ポメガバって異世界転移したら、冷酷王子に飼われて溺愛されました

夏芽玉

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59.お墓

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 ジョゼフのお墓は、王城内にあった。
 どこか墓地のようなところまで行くのかと思っていたので、あまりの近さに拍子抜けしたけど……まぁ、これだけ広いんだ。敷地内にあっても不思議じゃないよな。

 城を挟んで、オレがこの世界に来た時に居た庭園とは反対側にも小ぢんまりとした庭がある。その庭の片隅に、いくつも石碑が並んでいた。

「ここは王家代々の墓地だ」

 手入れされた植木と足元に咲く小さな花だけが見守る、静かな場所だった。

「彼の……ジョゼフの墓は、これだな」

 それぞれの墓標には文字以外にも何かモチーフのようなものが彫られている。
 剣だったり、馬だったり、鳥だったり……きっと当人に一番縁のあるものをモチーフにしているのだろう。そして、ジョゼフの墓標に刻まれているものは……立派なたてがみを生やした大きな牙の生えた獣だ。

 ええっ!? これじゃあポメラニアンじゃなくて、むしろライオンじゃ!?

 ジョゼフは人間の姿のときは、大きくて逞しい身体つきをしていたという。それで、ポメラニアンの姿を見たことがない人がこんな絵にしてしまったんだろうか?

 それにしても……実際のポメラニアンとは、随分違った印象だ。もし、ポメラニアンがこんな姿をしているとグエンが思っていたんだとしたら、最初にオレに出会ったとき、随分面食らったことだろう。
 その時のグエンの衝撃を想像して、オレはフフッと笑った。

「どうしたんだ?」
「いや……初めて出会ったとき、グエンは驚いただろうな、と思って」
「……そうだな。ポメラニアンというのは、想像していたより随分小柄で愛らしい生き物だったのだな」

 オレが考えていたことがわかったのか、グエンはバツの悪そうな表情で言った。
 いや、だけどこの絵はいくらなんでも盛りすぎだと思うよ!?

 こっちの世界での作法がわからないので、お墓に向かって手を合わせてみる。

 日記を読んだ限りだと、ジョゼフはこっちの世界で幸せに暮らしたようだ。

「……ジョゼフは帰る方法を探したりはしなかったのかな」

 少なくとも、日記のほうには「帰りたい」といった内容は書かれていなかった。彼には、元の世界より、こっちの世界の方が合っていたのだろう。
 でも……読めなかったほうの文献には、元の世界に帰ることについて何か書いてあっただろうか? でも……ジョゼフは帰っていないのだから何も書かれていないかもしれない。最初から帰る方法を探していないなんていうこともありそうだ。

「……少し、調べてみようか?」
「うん、お願い」

 思考の海に沈んでいたオレは、このときグエンがどんな表情をしていたのか、気付いていなかったんだ。
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