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第101死 ラストバトル!❷

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 なぜ私はまた目を閉じてしまったのだろう。それは舐められた分をこれからべらぼぅにお返しするつもりでもあるし、このちいさなメラメラがそうしろと私にうのですよ。私の安い命はここに置いてある、貫けるものなら試してないで貫けばいい、なるべくじかんをかけてね、ふふ。金ポデさんナイト、イケてる銀狼様それに彼。きっと大丈夫これが最後な気がするから────集中、吐い信者丘梨栄枯死のダンジョンですよ。

 右手を握りしめ何か意味あり気な瞑想でもするかのように。丘梨栄枯は幻闘シミュレーターのグリッドを展開した砂漠の上に佇む。突っ立ったままの彼女の前で既に──


 白い閃光が黒い砂漠を彩る。栄枯がスキルを発動した途端に、合わせたかのようにその化け物は脚を飛ばし動き出していた。

 白い閃光は敵の脚をおおきく抉り過ぎ去り、なおも栄枯の元へと向かうその損壊した白龍の1脚。

「これが味方かよ! 古参ナイトはすっかり成長限界のアイテム担当だぜぇ」

《パーティーセイゲ枠ないからダイジョブだよナイト》

「ははは、追放されなくて感謝だぜぇ死のダンジョンさんよぉー、喰らえッ!」

 宙をカラフルに彩った【UR】金平糖手榴弾Mark-Ⅱ。ナイトはホトプレの射撃後のタイミングを見計らい金平糖を投げつけ近寄ってきた食べカスを燃やし尽くした。

「ひゅー、やっぱこれだぜぇ」

《ツマリワナゲしょぼかった!》

「ははは、死のダンジョンはよ火力バランス調整しとけぇー!」


 さっきのは小手調べでチカラを測り間違えたのか、更なる白龍の編隊が向かって来る。

 目視とMMOのマップで射線上に味方がいない事を確認した黒いプレートは薙ぎ払い乱れ撃つ。スーパードローンを代わる代わる接続しエネルギーを補給し、照射。大出力の遠距離レーザー攻撃が彼方を白く染め上げていく。



ぼこ:バケモノ

ぼこ:またチートになってて笑った

ぼこ:さすがに苦笑い

ぼこ:ドローンにホットプレートを接続する馬鹿

ぼこ:スーパードローンさんもびっくり!

ぼこ:そういやダブルエースだったわこの夫妻

ぼこ:寵愛が止まらないもよう

ぼこ:クソみたいなスキルで成り上がり

ぼこ:どこがクソなのか

ぼこ:エースが金ポデだった時代がなつかしいな

ぼこ:栄枯とホトプレのインフレがおかしいだけなんや!

ぼこ:ポデは俺がもらう

ぼこ:↑ドーナツでも食ってろ

ぼこ:↑シュトーレン!

ぼこ:なるほどこれでスナイパー殺したんやな!

ぼこ:まぁこれなりゃスナイパーもさすがに死んだわな

ぼこ:スナイパーなんて居なかったいいね?

ぼこ:まだスナイパー言っとぅ

ぼこ:こいつらスナイパーで頭おかしなってるんや、許したれ

ぼこ:てかこいつのホットプレートビームと銀狼とチート栄枯で仕掛けたらふつうに勝てたんじゃ……?

ぼこ:↑普通にチンキス

ぼこ:脳使えよお馬鹿、13本ですよ!

ぼこ:さすが栄枯かしこい

ぼこ:お前ら傍観者やから簡単に言うけどな、迂闊だとしぬぞ?

ぼこ:まぁ俺なら8秒で串刺しだろうな

ぼこ:↑割とがんばってんな

ぼこ:改造人間栄枯さんじゃないお前らだと秒だよ

ぼこ:棒立ち栄枯さん(31)護衛任務

ぼこ:さすがに笑った

ぼこ:さすがに笑うなよ

ぼこ:栄枯(31)「しーん」

ぼこ:寝た?

ぼこ:↑チンキス!

ぼこ:この状況からで寝てたらやばいやろ

ぼこ:からだは31だからなぁ

ぼこ:まだチンキスが足りないようで

ぼこ:カラダはねカラダ

ぼこ:↑チンキス

ぼこ:栄枯はメンタルバケモノ

ぼこ:栄枯だからね!



 真っ白い爆炎から、炎ではなく散り散りに分かれて飛ぶ白鳥の群れが──ドローン部隊のように迫ってきている。

 明らかになってくるシルエット。白鳥というよりは出鱈目、シンプルな紙飛行機であったり、珍妙なカタチ、ごちゃごちゃと整理整頓できていない子供のおもちゃ箱のようだ。

「避けるなら最初に言ってよね! こっちも直線だけじゃない!」

 スーパードローンから供給される膨大な電子エネルギーは光の散弾となり彼方まで行き届くレーザーは乱雑に辺りを彩った。

「金ポデぇ常に寵愛チートマンの射線は確認だぁ! そしてぇホットプレートの焼き残しは古参ナイトが駆除ぉ!」

 【SR】金平糖手榴弾としっかりとした剣盾捌きでホトプレの弾幕をすり抜けた残党はこの鉄色のナイトがしっかりと駆除。古参の立ち回りで陰ながらルーキーのホトプレをやりやすいように誘導している。

「まだまだあるんだぜぇ金平糖は」

 今度はボリュームを増やしたのか、散り散りに飛び続けて来ている数多の歪な白は再び集まり白いカエルとなった。

 前脚を翼にし空を飛ぶ巨大母艦白蛙は、その上に白い棒人間を配置し、彼らはいそいそと紙を折り畳み投げつけてミニ紙飛行機をトバし地上を爆撃していく。

 巨大母艦を狙いホットプレートから放った太いビームは下腹をすれて外れてしまった、カエルが急に後ろ脚で空を蹴り宙から上空へと出鱈目に跳ね上がったからだ。更に脅威と判断されて狙撃者は逆に狙われてしまった。次々と突き刺さる紙飛行機の雨を駆け抜けて黒いプレートの傘でやり過ごす。

 だがこうなるであろう事もパーティーメンバー達は事前の短い作戦会議でそこそこ想定済みであった。



──MMO──

ナイト:オーケーホトプレ、マップはその位置だ。ヨシやるぞーっ、バランス調整のお得意な死のダンジョンさんよぉ!!

ナイト:【LR】連携!結界な結果

ホップ:【SR】ジェットランポリン

銀狼:【SR】バフスナイプ

金ポデ:【UR】身体能力UP1.5倍17秒

ホトプレ:妙な動きの隙を見て射撃しますこれが避けられても大丈夫です!

金ポデ:ホップ!? アハハ、バトルモード中でチートだからってわたすもまだまだァ! ヤレるよ!

ナイト:ひゅー、死のダンジョンはヒトを変えちまうぜ!

銀狼:はははは、若者はそうでなくてはな! 死のダンジョン、だが死にはしないなら儲けでしかないぞ! 行ってくるがいい!

金ポデ:ビギちゃんいきますっ!

ナイト:そうだホトプレおまえアレあるじゃねぇか、って死鳥舎様がよ



 銀狼の遠隔からのバフレーザーをその身に受け身体能力を更に跳ね上げトランポリンでまた跳ね上がるビギちゃんこと金ポデ。

 空をつきぬけていく。

 金のポニーテールを乱しながら上昇していく。しかし敵の蛙空母まで一直線の道中に群がって来た白い紙クズ、対して金髪美少女は+値の高すぎる黒い旋風となり曇りを裂き払い退けた。

 メインウェポンを高速で周囲に振るい敵を寄せ付けない動きを見せていたが突如降下して来た母艦の上の棒人間達が纏わりついた。金髪は白い棒人間を真っ二つに引き裂くが引き裂かれてもなお独立し動く上半身や下半身にがっしりと捕まってしまい、アレよアレよワラワラと群がる紙は丸められ、くしゃくしゃ。七色に爆発。

 鮮やかな爆球をつらぬき現れた、髪型をバージョン2に変えた金髪美少女。

 【LR】イチゲキボムは起爆し、電子保護シールド残量は70%、激しく自爆するも事前の準備もあり紙クズは光へと散り美少女は無事であった。



──MMO──

金ポデ:【LR】イチゲキボム

金ポデ:【UR】トリプル斬り

ナイト:【UR】クールスナイプ

銀狼:【SR】デバフスナイプ

金ポデ:【LR】イチゲキボム

金ポデ:ホップ

ホップ:【UR】パーティーシルド



 白蛙の腹にたどり着いたと同時に金ポデは勢いよく全てを込めたメインウェポンをぶっ刺した。予想外の速度で貫いたそれに遅れて反応してか巨大白蛙母艦の蹴飛ばす後ろ脚がビクリ、また更に黒い上空彼方へと逃れるように──


「どこへ逃げても射程範囲内! 出・ホトプス」

 スーパードローンと接続されホットプレートから出力された白い閃光がどこまでも伸び天をつらぬいた。

 閃光に貫かれたイチゲキボムは起爆し合わさったチカラはとてつもなく広がり七色のカラフル球が膨らみ、まさに表現するは空を彩る眩い大爆発花火。


 降下しすれ違った金ポデと宙で手をバシンとバトンタッチし、合わせた強力な技で厄介なカエル母艦は光に呑まれ消滅した。

 アクシデントはあったもののカードコンボは成功した。4人は死鳥舎様から「【UR】パーティーシルド使えよお馬鹿ですね、ええ、ひじょうに」というデカデカと表示されたアドバイスに従い。


 塵を集めて作った母艦を失い、遠方に見える4脚を失った白龍。

「あれだけやって4脚……かなりの爆発で手応えだったんですけど」

《アハハ、インドのお城以上だったノニ!》

「マァ、舐められていたが上回ったってことだろうな、ひゅっ」

「ハハ、丘梨くんに従い仕掛けなくて正解だったようだな。しかしアレからなおも死の予感を感じるのならば──こちらは全力でやらなければならない」

「楽しんじゃいるが死の予感なら俺も感じるぜぇ」

《わたすはたぶん死なない!》

「こっちも遊びじゃなく殺して生き残ってます! いけますよきっと!」

「ならば死なずにもうひと踏ん張りということかね」

 未だ健在の白龍

 遠方から散り散りとジリジリと押し寄せてくる大波を4人は迎え撃つ。

 リーダーの丘梨栄枯を守る4人のパーティーの主戦力であるスーパードローンはもう品切れになり。代わりのプランである焼肉モンスターに接続したホットプレートは薙ぎ払う閃光の剣で白龍の脚と整頓出来ていない白い編隊を焼き切る。

「ドローンはなくても料理は出来ますって!」

「ははは意味不明だぞホトプレぇ、喰らえッ!」

 無限にあると思われたナイトの金平糖もあと3枚しかない。じれったいクールタイムは死の予感と焦燥を掻き立てていく。

「シルバーウルフファング!」

 虚空を斬り捨てた白銀の刃から、飛び出した銀色の幻想のようなオーラは狼となり黒い砂漠を駆け抜けて──押し寄せてくる白を食い散らかし、宙に浮かぶ大物へとかぶりついた。

「私の出番かね」

 勢いを失ったホトプレに代わり最前線の前衛にて大暴れする緑パジャマ姿の男、銀狼。

 カードやスキルなしの剣技も凄まじく次々と棒人間や雑な折り紙生物を斬り捨てて死のダンジョンの探索者としてのレベルの高さをうかがわせる活躍をみせる。

 そんな活躍に呼応してか白龍の大脚の一本から幾本もの針攻撃がパジャマの王様を襲った。栄枯にしたのと同じ攻撃方法が容赦なく、繰り広げられ地へと突き刺さってやがて死へと誘うダイナミックで華麗なダンスを探索者へと強要する。

「伊達に銀狼ではないが50を超えて少々──その踊りはきついぞッ!!」

 白銀の剣を煌めかせ、華麗な所作とステップでなんとか踏ん張りを効かせるが若い丘梨栄枯と同じ踊りでは持ちはしない。そんな彼の踏ん張りに呼応したマップの配置は組まれ、MMOでカスタムされた視界端に予定していた合図が出る。



──MMO──

ナイト:【LR】パーティーシルフぼるとブレイド

ホップ:【LR】パーティーシルドMark-Ⅱ

金ポデ:【LR】パーティー身体能力UP1.4倍30秒

銀狼:【LR】パーティーアクアばくはブレイド



 仮のリーダーのつもりであるナイトの指示によりここぞの秘蔵カードコンボは切られて成された。



AI栄枯:ええ、ひじょうに頑張ってくれています。

【LR】パーティー身体能力UP1.4倍30秒でパーティーの身体能力を1.4倍30秒UP。

【LR】パーティーシルドMark-Ⅱ パーティーの電子保護シールドの耐久性を大きく向上。

【LR】パーティーシルフぼるとブレイド パーティーは15回分の斬撃波エネルギーである風雷の刃をメインウェポンに纏う。

【LR】パーティーアクアばくはブレイド パーティーは15回分の起爆エネルギーである水爆の刃をメインウェポンに纏う。(自爆注意)



ぼこ:丘梨栄枯パーティーのほんき

ぼこ:くっくっく、取っておいたのさ

ぼこ:↑むかつくチンキス!

