望鏡の魔術師アイ

山下敬雄

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第10話 Cランク望鏡パーティー紅ノ瞳

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「受付的にはどう思いますこれ」

「Cランクというよりはッ!! Gランクでしょうか」

「だよねェ!」

 なおもつづく演奏召喚、無限の増援お玉杓子軍団。

 サティは半円を咲かせたシルドアクスで乱れ斬りさらに円シールドを駆使しお玉杓子を寄せ付けない働きを見せる。

 いつの間にやら後衛というカタチになった金髪はその背姿を一瞬見つめ、決断した。

「ヤルぞ」

 黒兎はアイの横目に合わせ。

 古杖の魔術を惜しみなく出力。フレイムボール散Ⅱ、出力された炎球をフルスイングし一瞬でバラバラに散り分かれた炎の粒が大蛙に向かっていった。

 本体よりは黒い大蛙の宙に常に入れ替わり一定数待機していたお玉杓子を狙い見事に炸裂、盾役のお玉杓子は風船のように次々に自爆破裂し撃破。

 その間にも攻め立てる、水蛇はアイの左腕に巻きつきイメージ構築を補助。アクアスナイプと熱線による二丁手銃で魔術師アイの少なくない魔力を消費した総攻撃は行われている。

 アイから受け取ったブーメは投げられた。黒兎は跳躍しながら全身のバネを溜めてつかい投擲。アイの魔術による総攻撃が黒蛙を激しく彩り優雅に奏でていた演奏を止める、その激しさに思わず防御姿勢に入りうごけないだが口から離した右手の金笛を死んでも手放さないそんな様子をしている。

 この激しい魔術攻撃の中また演奏を再開しようと口元に笛を運ぶ。気力と魔力をコントロールさらに魔術を得た銀の三日月は高速回転し、やがて突き刺さり。出力された炎魔術は自動で起動した。

 おおきな爆炎に呑まれた黒蛙はただでは済まない、アレンジイメージユニーク、事前に準備していた古杖の魔術とその場でのイメージ構築。黒兎と魔術師アイの合体魔法ではなく合体攻撃は成され見事に厄介なヌシガミに命中した。
 
 通じ合っていたのか、サティが特攻してくるお玉杓子を封じる中で十分な質の良い総攻撃は達成され。

 爆炎が止み見えてきたシルエットに、珍妙な音色。

 段落を終えたとばかりに思っていた3人は、各々の濃度の渋く苦い顔をみせる。

「アレンジイメージユニークとはいうが……ガミにパクられるとはなサティさん」

「ええ、一族の子孫としてひじょうに腹立たしいです!」

「言ってる場合じゃない」

「だな」「失礼しました、ですね!」

 お玉杓子は再び望鏡パーティーへと向かい、2体のカエル騎士は笛とヌシガミの黒蛙を守る。

 蛙の子はカエル。生み出されたカエルの黒騎士はサティを真似た盾を持ち、黒い花を開かせて銀のブーメを鉄壁のガードで弾きおまけの爆炎から黒オーラを展開し威力を減衰させヌシガミを守った。

 しゅるり、ゆるり、と黒兎の背のホルダーへとチカラなく収まった銀のブーメ。

「Gランク……異様です」

「もう十分わかった、測っている暇はない」

「ええ、そうですね。……この提案はイチかバチかですが……一斉に仕掛けますか?」
 
「イチかバチか? はっ! まだ魔術師アイを測り終えてないだろサティさん! こっちももうッちまちま惜しみはしない」

「黒兎! ブーメだ」

「ブーメ? うん!」

 呼び出された黒兎はいつもの懐の位置に収まり、紅い瞳で前を見据える。

 黒耳を立てて全力集中。

「じゃあイチかバチか、ちゃんと前は任せました!」

「イチかバチか……ふふ、初めて組むのですよ!」

「初めてでも追放されても兎族でも望鏡者、信じるイメージを共有すればァァァ」

 即興の作戦を立てている間にも敵は迫ってきている、作戦らしい作戦はない、あるのは魔術師アイのイメージ構築と黒兎との共有。信じるイメージなどサティにとっておぼろげだ、だが2人にはそのイメージが循環していく。

 一体となった2人を後ろ目にサティは全力のドゥリーマー属性を解放した。

「いきます、ドゥリーマーフルシルド!!」

 一子相伝、ドゥリーマーフルシルド。満開に咲かせた黒紫色の盾の右腕を前に構え、紫オーラを展開。銀髪を乱れ散らし本気のオーラは向かい来る敵を焼き蒸発させていく。カラフルな自爆特攻すら無力化、盾となりおぼろげなイメージを信じ2人の邪魔はさせない。

「感心している場合じゃない。よし黒兎、パーティー紅ノ瞳合体魔法だ」

「うん合体魔法! やり返す」

「やり返せ!!」

 ピンチでも冷静に、されどアツく。逆転のイメージ構築、共有するじかんは十分だ。

 魔力と気力を一体に循環させ練り上げて再イメージ共有構築。成された合体魔法をノセ、いま、眩く光る三日月は投げ放たれた。

 ドゥリーマーな盾を超え、お玉杓子を斬り裂き小さな爆発を咲かせ高速回転したブーメは勢いを増し進む。

 しかし黒蛙は狡猾、宙に待機していたお玉杓子の捨て駒を切りブーメの阻止に向かわせ散っていた群れが一点に収束していく。

 ガーネットはキラりとワラい、黒耳をピクリと傾ける。一瞬で水平直進から嘲笑うかのような逆時計回りに超速宙返り回避。ホーミングしたお玉杓子の群れをぶっち切り抜かした。

 目指すゴール、目指すターゲットは一つ。迫り来る脅威に対して黒い傘が二つ開いた。お玉杓子が破られても絶対の信頼を置くカエルの黒騎士が2体もいる。一度防いだ実績もある、演奏を辞めずに逆にお玉杓子で攻勢に出てサティを崩すそんな余裕すら見せる黒蛙。

 銀のブーメは合体魔法を発動。イヤな風音を広げてターゲットへと。

 開いた2枚の黒い傘とかち合い激しく火花を上げたのは一瞬。

 自慢の盾もろとも真横に黒い騎士を斬り裂いた一瞬の風の刃の切れ味は発揮され、イメージ構築はつぎの段階へと突き刺さった。

 だらしのないグレー腹にある銀は大爆発。練り上げた炎魔術は発動され一度目の総攻撃の時と同じようにシンプルに威力を発揮した。

 合体魔法はただの魔術ではない、気力と魔力を合わせたユニーク。巨大な炎球に呑み込まれた黒蛙にその運命から逃れるイメージも盾も演奏もなく。

 宙を舞いやがて刺さった金笛と、炎が晴らす白いモヤ。



「はぁはぁ……魔術いやそれいじょう……! あ」

「合体魔法」

「合体魔法なんだろうな、はは!」

 息を乱し銀髪を乱し目の先の炎をじっと見つめる。

 前かがみ、やりきった両肩に手を置いた金髪と黒兎。


 鏡のセカイは綺麗に掃除され最後にそれをながめ立っていたのは────



 Cランク望鏡パーティー紅ノ瞳。
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