138 / 293
第137死 リアルシミュレーター
しおりを挟む
「いきます先生、識・ホトプス!」
光を壁面に投影し続けるシミュレーターにホットプレートのプラグを挿入し、青年は先生の指示にしたがい識・ホトプスのスキルを発動した。
「────これはなるほど……フフ手詰まりだったのがびっくりするほど簡単じゃないか」
「──やはり人類というのは突き詰めたミライッ、無限のシミュレーターの中にいるようだな。……成功だ」
プレートの上に乗せた青いカードは焼けている。まりじ先生はそのカードの焼けた面を確認し白い歯を見せたままスパコンでの入力作業に取り掛かっていた。
「え成功!? 先生そのカードって一体」
「クエストカードだ」
「クエストカード?」
「とあるマッドな探索者がねたまたま手に入れたものらしい、私はシミュレーターを作るに当たってただの電子プログラミング情報のワールドシミュレーターではなく電境セカイと同じく生電子を含むこれを研究しつづけていたわけさ」
現人類が技術革新しつづけ作り上げたWS仮想電子シミュレーターと、ここ数年の発見である死のダンジョンのある電境セカイは性質が全くもって違う。優勢電子とも呼ばれており、現世との境を人間の生身が行き来可能にする生電子を多量に含んだ未知のセカイ、それが電境セカイ。
「なるほど、クエストカード……でもそれ1枚で何が?」
「何が分かるかというとね、フフ、いいだろうENの先生だからな。このカードをさっき私はしきりに触っていただろ?」
「はい、念じるように触ってましたね?」
「そうだ、私のパーソナルデータをこのカードに読み取らせていたのだよ、フフ、なんとなく想像はつかないか狩野生徒くん?」
「えっと、識別のホトプスで向こうの情報が分かったとか? でもそれって……わからないんですけど……」
「正解でハズレだ。だが答えは狩野生徒くんみたいにシンプルだぞ。フフ、べたべたと指紋たっぷりのねあっちにぽいっと捨てたのさもう一枚を」
「……あ!」
「そうだそうだこの青いクエストカードは私の深層心理まで読み取るというじゃないか、つまり完璧に本来の私よりも私ということだ。そして識別のホトプスであっちのカードの私とこっちを繋げば勝手にキミのホットプレートが同一性を検索しあちらの私の生電子の詳細過ぎる反転情報が炙り出されるというものだ!」
「……はぁなるほど……! す、すごすぎる先生……!」
「それは素直にうれしいな狩野生徒くん! ではさっそく既に境光はブレンドした行ってくる、茶でも飲んで見守っていてくれ!」
クエストカードの生電子情報を読み取りスパコンでシミュレーターの境光の調整を終えた金髪白衣は、椅子から立ち上がり作業台を離れた。
まりじ先生は壁に投影したままであるオリジナルブレンドの境光を白衣のまま迷いなくくぐってこの部屋から消えていった。
「なんかいきなりすごいことに……なってる? それとまりじ先生行動が早すぎる……! えっとお茶お茶────」
▼▼▼
▽▽▽
「オーケーだ、完璧に分かった」
帰って来た──また両手を広げ待っていた金髪研究者に青年は用意していた冷たいアイスティーのカップを手渡した。
生徒にハグをすかされてしまい年甲斐もなく少し頬を膨らませた女は、受け取ったカップをあおった。
「ぷふぅー、あちらに行き生電子の私となりまたこの部屋に帰ってこれた、よって安定性安全性に問題はない大成功だ私のオリジナルシミュレーターは現存の電境セカイとは全く独立した新たに誕生した小さな電境セカイといったところだろう、少し本物には劣りはするがナニこれからだ!」
「誕生なんて、まじですごいことやっちゃったんすね……先生……!」
「ん、ははははそうか? すごいと言っても手詰まりを焼いてくれたキミのホットプレートのおかげだがね。まそんなことはさておき、よしじゃあ、実験を続けようじゃないか!」
「え?」
「え、じゃないぞ? このままで終わってはただのお遊びな砂場を作っただけで意味がない、これが本当に人類にとってのリアルシミュレーターならば何か適当な祭りや人員が必要だろう? なに成功したときのステージの準備は既に出来ているENのまりじ様だぞ? ENの狩野生徒くんキミも準備しておけ」
「俺も……!? なんの準備!?」
▼▼▼
▽▽▽
がさごそと鉄の仮面を被り、スパコンを操作し終えて準備は完了しスタートした。
「──実験モルモットを募集したわけだよ、ここは命知らずが多いからね」
「えちょ!?」
「じゃあ吐い信を始めるぞ私は今から吐い信者鉄まり様だ」
「はじめようじゃないかDODOボールを!」
「ドッツ……ボール?」
予約していたぼこぼこチューブはさっき登録したばかりの女吐い信者の生吐い信をスタートさせた、0時ちょうど。
鉄まり様が自作したVR拡張ホログラムライトにより、AIカメラに映る部屋は模様替えされ薄暗い緑の明かりが行き渡るマッドな実験施設の雰囲気が漂っている。片付けられない機器類はそのまま偽りのハリボテ実験機器へとホログラムで覆い変換されていた。
▼鉄まり様の生吐い信だよ、生徒くん▼
ぼこ:はいはじまってお
ぼこ:↑チンキス
ぼこ:いきなりはじめんな
ぼこ:だれだよ
ぼこ:鉄まり様やろ
ぼこ:なんなんここ
ぼこ:マッドサイエンスな変態吐い信鉄まり様うおおおお、しらんけど
ぼこ:どこで売っとんねんその仮面
ぼこ:コンセプト不明
ぼこ:俺ら生徒くんらしいぞ
ぼこ:生徒くん(41)
ぼこ:てか声女やん!