ぼこ:【LR】

ぼこ:やっぱカードゲームは【LR】だね

ぼこ:金満コンボ!

ぼこ:然るべきタイミングでしかるべきコンボ、丘梨栄枯パーティーです。

ぼこ:栄枯ならまだ寝てるよ

ぼこ:栄枯さんを護衛しなきゃの精神!(パーティー)

ぼこ:死にかけてんのによぉ寝れるぅ!

ぼこ:大物になるよこいつ

ぼこ:なってる件

ぼこ:まぁでかいわな

ぼこ:よし、なにもいうなよ

ぼこ:↑チンキス!

ぼこ:カクスダマ

ぼこ:↑シュトーレン!

ぼこ:やってくれるやないか

ぼこ:ホップ氏のスーパーチートタイムが尽きたからあせったけも!

ぼこ:銀狼も栄枯には劣るが強いよ

ぼこ:↑何様だよ!

ぼこ:ナイスダンディ!

ぼこ:これはべらぼぅ

ぼこ:ええ、ひじょうに勝つる

ぼこ:勝つる。ええ、ひじょうに

ぼこ:栄枯が起きたら勝てるとかいう風潮

ぼこ:それはそうとしか

ぼこ:栄枯教入ってないお馬鹿おるな、ええ、ひじょう、ええ、ひじょう

ぼこ:↑ちんきすちんきす

ぼこ:丘梨栄枯だからな

ぼこ:勝てないわけがないんだよ、栄枯ですよ。

ぼこ:おまえらのほんき

ぼこ:やっちゃいなよ、丘パ

ぼこ:おかっぱみたいでだせぇよ!

ぼこ:オカッパは栄枯に似合う!

ぼこ:パリコレだからね

ぼこ:意味わからんぞおカパ

ぼこ:纏いすぎだろ丘パ

ぼこ:いけぇえぇ丘パ

ぼこ:パパッと丘パ!



 べらぼぅな弾幕が周囲をいろどっていく。風雷を纏った三日月が敵を斬り裂き更に貫いた敵をみずいろに爆破。4人が4人ナニモノであろうが通用する強力な斬撃波を飛ばし戦いは次のフェイズへと移行した。

 カラダへと突き刺さる針にもパーティーは一歩も引かない、栄枯の元へと意地でも寄せ付けない。更なるカードを瞬間で熟考し切り、効率良く命懸けで戦っている。

 だが4人が栄枯の前方で立ち回り懸命に戦うも敵の流れ弾は栄枯へと届く。

 指一本触れさせるなという命令は、三角柱の結界シールドにより守られるカタチとなり。

 栄枯を囲み回転する強固な半透明の三角柱が突き刺さろうとした白い針を弾き、指一本触れさせない結果を得た。

【LR】連携!結界な結果

 既に4人の配置により結界の結果は作られていた。ホトプレとナイトと銀狼この3人が薄紫の線を結び作った三角の中にいた金ポデと栄枯の2人には強力な結界を与えられ、4人いないと使えないこの非効率なカードが栄枯に結界な結果をあたえ助けた。

 一層激しさを増す攻防に結界にもヒビが入り──やがて誇っていた強度が嘘のようにガラス細工のようにあえなく崩れ割れた。

「ひゅー、いつ終わるんだこれ! ウチのねむり姫様もびっくりだぜぇ!」

《ダイジョブ栄枯しんじてる!》

「ここまで仲間を信じて死ぬか生きるか、だが死なせるなとは。これが君の見せる死のダンジョンのリアルというのかね丘梨くん、ハハハハ」

「自・ホトプス! 指一本はまだ守られてますよね!!」

《ばッ!? 上から来てる!?》

 バイブレーションマップ機能が捉えた赤い波は上方を指し示す。

 覚めず不可能なほどに集中している彼女。あるはずのない感覚を探り当てるようなおぼろげで繊細な作業。だがダンジョンならシミュレーターならそれは可能である。前世でも、忘れていたのでも、ないそれは彼女の奥底に宿る──



