25 / 91
25.婚約者
しおりを挟む
廊下を歩いていると正面から歩いてくる人影があった。その人物はオレたちの姿に気が付くと、ツカツカと歩み寄ってきた。
「おい、グエナエル。オレに仕事を押し付けて、おまえは遊んでいるのか?」
挨拶をすることもなく突っかかってきたのは、ジェレール王子だった。
「おはようございます。大切な急用が出来てしまって。しかし、優秀な兄上でしたらすぐに片付くようなものばかりだったかと思いますが」
グエナエル王子の言葉にジェレール王子は鼻を鳴らした。この様子からすると、グエナエル王子の仕事のしわ寄せは全部ジェレール王子に行ったようだ。
ええぇ、グエナエル王子ってば、好きな人に仕事押し付けちゃって良かったの!?
「……ところで、そいつは誰だ?」
オレはなんとなくグエナエル王子の後ろに隠れていたんだけど、あっさりとジェレール王子に見つかってしまった。不審そうに顔を顰めて問い掛けられる。
ああ、そうだ。オレはもうポメラニアンじゃないんだった。当然、この姿でジェレール王子に会うのは初めてなわけだけど……
グエナエル王子はオレのことをどう説明するつもりなのだろうか。気になって様子を伺っていたら、グエナエル王子が振り返ってオレを見た。
「ビジュ、紹介が遅くなってすまない。こちらは私の兄上で、この国の第一王子。ジェレール・ド・ラ・ラグマットだ」
「あ、どうも……」
グエナエル王子に紹介を受けてペコリと頭を下げた。
その台詞を聞いて、ジェレール王子はますます顔を顰める。
え、何!? 怖いんだけど……!?
「ビジュ……だと?」
ジェレール王子が信じられないといった表情でオレを上から下までじっくりと観察した。
「しかし……」
「こちらが彼の本来の姿です。私が贈ったピアスをしているでしょう?」
グエナエル王子がオレの腰を引いて、右耳のピアスを見せつけた。ジェレール王子はオレの耳を凝視した後、チッと小さく舌打ちをした。
あああ、やっぱりそうだよな!?
この世界で昨日までポメラニアンだった相手がいきなり人間の姿になったら、そんな反応になるよな!?
どう考えてもグエナエル王子がオレのこの姿に馴染むのが早すぎるんだよ……!! しかも、寝起きすぐに朝勃ちを抜いてくるし……、って!! あの時のことを思い出したら、身体がだんだん熱くなってきてしまった。まずいまずい!! オレは慌ててその記憶を振り払った。
「……今日、ヴァランシ国からミア姫がやってくる」
ジェレール王子の声にオレは現実に引き戻される。
えーっと……ここはラグマット王国なので、つまり別の国からお姫様がやってくるってことかな?
「……兄上の婚約者だ」
イマイチ状況が良く分かっていないのがバレたのか、グエナエル王子が耳打ちしてくれた。
「くれぐれも粗相をすることがないように」
そう言い残すと、ジェレール王子は足音を立ててオレたちの前から去っていった。
はぁぁぁぁ……緊張した……
ジェレール王子の姿が見えなくなって、オレは大きく息を吐いた。
「ビジュは兄上が苦手か?」
「は、ははは、まぁ……」
すっごく苦手だ、と言いたいところだけど、オレは言葉を濁した。
「そう緊張することはない。そのピアスをつけている限り、ビジュの方が兄上より身分は上だからな」
「……は?」
は、はいいいいぃ――――!?
「おい、グエナエル。オレに仕事を押し付けて、おまえは遊んでいるのか?」
挨拶をすることもなく突っかかってきたのは、ジェレール王子だった。
「おはようございます。大切な急用が出来てしまって。しかし、優秀な兄上でしたらすぐに片付くようなものばかりだったかと思いますが」
グエナエル王子の言葉にジェレール王子は鼻を鳴らした。この様子からすると、グエナエル王子の仕事のしわ寄せは全部ジェレール王子に行ったようだ。
ええぇ、グエナエル王子ってば、好きな人に仕事押し付けちゃって良かったの!?
「……ところで、そいつは誰だ?」
オレはなんとなくグエナエル王子の後ろに隠れていたんだけど、あっさりとジェレール王子に見つかってしまった。不審そうに顔を顰めて問い掛けられる。
ああ、そうだ。オレはもうポメラニアンじゃないんだった。当然、この姿でジェレール王子に会うのは初めてなわけだけど……
グエナエル王子はオレのことをどう説明するつもりなのだろうか。気になって様子を伺っていたら、グエナエル王子が振り返ってオレを見た。
「ビジュ、紹介が遅くなってすまない。こちらは私の兄上で、この国の第一王子。ジェレール・ド・ラ・ラグマットだ」
「あ、どうも……」
グエナエル王子に紹介を受けてペコリと頭を下げた。
その台詞を聞いて、ジェレール王子はますます顔を顰める。
え、何!? 怖いんだけど……!?
「ビジュ……だと?」
ジェレール王子が信じられないといった表情でオレを上から下までじっくりと観察した。
「しかし……」
「こちらが彼の本来の姿です。私が贈ったピアスをしているでしょう?」
グエナエル王子がオレの腰を引いて、右耳のピアスを見せつけた。ジェレール王子はオレの耳を凝視した後、チッと小さく舌打ちをした。
あああ、やっぱりそうだよな!?
この世界で昨日までポメラニアンだった相手がいきなり人間の姿になったら、そんな反応になるよな!?
どう考えてもグエナエル王子がオレのこの姿に馴染むのが早すぎるんだよ……!! しかも、寝起きすぐに朝勃ちを抜いてくるし……、って!! あの時のことを思い出したら、身体がだんだん熱くなってきてしまった。まずいまずい!! オレは慌ててその記憶を振り払った。
「……今日、ヴァランシ国からミア姫がやってくる」
ジェレール王子の声にオレは現実に引き戻される。
えーっと……ここはラグマット王国なので、つまり別の国からお姫様がやってくるってことかな?
「……兄上の婚約者だ」
イマイチ状況が良く分かっていないのがバレたのか、グエナエル王子が耳打ちしてくれた。
「くれぐれも粗相をすることがないように」
そう言い残すと、ジェレール王子は足音を立ててオレたちの前から去っていった。
はぁぁぁぁ……緊張した……
ジェレール王子の姿が見えなくなって、オレは大きく息を吐いた。
「ビジュは兄上が苦手か?」
「は、ははは、まぁ……」
すっごく苦手だ、と言いたいところだけど、オレは言葉を濁した。
「そう緊張することはない。そのピアスをつけている限り、ビジュの方が兄上より身分は上だからな」
「……は?」
は、はいいいいぃ――――!?
44
お気に入りに追加
304
あなたにおすすめの小説

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人リトと、攻略対象の凛々しい少年ジゼの、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です(笑)
本編完結しました!
『伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします』のノィユとヴィル
『悪役令息の従者に転職しました』の透夜とロロァとよい子の隠密団の皆が遊びに来る、舞踏会編はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
舞踏会編からお読みいただけるよう、本編のあらすじをご用意しました!
おまけのお話の下、舞踏会編のうえに、登場人物一覧と一緒にあります。
ジゼの父ゲォルグ×家令長セバのお話を連載中です。もしよかったらどうぞです!
第12回BL大賞10位で奨励賞をいただきました。選んでくださった編集部の方、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです。
心から、ありがとうございます!
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~
ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。
*マークはR回。(後半になります)
・ご都合主義のなーろっぱです。
・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。
腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手)
・イラストは青城硝子先生です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる