ポメガバって異世界転移したら、冷酷王子に飼われて溺愛されました

夏芽玉

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57.ジョゼフ

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「禁書庫で収穫はあったか?」
「え、あぁ。うん、まぁ……」

 グエンの部屋のソファに二人並んで座り、問い掛けられると、オレは曖昧に頷いた。
 禁書庫に行こうと思ったのは、スマホが起動できたので翻訳アプリが使えるかなと思ったからだ。
 礼央から電話がかかって来たのは予想外だったけれど、話ができたのは良かったと思う。でも、グエンが聞きたいのはきっとそのことではないだろう。

 ジョゼフが書いた日記の方は読めた。だけど、内容がアレじゃあ……いや、大したことが書かれていなかったということがわかったというのが、ある意味収穫と言えるのかもしれないけれど。
 もう一つの方は異世界語だったから翻訳できなかったし……

「異世界からやってきた人の日記が読めたよ」
「そうか」

 もっと食いついてくるかと思ったけれど、グエンのあっさりとした反応にオレは首を傾げた。

「えーっと、なんか、こっちの世界に来て王子様とラブラブになって幸せに暮らしたみたいなことが書いてあったけれど……」
「……そうか」

 ずっと熱心に文献を読んでいたから、読めなかったほうの日記の内容も気になるんじゃないかなと思ったんだけど、やっぱり反応が悪い気がする。

「……あ! もしかして、グエンの読んでたほうの文献にも同じようなことが書いてあった!?」
「そうだな。あの文献は、王子が記したものだからな」

 そうだったんだ。
 オレが読んだのはたたの日記だったけれど、グエンの読んでいた本にはポメガバースについても書いてあったもんな。王子が書いた本の方が分厚かったし、詳しいことが色々と書いてあったのだろう。早くこっちの言葉を覚えて自分で読んでみたいけれど……

「ねぇ、グエンが読んでいたほうの文献には、ジョゼフ……オレの前にポメラニアンになってこっちに来た人については、何て書いてあった?」
「ショータが読んだ本には書いていなかったのか?」
「うーん……、あれはジョゼフが書いた日記だったから。王子については色々書いてあったけれど、ジョゼフ自身のことはあんまり書いてなかったんだ」

 グエンはオレのことを好きだと言ってくれる。オレもグエンのことが好きだから、その言葉を素直に受け取ればいい。そう思うんだけど、やはり、ふとした瞬間、グエンが恋したのはオレじゃなくて、この文献に書かれている人物じゃないかって、心のどこかで疑ってしまうんだ。
 だから、ジョゼフについてもっと知りたいと思ったんだけど……

「そうだな……最初にこちらの世界に来た時は、真っ白な毛並みの神々しい姿で……」
「まさかの白ポメ!!」

 え、まず色からして違うくない? オレがポメラニアンの姿をしているときの毛の色は、茶色なんだけど。

「人の姿をしているときは、ブロンドの髪と青い目をしていて、かなりの大柄で毛むくじゃらの男だったと書かれていたな」
「うそぉっ!?」

 ポメ化したときの姿だけでなく、人の時の姿形も随分違う。
 まぁ、人種が違うのでそれは当然なのかもしれないんだけど……

「な、なんかオレとは随分違うタイプの人のような気がするんだけど……」
「そうだな」

 オレはいたって普通の日本人だ。特に鍛えるようなこともしていない。これといった特徴もないので、オレのことを表現するとしたら「中肉中背で平凡な顔立ちをした、黒目黒髪のサラリーマン」となるんじゃないだろうか。
 あと、彼の日記を読んだときから薄々感じてたんだけど、ジョゼフって多分、突っ込まれる方じゃなくて、突っ込むほう……つまり攻めだよな!?

「え。それでなんでオレのことを好きになるわけ?」
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