『栄枯よ、おぬしはかすかな炎の素質があったようじゃな』

『かすかな炎……ですか?』

『たとえばこの使い物にならないスキルどんぐり。これはどんぐりを召喚するだけのどうしようもないスキルを覚えるカードでの』

『じゃがここではこういう事も出来る──』

『このような美技、私にはとてもできそうにはありませんが』

『はは美技とはのぉワシは天才じゃからな、そして栄枯おぬしは特にこれといったものはない』

『……才能がないと? 認めはしますが直接いわれるとべらぼぅですね、ええ』

『ははそうじゃな、栄枯おぬしにはかすかな炎ほどしか才能はない。しかしそれも時を流れ譲り受けた大切なものじゃその種火を大事に育てればいずれ炎の神がプロポーズに来るじゃろう』

『ふふ、プロポーズなんですかそれは仙人様、ふふ』



『仙人様は何者なのですか』

『わしはそうじゃの……ダンジョンでこそ輝けるスーパー老人じゃ』

『ええ、それはわかります。人間離れしていますね』

『ははこれでも人間として生きてきたが突如現れよってからに……じゃがもう歳での』

『はい? 歳をめした動きにはみえませんが』

『はは、何事も早い方がいい、そして若い方がいい。最後にこれを栄枯に託して珍妙な人生を綺麗に飾り終わりたいと思う』

『……託すとは一体』

『この幻闘シミュレーターをお前に授けようというのじゃ、栄枯』

『それが何を意味するのですか、私なんかにたくすなんてひじょうにもったいないかと?』

『なに最後にとおく忘れていた約束を果たしてワシも大満足じゃ!』

『……よくわかりませんが、それがよろしいのならば有り難く受け取ります』

『はは老人の頼み事にはそういうと思ったわい。きっと栄枯おぬしと会うためにワシは時空を超え生かされていたんじゃろうな』

『時空……ふふそれはどこかの小説のプロポーズでしょうか』

『あと50年早ければイケとった! 来世に期待じゃな』



 幻闘の中で育てていたどんぐり、LRスキルどんぐりは役に立たない。どんぐりというスキルを覚えるだけのネタである。黒いどんぐりスキルならば、丘梨栄枯ならば。

 人間が忘れていた記憶というものを夢で思い出すことはあっても無い記憶までは。丘梨栄枯の才能はここにあったのだ。かすかな炎は膨大なシミュレーションをこなし鍛えられ。薄れていく世界の境界があるのならばそれは本当は彼女の中にあった可能性であった。例えばこのどんぐりのように必要のないもの、それが彼女の炎。 

 どんぐりに火を灯します。弱い自分に怒れ、そしてダンジョンはリアルにエンターテイんメント、たのしんでいますか? 吐い信者ならメラメラでクールに。



 緑のメガバズーカレーザーが天を突き破り、白龍の脚を浄化する。



「お待たせしました、ええ、ひじょうに」



 天へと掲げた二本指の手銃はゆらゆらと白煙、緑の光を垂れ流し。

 ショッキングな閃光で彼女の目覚めた星色の瞳に振り返る仲間たち。辺りの敵は一瞬にして殲滅され──

「やっとか栄枯ォォ!! 死にかけたぜぇ!! ひゅー」

《ずっとしんじてた栄枯!》

「栄枯さん!!」

「凄まじいな、何かを見つけたのかね」



「ええ」

「べらぼぅを見つけてしまいました、ではパパッといきます」



 いつもよりも一層妖しく微笑む彼女はパパッと行動に移った。掲げた右手をゆっくり、そして手早く握りしめ魅せつけて。

 展開したシミュレーターはぼこぼこチューブと一体化し、宙に展開したビジョンは大海のように荒れる。死鳥舎の幾多のおもいをノセた小さなぼこは彼女の奥底へとうねり滑り込むように、引き寄せられ流れ出した。

 ではあなたとわたしの──48万ぼこをノセて、いまひっさつの。



「あんぐりーどんぐりー48万!!」



 黒い弾丸形状が一筋となり光速で天から地へと突き刺さった。

 ちいさなブラックな実は再生を続ける12の足元へと落ち、着弾するや否やエメラルドに発光し燃えた。

 びくりと飼い猫が主人に悪事でも見つかったかのようにバグった挙動をみせた多脚は──すべては緑の巨大炎球に呑み込まれそのシルエットすら確認出来ないほどにキラキラと鮮やかに美しく、メラメラとクールに燃え盛っている。

 現実とは思えないほどの炎の色の輝きが見つめる億千万の瞳に焼き付きやがて失せていく。

 ──白龍はエメラルドの炎へと還った。

 彼方の黒い砂漠は夢でも幻でもない緑にヤケた砂をのこして。

 振り払った細く長い右手。彼女は最後にはクールに微笑っていた。
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