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第139死 ヒョウ柄VSカーキモブ

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 境光をくぐった2人の男は今、鉄まりが生み出したリアルシミュレーターの中にいる。現世の境を越えた身体の情報を生電子へと置き換えて安定し存在することを許されている。

 AIカメラは映し出す、このセカイを。

 時刻は0時過ぎ、見上げる晴れ晴れとした青天に、ビルや並び立つ民家、公園、アスファルトの道路。ここは鉄まり様が作り出したセカイ、市街地B。

『焦るなよ男子2人、はじめる前にまずは私のセカイのルール説明といこう。手持ちのカードを確認してみてくれ20枚あるだろう。よぉくシャッフルしたランダムなデッキを用意した、それが君たちそれぞれの死のダンジョンと同じバトルカードということだ』

「なるほどな」

「……なるほど」


 信号は赤、車も走らない静寂、現代人の見慣れた景色なのにここまで静かではそれは異様である、スクランブル交差点の真ん中に2人の男が見合って突っ立っている。天から聞こえてくる声に耳を傾けながら、何故かいつの間にか既に適当なポッケの中に入れられていたカードデッキを確認していく。

 ヤル気マンマンの男の近い睨み顔に釣られて、説得に来たはずの青年は知らず思わずカードを確認してやり過ごしてしまった。



ぼこ:だからちけぇよ

ぼこ:そうぞうさせるな

ぼこ:おまえらが勝手に妄想してるだけなんやがな

ぼこ:なるほどなるほ

ぼこ:↑チンキス!

ぼこ:そういうのは美少女同士だけでたのむ

ぼこ:子供の幼稚じゃねんだから

ぼこ:生徒だけどな

ぼこ:おまえさぁ……んなことよりすごい事をやってる気がするんですが

ぼこ:死のダンジョンの探索者対人バトル解禁!?

ぼこ:鉄まり様うおおおお

ぼこ:そんな歴史的な初バトルがこの私服ダサいコンビでええんか?

ぼこ:ヒョウ柄VSカーキモブ

ぼこ:ファイッ



『私が研究用に作ったこの何の変哲もない市街地Bがとりあえずのバトルステージということだ。そしてこのままはじめても少しお互い近すぎてエンターテイんメントとしては野蛮だろう、何事もルールが必要ルールがある方が面白い……ということもある。ステージをこちら側で800m四方の範囲に限定した。万が一エリア外に出た場合はキミ達のシールド値が徐々に減りつづけ20カウント以内にエリア内に戻らなければその時点で敗北とみなす。ここは市街地だ奇襲するのもよし、身を隠しながら上手く戦うのもいいだろう。私は戦士じゃないから知らないがな、説明は以上だ。ではランダム転送するぞ、至ってフェアで運要素も程々にシンプルだろうフフ』

「ハッ、いいからさっさと始めようぜ」

「あのちょ、あのメッセも俺知らな」

 ヒョウ柄のチンピラはルール説明を聞きながらも脚を伸ばして準備運動のルーチンを既に終えていた。抜かりのないヤル気マンマンは、青年を最後まで睨み笑い、ビュンとその場から消えていった。

 スクランブル交差点に2人の姿は無くなり信号は一斉に青へと変わった──それがこのDODOボールのはじまりの合図であった。



▼▼▼
▽▽▽



「意外とタフで動けるじゃねぇか亀ガキ!!」

「ほんとに俺身に覚えがないんですって!」

「ちゃっかりカードを確認してたじゃねぇか! 殺す気マンマンの殺し合いに同意したのと同じなんだよ亀ガキィィ!」

「いやいや! アレは違くて!? 俺ほんとお兄さんの連絡先も知りませんし」

「そんなこたぁどうでもいい竜宮城で死ねやァァ!!」

「ええ!? ちょ落ち着いてください市街地です。俺対人なんて無理っすよ!!」

「うるせぇ亀ガキ! その黄色いスポーティーでイカした靴もお前なんかが履くにはもったいねぇ俺に寄越せェェ! この靴狩りのチーター様によおお!」

「靴うううう!? ちょサイズも合いませんし!! そんな他人の靴なんて臭くてばっちぃですよ!!」

「うるせぇ塵ひとつねぇ新品だ! この靴狩りのチーター様の眼は誤魔化せやしねぇぜ! お前の青くせぇのろまな歴史も俺の健脚で消臭すんだよははははは!!」

「だから鍛えてるなら普通に自分のサイズ買ってくださいって! 靴ぐらい自分で!」

「そこまでしてワタさねぇたぁ余程良い靴でお前の大事な靴なんだろ! はははははサイズを言ってみろ諦めてやっからよォォ!」

「ええ!? えっと、26.0ですけど! こんなの」
「ピッタリ竜宮城だァァァ亀ガキィィ」

「んなわけェェ!?」

「バスケの神様も31.0なんだよはははははは身長があろうがいくらサッカーボールを蹴ろうが走ろうが関係ねぇ!! はははははは超速で盗ませろォォ」

「あんたの言ってる事滅茶苦茶なんすけど! ──チッ、喰らえ!」

 
 公園でチンピラとやり合っていた青年は切り札を切り、金平糖を一粒投げ放った。黒いヒョウ柄の靴がメインウェポン、鋭い蹴りと素速い動きで青年を追いかけ蹴り続けた男を狙った。

