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石の街で購入しホームに登録されている礼拝堂。変わらず色鮮やかなステンドグラスから光が射し込んでいる。
この世界に来てからもう何度目の夜だろうか。

父親は紙と鉛筆を電子の荷にしまい、祭壇の左にある寝床へともぐった。

「いよいよ3000階だ」

「ここまで思ったよりも長かったが……生き残ってこれた」

「これからもゲーム通りにはいかないかもしれない……けど仲間がいるからなんとかなるだろう!」

「明日の決戦に備えよう」

ベッドから辺りを見渡すと。
丸や三角や四角の木が綺麗に並べられ大きな長方形で祭壇の床に置かれていた。
パズルのように整頓された大きな木の長方形が2つ。
積み木弓師(赤)、積み木弓師(青)は眠っている。

「これ死んでないよな……写真撮りたい」

「そしてこいつは」

礼拝堂の左側の長椅子に仰向けになり腹を天に見せつけ眠っているかわいいタチモグラのモグ蔵。

「……モグラに愛着がわくとはな」

「そしてこいつは……」

ベッドの上にちょこんと正座している女神石像。

「眠らないよなぁ、ハハ」

石像だから眠らないのかな? でも積み木は寝てるよなアレ……。まぁ考えるだけ無駄な気がする、本来ドークスできないキャラだからバグっているかシステムが搭載されてないんだろう。

「エロいゲームだし」

父親はがばっと白い布団を肩までかぶり。

「……おやすみ」

と、彼女に向かいそう言うと。
視界に石の細い指が近づいてきた。
女神石像は彼の頭を撫でてくれている。
女神石像に撫でられていつの間にか眠りにつく、すっかりこの世界での習慣となった行動。
これがしあわせかな。
電子の布団の温もりと、彼女の石の手にさらさらと黒い髪を撫でられている心地よさでぼんやりと目を閉じていく。
今日は……たくさん遊びすぎたな……おやふ──────。

「おッ!? どこ撫でて!?」

女神石像は布団の中にあるおちんちんをさわさわしている。
はじめはゆっくり、ビンビンに反り返った肉棒を徐々に速くしごきあげていく。
同時に、左の石の手は彼の頭を撫でている。
教え込まされた父親の指示を女神石像は学習したようだ。
我慢汁ですべりの良くなった石の手のしごきが快感を増幅させていく。

「ちょ!? 待って!? あっ」

石の右手の高速上下運動はあっという間に彼を限界へと追い込んでいく。
現実世界では得られないあまりの快感、喘ぎ声まで漏れてしまう。
電子世界での性行為は可能性に満ち溢れている、それに気付いた一介のエロいゲームプレイヤーである山田燕慈は女神石像に日夜色々なコトを教え込んでいたのであった。

隣で正座している彼女は笑顔で息を荒げている彼の顔を見つめてくれている。

「あっ、それだめ! むりむりィ!! いくイク射精るぅッ!!!!」

ミジュクセカイの塔3000階、ひとつの区切り、決戦の舞台はすぐそこだ。








ついにやって来たミジュクセカイの塔3000階。
異様な雰囲気の大きな黒い鳥居をひとつくぐり。
暗い曇り空の下。霧がかった視界。足元に見える玉石たまいしを敷き詰めた石畳のステージは和の意匠を感じる。

「ここで【散開】【全力】で【支援】だ。緑のやつを狙え。食らったら回復アイテムをガンガン使え。モグ蔵は作戦【回避】」

父親パーティーの各々は頷き言い渡された作戦を決行した。

「さぁ怠け兄弟、勝負だ!」

徐々に霧は晴れ、視界の遠くに現れた巨人と空を飛ぶ緑。

【雷神】
巨大な青黒い人形ひとがた。棒人間のようなシルエット、シンプルな見た目で地にどっしりと脚をつけ常に帯電している。

【風神】
中型の緑色の人形ひとがた。棒人間のようなシルエット、雲の絨毯に寝転び上空にぷかぷかと浮かんでいる。

散開した各々は後方から攻撃を垂れ流し父親を支援する陣を成した。
電子の荷から取り出した白蜜を抜刀し1人突貫する父親。
パーティーの前衛として雷神の右脚を目指して一直線に走る。
微動だにしなかった左の雷神と右の風神がついに動き出した。

