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アジトへ到着

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結局銀ロリの小鼻は役に立たず。
黄巾賊のアジトらしき穴を、有能なラベンダーさん&なんたらたらキャットが俺たちを先導し、見つけてくれたようだ。

さらに有能なことにまだ陽の高い日中に1人でに進むミステリー──追っていた元中年モブ指揮官の影の足跡に気を取られていた見張りの黄巾2人組を、その2人の背影から現れた黒猫が1人は両爪でえげつなく引っ掻き、1人はその変幻伸縮自在の長い尾で首を締め気絶させた。

ここまであまりの有能主婦っぷりに俺はラベンダーさんとそのペットに拍手を送った。

「おおー便利すぎるな。もうあんた1人だけでいいんじゃないか、ザクザクざっくんっと全員影からきゃきゃっとびよよ~んすればいい、うん」

「馬鹿を言わないでください。ここまで他人の影に命を吹き込みその影を魔法を使いっぱなしで追っていたんで結構消耗したんです、ほら私の影が皆様のより薄くなっています、これがちゃんとあるデメリットです。ついでにここまでの工程が声を上げられると台無しになるからたまたま見張りを頑張って倒しただけで、既にキツいんですよ。皆様のチカラ込みでこういうことをしてるんです」

んー、クールなのにずっと献身的な女性もいいな。ここまでお風呂もオムライスもオムツもかえてくれると、俺はあと膝枕で耳掃除されて寝落ちしてふふっと笑われるだけだ。

「んー? おおーたしかにうっすらうっすいな! そうかそれは大変頭を使った有能なシナリオでご案内ご苦労だな。気にせずくつろいでくれ。といってもそれとこれとは別腹だ、アジトらしき場所がわかったんだここで帰って後日フル改造した所持ユニットを増やしてやり直すという選択肢もおおいにあるぞ、敵は穴の中だ何が出てきてもおかしくない冬眠していた熊が起きるかもしれん。ここでセーブし帰って少し早めのフワトロオムライスにしよう」

「はぁ……それでもいいですけどッ、できればここでちゃっちゃと元凶を仕留めたいんですけどね。自警団の示現獣使いは私含めて4人、うち3人はつまらない理由をつけて作戦にノリ気なしやる気なし。その為の男手のつもりだったんですが、シスターから聞いた評判とずいぶん違いますねっ見下ろしてるその目は飾りでやる気がないのですか?」

かなり言われているが、俺が悪いのかは疑問である。しかしのこのことことことついてきた俺は戦力と見なされ大いに期待させてしまったようだ。

「俺は普通にとことこ歩きついていきここまで犬を蹴散らし呼吸をしていただけだが、やる気かぁ…そうは失望されてもな、寄せ集めのユニットじゃおそらく全員が覚醒した示現獣使いと思われる黄巾賊相手には厳しいんじゃないか、賊とはいえ示現獣ってのは単純じゃないんだろ?」

「それはそう決して油断はならないと思いますけど、放置していたら誰がやってくれるとでも? あなたはやってくれないのですか。シスターや被害者たちにきいた…教会での慈愛に満ちた紫の示現獣使いとして(ここまで来て働かないなんてなんの冗談、そういえばこの無駄に背の高い男はずっとくだらないことばかり喋っていて。それに寄せ集めでもこれだけの示現力がそろってるならちいさな町の自警団よりずっと上じゃない? 絶対働かせるし家の近くに賊のアジトなんて冗談は潰す)」

慈愛に満ちた紫の示現獣使い…なんだか俺の知らない人が目の前にいるようだが、十亀亀太郎は人助けをせねばならない!うおおお! な少年漫画の主人公ではないと思うので、あまりここでやる気をみせガッツクのも風情がないというものだ。

「んーー。やらない? やる? やらないやる──! 今回はやることにした──! うん」

俺は道端に生えていた謎の草っぱをむしりながら、てきとうに念じて散らした。そして親指を立ててクールにサムズアップし、ラベンダーさんの描くシナリオに協力することを了承した。

