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20.朝のご挨拶
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どうやらグエナエル王子は執務室に行ってしまったのではなく、隣の部屋に居ただけのようだ。室内の扉で繋がっている隣室は王子の私室で、クローゼットの他に本棚やソファがある。彼はすでに寝巻を着替えて、ゆったりとしたシャツと身体にフィットするズボンを身に着けていた。
先程オレのことを当たり前のようにビジュと呼だけれど、なんでオレがポメラニアンだってわかったんだろうか? まさか、ポメラニアンから人の姿に戻るのを見られていたなんてことは……いやいや、それならこんなに平然とした顔をしているはずはないし……
動揺している間に王子はすぐ側まで来た。そして、オレに手を伸ばしてそっと頬を撫でた。その手の動きは、最近、寝起きにポメラニアンにするのとまったく同じものだった。
「ひ、人違いじゃ……」
オレはなんとか声を絞り出した。喉がカラカラに乾いていて、掠れたような声が出た。
人違いっていうか、犬違いと言えばいいのだろうか。ポメラニアンのオレは茶色のふかふかの毛並みだけど、本来オレは中肉中背で黒目黒髪の日本人だ。とても同一人(犬?)物には見えないと思う。
「いや、間違いなくおまえはビジュだ。私が贈ったピアスをしているだろう」
指摘されて、オレは慌てて自分の右耳を手で覆い隠した。
そうだ、ピアス……!! 身体が人間に戻ったことで頭がいっぱいになっていて、忘れていた。
「ひっ、拾ったピアスをつけているだけかもしれないし!?」
我ながら無茶だとは思ったけれど、オレは咄嗟にそう言った。その言葉を聞いて王子の唇の端が上がる。
「そのピアスはそんな簡単に外れるものではない」
え……?
人間の姿に戻ることができたら、このピアスは外して王子に返すつもりだったんだけど……
そういえば、これはどうやって留まっているのだうろか。鏡で見た限りだとつなぎ目のような場所は見当たらなかったけれど……もしかして、自力じゃ外せないものだったりするのだろうか。じゃあグエナエル王子はどうやってオレの耳にピアスをつけたんだ!?
「それに昨日の夜、おまえが眠りについたあと、すぐに人の姿になるのをこの目で見た。だからおまえがビジュであることは間違いない」
その言葉を聞いて、オレはポカーンと口を開いた。
ちょ、ちょっと待って……!! オレが人の姿に戻ったのって、今朝じゃなくて、昨日の夜なの!?
グエナエル王子と一緒に布団に入ったオレは、爆睡しながら元の姿に戻ってしまった、と。
その様子を見ていた王子は、ポメラニアンから人の姿になったオレをあっさりと受け入れちゃったっていうこと? ていうか、全裸で眠りこけるオレの隣で王子も昨日の夜は寝たってことなの!? うそぉ!? い、いや、兵士を呼ばれるよりはずっとイイんだけど……これって、どこからツッコめばいいんだ?
「ところでいつまでそのような格好でいるつもりだ? 服を用意してあるから、着替えろ」
衝撃の事実を伝えられて呆然としていると、オレがせっかく苦労して腰に巻き付けたシーツを引っ張られてしまった。真っ白な布が、ハラリと床に落ちる。
「あっ……!!」
オレが身に着けていたのはそのシーツ一枚だけだ。それを取られてしまうと、オレは産まれたままの姿……つまりすっぽんぽんを王子の眼前に晒すことになってしまったわけなんだけど……
「ん……?」
「え……?」
オレの下半身を見て、王子が何かに気付いたように呟いた。それにつられて、オレも自分の下半身を見ると……
「ええぇぇぇぇええ……!!」
オレのムスコが元気に勃ち上がって、王子にご挨拶をしていた。
先程オレのことを当たり前のようにビジュと呼だけれど、なんでオレがポメラニアンだってわかったんだろうか? まさか、ポメラニアンから人の姿に戻るのを見られていたなんてことは……いやいや、それならこんなに平然とした顔をしているはずはないし……
動揺している間に王子はすぐ側まで来た。そして、オレに手を伸ばしてそっと頬を撫でた。その手の動きは、最近、寝起きにポメラニアンにするのとまったく同じものだった。
「ひ、人違いじゃ……」
オレはなんとか声を絞り出した。喉がカラカラに乾いていて、掠れたような声が出た。
人違いっていうか、犬違いと言えばいいのだろうか。ポメラニアンのオレは茶色のふかふかの毛並みだけど、本来オレは中肉中背で黒目黒髪の日本人だ。とても同一人(犬?)物には見えないと思う。
「いや、間違いなくおまえはビジュだ。私が贈ったピアスをしているだろう」
指摘されて、オレは慌てて自分の右耳を手で覆い隠した。
そうだ、ピアス……!! 身体が人間に戻ったことで頭がいっぱいになっていて、忘れていた。
「ひっ、拾ったピアスをつけているだけかもしれないし!?」
我ながら無茶だとは思ったけれど、オレは咄嗟にそう言った。その言葉を聞いて王子の唇の端が上がる。
「そのピアスはそんな簡単に外れるものではない」
え……?
人間の姿に戻ることができたら、このピアスは外して王子に返すつもりだったんだけど……
そういえば、これはどうやって留まっているのだうろか。鏡で見た限りだとつなぎ目のような場所は見当たらなかったけれど……もしかして、自力じゃ外せないものだったりするのだろうか。じゃあグエナエル王子はどうやってオレの耳にピアスをつけたんだ!?
「それに昨日の夜、おまえが眠りについたあと、すぐに人の姿になるのをこの目で見た。だからおまえがビジュであることは間違いない」
その言葉を聞いて、オレはポカーンと口を開いた。
ちょ、ちょっと待って……!! オレが人の姿に戻ったのって、今朝じゃなくて、昨日の夜なの!?
グエナエル王子と一緒に布団に入ったオレは、爆睡しながら元の姿に戻ってしまった、と。
その様子を見ていた王子は、ポメラニアンから人の姿になったオレをあっさりと受け入れちゃったっていうこと? ていうか、全裸で眠りこけるオレの隣で王子も昨日の夜は寝たってことなの!? うそぉ!? い、いや、兵士を呼ばれるよりはずっとイイんだけど……これって、どこからツッコめばいいんだ?
「ところでいつまでそのような格好でいるつもりだ? 服を用意してあるから、着替えろ」
衝撃の事実を伝えられて呆然としていると、オレがせっかく苦労して腰に巻き付けたシーツを引っ張られてしまった。真っ白な布が、ハラリと床に落ちる。
「あっ……!!」
オレが身に着けていたのはそのシーツ一枚だけだ。それを取られてしまうと、オレは産まれたままの姿……つまりすっぽんぽんを王子の眼前に晒すことになってしまったわけなんだけど……
「ん……?」
「え……?」
オレの下半身を見て、王子が何かに気付いたように呟いた。それにつられて、オレも自分の下半身を見ると……
「ええぇぇぇぇええ……!!」
オレのムスコが元気に勃ち上がって、王子にご挨拶をしていた。
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