 金平糖の爆撃を横ステップし避ける。当たらない赤い爆発が公園の砂地を彩る。そしてまた投げる! ──フリをした青年は男が無駄に構えた隙をみて跳躍。

 ──着地した黄色いスポーティーは、位置を確認していたジャングルジムのテッペンから更に跳躍移動し滑り台へと乗り継ぎ勢いよくカーブをすべり降りた。

 追ってきたからチンピラの遊具破壊キックを翻弄しやり過ごし、滑り台の先端からおおきく弾き出させた。

 宙を舞った青年は──事前に用意していたカットビンポリンへと着地し膜を踏み締め──天へとかっ飛ばされ逃れていった。


 怒りをぶつけられ、蹴られ、ひしゃげ曲がるジャングルジム。

「野郎!? この俺を翻弄しやがるとは許さねぇぞ亀ガキィィ!! へ、へへへ、ニシテモやっぱりいいぜぇソレはよぉ黄色いスポーティーは俺んダァァァシュ奪取ゥゥゥ────」



──MMO──

ホップ:【SR】カットビンポリン

ホップ:【SR】金平糖手榴弾



ぼこ:なんかやってんだろコイツ

ぼこ:謎の英会話

ぼこ:謎の肉弾戦

ぼこ:こういうのでいいんだよ

ぼこ:靴狩りのチーターってなんやねん

ぼこ:てかはええ

ぼこ:さすが速さだけの男

ぼこ:キスして靴のサイズまでピッタリ竜宮城とかこれもう相思相愛だろ

ぼこ:記念すべき初バトルが盗っ人犯罪者と被害者カーキモブとかいう……

ぼこ:カーキモブが魅せた件

ぼこ:カキモブうおおおお

ぼこ:舐めプの魅せプか!? やるじゃん

ぼこ:狂ってて服がダサい割にはまともに戦ってる模様

ぼこ:カードの使い方がうまい(ホトプレ並感)

ぼこ:てか本人じゃね?

ぼこ:チンピラが圧勝かと思ったら割と良い試合になってる

ぼこ:パズルみてぇ

ぼこ:どこ飛んでくねぇぇぇぇん!



▼▼▼
▽▽▽



 かっ飛ばされ着地した地は広いスクランブル交差点のど真ん中であった。またこの場へと戻ってきてしまった青年は、恐ろしく素速い肉食動物の蹴りを耐え凌いでいた。

「俺の速さはナァッ、俺はッチーターの三倍速いんだぜ亀ガキ!」

「あめぇあめぇよ! おめぇら探索者が馬鹿のように崇めてる金平糖なんか当たらねぇんだよ三倍の靴狩りのチーター様にはよォォォォ」

 四方八方から超速の獣の鋭い黒い牙が襲いかかる。スクランブル交差点のど真ん中に突っ立つカーキ色の案山子に対して通りすがりに蹴りを一発入れては市街地へと溶け込み失せていく。まさに超速のヒット&アウェイ戦法。


「──ッッダメだ相手は泥棒の異常者、説得は失敗それに強い……すみません先生ください!」

 青年は手に持ちカウンターの脅威を与えていた金平糖をアスファルトの地へと捨て、自身の周囲をカラフルな爆炎と煙幕で覆い身を隠した。

「はは目眩しのつもりか、当たらないからってヤケになるなよ」

『初回サービスだぞ』

「いいぜいいぜその煙が止んだ時が最後だ、超速必殺のカードコンボの一撃ガァァァどこから来るか当てて見ろ亀ガ──」
「出・ホトプスっでええええい!!!!」


 一瞬の白い刃は斬り裂いた。

 やがて爆炎と煙が止み、胴から真横に真っ二つに斬られたヒョウ柄を着たナニかが──そこに転がっていた。

 首を振り敵を探した青年の遠方に、スパッとふたつになったものがある。


「え、死んだ!? ちょ、え!?」


 やがて真っ二つにされたまま青年を睨むヒョウ柄の男は光の粒へと還った。

 彼方へと行き届いた光がその威力の跡を残している、轟音を響かせ崩れ落ちる建物の数々。


『わざと忘れ物とはいけない生徒だ。フフフふ』


 天から舞い降りた忘れ物を受け取った青年は召喚したエネルギータンクにプラグを繋ぎ、本人的には当たればひじょうにラッキー、全力のホットプレート回転斬りビームソードの初撃をチンピラにお見舞いした。

 やかましかった男の声が今はしない、青年は交差点のど真ん中に唖然と──勝敗は明らかに決してしまった。



──MMO──

ホップ:【SR】金平糖手榴弾

ホップ:【FS】焼き肉モンスター

ホップ:電子保護シールド残量47%
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