「そ、そうですか……(今までの駄々捏ねはなんだったの?? う、うざー…でもこの人の示現力が一番高いってなんの冗談なのですかね…はぁ、帰ったらやけ食いしたい)」

「まぁそう顔を顰めないでくれよ野に咲くラベンダーさん、十亀亀太郎は熱血というよりはクール、たとえそれが最終的に行き着く当然の流れとしても率先してヤルとザクザクざっくんがっつくべきではないのだ──学術的にぃ」

「はぁ……(もうなんなのこれ……)」

むすっとするほどにオムライスが美味くなることもあるんだな? 俺の中でシミュレートするラベンダーな彼女とのオムライス解像度はぐんぐんと上がっておりバリエーションとシチュエーションももう10以上になりつつある。








黄巾賊のアジトかは知らないが、見張りはアタマに黄巾を巻いていたのでそうなのだろう。
変哲のない砂っぽい景色に突如現れた岩肌の大穴。

全員覚悟は決まりさっそく暗がりの中へと入ってゆく。

6の足音は進む、洞窟は青く光っている……光源は不思議と確保されており、視界は程よくゲームでダンジョン探索する雰囲気と違わず原理が、謎である。岩肌全面に取り付けたLEDシートかなにかか?

いかんまたうどんを捏ねくり回すところであった。

結論、ダンジョンっぽいので視える!


そうこう俺がひとりごちていると────


「分かれ道ですね」

どうやら分かれ道のようだ、ここまで一本道敵とはあまりエンカウントしなかったが──ここで道が三つに分かれている。

これはアレだな、このまま6人で簡単に無双されると悔しい、宝箱をプレイヤーに取り逃がさせようとするダンジョンマスターの捻くれた意地悪だな。

皆が顎に手を当てるなか、冷静な俺は手をグーパーし、提案した。

「いっそ、ぐっぱで分かれるか?」

「運じゃなくて真面目にやってくださいよ」

ソッコーでラベンダーさんに注意された。しかしその通りであるので俺も5人から伝染してきた連帯感をもってして、自分の顎に手を当てることにした。




→ラベンダー、十亀亀太郎

↑銀ロリ

←シスター、黄巾モブ、金ポデ




俺が顎が砂になるほど趣向を凝らしユニット編成した結果、このようになった。


「ふむ、学術的に選んだ結果、戦力的には妥当か」

「カメタロウ、なんでこうなったの」

銀ロリがこちらをジト目の能面で見ている。俺が敵陣へと単騎特攻するよう選んだことに、納得してないらしい。

「この中でイチバンつよいのはシルバーパイン、おまえだ」

とりあえずラベンダーさんの下がった十亀亀太郎の株を取り戻したい…のではなく、下心などどうでもよく疲れていると俺にさんざん貧血をアピった彼女を保健室まで介抱するのは俺の役目だと思われる、学術的に。

「私もこれで文句はありませんね、示現力と体力とやる気…で振り分けるとおおよそこんな感じです(この男がちゃんと働くかも謎ですし…監視)」

なんとラベンダーさんは肯定、俺のした完璧なユニット編成にうんうんと小刻みに頷いている。高評価を得たようだ。

「な──?」

「そうね、いわれてみればべつにいいんじゃないかしら。ん──心配はなさそう」

嫉妬していた銀ロリも納得してくれたようだ。まぁこいつはハイエナースを一撃で焼き払う程の火力持ちだ、ダンジョンでのはじめてのおつかいには打ってつけだろう。

「よし、あっちで会おうぜ同志!」

「モブの黄巾がそんな台詞を言うなバスタオル」

「どーしぃーー、あちで会おうね!」

「うん。どーし、あちで会う──!」

金髪ポニーテールの美少女が俺にあっかるい笑顔を振り撒く。俺はソッコーサムズアップに加えてかるくウインクをし、ファンの声援に応えた。

「同志!?? たいおうが!?」

「うるさいっ、俺に男のファンはひじょーーにいらん、くだらないお喋りはハイココマデ──さっ、行くぞお前ら!!」

「ココに入るのもずっとあなた待ちだったんですけど…やる気がでたのはいいことです」

「ふふふ、みなさま気を抜かず。──救済の女神のご加護を」

糸目で微笑むシスターの言うそれっぽいご加護を授かりしまっていこーーーなありがたいバフを得た十亀亀太郎一行は、俺の編成した通りに分かれ何が待ち受ける…暗がりの先へと進んでいった。
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