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GAME13
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俺たちまで石のように立ち止まってはいられない。
さっそくカール王子の旅団はこの石色のミステリーをとくべく、訪れた村の隅々を調査し始めた。
イシカゲ村とはいうが、その名のとおり石の人影がいっぱいあるのが特徴の村だ。
しかしそんな馬鹿な話はない。
道端の村人らしき者たちをタッチしてもつついても反応はやや…すごく硬い。
どいつもこいつも老若男女肌が手が石のように硬いのだ。
このままいたずらに待っても動く石像のモンスターとも思えない。
ルクの村のときにように悪意が隠され分かりにくいが分かりやすいのよりも、このイシカゲ村は派手に分かりやすいが分かりにくい。前は真正面にいた敵がさっぱりいない、寂しげな風が立つ石の間を通り過ぎるだけだ。そう敵の正体、尻尾がまだ見えてこないのである。
そもそも敵などもいない可能性がある、なにかの呪いや魔法なのかもしれない。
そんな正体不明の事態に物体に……さきほど試しに妖精の粉をふりかけて使ったが、やはりこの石化じみた症状は治らず。毒や眠りの状態異常よりもこのゲームでの石化は上位の状態異常、治療するには専用の回復魔法や珍しいアイテムが必要になるだろう。あいにく今は手っ取り早く治す術を思い当たらない。
それに────どこぞですごく見たことのあるキャラたちもいる。今絶賛ずらっと……俺の目には映る……広い道にそれらが石化して並べられて、いる。
そのうちのひとつ、ギムホナが恐れ知らずにつついて遊んでいるのはものすごく背の高い女の石像だ。男の王子よりも背が高いその両腕をひろげた石像に、双子がしまいにはぶらさがりながら────崩れた。
右と左どっちの双子も同時に手を滑らせて尻から地に落ちた。
「「どひゃ」」
そんなコミカルな失敗のお遊びよりも、俺はついに目撃した。
ここまで探しても話しても触っても何も起こらなかった村についに音立てる異常が起こった。
砕けそうな音と、砂石の埃を滴らせながら。
石の彫像のような顔がひびわれて肌色を露出してゆく。
そして何かが生まれた────首から上だけ。
石の膜を破り現れたのは、血まみれの背の高い女の顔だった。
「「……」」
「……」
「……」
「……っ……!!」
「血まみれだやめとけ、あちこちひびわれて死ぬぞ(石だけに)」
俺は見合わせた目覚めたての半石化状態の女に、その力んだ顔と腕力と気力でどうにかすることをおすすめしなかった。
▼
▽
長めの青髪をはたきでたたき、埃を落とす。
額やてっぺんから流れる血は、メイドたちにハンカチで拭われた。
唯一石化から半石化状態へと良化?した首から上だけ肌色と自由を取り戻した女戦士を動ける人間たちで世話し、さっそく俺たちは道端でそのまま立ったまま話をうかがうことにした。
「……」
しかしなかなかしゃべらない。しばらく待ったが、黙したままだ。そんな険しい顔をしながら睨めっこしていると、ついにそいつの唇が動いた。
「……みっ……ず…」
どうやらこちらの準備にひとつ順序ミスがあったようだ。俺の指示よりはやくメイド長のクロウが彼女の口元に革水筒を飲み口をもっていき、水を与えた。
「ぷふぅ…………。ん。────アオ・ニオール。…傭兵」
乾いていた唇はうるおいを取り戻し、見事な真顔で完璧な自己紹介をしてくれたようだ。
▼
▽
石化は半分でも解かれるとひどく喉が渇く状態異常のようだ。
村人ではないが第一(目覚めている)村人を発見したことなのでさっそく。手持ちのありがたい水と食料を賞品にして、俺は突っ立つ傭兵アオ・二オールに一問一答形式で順序立てて問うことにした。
「まずお前はなぜここイシカゲ村にいる?」
「戦闘中────気付いたらいた。だが私も石像を見た」
「ん? 戦闘? どんな敵だ?」
「暗がりでよくはわからない。前に魔物、奥ににんげん? 蛇? のような魔物」
次々とヒントの切れ端や尻尾なるものがノッポの青髪さんの口から並べられていく。嘘をついている人間の喋り方とは思えない、第一こいつはそういうキャラでもない、むしろ嘘とは真逆のタイプであると古く記憶している。本当に覚えていることを思い返して、俺の前に言葉にして並べているのだろう。
「蛇のような……か。まぁいい、それより一度ひじょーーーーに恒例の答え合わせをしておきたいことがあるん・だ・が、あーあー、質問をゴツっと変えるぞ……」
「こいつはいったい……だぁーーぁれだ?」
今気になるミステリーは〝ふたつ〟。
すぐに解決しそうなひとつを先に処理するために、
俺は石のように硬い肩を少し高めの肘掛けにしながら、その石のベールにゴツゴツと包まれたロン毛野郎の正体を問うた。
「王子ダイヨン」
「フッ。ははははは、合ってはいるがな、ははは」
「王子ダイヨンではなく〝ブール・ロビンゾン第四王子〟様、と…その御一行のようですね」
アオ・二オールが簡潔に答え、クロウが補足し言い換える。
俺はゲーム設定上の年違いの兄弟にもたれながら……泣きはしない。
旅先で訪れた運命の出会い──
そのぜんぜん似ていないダイヨンこと別の王子様の固まった眠り顔に、ニヤつくカール王子の顔をふざけて並べてみた。
さっそくカール王子の旅団はこの石色のミステリーをとくべく、訪れた村の隅々を調査し始めた。
イシカゲ村とはいうが、その名のとおり石の人影がいっぱいあるのが特徴の村だ。
しかしそんな馬鹿な話はない。
道端の村人らしき者たちをタッチしてもつついても反応はやや…すごく硬い。
どいつもこいつも老若男女肌が手が石のように硬いのだ。
このままいたずらに待っても動く石像のモンスターとも思えない。
ルクの村のときにように悪意が隠され分かりにくいが分かりやすいのよりも、このイシカゲ村は派手に分かりやすいが分かりにくい。前は真正面にいた敵がさっぱりいない、寂しげな風が立つ石の間を通り過ぎるだけだ。そう敵の正体、尻尾がまだ見えてこないのである。
そもそも敵などもいない可能性がある、なにかの呪いや魔法なのかもしれない。
そんな正体不明の事態に物体に……さきほど試しに妖精の粉をふりかけて使ったが、やはりこの石化じみた症状は治らず。毒や眠りの状態異常よりもこのゲームでの石化は上位の状態異常、治療するには専用の回復魔法や珍しいアイテムが必要になるだろう。あいにく今は手っ取り早く治す術を思い当たらない。
それに────どこぞですごく見たことのあるキャラたちもいる。今絶賛ずらっと……俺の目には映る……広い道にそれらが石化して並べられて、いる。
そのうちのひとつ、ギムホナが恐れ知らずにつついて遊んでいるのはものすごく背の高い女の石像だ。男の王子よりも背が高いその両腕をひろげた石像に、双子がしまいにはぶらさがりながら────崩れた。
右と左どっちの双子も同時に手を滑らせて尻から地に落ちた。
「「どひゃ」」
そんなコミカルな失敗のお遊びよりも、俺はついに目撃した。
ここまで探しても話しても触っても何も起こらなかった村についに音立てる異常が起こった。
砕けそうな音と、砂石の埃を滴らせながら。
石の彫像のような顔がひびわれて肌色を露出してゆく。
そして何かが生まれた────首から上だけ。
石の膜を破り現れたのは、血まみれの背の高い女の顔だった。
「「……」」
「……」
「……」
「……っ……!!」
「血まみれだやめとけ、あちこちひびわれて死ぬぞ(石だけに)」
俺は見合わせた目覚めたての半石化状態の女に、その力んだ顔と腕力と気力でどうにかすることをおすすめしなかった。
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長めの青髪をはたきでたたき、埃を落とす。
額やてっぺんから流れる血は、メイドたちにハンカチで拭われた。
唯一石化から半石化状態へと良化?した首から上だけ肌色と自由を取り戻した女戦士を動ける人間たちで世話し、さっそく俺たちは道端でそのまま立ったまま話をうかがうことにした。
「……」
しかしなかなかしゃべらない。しばらく待ったが、黙したままだ。そんな険しい顔をしながら睨めっこしていると、ついにそいつの唇が動いた。
「……みっ……ず…」
どうやらこちらの準備にひとつ順序ミスがあったようだ。俺の指示よりはやくメイド長のクロウが彼女の口元に革水筒を飲み口をもっていき、水を与えた。
「ぷふぅ…………。ん。────アオ・ニオール。…傭兵」
乾いていた唇はうるおいを取り戻し、見事な真顔で完璧な自己紹介をしてくれたようだ。
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石化は半分でも解かれるとひどく喉が渇く状態異常のようだ。
村人ではないが第一(目覚めている)村人を発見したことなのでさっそく。手持ちのありがたい水と食料を賞品にして、俺は突っ立つ傭兵アオ・二オールに一問一答形式で順序立てて問うことにした。
「まずお前はなぜここイシカゲ村にいる?」
「戦闘中────気付いたらいた。だが私も石像を見た」
「ん? 戦闘? どんな敵だ?」
「暗がりでよくはわからない。前に魔物、奥ににんげん? 蛇? のような魔物」
次々とヒントの切れ端や尻尾なるものがノッポの青髪さんの口から並べられていく。嘘をついている人間の喋り方とは思えない、第一こいつはそういうキャラでもない、むしろ嘘とは真逆のタイプであると古く記憶している。本当に覚えていることを思い返して、俺の前に言葉にして並べているのだろう。
「蛇のような……か。まぁいい、それより一度ひじょーーーーに恒例の答え合わせをしておきたいことがあるん・だ・が、あーあー、質問をゴツっと変えるぞ……」
「こいつはいったい……だぁーーぁれだ?」
今気になるミステリーは〝ふたつ〟。
すぐに解決しそうなひとつを先に処理するために、
俺は石のように硬い肩を少し高めの肘掛けにしながら、その石のベールにゴツゴツと包まれたロン毛野郎の正体を問うた。
「王子ダイヨン」
「フッ。ははははは、合ってはいるがな、ははは」
「王子ダイヨンではなく〝ブール・ロビンゾン第四王子〟様、と…その御一行のようですね」
アオ・二オールが簡潔に答え、クロウが補足し言い換える。
俺はゲーム設定上の年違いの兄弟にもたれながら……泣きはしない。
旅先で訪れた運命の出会い──
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