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第157死 DODOの事務局長
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時刻は22時05分、大阪府堺市DODO本部。
今日という日、死の予感が漂うこの特別騒がしい夜にDODOのトップである彼女もまた死のダンジョンに携わるトップとして精力的に地盤固めに励んでいた。
名は狗雨雷叢雲と周りに呼ばせている。なんとも威厳のありそうな名前であり、現在のDODOのトップとして君臨する事務局長である。
黒を基調としたシックな部屋、ゲスト用の2列の黒いソファーで2人は程々の熱さの紅茶をいただきつつ向かい合う。
白服がそこにいる。少しきつい狐顔をした女、長い黒艶髪はいたって癖のないストレートであり、いつもの白い制帽を脱いでいる。
「やはりこの堺ベースは実に未来的で素晴らしい、ドローンの駐留地点としても申し分はない。物流は目に見えて改善されていきますます発展する要素しかない。邁進してきたクウラ殿も」
「お褒めいただきありがとうございます。エスト社の社長自ら出向いてくださるとは」
「出向くさ。この日本という島国では資源的にも成長の限界に来ていたところ、そんな停滞していた時代に電境の死のダンジョンへの投資は惜しむべきではない。国がやらないのなら私が出資しよう。よくその若さでしかも女の身でありながら先導しやってくれたものだ、私もその意欲と野心を見習いたいね」
出向いて来たというこの男、鼠色のスーツにネズミ色のネクタイ。右の眉下鼻筋付近にひとつあるデカい黒子がシンボル、年齢は60代半ばイヤでも覚えてしまうネチっとした陰がある顔をした白髪の男だ。
紅茶に……茶菓子のハチミツたっぷり高級カステラを拒否しアイスキャンデーを頬張っている。クウラが念の為に用意していたものだ、ここ大阪では取引先との勝負はこの棒一本で決まるという嘘か本当か分からない情報を手にしいつも冷蔵庫に備蓄していた。
「…………ふふ、グローバリズムなどという大変素晴らしい完全無欠の繋がりが時には大き過ぎる……隙を生み出すことがあります。死人が出るので危険なので、みんなこの地雷原には立ち入り禁止と。そんな忠告を無視する……元気の良い弟を持っていると困ります。おかげで私は尻拭いで元いた会社を辞めこんなことをやらされています。そんな巡り合わせもあってか我々DODOは事業の先行に成功しました、笑ってくださいふふふ」
「はははは本当に君は強い女性だな、まさに今という成熟した時代を代表するような。ところでここ最近は悪い噂も多いようだな苦境に立たされているようだが……大国の僻み文句を言う輩もなに流行ってしまえば世間が認めてしまえばどうとでもなるだろう。薄く太く繋がればいいそれこそグローバリズムというやつでな、もちろん相手は選ぶ事だ」
「ええ、本当におっしゃる通りです。死のダンジョンは今や人々の裏の娯楽のメインストリーム、非常に刺激的な。点と点で結び繋がった裏が表に翻るのなんて容易いことではありませんか」
「それを私は裏から見させてもらうよクウラムラクモくん」
「ええ、共に成長していきましょう」
「そうだな。このような面白い時代の転換期にとりあえずは……駐留させるドローンを増やし風を読むとしよう。共にするとは言葉ではなくそういうことだ、はははは。ではこの君の堺市をたのんだよクウラ殿。そうだシカイハイのブツも君の所で預かっていてくれ、君たちは自由人のようで羨ましいそちらも期待しているよ」
「ええ、お任せを」
────上機嫌、鼠色の背広は黒い部屋から出ていった。
対面にある黒いティーカップの上にアイスの棒が載っている、それが彼女を突き刺していた。
立ち上がって深々と一礼をした事務局長はその場を離れて────自分の持ち場へと戻った。机上に置いていた白い制帽を被り、スパコンを開きデータベース【スパイダー忍者】へとアクセスしていく。
「エスト電機。ヤクトドローンの次はスリムアンドロイド。介護用アンドロイドから行き着くところは大型化の子供じみた遊びかそれとも──EXS計画、EXS-069。強大なバックアップ……出資者と言っても裏ではいかがわしい別企業とこんな物を推し進めている」
「やはりいくら上り詰めようと軽くみられている、男はいつもそう。男女平等を謳いながらもこのような事……倫理の外枠を平気で齧り犯す。必ず先、下卑た欲望に駆られ試されるのはいつも女という生物。機械人形にさえ性のつながりを求めこのような模造品を下っ端に造らせこそこそと挑んでくるのならば……」
「はぁ……感情のままに動きたい。……いいでしょう、今はまだ敵と味方などという明確な区別はありません。個人的な怒りに身を任せていると私も同類になってしまいます。機械もAIも男も女も利用できます。でも……やがて人の持つ黒ずんだ本質とは浮き彫りになるのですよ、その時こそ……見えていた未来に備えていた自力が活きるというもの」
溜め息とともに勢いよくスパコンは閉じられた。
ヒールで地を蹴りぐるりぐるりとチェアーを回すのはもう癖になっているのだろう。
そしてもうひとつまた癖とは言えないが。彼女の最近のブームといえばこのパンとこの飲み物。
デスク下にある簡易冷蔵庫から取り出した。
あんぱんと牛乳。
「このように単純であってほしいものです。何故履き違えるのです、黒を白く私があむっ……あむっ……ごくごきゅ」
「導いてみせます──ごきゅきゅきゅ」
アンパン片手に牛乳はパックを開いた嘴から直飲み。誰も見ていない──そういう時ほど人の本質は浮き彫りになる。
