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第220死 ドレス、コーデ、ドーナッツ

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▼ファッションパレードエリア▼


 夏海と香、ここ最近その強力なスキルを磨きメキメキと実力を上げた2人の奮闘もありこのファッション街に現れていた不気味なマネキン達は殲滅された……はずが────


 踊る──ガーネット色のドレスを着た黒いマネキンが発射する荒い宝石の弾丸に。


「くるっと【キョーシャル】」

 杖をバトントワリングの要領で回転させぶち当たったガーネットの石に【キョーシャル】の効果をノセ真っ直ぐに物理法則を無視し弾き返した。

 お返しされた紅い弾丸を華麗に回避、かっぱらった美しいガーネットドレスを着ながらにして香たちの予想の外の機動力を魅せる。

 ──ドレスを着たマネキンに接近、ガラガラと地を滑ったローラーブーツで近寄り、阿吽の呼吸で夏海は香の作った隙を逃さない。金属バットでその宙を舞うブロンドヅラの黒い頭に今までのフラストレーションをフルスイングでぶつける──突如、前方へ脱ぎ捨てられた紅い布に視界を覆われ、ジタバタと慌てて顔面の衣を払ったが転げて勢い余りショーウィンドウへと激突。

 制御を失い衝突した痛む体に、

 ショーウィンドウの中、隣にいたマネキンたちは動き出し夏海はわらわらと拘束されてしまった。

「イテテテッどけどけぇえうざった痺れろ!」

 発動したカード【UR】スパイダーネット。夏海の足元から中心に広がる電磁蜘蛛の巣は寄ってきた敵を痺れ拘束し返し────力尽くで寄り掛かるマネキン達を蹴散らし振り解いた。金属バットをブンブンと荒ぶらせ、乱れ跳ぶマネキンのクビ、おもむろに立ち上がった乱れた茶赤髪は眼光鋭く肩で息を整える。

 ガーネットのドレスを捨て一風変わり、新たな山吹色のコーデ一式を得た黒い女性的シルエットは、奪い取ったおニューのローラーブーツで街をるんるんと滑りながら。

 優雅に風を切り召喚した魔法のクローゼット、彼女が今までに奪った服を解放。さらに電量を割き即席のマネキンを地から練り上げ召喚。

 魔法のようにクローゼットから飛び出し勝手に舞い飛ぶ衣服、数々のファッションアイテム。我先へと殺到する裸のマネキン達に服の雨を降らせて福を恵み与えた。

 先程あらかた殲滅したはずが、香と夏海の前方にまた出現してしまった狂気の泥棒マネキン軍団。肩を揉みほぐし、くるりとスカートを翻し、長いマフラーを分かち合う────。

「さっきしゃしゃっと片付けたんだけどねぇ」

「があああ私の下山ガール山吹ギャップコーデ服ぅうう!!! チッはぁ……あぁもうキレたわ、香アレヤッちゃうわ」

 金属バットを前杖代わりに地面に突き刺し、衣服を奪われた露わな姿の夏海は前へとヤツらを睨みながら体重をかけもたれかかった。

「どうせここにはもう気色の悪いマネキンしか居ないし賛成だわ、気にせずやっちゃって夏海」

「【ナル・キョーシャル】」

 スキルを発動した香は夏海の背に右手を置いた。バチバチと雷電を放つアツい背と合わせた手に────、


▽スキル
【成・キョーシャル】♡
将棋の駒のように駒が成る事により、その人が本来持つ表の容量に+して裏の容量を使うことが出来るようになる。単純な性能UPと言えるがあくまでもその人の持つウツワを一時的に広く使えるようにするものであり、以前よりパワーアップするかどうかはスキルをかけられた本人の実力と使い方次第である。電量を大きく消費してしまうのでこの香のスキルもまた使うタイミングが肝心である。


 リーダーの右手から気合いを充電、夏海は膨れ上がる感覚的にあるスキルを使えるまでにたどり着いたとハッキリと自覚した。

「おっけぇええええ香スペース足りた足りた離して、じゃ乙女夏海ちゃんと青年のラヴラヴ研究成果……」

 夏海はスキルを行使、表と裏のスペースをいっぱいに使いチカラを全力解放。

 天高く掲げた金属バット、その上方に生成されていく巨大な山吹色の炎輪に。やがて彼女はその炎の穴の中へと跳躍し飛び込み────どこからともなく出現、ファンシーなドーナツのバイクへと乗り込んだ。

 ドンっ、と巨大タイヤは地を鳴らし、

 そしてすぐさま、ぐさりと金属バットを小麦のボディーへと差し込み握り。その大きな一輪はエンジンを始動し回り始めた。

「おらァァァダッセェえせアウトドアファッションは全員轢き殺すぞォォ」

 蹂躙蹂躙、ドーナツ穴のコックピットへと座り金属バットを操縦桿の代わりにし荒ぶる操縦。荒れる街路もお構いなしにマネキン共を轢き壊していく。

「【焼・ドナスプ】!!!」

 そのドーナツバイクは山吹色の炎を纏う、山吹色の炎輪となりマネキンを服ごと燃やし黒く焦げて、浄化。

「夏海ちゃんの乙女心はホットプレートより熱いよおおおおおお」

 熱いチョコを溶かしながら、白い下着姿の夏海お姉さんの大技がファッションパレードのマネキン達にハイセンスな乙女心を分らせて叩き込む。

「すごいことになってますね……ドーナツが燃えながら走ってます……」

「ん、夏海が本気出したら私たち出番ないかもじゃん。あ、香っ」

 水井露と葬儀屋は夏海と香の元へと駆けつけたものの……。

 見つめた先は苦戦しているようには見えなかった。

 巨大ドーナツバイクは山吹色の炎吹き荒れる桁違いのスキルで、雑兵を散らし目指す後方に逃げた黒と奪われた山吹色のシルエット。

「どけええええここよりお前らハイパー夏海ちゃんタイムのおやつはッ、殺戮焼きドーナツ一択ぅうううぅうひゃァァァ──────」

 ここは戦場ハイテンション。

 ハイテンションに炎は荒ぶる、カタチを変え修練し凝らしたオリジナルのスキルとなり、時空を超えたそのチカラを偶発的に伝染させて────。
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