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第173死 スキル、実験
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リアルシミュレーター内、環境適応実験はもう数日は続いている。
市街地BのバベルBはもはや立派な居住スペースとなっており先生と生徒は現世に戻らずに過ごしていた。
そんな中、ここ最近表舞台へと姿を見せたある人物の情報というものを先生は生徒へと提供した。
▼バベル24階まりじの部屋▼
午前10時32分。
白衣に適当なシャツ、これが逆に楽という研究所籠りの彼女のスタイルだ。パンツ、下着、色々とモノが混み合っているこの部屋、畳む時間が惜しいということらしい。
そんな部屋でカタカタとなるスパコンに、生徒はなんとか片付けてスペースを確保し座り自分のスキルのデータをパッドの画面で見せてもらっていた。
「栄枯さんが……はぁ、良かったです」
「会いにはいかないのか? 丘梨栄枯を愛しているのだろう? こちらも彼女の居場所ぐらいは把握していると思うが」
「愛し……そうですけど……えっと、俺フラれてるんで……何してるかも分かったしこれで、満足です。はは、栄枯さんらしいです」
「フフ、フラれた? あっはっはフフ、……狩野生徒くん自身が満足ならそれでも構わないが」
フラれた、黒髪を掻きむしりながらそんな事を堂々と明かす彼がおかしく見えて先生はひどく笑ってしまった。
そんなに笑わなくても……。先生ってこんなに笑う人だったっけ。
「あっはっは……はぁ。まぁ、キミの言うように? 会いに行かなくてもここにいればいずれ会えるかもな」
「……ハイ、そすね!」
「ここだけの話だが、私の上司は彼女に相当お熱のようだ。彼女が落ち着いた時期を見てなんとしてもDODOに引き込みたいんだろうな」
「へぇー! やっぱ栄枯さんは特別ですからね!」
「そうだな。キミはどうするんだ、DODOに所属するために来たんじゃなかったのか?」
「あっ! いや、え」
「まさか、セックスの気持ち良さに流されて忘れていたのか?」
「え、ちが! ちがいます!」
▼▼▼
▽▽▽
午後2時10分。辺り一帯にはだだっ広いグラウンドが広がるだけで何もない。ここ数日まりじ先生の指示で探索済みの不要なビル群を青年は夏海ノ香のメンバーと共に計画的に倒壊させていた。
そして市街地Bがこれまで得た生電子エネルギーを使い地をならして新たに設けたこの仮のスキル・バトル演習場まで青年はやって来ていた。
「【味・ヤキプス】」
発動したスキルにより構えたプレートから赤い炎が一瞬だけわずかにフラッシュのように発された。
「やっぱこれちょっと炎が出るだけなんだよなぁ……料理ぐらいにしか使えないし、それも不安定で危ない気がする……栄枯さんのスキルの火力のすごさが分かる……!! やっぱ俺は……まだまだ!」
「よし次!」
「【円・ヤキプス】」
白い塊がプレート中央に徐々に溜まり──穴ぼこを開けながら広がっていく──そして発射──白い炎の輪が彼方へと飛んでいった。先程の【味・ヤキプス】より数倍アツい熱気の余韻が残り。
「うおっ!? 白い炎!?」
思わず驚いてしまった。それまでの自分には無かった技に。気がつけばプレートが重く感じる。
「やばっすごい疲れる……電子保護シールド? エネルギーを持ってかれたのか……でも炎が出た、気がするぞ!」
「おそらく前提としては吸・ホトプスからのコンボなら? でも……出・ホトプスの方が出力は上に感じるんだよなぁ……難しいなこのスキル……やっぱりホットプレートが武器じゃバトルでのハンデがありすぎるな、ちくしょう!」
「なんにしても吸・ホトプスからじゃないと俺の保護シールドが吸われるからまともな射撃攻撃が出来ないのが難点だよね? ……攻撃のバリエーションとしては本来のこいつの役割の盾で耐えてここぞの焼肉モンスターカード→出・ホトプスの中遠距離射撃で敵を斬り裂いて倒すかカードを駆使して敵を拘束してから吸・ホトプスでじわじわエネルギーを奪って他の敵を狙っていくかだよな。となるとこの【円・ヤキプス】は弾速が微妙で位置付けが曖昧だな……無理に使おうとするのはやっぱり良くないな何か【出・ホトプス】の散弾アレンジみたいにもう少し威力や命中率を上げるやりようがある気がする……先生にもあとスキル派生元の夏海さんにもアドバイス貰おうかな、1人じゃ限界が……やっぱバトルもスキルもカードの使い方も……料理も栄枯さんがいないと俺って、しょぼいなぁ…………いや、弱気になるもんか! せめて、本気のスナイパーを倒せるぐらいにはつよく!」
グラウンドの上でひとり焼けていくプレートを構えて、スキル実験兼訓練はつづく。汗を流し熱気冷めやらぬ中ぼんやりと、栄枯との再会を妄想しつつ青年は知らず口角を上げ白い歯を煌めかせた。
市街地BのバベルBはもはや立派な居住スペースとなっており先生と生徒は現世に戻らずに過ごしていた。
そんな中、ここ最近表舞台へと姿を見せたある人物の情報というものを先生は生徒へと提供した。
▼バベル24階まりじの部屋▼
午前10時32分。
白衣に適当なシャツ、これが逆に楽という研究所籠りの彼女のスタイルだ。パンツ、下着、色々とモノが混み合っているこの部屋、畳む時間が惜しいということらしい。
そんな部屋でカタカタとなるスパコンに、生徒はなんとか片付けてスペースを確保し座り自分のスキルのデータをパッドの画面で見せてもらっていた。
「栄枯さんが……はぁ、良かったです」
「会いにはいかないのか? 丘梨栄枯を愛しているのだろう? こちらも彼女の居場所ぐらいは把握していると思うが」
「愛し……そうですけど……えっと、俺フラれてるんで……何してるかも分かったしこれで、満足です。はは、栄枯さんらしいです」
「フフ、フラれた? あっはっはフフ、……狩野生徒くん自身が満足ならそれでも構わないが」
フラれた、黒髪を掻きむしりながらそんな事を堂々と明かす彼がおかしく見えて先生はひどく笑ってしまった。
そんなに笑わなくても……。先生ってこんなに笑う人だったっけ。
「あっはっは……はぁ。まぁ、キミの言うように? 会いに行かなくてもここにいればいずれ会えるかもな」
「……ハイ、そすね!」
「ここだけの話だが、私の上司は彼女に相当お熱のようだ。彼女が落ち着いた時期を見てなんとしてもDODOに引き込みたいんだろうな」
「へぇー! やっぱ栄枯さんは特別ですからね!」
「そうだな。キミはどうするんだ、DODOに所属するために来たんじゃなかったのか?」
「あっ! いや、え」
「まさか、セックスの気持ち良さに流されて忘れていたのか?」
「え、ちが! ちがいます!」
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▽▽▽
午後2時10分。辺り一帯にはだだっ広いグラウンドが広がるだけで何もない。ここ数日まりじ先生の指示で探索済みの不要なビル群を青年は夏海ノ香のメンバーと共に計画的に倒壊させていた。
そして市街地Bがこれまで得た生電子エネルギーを使い地をならして新たに設けたこの仮のスキル・バトル演習場まで青年はやって来ていた。
「【味・ヤキプス】」
発動したスキルにより構えたプレートから赤い炎が一瞬だけわずかにフラッシュのように発された。
「やっぱこれちょっと炎が出るだけなんだよなぁ……料理ぐらいにしか使えないし、それも不安定で危ない気がする……栄枯さんのスキルの火力のすごさが分かる……!! やっぱ俺は……まだまだ!」
「よし次!」
「【円・ヤキプス】」
白い塊がプレート中央に徐々に溜まり──穴ぼこを開けながら広がっていく──そして発射──白い炎の輪が彼方へと飛んでいった。先程の【味・ヤキプス】より数倍アツい熱気の余韻が残り。
「うおっ!? 白い炎!?」
思わず驚いてしまった。それまでの自分には無かった技に。気がつけばプレートが重く感じる。
「やばっすごい疲れる……電子保護シールド? エネルギーを持ってかれたのか……でも炎が出た、気がするぞ!」
「おそらく前提としては吸・ホトプスからのコンボなら? でも……出・ホトプスの方が出力は上に感じるんだよなぁ……難しいなこのスキル……やっぱりホットプレートが武器じゃバトルでのハンデがありすぎるな、ちくしょう!」
「なんにしても吸・ホトプスからじゃないと俺の保護シールドが吸われるからまともな射撃攻撃が出来ないのが難点だよね? ……攻撃のバリエーションとしては本来のこいつの役割の盾で耐えてここぞの焼肉モンスターカード→出・ホトプスの中遠距離射撃で敵を斬り裂いて倒すかカードを駆使して敵を拘束してから吸・ホトプスでじわじわエネルギーを奪って他の敵を狙っていくかだよな。となるとこの【円・ヤキプス】は弾速が微妙で位置付けが曖昧だな……無理に使おうとするのはやっぱり良くないな何か【出・ホトプス】の散弾アレンジみたいにもう少し威力や命中率を上げるやりようがある気がする……先生にもあとスキル派生元の夏海さんにもアドバイス貰おうかな、1人じゃ限界が……やっぱバトルもスキルもカードの使い方も……料理も栄枯さんがいないと俺って、しょぼいなぁ…………いや、弱気になるもんか! せめて、本気のスナイパーを倒せるぐらいにはつよく!」
グラウンドの上でひとり焼けていくプレートを構えて、スキル実験兼訓練はつづく。汗を流し熱気冷めやらぬ中ぼんやりと、栄枯との再会を妄想しつつ青年は知らず口角を上げ白い歯を煌めかせた。
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