その場に止まった雷神はおもむろに右手をターゲットにかざし、バーンと轟音を鳴らし雷のショットガンレーザーを放った。
発射から即着弾した雷は回避不可能だ。

「爆破斬!」

宙に振った炎の刃は炎球を発生させ、雷と一瞬にしてぶつかり合った。

フル相殺システム。父親は雷のショットガンレーザーに対してタイミング良く技を放ち自身の受けるダメージの軽減に成功した。

「世の中、速けりゃ良いってもんでもネェ!」

上空に寝そべり雲の絨毯の上に浮かぶ風神はミドリ色の魔法陣を宙に構築し多重展開していく。

白蜜を仕舞い、電子の荷から取り出されたモノ。
彼の手から豪快に投げ放たれた石は構築している魔法陣を的当てするかのように貫き次々に壊していった。
 
「ハハ、ラヴあスだぞ! 魔法なんて石ころだ!」

構築されていた全ての魔法陣を壊し、見事、手痛い風の多重攻撃魔法の発生を阻止することに成功した。
なおも続く攻防、フル相殺システムと投石による魔法発生の阻止を上手く活用してダメージを最小限に抑え敵にじわりと接近していくプレイを魅せる山田燕慈。

その間に放たれた父親パーティーの仲間たちの矢と水の矢が寝そべっている風神に突き刺さっていく。作戦通りに風神に的を絞り父親を援護しているようだ。

父親は前衛として1人で強力なボス2体を相手に立ち向かうものの、投石により壊しきれなかったミドリの魔法が発生された。

【エアーオーダー】。
突如、遠隔の地に発生した風の刃のコンビネーション攻撃が父親の身体を切り刻んだ。

「たたたの痛タイッッ!!!! ッッこれぐらい! 想定の範囲内、爆王斬! ぐぴぴ」

風の刃の魔法攻撃に怯んでいる間に放たれた雷のショットガンを巨大な炎球で相殺し、ぐぴキャンを駆使して失った体力を少し回復し前へと走り続ける。

そしてたどり着いた雷神の右脚の真横の位置。
彼の、射線上に並んだ雷神と風神。

「斬波爆王斬!!」

発動したリミットメルトの赤いオーラは解き放たれ。斜め上空へと向かい凄まじい炎の斬撃エネルギーが放たれた。
射線上に広がり起こった無数の小爆発。
ボス戦に向け温存されていたリミットメルト技が雷神と風神を2枚抜きし、最効率で放たれたのであった。


「こっからが反撃開始だろ」


「うお!?」

父親は慌てて玉石の石畳を蹴り跳躍した。

その場を動かなかった雷神が突如放った素早い足払い。なんとか反射的に反応しその物理攻撃を避ける。

「爆王斬!!」

すぐさま雷神の黒い頭を捉え空中で振り切った爆王斬は爆発花火を起こし反撃のダメージを与えた。
しかし怯むことのない雷の巨人は右手を虫をはたき落とすように振り、直撃してしまった父親が後方の地へと吹き飛ばされた。

苦労をし接近したものの、雷神の右の平手にピンポン球のように弾かれ遥か後ろへと、後退させられてしまった。インファイトを得意とする父親は再び距離を詰めなければならなくなった。