ぼこ:おそらく若くはなさそう
ぼこ:仮面で年齢が読めなぁぁぁあい!!!!
ぼこ:おまえらの年齢遊びが対策された模様
ぼこ:初吐い信で対策ってそれもう
ぼこ:↑はいチンキス
ぼこ:これ鉄まりの黒歴史になるんだよね
ぼこ:となりイケメンおるな
ぼこ:鉄仮面とモブ助手
ぼこ:だれだよこの56点男
ぼこ:感想。服がダサい
ぼこ:ん?
ぼこ:ドッツ……ボール?
ぼこ:モブも分かってない模様
ぼこ:おそらく昼休みにやる球技
ぼこ:この界隈モブ男流行ってんのか
ぼこ:どっかで見たような見た目のモブしかいない模様
ぼこ:どこここ死のダンジョン?
ぼこ:実家だよ!
「お前か調子に乗ってドッツに乗り込んで来た迷子のひょろガキは」
「弱そ、香姉さんわたしチョコっと轢き殺していいかな?」
「いいんじゃないの夏海。しゃしゃっと終わりそうだわ」
「私でも勝てそうかもじゃん」
AIカメラにはぞろぞろとこの不気味な実験部屋に侵入してきた大人の男1人、女3人の様子が映し出された。
光を壁面に投影し続けるシミュレーターにホットプレートのプラグを挿入し、青年は先生の指示にしたがい識・ホトプスのスキルを発動した。
「────これはなるほど……フフ手詰まりだったのがびっくりするほど簡単じゃないか」
「──やはり人類というのは突き詰めたミライッ、無限のシミュレーターの中にいるようだな。……成功だ」
プレートの上に乗せた青いカードは焼けている。まりじ先生はそのカードの焼けた面を確認し白い歯を見せたままスパコンでの入力作業に取り掛かっていた。
「え成功!? 先生そのカードって一体」
「クエストカードだ」
「クエストカード?」
「とあるマッドな探索者がねたまたま手に入れたものらしい、私はシミュレーターを作るに当たってただの電子プログラミング情報のワールドシミュレーターではなく電境セカイと同じく生電子を含むこれを研究しつづけていたわけさ」
現人類が技術革新しつづけ作り上げたWS仮想電子シミュレーターと、ここ数年の発見である死のダンジョンのある電境セカイは性質が全くもって違う。優勢電子とも呼ばれており、現世との境を人間の生身が行き来可能にする生電子を多量に含んだ未知のセカイ、それが電境セカイ。
「なるほど、クエストカード……でもそれ1枚で何が?」
「何が分かるかというとね、フフ、いいだろうENの先生だからな。このカードをさっき私はしきりに触っていただろ?」
「はい、念じるように触ってましたね?」
「そうだ、私のパーソナルデータをこのカードに読み取らせていたのだよ、フフ、なんとなく想像はつかないか狩野生徒くん?」
「えっと、識別のホトプスで向こうの情報が分かったとか? でもそれって……わからないんですけど……」
「正解でハズレだ。だが答えは狩野生徒くんみたいにシンプルだぞ。フフ、べたべたと指紋たっぷりのねあっちにぽいっと捨てたのさもう一枚を」
「……あ!」
「そうだそうだこの青いクエストカードは私の深層心理まで読み取るというじゃないか、つまり完璧に本来の私よりも私ということだ。そして識別のホトプスであっちのカードの私とこっちを繋げば勝手にキミのホットプレートが同一性を検索しあちらの私の生電子の詳細過ぎる反転情報が炙り出されるというものだ!」
「……はぁなるほど……! す、すごすぎる先生……!」
「それは素直にうれしいな狩野生徒くん! ではさっそく既に境光はブレンドした行ってくる、茶でも飲んで見守っていてくれ!」
クエストカードの生電子情報を読み取りスパコンでシミュレーターの境光の調整を終えた金髪白衣は、椅子から立ち上がり作業台を離れた。
まりじ先生は壁に投影したままであるオリジナルブレンドの境光を白衣のまま迷いなくくぐってこの部屋から消えていった。
