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GAME15
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ほぼ準備が整ったとのメイド長からの直接の報せと同時に、ヤツが俺の視界に戻って来た。
「やっぱりこの村をこのままにはしておけない。石にしたしわざが魔物なら──狩るべきだ」
やはりこうなる。
緑髪の剣士はその意志を貫きあらためて王子に示した。
〝助ける〟ではなく、すこしばかりカール王子の任である魔物狩りの目的に合わせたようにもきこえる。
そして見つめる……一介の王子の存在を喰うようなその彼にしかだせない真剣を眼差しは──
「じゃ、狩るか」
この王子に真剣は似合わない。俺は砕けた感じで、張り詰めていた空気にじぶんの空気を吐いた。
「あぁ、カール!」
「え、カールが??」
真剣面一転熱く笑ったのはアモン・シープル。
心配面から驚嘆したのはクピン・シープル。
「しかし得体の知れない石化攻撃への対策が?」
さらに報告で居合わせたクロウが一言簡潔に疑念をはく。
それに乗っかる形でクピンがまた俺に今度は諭すような雰囲気で語りかけた。
「そうよカール。アモンには…わるいけど今回ばかりは簡単な賊退治とはいかないじゃない。カールもカールで……っいつもみたいに放り投げて断ればッ」
「必要ねぇ」
「ん?? なに……?」
聞き返されても、俺のくみたてた頭ん中では──
「石化対策なんて必要ねぇ」
「はぁあ? カール。それってあんたが言ってた無策の第四とおなじじゃない!」
「誰が無策だなんて言った。石化の対策〝は〟必要ねぇーんだよ」
「はぁあ!??」
同じではない。
俺は鼻で笑うように、カール王子の旅団の面々がそれぞれかわるがわる膨らませすぎた敵のイメージを、あざけった。
▼
▽
「寝かしつけるのが段階を踏んだ対象を石化するための条件もしくは脅威である石化攻撃の即効性拡散性有効射程距離が実はそれ程なく戦闘の最中には多数でかかればそこまで注意を払う必要がないコマンドとなる? ……なるほどこの状態の経緯としては違和感なく……考えられますね。さすればつまり、敵方の用いる可能性の最も高い眠りの武器や魔法の対策がふんだんに必要だということですね。石化攻撃には時間がかかりそれよりももっと確実性の高い強力な眠りの攻撃を仕掛けてくるはず……なるほど、ええ」
「あぁその通りでバッチリ同じだ。俺はきっとそうだとさっき考えた末に踏んだが……じゃないとおかしいからな。わざわざ眠り顔でにんげんさまを石化させるのがその魔物の趣味なら別だがな。それならとっとと尻尾まいて諦めるぜ」
メイド長で参謀のクロウに説明しクロウが今膨らませた。
石の魔物対策へのイメージ。
そう必要なのは眠り対策、石化対策ではない。眠った顔を並べた石像たちが最初からそうだと言っているのだ。……目覚めたヤツは言わなかったが、まぁそれは一旦置いておこう。
俺の話を良くきいたクロウはさっそくメイド兵たちに物資のかくにんをするよう指示を与えた。
「ででもカールそうだとしても! ここにこうして眠ったその石人間たちが置かれてるのはどう説明するのよっ? 眠らせて魔物がここでそれこそわざわざ石化させたってこと?? ま、まだ何かあるんじゃないの?? そうよ、きっとそう!!」
また敵のイメージをもじゃもじゃ膨らませるヤツが出てきたが──合っている。そのわざわざしてくれた妄想は。
「それは魔法か何かの手を借りて配置したとしかいえねーな。まぁ……どうしてもって言うならァ……五歩目ぐらいで気付いたこともあるには〝ある〟が?」
「ぬぬゥ…………な、なに??」
クロウと見比べるとこのキャラクターは犬のように表情が豊かに変わるものだ。
やけに素直に聞き返されて気持ちいいので、俺も素直に感じたことをクピンと居合わせた皆にむけて語った。
「はっ。それはそれこそみんな大なり小なり感じてることだろうよ。こうやって熱心に集めた食料をご丁寧にならべては人間様の感情を煽ってェ……つぎの挑戦者を待ってるんだろう? まるで一石二鳥ってな、はっ(なんかちがうか)」
「ちょ……挑戦者? 人間のかんじょうを……あおる……? 魔物が…」