「忘れてた……ミスプレイだ、カッコわりハハ。ぐぴ」

ミジュクセカイの塔3000階。これまでの敵とは一味違った区切りのボス戦。
本当は働き者の雷神とただの怠け者の風神、2体のボス達との激しい攻防はつづく。


弾き飛ばされたがそれはそんなに問題じゃない。
宙に黒い雲が複数発生した。
雷雲だ。雷のレーザー爆撃を垂れ流しながら後方の父親パーティーに襲いかかってきた。

広範囲に絨毯爆撃された雷のレーザーに焼かれダメージを負っていくモンスターたちは、作戦通りに回復アイテムを惜しみなく飲み失った体力をMAXまで回復していった。
 
ランダムの高さに舞い上がり進む雷雲、その情報を知っていた父親は他より一段低い雷雲に向かい跳躍し飛び移った。

黒い雲の上に見事着地し再び前に跳躍。雷神の大技をいなし距離を詰めていくことに成功した。

「どうしたご自慢の技をもっと魅せてみろ!」

「おっと、ヤルかよ! よっと!」
 
父親の腕から投げ放たれた石はミドリの魔法陣の的を的確に壊していった。

再度始まった父親と雷神風神の攻防。

ぶつかり合う炎と雷。ダメージは徐々に積み重なっていき回復アイテムの消耗も多くなってきた。

そんな攻防の最中さなかふいに、ピンクのハートの矢が父親の背に突き刺さった。積み木弓師(赤)の技【命】による回復の矢だ。敵の攻撃をいなすのに手一杯だった父親を状況判断し遠隔から回復してくれたのだろう。

「やはりRPGはヒーラーがいると助かる! 感動!」

再び、雷神の大技が父親パーティーに向けお見舞いされた。
雷雲が迫る。

「それを待っていた!」

玉石の石畳の地からジャンプし黒い雲に飛び乗り。
そのまま前方に跳躍。
さらに。

「【爆回斬】【爆炎斬】!!」

【バカキャン】
エロいゲームのコンボシステムで爆回斬を爆炎斬で繋ぎキャンセルし小爆発による推進力だけを得て縦の回転斬りを無くした小技。外でのゲームプレイでは使い道は限られていたが、この電子世界の中にいるプレイヤーにとっては頭がくらくらしないのは大きなメリットになる。

バカキャンによる後ろに構えた剣先から発生した炎の小爆発の推進力で前方へと飛ぶように進んでいった。
ジャンプ+バカキャン。大きく空を飛び目標へと着地することに成功した。

ふわりとその地に降り立った父親。

白い雲の絨毯の上、ヤツ風神の寝床だ。

「よっしゃーー!」

「やぁ、悪いけどこっからずっと俺のターンだから」

目の前の緑の巨体は微動だにせず左肘を雲の上に突きながら頭を左手で支え寝そべっている。
容赦はしない。美しい刀、白蜜は振り下ろされた。

「【爆炎斬】【爆炎斬】【爆破斬】【爆王斬】!!」

荒ぶる炎の連撃が風神の腹に決まっていく。
その勢いは止まらないグピキャンを駆使しコンボを次々と決めていく。
しかし敵も黙って見てはいない。破壊し損ねた風神の【エアーオーダー】の風の刃が狙いをつけ父親の体力を削っていく。だが彼は止まらない肉を切らせて骨を断つ、更にパイナップルパイナップル天然水を飲みダメージは回復されていく。豪快な攻め方だ。

雷神は上空に手をかざした、轟音を発し雷のショットガンレーザーで父親に追い討ちをかける。
が、彼にダメージを与えることは叶わなかった。
彼を狙ったはずの雷は寝そべっている風神の身体が壁になり吸い込まれむしろ味方にダメージを与える結果となった。

「相変わらず仲が悪くてよろしい! 爆王斬!!」

ビリビリは援護射撃! 雷雲も届かない! こいつはニート術士!

