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第228死 DELETE
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▼王都動物園ビースト サファリエリア▼
挑戦する者、激しい冒険の途中。
黒い背に喰らいつく白い探索者、数多のカードを捧げて再び操るボーリングノズルは十分に強力、立ちはだかるモンスターを負けじと砕いてきた。まだその男の背はリアルを映す2つの視界のカメラに霞むことはなく見えている。
そして現実味のないスケール感がそこに。やはりあまりにもデカイ敵の要塞──、えれほわと共に進んできた機獣要塞に乗り込むまでの距離はもうすぐそこであり、じわりべたつく彼女の細い両手により一層のチカラもこもる。だが、
ミドリに毛深く太く長いその両腕はえれほわが放ったボーリングノズルを受け止めた。その膂力に、イヤな音と感覚が僅かに長鼻を伝い響いた。ひび割れていく大球を咄嗟の判断で切り離した。
「くっ、ボーリングストライク」
ホースから切り離し放った大球は勢いよく発射。彼女の身がおおきく後退する程の強風を押し付けて──大猿を押し退けていったが、やがてひび割れて散り散りと粉砕。
手痛い最大の技を受け止め切った、そして不快な猿聲でがなり吠えるその猛獣の巨顔。
掃除屋の女とえれほわの冒険に立ちはだかったのは、
デスクイーンテナガザル、デスナイトテナガザル×2。
強さと大きさを増した凶悪な大猿ボス級モンスター。胴の2倍の長く逞しい腕はパワーアップした探索者とえれほわのボーリングノズルの威力をも受け止めてしまう、チカラ強さを見せている。
代償としてそのナイト猿はベキベキと腕はあらぬ方向へと曲がったが、奇怪な音を立てながら更に丈夫に回復。掃除屋の彼女が様子を見た戦いの間に間に合わせる脅威の骨折回復能力を見せた。
後方に控える白い毛並みのクイーンを守る緑のナイトが2。
これまでの相手とは明らかに強さが違う、掃除屋の女はここまで徐々にモンスターたちの強さが増していくのは感じていたが苦戦していたのは際限なく湧く数に対してだけであった。だが、今度は質。立ちはだかり上回る……。
「おい邪魔だから前に出るなオンナ」
「何をこれは私のボウ」
「門番と言ったところだろう、チカラ不足だ」
「アレが全力じゃないまだコートカードの効果時間はある! 次はもっと」
「少し調子の良い小象がいきなりライオンに勝てるか?(猿だけど) お前の大事なその冒険とやらも帰るまでのプランがなければな、カッカッカ」
その男の言葉など……だがしかし自分は今冷静でいれているのだろうか。少なからずヤツの戦いに影響を……。
対抗心からかまたアツくなっていた頭で冷静になってみると、背に感じるその熱量に────
「……えれほわ、CC解除──」
コートカードの効果を強制解除。えれほわへの負担は軽くなり。そして、ぐっと、構えたフロアノズルはいつでも敵に向けて射撃可能。
それはまだアツく割り切れていないのではないのだろうかなおも前を向く真剣な眼差しに、そんな彼女の力こもる姿を横目に男は鼻で笑った。
「少しはマシな頭に切り替わったようだな。──お前らに特別サービスだ。目ん玉とメンタルに気合い入れてそこで大人しく見てろ本物の掃除屋、ホンモノのこいつのチカラの使い方を」
前へとゆっくりと一歩一歩男は女の先を歩いて行く、スキルを行使し背から広げた黒い翼。その背でなおも語る。
「下らないプライド、廻る嫉妬、厳格なモラルや脅迫される思いやりの偽善心、捨て去れるものは捨て去れよ、そしたらもっと自由な──」
涎垂らす猛獣はその存在を恐れているのか、長い両腕をおおきく開き構えて身体を大きく見せるが中々襲いかからない。じりじりと、だがナイト猿は痺れを切らして左右から──
「ハっ、さぁお掃除タイムのじかんだ、DELETE!!!」
前方に突き構えた大きなエレファントノズルから噴き出す、数多のスキルの吹雪が敵を襲う。飛び掛かったその重い巨体の勢いさえ飲まれていく。
忘れられた、いや忘れはしない。ブラックエデンからDELETEした本来不要なはずのスキルはその鼻先から続々と解放されていく。
弾丸とウェポンは大猿のパーティーに猛烈な勢いとなり突き刺さり、その広大を支配するカオスから逃れる術など無い。
掃除機の機獣が吸い込むのはモンスターの持つ生電子だけでは無い、僅かながらも吸い込み貯まる一定量の死電子をかき集めて解放するのはDELETEスキル。
鳴き声をも掻き消す黒吹雪に、
「なら魅せてみろ! DELETEスキル、【ブラックエデン】!!!」
三のターゲットへと天より黒雷舞い落ちる──黒く吐き出し最後は染め上げて燃やす圧倒的なチカラ。
スキル吹雪のち豪雷。やるならば解放したエネルギーの制限時間内で徹底的に。
「徹底的、圧倒的、掃除ってのはこうやんだよ。カッカッカはっはっはっは」
嘘のようにもうその凶悪な大猿達は存在しない。綺麗に焼き払われた。掃除したハズが白煙天へと昇り荒れ果てた地が其処に残っている。
「DELETE……スキル……」
