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48.ルグミアン
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「……ビジュは毒入りのデザートを食べたことは覚えているか?」
しばらくして、落ち着きを取り戻したグエンが口を開いた。
その言葉に、あの酷いデザートのことを思い出して顔を顰める。
「毒入りっていうか、まさに毒そのものだったけれど……」
「ビジュがデザートにいきなり齧りつくから驚いた。そんなにあれが食べたかったなら……」
「違うって!! 地下室でジェレール王子がグエンに毒を盛る計画を話しているのを聞いたから、オレは……」
「ビジュはあれは毒だって知っていて食べたのかっ!?」
オレの言葉にグエンが信じられないといった表情をした。
「だって、グエンが食べるよりはマシだと思って……それに食べるフリをして吐き出せばいいと思ってたし!!」
結局吐き出せずに飲みこんじゃったみたいだけど……
でも、あの時はまさかあんなことになるとは思ってなかったんだ!!
オレが心の中で色々言い訳をしていたら、グエンがとんでもないことを言った。
「……私が毒で死ぬことはない」
「……はい?」
グエンの言葉を脳内で反芻したけれど、頭が理解することを拒否したようで上手く意味が飲み込めない。
「私の体内では、全ての毒は無効化されるんだ」
オレはその言葉をポカンとした顔で聞くのが精いっぱいだった。
グエンに毒は効かない。ということは、オレが身体を張ってグエンのデザートを食べたのは無意味だった……いやいや、そんなことはない。きっと、そんなことはないはず!!
グエンの言葉の意味がだんだん理解できてくると、色んな感情が湧き上がってくる。
生きてて良かった、オレ!! なんで生きてるのかわかんないけど!
「え、ええっと……でも、なんで……?」
「ラグマットの王家の者はルグミアンの血を引く」
「ルグミアン……って、空に浮かんでいる魔法大陸!?」
この世界で生活していれば、毎日視界に入る空を飛ぶ大陸。ただし、交流はほとんどないと聞いていたから、まさかこんな身近で出会えるとは思いもしなかった。
「そうだ。あの大陸の者は体内に魔力を有し、魔法を行使することができる」
「……てことは、実はグエンは空を飛んだり火の矢を放ったりできるってこと!?」
魔法と聞いて、オレのテンションが上がる。だけど、オレの問い掛けに、グエンは首を横に振った。
「ルグミアンに住む者は複数の魔法を使うことができるそうだが、今の王家の者は魔法とも呼べないくらいの能力をたった一つ使うことができるだけだ」
「一つだけ……じゃあ、グエンの力は……」
「治癒だ。私の場合は先祖返りの傾向がかなり強いらしいので、どんな病気も怪我も必ず治るし、毒も効かない。大怪我や猛毒の場合は少し時間が掛かってしまうが……」
「おお……!!」
それって、結構すごい能力なんじゃ……!?
と思ったけれど、この前ジェレール王子の毒入りのビスケットを食べた後、グエンは丸一日寝込んでいたことを思い出した。つまり、あれに仕込まれていたのかかなりの猛毒だったってこと!? しかも、以前ドニは「グエンは原因不明の体調不良で寝込むことがよくある」って言っていた。でも、グエンは病気にならないから、よくある体調不良というのは全部毒……いや、しかも普通の毒じゃなくて、猛毒を仕込まれてたってこと!?
グエンが昔から頻繁に危険に晒されていたことを知り、身体がフルっと震えた。
治癒の力があって、本当に良かった。
「……怪我も病気もしないなら、グエンってもしかして不老不死だったり?」
「そんなことはない。歳は取るし、寿命が来たら死ぬ。初代も長生きはしたけれど、流石にもう生きてはいない。そして、私の力が宿るのは……体液なんだ」
体液……なるほど、つまり……
「だから、さっきの……その、キスをされたら身体を起こせるようになったんだ? 他の人も治すことができるなんて、すごいな!」
キスと言ってみたけれど、実際はもっと濃厚な何かだった。思い出したら、チンコがまた勃ち上がってしまいそうだ。
「いや。この力は基本的には他人に使うことはできない」
「ええ!? じゃあ、なんでオレは……」
「ビジュは私の番だからだ」
「番……?」
婚約者ではなく、番? 聞きなれない言葉にオレは首を傾げた。
「生涯の伴侶のことだ。ルグミアンの者は、生涯、たった一人のことだけを愛し続ける。我々、王家の者もその特性を引き継いだ」
「ええっと、それはつまり……?」
「私がビジュのことを、心から愛してる……ということだ」
真っすぐな言葉で伝えられて、顔に熱が集まる。
それがたとえグエンの思い込みや勘違いだったとしても、好きな相手にそう言ってもらえるのはやっぱり嬉しかった。
「あれ? でも、そう言えば。王家の人は、みんなグエンと同じような力を持っているんだよな? 他の人たちにはどんな能力があるの!?」
「そうだな……父上には治癒の力はない。かわりに、老いるのが遅いという能力がある」
「ほ、ほう……」
国王の姿を思い出して納得する。見た目がすごく若いとは思ったけれど、そんな能力の恩恵だったとは。
「祖父には力がほとんどなくて、流行り病で早くに亡くなってしまった」
そうなのか。さっき、グエンは先祖返りの傾向が強いと言っていたけれど、グエンほどの能力を持つ人は他には居ないようだ。
でも、それじゃあ……
「……ジェレール王子は? あの人にはいったいどんな能力があるんだ!?」
しばらくして、落ち着きを取り戻したグエンが口を開いた。
その言葉に、あの酷いデザートのことを思い出して顔を顰める。
「毒入りっていうか、まさに毒そのものだったけれど……」
「ビジュがデザートにいきなり齧りつくから驚いた。そんなにあれが食べたかったなら……」
「違うって!! 地下室でジェレール王子がグエンに毒を盛る計画を話しているのを聞いたから、オレは……」
「ビジュはあれは毒だって知っていて食べたのかっ!?」
オレの言葉にグエンが信じられないといった表情をした。
「だって、グエンが食べるよりはマシだと思って……それに食べるフリをして吐き出せばいいと思ってたし!!」
結局吐き出せずに飲みこんじゃったみたいだけど……
でも、あの時はまさかあんなことになるとは思ってなかったんだ!!