甲賀流見習い忍者からのプレゼントは事務局長狗雨雷叢雲の晴らされないストレス発散に一役買っているようだ。
今日という日、死の予感が漂うこの特別騒がしい夜にDODOのトップである彼女もまた死のダンジョンに携わるトップとして精力的に地盤固めに励んでいた。
名は狗雨雷叢雲と周りに呼ばせている。なんとも威厳のありそうな名前であり、現在のDODOのトップとして君臨する事務局長である。
黒を基調としたシックな部屋、ゲスト用の2列の黒いソファーで2人は程々の熱さの紅茶をいただきつつ向かい合う。
白服がそこにいる。少しきつい狐顔をした女、長い黒艶髪はいたって癖のないストレートであり、いつもの白い制帽を脱いでいる。
「やはりこの堺ベースは実に未来的で素晴らしい、ドローンの駐留地点としても申し分はない。物流は目に見えて改善されていきますます発展する要素しかない。邁進してきたクウラ殿も」
「お褒めいただきありがとうございます。エスト社の社長自ら出向いてくださるとは」
「出向くさ。この日本という島国では資源的にも成長の限界に来ていたところ、そんな停滞していた時代に電境の死のダンジョンへの投資は惜しむべきではない。国がやらないのなら私が出資しよう。よくその若さでしかも女の身でありながら先導しやってくれたものだ、私もその意欲と野心を見習いたいね」
出向いて来たというこの男、鼠色のスーツにネズミ色のネクタイ。右の眉下鼻筋付近にひとつあるデカい黒子がシンボル、年齢は60代半ばイヤでも覚えてしまうネチっとした陰がある顔をした白髪の男だ。
紅茶に……茶菓子のハチミツたっぷり高級カステラを拒否しアイスキャンデーを頬張っている。クウラが念の為に用意していたものだ、ここ大阪では取引先との勝負はこの棒一本で決まるという嘘か本当か分からない情報を手にしいつも冷蔵庫に備蓄していた。
「…………ふふ、グローバリズムなどという大変素晴らしい完全無欠の繋がりが時には大き過ぎる……隙を生み出すことがあります。死人が出るので危険なので、みんなこの地雷原には立ち入り禁止と。そんな忠告を無視する……元気の良い弟を持っていると困ります。おかげで私は尻拭いで元いた会社を辞めこんなことをやらされています。そんな巡り合わせもあってか我々DODOは事業の先行に成功しました、笑ってくださいふふふ」
「はははは本当に君は強い女性だな、まさに今という成熟した時代を代表するような。ところでここ最近は悪い噂も多いようだな苦境に立たされているようだが……大国の僻み文句を言う輩もなに流行ってしまえば世間が認めてしまえばどうとでもなるだろう。薄く太く繋がればいいそれこそグローバリズムというやつでな、もちろん相手は選ぶ事だ」
「ええ、本当におっしゃる通りです。死のダンジョンは今や人々の裏の娯楽のメインストリーム、非常に刺激的な。点と点で結び繋がった裏が表に翻るのなんて容易いことではありませんか」
「それを私は裏から見させてもらうよクウラムラクモくん」
「ええ、共に成長していきましょう」
「そうだな。このような面白い時代の転換期にとりあえずは……駐留させるドローンを増やし風を読むとしよう。共にするとは言葉ではなくそういうことだ、はははは。ではこの君の堺市をたのんだよクウラ殿。そうだシカイハイのブツも君の所で預かっていてくれ、君たちは自由人のようで羨ましいそちらも期待しているよ」
「ええ、お任せを」
────上機嫌、鼠色の背広は黒い部屋から出ていった。
対面にある黒いティーカップの上にアイスの棒が載っている、それが彼女を突き刺していた。
立ち上がって深々と一礼をした事務局長はその場を離れて────自分の持ち場へと戻った。机上に置いていた白い制帽を被り、スパコンを開きデータベース【スパイダー忍者】へとアクセスしていく。
「エスト電機。ヤクトドローンの次はスリムアンドロイド。介護用アンドロイドから行き着くところは大型化の子供じみた遊びかそれとも──EXS計画、EXS-069。強大なバックアップ……出資者と言っても裏ではいかがわしい別企業とこんな物を推し進めている」
「やはりいくら上り詰めようと軽くみられている、男はいつもそう。男女平等を謳いながらもこのような事……倫理の外枠を平気で齧り犯す。必ず先、下卑た欲望に駆られ試されるのはいつも女という生物。機械人形にさえ性のつながりを求めこのような模造品を下っ端に造らせこそこそと挑んでくるのならば……」
「はぁ……感情のままに動きたい。……いいでしょう、今はまだ敵と味方などという明確な区別はありません。個人的な怒りに身を任せていると私も同類になってしまいます。機械もAIも男も女も利用できます。でも……やがて人の持つ黒ずんだ本質とは浮き彫りになるのですよ、その時こそ……見えていた未来に備えていた自力が活きるというもの」
溜め息とともに勢いよくスパコンは閉じられた。
ヒールで地を蹴りぐるりぐるりとチェアーを回すのはもう癖になっているのだろう。
そしてもうひとつまた癖とは言えないが。彼女の最近のブームといえばこのパンとこの飲み物。
デスク下にある簡易冷蔵庫から取り出した。
あんぱんと牛乳。
「このように単純であってほしいものです。何故履き違えるのです、黒を白く私があむっ……あむっ……ごくごきゅ」
「導いてみせます──ごきゅきゅきゅ」
アンパン片手に牛乳はパックを開いた嘴から直飲み。誰も見ていない──そういう時ほど人の本質は浮き彫りになる。
甲賀流見習い忍者からのプレゼントは事務局長狗雨雷叢雲の晴らされないストレス発散に一役買っているようだ。
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