「いいぞエロいゲーム!」

さらに、父親パーティーの矢による援護射撃も加わり風神に与えるダメージは激しく加速していった。
そして、うねり迫り来る多数の水の矢。

女神石像のリミットメルトは解放されコピー陣により展開された多数のアクアスナイプ∀。

「爆王斬!!」

ステージ上空、巨大な爆発花火に突き刺さる水の斉射ミサイル。


「いっちょあがり!」


白い雲の絨毯から舞い降りた黒いスーツ。

空に浮かんでいた風神は父親パーティーによる凄まじい猛攻により、光の粒へと還っていった。
ついに撃破されたボスの片割れ風神。
残るは地に立つ青黒い巨人、雷神のみ。

「よぉし良くやった。全員集中砲火だ! モグ蔵は引き続き【回避】」
「あとはゴリ押しでどうとでもなる!」

その場で動かずにいた雷神は、突如。父親の方に向かい走り始めた。

「おせぇよ。どんだけ仲悪かったんだよ、ハハ」

ガチャリと上段に構えた白蜜、天から地へと振り下ろされた。


「斬波爆王斬!!」


「ラヴして! 恋して! クリアさせてもらァう!」



積み木弓師はそれぞれ、かぶっていた赤と青の三角の積み木を弓のつるに乗せ。放った。
弓から青黒い巨人の胴体に命中したそれらは赤と青の爆発を起こした。【赤】【青】三角積み木のグレネード弾。一定時間経つと失った帽子は何故か復活する威力の高い必殺技だ。

大きなおおきな波が押し寄せる。
【アクアバイバイ】今度は女神石像の大技の構築、発動に成功した。
押し寄せた大波が巨人を呑み込んでいく。天級てんきゅう魔法による手痛いダメージが重なる。

そして波が去り飛び出るように現れたヤツは、その美しい白い刀で巨人の顔面を斬り裂き巨大な炎球は弱点を全て呑み込んでいった。

トドメの一撃、勝負はあった。

風神が倒されて自由を得た雷神は暴れ回るも父親パーティーの猛攻にその身は耐えきれず光の粒へと還っていった。

すれ違い華麗に着地した黒スーツ。

白蜜は仕舞われ、ミジュクセカイの塔3000階の2体のボスとの戦闘は終了した。

「よーしッッ!! やったぞやったぞおおおお、ハハハ」

喜びを爆発させる彼の元に続々と後陣にいた仲間たちが集まってきた。

「うお」

彼の身体に矢のように飛び込んできた女神石像。

「おつかれさま」

そう言って頭を撫でた。石の元気な顔は見上げ微笑んでいる。
的確に弓で援護してくれた積み木弓師赤と青は各々、天に弓を掲げている。
そしてこの激戦を生き残った運の良いタチモグラのモグ蔵。

「生きてたか、ハハさすーさすー」

そのご自慢の毛質を父親にさすさすされ役目を無事果たした。
アイテムを大量に消費したが作戦通りに、小技も用い、2体の強力なボスを倒すことに成功した父親パーティー。

「さて、ご褒美タイムと行きますか」

雷神と風神を倒し現れた、奥に見える神社の本殿らしき深緑色の屋根の建物。その左隣には銀の木が生えている。

一行はその神社まで近づき、段を上がりその古びた木の戸をガラガラと引き神聖な音を立て開いた。

そしてその中にある空間をくまなく物色していった。

見つかったもの。
武器と回復アイテムが数点。
手に持った青黒いシンプルな構造の長い鞭は常に帯電している。
ミーヌで調べたところ【雷神】という武器らしい。

「あいつの武器か……息子、可黒美玲がそのルートを行っていないことを願うな。普通にやれば令月ルートだ、頼むぞ。まぁ戻れない俺には関係ねぇけどな!」

用の無くなった鞭を電子の荷へとしまい。

「このまま3100階を目指したいところだが、ゲームとはまた違った疲労感があるからな。ゲームだけど」

「ここで先に進むのは無能隊長もいいとこだ、決めた。今日はもう寝ようぜ!」

見渡すと。
一同、手を挙げている。全員父親隊長のお考えに賛成のようだ。

「ハハ、仲がよろしいようで」

「目標のサムももうすぐそこだ」


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