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第158死 兵庫県→滋賀県甲賀市

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 尼崎城の栄子VSオーバー未惇、あの死の予感がぶつかり合った夜からあたらしい朝を迎え──そのまた3日後。

 甲賀流忍者見習いあやかから聞き出した情報をもとに、栄子はジム・スタイルズ舞台役者の後輩として先輩に提案のメッセを送っていた。内容はというと滋賀県甲賀市への短期合宿に、舞台現代版石川五右衛門のメンバーで行ってみないかというものであった。そして先輩からメンバーへと伝達リレーした結果、参加することになったのは舞台役者3名と監督1名、忍者1名。メンバーは、みな役者一本というわけではなく他の仕事等で忙しくこういう結果となった。

 先輩をリーダーとした少数精鋭部隊は兵庫を出発し。

 滋賀県甲賀市。栄子たちの辿り着いたここは【おしのびらんど】、忍者村に代わる甲賀流忍者の近代的テーマパークであり木製の入場ゲートをくぐると、遠方の一区画には忍の里と称した宿泊施設があり実際に寝泊まりすることが出来る。

 時刻は午前10時07分。忍び屋敷に各々の荷物を預けて五味監督の取り定めた午後2時の稽古まで各々自由時間ということになった。


【1日目】

 味のあるちゃぶ台を囲う3人の舞台役者と机上にアイスニンジャ珈琲が3つ。同じような長身スタイルのお姉様が2人、黒髪緑カチューシャデコ出しスタイルの気の強そうなお嬢様が1人。

 甲賀流忍者カフェ【ひとしのび】でその一行が店内の一間を占拠していた。

 まさにお忍びがコンセプト、仕切られた個室のようなスペース、畳の一間に3人は胡座をかき座り、兵庫から滋賀へと約2時間の車移動を果たし、とりあえずひと息。

「ここは……刺激的で良い場所だな。まさかエイコから提案されて来たものの、こういうエンターテイんメントなコンセプトは好きになれそうだ!」

「好きなんて冗談……なんで滋賀なんかに合宿なのよぉ」

「石川五右衛門は忍者説もあるらしいので、ええ」

「だからって忍者ゆかりの地に行く必要あるわけ? てかそんな説嘘っぱちでしょ。なによそれナニぺでぃあ?」

「フ、お嬢様は守られる側だからな、忍者はべらぼぅに退屈かな? ひとりでかえれるか?」

「はぁ? って、月無つきなし先輩は相変わらずそんなあからさまなのにノラないしつかれるからやめる。そもそもッ、栄子。あなたのせいで主役が3人なんて脚本もぜぇぇんぶ変わってこんな田舎くさいところに来るハメにまでなってほんと疲れるんだけど。私物化? 何を考えてるわけ? おこぼれなんて感謝してないしむしろねじ込まれたと思われて最悪なんだけど?」

 両手を広げて首を少し傾げ栄子を見つめている。お嬢様は栄子に対して何か説明しなさいとでも言いたげな表情で。

「疲れたなら休めばいいんです」

「けんか売ってる?」

「いえ、むしろ券は買いましたが」

 お嬢様の熱量に対して淡々と答えた。栄枯がポケットから取り出したチケットが3枚、細い指から机上にすっと置かれた。

「なによこのチケ」

『田舎くさくてごめんなさいね』

「ひゃっ!?」

「田舎くさい女忍者が運んできた甲賀流グレープグレープクリームソーダですのでぇ、寝首にご注意を。ではどろろん♡」

 個室に飾られた掛け軸から現れた女忍者店員はどろん、グレクリをドンと丁寧にお嬢様の前に置きまた掛け軸の裏へと細身の赤装束は戻っていった。

 突然のイベントがはじまり終わった、驚き唖然としたお嬢様とその状況に。

「ふふ」

「フフからくりか」

「なんなのよ……」

「大丈夫か? ひとりで寝れるか?」

「ハッ、あんなの冗談に」

 鼻で笑ったお嬢様が目の前のグレープ色に浮かぶマスカットアイスをひとくちスプーンで頬張ろうとしたとき──その美しい角度の顎に手をやる。

「すこし……心配ですね、かなりのやり手でしたよさっきの忍者さん。針のような殺気が私にも飛んできましたので。ええ、戸締りはきちんとしてくださいね?」

「何がやり手よ! なんのやり手!? て殺気!?」

「フッ、今のエイコは一味違うからな、こいつはべらぼぅに殺気を感じれる本物の忍びだぞ? 先輩の背後からのこちょこちょも回避しながらいつの間にか背後にいるレベルだから、な」

「そんなわけないでしょ!」

「ええ、ここまでが冗談ですので、ふふ」

「先輩相手にふざけてないで!!」

「先輩でしたか? それはいけませんね、失礼しました」

「はぁまったくなんであなたみたいなど素人が……あむ…………あっおいしい」

「ひとくち」

「フッ、せんぱいよ栄子」

「じゃあ先輩がひとくち!」

「あっ! なにすんのよ!」

「先輩」

「あぁせんぱいから先輩へひとくち」

「これは、ええ……グレープ!」

「グレープなんてふざけてんじゃないわよ!! 自分で頼みなさい!!」

「天下の大盗っ人石川五右衛門だからな、盗んだものしか私は胃袋に収めない」

「犯罪者バカ言ってェェ!!」

「ええ、これも舞台稽古なのでしょう」

「んなわけないでしょ!!」


『…………①グレープ(仮)』



 カフェでの雑談とクールタイムを満喫した一行は先刻、栄子が見せたおしのびらんどで使用可能な3枚のピンク色のお色気プレミアムエステチケットをせっかくだからという流れで使用する事にした。



▼▼▼
▽▽▽



 チケットを手渡し、受付の女忍者に案内された一行は、進入するや否やピンクの門を外から閉められ、スタート。

 標識看板に従い──石垣をよじのぼり──おそるおそる覗き込んだ古井戸に掛けられた梯子を降り──地下の抜け道を走り抜けていく。


「ちょっと! これのどこが! 最高級エステへの招待券なのよ!」

「お色気クノイチボディになれると書いていました、ええ!」

「はははは、ひじょうに冗談がすぎるなエイコ、はははは」

「このワタシをだまして疲れさせてェェコウハイ栄子! やっぱり喧嘩売ってるんじゃないの!」

「ふふ……ええ、ひじょうに!」

「こら待てェェ待ちなさいッ笑って誤魔化すなぁァァァ」


 ──井戸から井戸へ抜け出し──飛び交うスポンジ手裏剣と混じるホンモノを避け回転するふとい一本の丸太の橋を渡っていく。甲賀流高級エステとお色気クノイチボディに釣られた栄子と先輩とせんぱいは髪を靡かせ白い歯をみせコースを駆け抜けていく。


『…………②スタイルT1B2』
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