「なんかいきなりすごいことに……なってる? それとまりじ先生行動が早すぎる……! えっとお茶お茶────」
▼▼▼
▽▽▽
「オーケーだ、完璧に分かった」
帰って来た──また両手を広げ待っていた金髪研究者に青年は用意していた冷たいアイスティーのカップを手渡した。
生徒にハグをすかされてしまい年甲斐もなく少し頬を膨らませた女は、受け取ったカップをあおった。
「ぷふぅー、あちらに行き生電子の私となりまたこの部屋に帰ってこれた、よって安定性安全性に問題はない大成功だ私のオリジナルシミュレーターは現存の電境セカイとは全く独立した新たに誕生した小さな電境セカイといったところだろう、少し本物には劣りはするがナニこれからだ!」
「誕生なんて、まじですごいことやっちゃったんすね……先生……!」
「ん、ははははそうか? すごいと言っても手詰まりを焼いてくれたキミのホットプレートのおかげだがね。まそんなことはさておき、よしじゃあ、実験を続けようじゃないか!」
「え?」
「え、じゃないぞ? このままで終わってはただのお遊びな砂場を作っただけで意味がない、これが本当に人類にとってのリアルシミュレーターならば何か適当な祭りや人員が必要だろう? なに成功したときのステージの準備は既に出来ているENのまりじ様だぞ? ENの狩野生徒くんキミも準備しておけ」
「俺も……!? なんの準備!?」
▼▼▼
▽▽▽
がさごそと鉄の仮面を被り、スパコンを操作し終えて準備は完了しスタートした。
「──実験モルモットを募集したわけだよ、ここは命知らずが多いからね」
「えちょ!?」
「じゃあ吐い信を始めるぞ私は今から吐い信者鉄まり様だ」
「はじめようじゃないかDODOボールを!」
「ドッツ……ボール?」
予約していたぼこぼこチューブはさっき登録したばかりの女吐い信者の生吐い信をスタートさせた、0時ちょうど。
鉄まり様が自作したVR拡張ホログラムライトにより、AIカメラに映る部屋は模様替えされ薄暗い緑の明かりが行き渡るマッドな実験施設の雰囲気が漂っている。片付けられない機器類はそのまま偽りのハリボテ実験機器へとホログラムで覆い変換されていた。
▼鉄まり様の生吐い信だよ、生徒くん▼
ぼこ:はいはじまってお
ぼこ:↑チンキス
ぼこ:いきなりはじめんな
ぼこ:だれだよ
ぼこ:鉄まり様やろ
ぼこ:なんなんここ
ぼこ:マッドサイエンスな変態吐い信鉄まり様うおおおお、しらんけど
ぼこ:どこで売っとんねんその仮面
ぼこ:コンセプト不明
ぼこ:俺ら生徒くんらしいぞ
ぼこ:生徒くん(41)
ぼこ:てか声女やん!
ぼこ:おそらく若くはなさそう
ぼこ:仮面で年齢が読めなぁぁぁあい!!!!
ぼこ:おまえらの年齢遊びが対策された模様
ぼこ:初吐い信で対策ってそれもう
ぼこ:↑はいチンキス
ぼこ:これ鉄まりの黒歴史になるんだよね
ぼこ:となりイケメンおるな
ぼこ:鉄仮面とモブ助手
ぼこ:だれだよこの56点男
ぼこ:感想。服がダサい
ぼこ:ん?
ぼこ:ドッツ……ボール?
ぼこ:モブも分かってない模様
ぼこ:おそらく昼休みにやる球技
ぼこ:この界隈モブ男流行ってんのか
ぼこ:どっかで見たような見た目のモブしかいない模様
ぼこ:どこここ死のダンジョン?
ぼこ:実家だよ!
「お前か調子に乗ってドッツに乗り込んで来た迷子のひょろガキは」
「弱そ、香姉さんわたしチョコっと轢き殺していいかな?」
「いいんじゃないの夏海。しゃしゃっと終わりそうだわ」
「私でも勝てそうかもじゃん」
AIカメラにはぞろぞろとこの不気味な実験部屋に侵入してきた大人の男1人、女3人の様子が映し出された。
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる