のことは忘れて!!
「た、大変失礼いたしましたわ……ああ、そうだ!! それでは、ビジュ様が回復されたお祝いをしなければなりませんね。そうそう、美味しいお茶とお菓子がありますの。先ほど、母国から来た使者が届けてくれたものなんですけれど、ティーサロンでご一緒にいかがです?」
「いや、私は……」
「グエナエルじゃないか! 婚約者殿も元気そうじゃないか! 倒れた時は驚いたが、大したことがなくて良かったな!!」
グエンがやんわりと断ろうとしたとき、ジェレール王子が割り込んできた。
いやいやいやいや。大したことあったから。死にかけてたから、オレ。
ジェレール王子の毒のせいで酷い目にあったことを思い出して、思わず逃げ出しそうになる。そんなオレをグエンがぎゅっと抱きしめた。
「ジェレール様!! ビジュ様が回復されたお祝いをするため、お茶会にお誘いしていたところですの。ご一緒にいかがです?」
「そうか。それはちょうどいい。おまえたちに話したいことがあるからな」
ニヤニヤとした笑みを浮かべるジェレール王子を見て、なんだか嫌な予感がする。絶対ロクでもないことを企んでるに違いない。
「グエナエル様、ビジュ様!」
声を掛けられてそちらを見ると、ドニが居た。
どうやらオレたちを迎えに来てくれたようだ。
「お部屋にお茶をご用意いたしますので、どうぞこちらへ……」
やった、この場から抜け出せる!! そう思ったんだけど……
「今からオレたちと一緒に茶会をするから、それはキャンセルだ」
ジェレール王子が言い切って、今からこのメンバーでお茶会をするのは決定事項になってしまった。
34
お気に入りに追加
305
あなたにおすすめの小説

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人リトと、攻略対象の凛々しい少年ジゼの、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です(笑)
本編完結しました!
『伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします』のノィユとヴィル
『悪役令息の従者に転職しました』の透夜とロロァとよい子の隠密団の皆が遊びに来る、舞踏会編はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
舞踏会編からお読みいただけるよう、本編のあらすじをご用意しました!
おまけのお話の下、舞踏会編のうえに、登場人物一覧と一緒にあります。
ジゼの父ゲォルグ×家令長セバのお話を連載中です。もしよかったらどうぞです!
第12回BL大賞10位で奨励賞をいただきました。選んでくださった編集部の方、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです。
心から、ありがとうございます!
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる