ポメガバって異世界転移したら、冷酷王子に飼われて溺愛されました

夏芽玉

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25.婚約者

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 廊下を歩いていると正面から歩いてくる人影があった。その人物はオレたちの姿に気が付くと、ツカツカと歩み寄ってきた。

「おい、グエナエル。オレに仕事を押し付けて、おまえは遊んでいるのか?」

 挨拶をすることもなく突っかかってきたのは、ジェレール王子だった。

「おはようございます。大切な急用が出来てしまって。しかし、優秀な兄上でしたらすぐに片付くようなものばかりだったかと思いますが」

 グエナエル王子の言葉にジェレール王子は鼻を鳴らした。この様子からすると、グエナエル王子の仕事のしわ寄せは全部ジェレール王子に行ったようだ。
 ええぇ、グエナエル王子ってば、好きな人に仕事押し付けちゃって良かったの!?

「……ところで、そいつは誰だ?」

 オレはなんとなくグエナエル王子の後ろに隠れていたんだけど、あっさりとジェレール王子に見つかってしまった。不審そうに顔を顰めて問い掛けられる。
 ああ、そうだ。オレはもうポメラニアンじゃないんだった。当然、この姿でジェレール王子に会うのは初めてなわけだけど……
 グエナエル王子はオレのことをどう説明するつもりなのだろうか。気になって様子を伺っていたら、グエナエル王子が振り返ってオレを見た。

「ビジュ、紹介が遅くなってすまない。こちらは私の兄上で、この国の第一王子。ジェレール・ド・ラ・ラグマットだ」
「あ、どうも……」

 グエナエル王子に紹介を受けてペコリと頭を下げた。
 その台詞を聞いて、ジェレール王子はますます顔を顰める。
 え、何!? 怖いんだけど……!?

「ビジュ……だと?」

 ジェレール王子が信じられないといった表情でオレを上から下までじっくりと観察した。

「しかし……」
「こちらが彼の本来の姿です。私が贈ったピアスをしているでしょう?」

 グエナエル王子がオレの腰を引いて、右耳のピアスを見せつけた。ジェレール王子はオレの耳を凝視した後、チッと小さく舌打ちをした。

 あああ、やっぱりそうだよな!?
 この世界で昨日までポメラニアンだった相手がいきなり人間の姿になったら、そんな反応になるよな!?
 どう考えてもグエナエル王子がオレのこの姿に馴染むのが早すぎるんだよ……!! しかも、寝起きすぐに朝勃ちを抜いてくるし……、って!! あの時のことを思い出したら、身体がだんだん熱くなってきてしまった。まずいまずい!! オレは慌ててその記憶を振り払った。

「……今日、ヴァランシ国からミア姫がやってくる」

 ジェレール王子の声にオレは現実に引き戻される。
 えーっと……ここはラグマット王国なので、つまり別の国からお姫様がやってくるってことかな?

「……兄上の婚約者だ」

 イマイチ状況が良く分かっていないのがバレたのか、グエナエル王子が耳打ちしてくれた。

「くれぐれも粗相をすることがないように」

 そう言い残すと、ジェレール王子は足音を立ててオレたちの前から去っていった。

 はぁぁぁぁ……緊張した……

 ジェレール王子の姿が見えなくなって、オレは大きく息を吐いた。

「ビジュは兄上が苦手か?」
「は、ははは、まぁ……」

 すっごく苦手だ、と言いたいところだけど、オレは言葉を濁した。

「そう緊張することはない。そのピアスをつけている限り、ビジュの方が兄上より身分は上だからな」
「……は?」

 は、はいいいいぃ――――!?

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