オレが心の中で色々言い訳をしていたら、グエンがとんでもないことを言った。
「……私が毒で死ぬことはない」
「……はい?」
グエンの言葉を脳内で反芻したけれど、頭が理解することを拒否したようで上手く意味が飲み込めない。
「私の体内では、全ての毒は無効化されるんだ」
オレはその言葉をポカンとした顔で聞くのが精いっぱいだった。
グエンに毒は効かない。ということは、オレが身体を張ってグエンのデザートを食べたのは無意味だった……いやいや、そんなことはない。きっと、そんなことはないはず!!
グエンの言葉の意味がだんだん理解できてくると、色んな感情が湧き上がってくる。
生きてて良かった、オレ!! なんで生きてるのかわかんないけど!
「え、ええっと……でも、なんで……?」
「ラグマットの王家の者はルグミアンの血を引く」
「ルグミアン……って、空に浮かんでいる魔法大陸!?」
この世界で生活していれば、毎日視界に入る空を飛ぶ大陸。ただし、交流はほとんどないと聞いていたから、まさかこんな身近で出会えるとは思いもしなかった。
「そうだ。あの大陸の者は体内に魔力を有し、魔法を行使することができる」
「……てことは、実はグエンは空を飛んだり火の矢を放ったりできるってこと!?」
魔法と聞いて、オレのテンションが上がる。だけど、オレの問い掛けに、グエンは首を横に振った。
「ルグミアンに住む者は複数の魔法を使うことができるそうだが、今の王家の者は魔法とも呼べないくらいの能力をたった一つ使うことができるだけだ」
「一つだけ……じゃあ、グエンの力は……」
「治癒だ。私の場合は先祖返りの傾向がかなり強いらしいので、どんな病気も怪我も必ず治るし、毒も効かない。大怪我や猛毒の場合は少し時間が掛かってしまうが……」
「おお……!!」
それって、結構すごい能力なんじゃ……!?
と思ったけれど、この前ジェレール王子の毒入りのビスケットを食べた後、グエンは丸一日寝込んでいたことを思い出した。つまり、あれに仕込まれていたのかかなりの猛毒だったってこと!? しかも、以前ドニは「グエンは原因不明の体調不良で寝込むことがよくある」って言っていた。でも、グエンは病気にならないから、よくある体調不良というのは全部毒……いや、しかも普通の毒じゃなくて、猛毒を仕込まれてたってこと!?
グエンが昔から頻繁に危険に晒されていたことを知り、身体がフルっと震えた。
治癒の力があって、本当に良かった。
「……怪我も病気もしないなら、グエンってもしかして不老不死だったり?」
「そんなことはない。歳は取るし、寿命が来たら死ぬ。初代も長生きはしたけれど、流石にもう生きてはいない。そして、私の力が宿るのは……体液なんだ」
体液……なるほど、つまり……
「だから、さっきの……その、キスをされたら身体を起こせるようになったんだ? 他の人も治すことができるなんて、すごいな!」
キスと言ってみたけれど、実際はもっと濃厚な何かだった。思い出したら、チンコがまた勃ち上がってしまいそうだ。
「いや。この力は基本的には他人に使うことはできない」
「ええ!? じゃあ、なんでオレは……」
「ビジュは私の番だからだ」
「番……?」
婚約者ではなく、番? 聞きなれない言葉にオレは首を傾げた。
「生涯の伴侶のことだ。ルグミアンの者は、生涯、たった一人のことだけを愛し続ける。我々、王家の者もその特性を引き継いだ」
「ええっと、それはつまり……?」
「私がビジュのことを、心から愛してる……ということだ」
真っすぐな言葉で伝えられて、顔に熱が集まる。
それがたとえグエンの思い込みや勘違いだったとしても、好きな相手にそう言ってもらえるのはやっぱり嬉しかった。
「あれ? でも、そう言えば。王家の人は、みんなグエンと同じような力を持っているんだよな? 他の人たちにはどんな能力があるの!?」
「そうだな……父上には治癒の力はない。かわりに、老いるのが遅いという能力がある」
「ほ、ほう……」
国王の姿を思い出して納得する。見た目がすごく若いとは思ったけれど、そんな能力の恩恵だったとは。
「祖父には力がほとんどなくて、流行り病で早くに亡くなってしまった」
そうなのか。さっき、グエンは先祖返りの傾向が強いと言っていたけれど、グエンほどの能力を持つ人は他には居ないようだ。
でも、それじゃあ……
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