帽子を無くした白が見つめる先、その黒と灰の背はあまりにも大きい。翼を広げておおきく背伸びするのは、掃除屋の男とその黒き機獣ブラックエデン。
挑戦する者、激しい冒険の途中。
黒い背に喰らいつく白い探索者、数多のカードを捧げて再び操るボーリングノズルは十分に強力、立ちはだかるモンスターを負けじと砕いてきた。まだその男の背はリアルを映す2つの視界のカメラに霞むことはなく見えている。
そして現実味のないスケール感がそこに。やはりあまりにもデカイ敵の要塞──、えれほわと共に進んできた機獣要塞に乗り込むまでの距離はもうすぐそこであり、じわりべたつく彼女の細い両手により一層のチカラもこもる。だが、
ミドリに毛深く太く長いその両腕はえれほわが放ったボーリングノズルを受け止めた。その膂力に、イヤな音と感覚が僅かに長鼻を伝い響いた。ひび割れていく大球を咄嗟の判断で切り離した。
「くっ、ボーリングストライク」
ホースから切り離し放った大球は勢いよく発射。彼女の身がおおきく後退する程の強風を押し付けて──大猿を押し退けていったが、やがてひび割れて散り散りと粉砕。
手痛い最大の技を受け止め切った、そして不快な猿聲でがなり吠えるその猛獣の巨顔。
掃除屋の女とえれほわの冒険に立ちはだかったのは、
デスクイーンテナガザル、デスナイトテナガザル×2。
強さと大きさを増した凶悪な大猿ボス級モンスター。胴の2倍の長く逞しい腕はパワーアップした探索者とえれほわのボーリングノズルの威力をも受け止めてしまう、チカラ強さを見せている。
代償としてそのナイト猿はベキベキと腕はあらぬ方向へと曲がったが、奇怪な音を立てながら更に丈夫に回復。掃除屋の彼女が様子を見た戦いの間に間に合わせる脅威の骨折回復能力を見せた。
後方に控える白い毛並みのクイーンを守る緑のナイトが2。
これまでの相手とは明らかに強さが違う、掃除屋の女はここまで徐々にモンスターたちの強さが増していくのは感じていたが苦戦していたのは際限なく湧く数に対してだけであった。だが、今度は質。立ちはだかり上回る……。
「おい邪魔だから前に出るなオンナ」
「何をこれは私のボウ」
「門番と言ったところだろう、チカラ不足だ」
「アレが全力じゃないまだコートカードの効果時間はある! 次はもっと」
「少し調子の良い小象がいきなりライオンに勝てるか?(猿だけど) お前の大事なその冒険とやらも帰るまでのプランがなければな、カッカッカ」
その男の言葉など……だがしかし自分は今冷静でいれているのだろうか。少なからずヤツの戦いに影響を……。
対抗心からかまたアツくなっていた頭で冷静になってみると、背に感じるその熱量に────
「……えれほわ、CC解除──」
コートカードの効果を強制解除。えれほわへの負担は軽くなり。そして、ぐっと、構えたフロアノズルはいつでも敵に向けて射撃可能。
それはまだアツく割り切れていないのではないのだろうかなおも前を向く真剣な眼差しに、そんな彼女の力こもる姿を横目に男は鼻で笑った。
「少しはマシな頭に切り替わったようだな。──お前らに特別サービスだ。目ん玉とメンタルに気合い入れてそこで大人しく見てろ本物の掃除屋、ホンモノのこいつのチカラの使い方を」
前へとゆっくりと一歩一歩男は女の先を歩いて行く、スキルを行使し背から広げた黒い翼。その背でなおも語る。
「下らないプライド、廻る嫉妬、厳格なモラルや脅迫される思いやりの偽善心、捨て去れるものは捨て去れよ、そしたらもっと自由な──」
涎垂らす猛獣はその存在を恐れているのか、長い両腕をおおきく開き構えて身体を大きく見せるが中々襲いかからない。じりじりと、だがナイト猿は痺れを切らして左右から──
「ハっ、さぁお掃除タイムのじかんだ、DELETE!!!」
前方に突き構えた大きなエレファントノズルから噴き出す、数多のスキルの吹雪が敵を襲う。飛び掛かったその重い巨体の勢いさえ飲まれていく。
忘れられた、いや忘れはしない。ブラックエデンからDELETEした本来不要なはずのスキルはその鼻先から続々と解放されていく。
弾丸とウェポンは大猿のパーティーに猛烈な勢いとなり突き刺さり、その広大を支配するカオスから逃れる術など無い。
掃除機の機獣が吸い込むのはモンスターの持つ生電子だけでは無い、僅かながらも吸い込み貯まる一定量の死電子をかき集めて解放するのはDELETEスキル。
鳴き声をも掻き消す黒吹雪に、
「なら魅せてみろ! DELETEスキル、【ブラックエデン】!!!」
三のターゲットへと天より黒雷舞い落ちる──黒く吐き出し最後は染め上げて燃やす圧倒的なチカラ。
スキル吹雪のち豪雷。やるならば解放したエネルギーの制限時間内で徹底的に。
「徹底的、圧倒的、掃除ってのはこうやんだよ。カッカッカはっはっはっは」
嘘のようにもうその凶悪な大猿達は存在しない。綺麗に焼き払われた。掃除したハズが白煙天へと昇り荒れ果てた地が其処に残っている。
「DELETE……スキル……」
帽子を無くした白が見つめる先、その黒と灰の背はあまりにも大きい。翼を広げておおきく背伸びするのは、掃除屋の男とその黒き機獣ブラックエデン。
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