あおられて──風がそよぐ。この距離からでも王子の茶髪を揺らすヤツがいる。
遠方の広場に俺が見た、熱心な準備をしているマントのはためきを三人は見た。
既に抜いている、その鋼の剣は────俺たちがさっきまで語り膨らませていた、虚空を舞い斬り裂いた。
▼
▽
話題そのex《おしえて!眠り対策①》
てきぱき動いたメイド長のクロウが戻って来たので、王子を当然中心とした俺たちはここの村人が軍評定をしていた例のひみつの作戦会議室を借り、机上に必要アイテムを積み上げて一度シミュレートしてみることにした。
「馬車に積んだアイテムの再確認をしたところ……やはり要のアイテム【妖精の粉】は幸いにもベヌレの街で買い付けておりまだその数は潤沢すぎるほどにありましたが……此度想定の敵の繰り出すおそらく強力である眠り攻撃に対して間に合うかどうか…。解眠魔法であると噂される【ダミンパ】を習得しているカール王子の従者は残念ながら……私も含めておりません。では察するところ、さいあく根気よく眠り状態からこの要のアイテムをふるい起こし合う……すこし頭と瞼の痛い持久戦になりましょうか?」
「そうだな、それと忘れてるぞ〝コイツ〟もおまけだ」
俺は山積みにされた妖精の粉入り小袋の山からひょこっと顔を出した黒髪のクロウと緑もじゃこのクピンに、お忘れであったアイテムをひとつ手に持ってみせびらかした。
「それは……目覚まし時計? たしかベヌレの貸し切りにした宿屋で去り際に記念にいただいた…アヒルコールドの…」
「ってカールさすがにそれ……ヤルの……? あんたいくらなんでも眠り状態にかわいいアヒルの目覚ましって……安直がすぎるかんじに見えて一気に不安なんだけど…!!(なんならそれない方が、マシにみえちゃう…)」
どうしてそんなに言葉と顔にするほど不安だと言うのか。
女子たちの注目を王子よりも一身に集める水色のアヒルさん、アヒル口がキュートな目覚まし時計はまだ鳴らさない。
秒針が普通に時を刻む。しだい真似たアヒル口を渋いクピンの顔に諭されやめた俺は──同時に出番の巡って来た〝珍アイテム〟のお披露目に一介のプレイヤーとしての興奮とそのしたり顔を隠すのをやめた。
「やっぱりこの村をこのままにはしておけない。石にしたしわざが魔物なら──狩るべきだ」
やはりこうなる。
緑髪の剣士はその意志を貫きあらためて王子に示した。
〝助ける〟ではなく、すこしばかりカール王子の任である魔物狩りの目的に合わせたようにもきこえる。
そして見つめる……一介の王子の存在を喰うようなその彼にしかだせない真剣を眼差しは──
「じゃ、狩るか」
この王子に真剣は似合わない。俺は砕けた感じで、張り詰めていた空気にじぶんの空気を吐いた。
「あぁ、カール!」
「え、カールが??」
真剣面一転熱く笑ったのはアモン・シープル。
心配面から驚嘆したのはクピン・シープル。
「しかし得体の知れない石化攻撃への対策が?」
さらに報告で居合わせたクロウが一言簡潔に疑念をはく。
それに乗っかる形でクピンがまた俺に今度は諭すような雰囲気で語りかけた。
「そうよカール。アモンには…わるいけど今回ばかりは簡単な賊退治とはいかないじゃない。カールもカールで……っいつもみたいに放り投げて断ればッ」
「必要ねぇ」
「ん?? なに……?」
聞き返されても、俺のくみたてた頭ん中では──
「石化対策なんて必要ねぇ」
「はぁあ? カール。それってあんたが言ってた無策の第四とおなじじゃない!」
「誰が無策だなんて言った。石化の対策〝は〟必要ねぇーんだよ」
「はぁあ!??」
同じではない。
俺は鼻で笑うように、カール王子の旅団の面々がそれぞれかわるがわる膨らませすぎた敵のイメージを、あざけった。
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「寝かしつけるのが段階を踏んだ対象を石化するための条件もしくは脅威である石化攻撃の即効性拡散性有効射程距離が実はそれ程なく戦闘の最中には多数でかかればそこまで注意を払う必要がないコマンドとなる? ……なるほどこの状態の経緯としては違和感なく……考えられますね。さすればつまり、敵方の用いる可能性の最も高い眠りの武器や魔法の対策がふんだんに必要だということですね。石化攻撃には時間がかかりそれよりももっと確実性の高い強力な眠りの攻撃を仕掛けてくるはず……なるほど、ええ」
「あぁその通りでバッチリ同じだ。俺はきっとそうだとさっき考えた末に踏んだが……じゃないとおかしいからな。わざわざ眠り顔でにんげんさまを石化させるのがその魔物の趣味なら別だがな。それならとっとと尻尾まいて諦めるぜ」
メイド長で参謀のクロウに説明しクロウが今膨らませた。
石の魔物対策へのイメージ。
そう必要なのは眠り対策、石化対策ではない。眠った顔を並べた石像たちが最初からそうだと言っているのだ。……目覚めたヤツは言わなかったが、まぁそれは一旦置いておこう。
俺の話を良くきいたクロウはさっそくメイド兵たちに物資のかくにんをするよう指示を与えた。
「ででもカールそうだとしても! ここにこうして眠ったその石人間たちが置かれてるのはどう説明するのよっ? 眠らせて魔物がここでそれこそわざわざ石化させたってこと?? ま、まだ何かあるんじゃないの?? そうよ、きっとそう!!」
また敵のイメージをもじゃもじゃ膨らませるヤツが出てきたが──合っている。そのわざわざしてくれた妄想は。
「それは魔法か何かの手を借りて配置したとしかいえねーな。まぁ……どうしてもって言うならァ……五歩目ぐらいで気付いたこともあるには〝ある〟が?」
「ぬぬゥ…………な、なに??」
クロウと見比べるとこのキャラクターは犬のように表情が豊かに変わるものだ。
やけに素直に聞き返されて気持ちいいので、俺も素直に感じたことをクピンと居合わせた皆にむけて語った。
「はっ。それはそれこそみんな大なり小なり感じてることだろうよ。こうやって熱心に集めた食料をご丁寧にならべては人間様の感情を煽ってェ……つぎの挑戦者を待ってるんだろう? まるで一石二鳥ってな、はっ(なんかちがうか)」
「ちょ……挑戦者? 人間のかんじょうを……あおる……? 魔物が…」
あおられて──風がそよぐ。この距離からでも王子の茶髪を揺らすヤツがいる。
遠方の広場に俺が見た、熱心な準備をしているマントのはためきを三人は見た。
既に抜いている、その鋼の剣は────俺たちがさっきまで語り膨らませていた、虚空を舞い斬り裂いた。
▼
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話題そのex《おしえて!眠り対策①》
てきぱき動いたメイド長のクロウが戻って来たので、王子を当然中心とした俺たちはここの村人が軍評定をしていた例のひみつの作戦会議室を借り、机上に必要アイテムを積み上げて一度シミュレートしてみることにした。
「馬車に積んだアイテムの再確認をしたところ……やはり要のアイテム【妖精の粉】は幸いにもベヌレの街で買い付けておりまだその数は潤沢すぎるほどにありましたが……此度想定の敵の繰り出すおそらく強力である眠り攻撃に対して間に合うかどうか…。解眠魔法であると噂される【ダミンパ】を習得しているカール王子の従者は残念ながら……私も含めておりません。では察するところ、さいあく根気よく眠り状態からこの要のアイテムをふるい起こし合う……すこし頭と瞼の痛い持久戦になりましょうか?」
「そうだな、それと忘れてるぞ〝コイツ〟もおまけだ」
俺は山積みにされた妖精の粉入り小袋の山からひょこっと顔を出した黒髪のクロウと緑もじゃこのクピンに、お忘れであったアイテムをひとつ手に持ってみせびらかした。
「それは……目覚まし時計? たしかベヌレの貸し切りにした宿屋で去り際に記念にいただいた…アヒルコールドの…」
「ってカールさすがにそれ……ヤルの……? あんたいくらなんでも眠り状態にかわいいアヒルの目覚ましって……安直がすぎるかんじに見えて一気に不安なんだけど…!!(なんならそれない方が、マシにみえちゃう…)」
どうしてそんなに言葉と顔にするほど不安だと言うのか。
女子たちの注目を王子よりも一身に集める水色のアヒルさん、アヒル口がキュートな目覚まし時計はまだ鳴らさない。
秒針が普通に時を刻む。しだい真似たアヒル口を渋いクピンの顔に諭されやめた俺は──同時に出番の巡って来た〝珍アイテム〟のお披露目に一介のプレイヤーとしての興奮とそのしたり顔を隠すのをやめた。
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