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2.王子様、登場
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「キャンッ!!」
(痛っ!!)
曲がり角で、ボスンッと何かにぶつかった。どうやら、誰かの脚のようだ。思いっきり鼻を打ち付けたので、ちょっと涙目になった。
「キュウゥゥン……」
(誰だよいったい……)
顔を上げれば、オレの目の前に王子様が居た。いや、彼が本当に王子様かどうかはわからないのだけど。
肩下まであるさらっさらの金髪にブルーの瞳。整った顔立ちと、煌びやかな衣装。まるで童話の中からでてきたみたいだ。
「グエナエル様、どうされました?」
彼の後ろから、赤茶色の髪をした青年が声を掛けた。彼の従者といったところだろうか。二人とも映画の登場人物のような恰好をしている。
あと、今、呼ばれた名前には覚えがある。さっきの人たちが王子って呼んでた人のことだ。ってことは、この人は本当に王子様!?
「ワン、ワンワンワンワン……!!」
(なぁ、あっちでネックレスを見つけたんだけど……!!)
一生懸命伝えようとするけど、ポメラニアンのままでは言葉が通じない。不便だな。
彼はオレをじっと見ると、眉を顰めた。なんか視線が冷たい気がする。
え、もしかして、犬嫌いだったとか!? じとりと嫌な汗が出てきた。
「……ドニ。これは、魔物か?」
ま・も・の!!
いやいや、違うし。オレは癒しを与える可愛いポメラニアンだし!!
「見たことのない生き物ですね」
「そうか……なら、殺せ」
「キャンッ!?」
(はいぃぃぃ!?)
グエナエル王子は冷たい目でオレを見据えたままそう言った。
嘘だろう!!
ポメラニアンは全世界共通の可愛い生き物だろ!? それを、見たことないから殺せだって!? 無茶苦茶だ!!
ブルブルと身体が震える。
今更ながらに、日本人離れした顔立ちの二人の言葉がすんなり通じていることに気づいた。
それに、ポメラニアンを見て魔物って……やっぱりここって、異世界なのぉ!?
「かしこまりました。しかし、王妃の庭での殺生は後々問題になりますので、場所を改めます」
ドニと呼ばれた従者は、そう言うとオレに笑顔を向けた。
「さぁ、こっちへおいで」
優しい表情で手招きされても、今から殺されるってわかっていてついていくはずがない。
オレはぶんぶんと首を横に振った。なんとか逃げ出せないかと、ジリジリと後ろに下がる。
「そこの魔物」
ヒィィッ!! なんかグエナエル王子に呼び止められた!! 逃げようとしているのがバレたのかっ!? しかも、魔物って決めつけられちゃってるしっ!!
「もしかして、言葉がわかるのか?」
コクコクコクコク!!
力いっぱい首を縦に振る。
「それなら、緑の宝石がついた銀のネックレスを探してこい」
「グエナエル様!?」
ドニが驚いたような声を出したが、それならお安い御用だ。
「もし見つけられたら、殺さないでおいてやろう」
そう言われて、断る理由はない。
というか、王子がオレを見下ろす目が冷たくて怖い。ここで拒否ったら、間違いなく今すぐ首が飛ぶ!! そんな気がする。
「アォーン!!」
(イエッサー!!)
オレは、ネックレスのある場所に向かって一目散に走り出したのだった。
(痛っ!!)
曲がり角で、ボスンッと何かにぶつかった。どうやら、誰かの脚のようだ。思いっきり鼻を打ち付けたので、ちょっと涙目になった。
「キュウゥゥン……」
(誰だよいったい……)
顔を上げれば、オレの目の前に王子様が居た。いや、彼が本当に王子様かどうかはわからないのだけど。
肩下まであるさらっさらの金髪にブルーの瞳。整った顔立ちと、煌びやかな衣装。まるで童話の中からでてきたみたいだ。
「グエナエル様、どうされました?」
彼の後ろから、赤茶色の髪をした青年が声を掛けた。彼の従者といったところだろうか。二人とも映画の登場人物のような恰好をしている。
あと、今、呼ばれた名前には覚えがある。さっきの人たちが王子って呼んでた人のことだ。ってことは、この人は本当に王子様!?
「ワン、ワンワンワンワン……!!」
(なぁ、あっちでネックレスを見つけたんだけど……!!)
一生懸命伝えようとするけど、ポメラニアンのままでは言葉が通じない。不便だな。
彼はオレをじっと見ると、眉を顰めた。なんか視線が冷たい気がする。
え、もしかして、犬嫌いだったとか!? じとりと嫌な汗が出てきた。
「……ドニ。これは、魔物か?」
ま・も・の!!
いやいや、違うし。オレは癒しを与える可愛いポメラニアンだし!!
「見たことのない生き物ですね」
「そうか……なら、殺せ」
「キャンッ!?」
(はいぃぃぃ!?)
グエナエル王子は冷たい目でオレを見据えたままそう言った。
嘘だろう!!
ポメラニアンは全世界共通の可愛い生き物だろ!? それを、見たことないから殺せだって!? 無茶苦茶だ!!
ブルブルと身体が震える。
今更ながらに、日本人離れした顔立ちの二人の言葉がすんなり通じていることに気づいた。
それに、ポメラニアンを見て魔物って……やっぱりここって、異世界なのぉ!?
「かしこまりました。しかし、王妃の庭での殺生は後々問題になりますので、場所を改めます」
ドニと呼ばれた従者は、そう言うとオレに笑顔を向けた。
「さぁ、こっちへおいで」
優しい表情で手招きされても、今から殺されるってわかっていてついていくはずがない。
オレはぶんぶんと首を横に振った。なんとか逃げ出せないかと、ジリジリと後ろに下がる。
「そこの魔物」
ヒィィッ!! なんかグエナエル王子に呼び止められた!! 逃げようとしているのがバレたのかっ!? しかも、魔物って決めつけられちゃってるしっ!!
「もしかして、言葉がわかるのか?」
コクコクコクコク!!
力いっぱい首を縦に振る。
「それなら、緑の宝石がついた銀のネックレスを探してこい」
「グエナエル様!?」
ドニが驚いたような声を出したが、それならお安い御用だ。
「もし見つけられたら、殺さないでおいてやろう」
そう言われて、断る理由はない。
というか、王子がオレを見下ろす目が冷たくて怖い。ここで拒否ったら、間違いなく今すぐ首が飛ぶ!! そんな気がする。
「アォーン!!」
(イエッサー!!)
オレは、ネックレスのある場所に向かって一目散に走り出したのだった。
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