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GAME9
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光の粒と弾けて天にヘソを向けていたキングラットは消えていった。
一枚のタロットをのこして──。
「お前のものだ。のこさず貰っておけよ、そいつも貰ってほしいみたいだぞ」
「あぁ。カール」
タロット。それは成長アイテム。使うと何かのステータスが僅かながら上昇するありがたいものだ。
ぽっと道端や他人んちに落ちていたり、こういうボス級を倒すとたまにドロップする。
これが何であるのかただの使い所の頭を使うレアアイテムであるのか、議論はあったが、ファンブックで明かされたのはそれが循環する強大なチカラの欠片だということだ。リアルにVR化された今もその設定は────どうやらそういうことらしい。
俺に頷いたアモンはさっそく赤いタロットに触れて、それを使った。タロットは手のひらの上で馴染むように、綿雪のように溶けてなくなった。
「カールなんか俺────まだまだつよくなりたいみたいだ」
何かをゆっくり握りしめながらアモンはそう言った。
「ふっ。そう思ってんのお前だけじゃねぇぞ」
「ぼくも…ダメかな?」
「ダメだ。お前の出番今日はもうねぇから!」
「「ここからでるな、ちょーさていん」」
「あはは…こまった」
双子が木の棒で地に円を描き緑髪の剣士をかこう。
鞘に手を置いていたヤツは、大人しく困り顔のまま笑った。
▼
▽
キングラットを倒したアモンの出番はない。残りの俺たちは天才剣士に休養を与え、残りの鼠系魔物たちを殲滅していった。
「あとはお姉さんにまかせてぇい!!! 10体目桁違いのおてがらもらったーーーー!!!」
「ちょっと待って待って待ってオレンジ!!!」
「うおおおお一度走り出したこのイヨポンが待てるか!! 早い者勝ちフレぇぇシュ!!!」
「待って待って待って…だから待てや!!!」
「フレぇぇぇ──ひゅっ!!? ごべぇーーーー!!? 痛たたた……ゴラァ!!! 馬鹿もじゃこナニしてんだ!!!」
バグナウの爪を剥き出し獲物に向かい真っ直ぐと走り出したイヨポンが、ずっこけた。
地を這った水の紐に足を取られたイヨポンはまさかのフレンドリーファイアに、うつ伏せから地面にへこんだ顔面をあげ怒った。
「このこ、敵意がない」
「はぁ? 敵意? って魔物をアンタあぶな……」
鼻先に土をつけたイヨポンが見たその背はかがみ、鼠にじぶんの手の甲をさしだし嗅がせる。俺が見た緑もじゃ髪の少女の横顔と灰鼠の魔物⭐︎型の白い腹模様が珍しい。
〝スターラット〟そのレア魔物は出会えたら超ラッキーレベルの鼠系魔物。なおかつ敵意がないのは途方もない確率。それを見抜ける才能や人材も。
魔物を仲間にできるシステムは20年前もひそかに存在した、ごくごく低確率なので仲間にできずに旅を終えてしまう者もでてしまうほどの。しかしそんなプレイヤーが立てた野暮な確率計算というよりは、彼女が彼女らしくより活躍できるようにブラッシュアップされて用意された特殊イベント? それともただの運命か?
「クピンにはかなわないな、あはは」
素振りしていた剣を鞘にしまったアモンはその光景に笑っている。
静まり返る洞窟内でクピン・シープルがスターラットと心を通わすそんな1人と1匹の光景に、一介のプレイヤーの俺はひそかに流れ出た汗をぬぐった。
一枚のタロットをのこして──。
「お前のものだ。のこさず貰っておけよ、そいつも貰ってほしいみたいだぞ」
「あぁ。カール」
タロット。それは成長アイテム。使うと何かのステータスが僅かながら上昇するありがたいものだ。
ぽっと道端や他人んちに落ちていたり、こういうボス級を倒すとたまにドロップする。
これが何であるのかただの使い所の頭を使うレアアイテムであるのか、議論はあったが、ファンブックで明かされたのはそれが循環する強大なチカラの欠片だということだ。リアルにVR化された今もその設定は────どうやらそういうことらしい。
俺に頷いたアモンはさっそく赤いタロットに触れて、それを使った。タロットは手のひらの上で馴染むように、綿雪のように溶けてなくなった。
「カールなんか俺────まだまだつよくなりたいみたいだ」
何かをゆっくり握りしめながらアモンはそう言った。
「ふっ。そう思ってんのお前だけじゃねぇぞ」
「ぼくも…ダメかな?」
「ダメだ。お前の出番今日はもうねぇから!」
「「ここからでるな、ちょーさていん」」
「あはは…こまった」
双子が木の棒で地に円を描き緑髪の剣士をかこう。
鞘に手を置いていたヤツは、大人しく困り顔のまま笑った。
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キングラットを倒したアモンの出番はない。残りの俺たちは天才剣士に休養を与え、残りの鼠系魔物たちを殲滅していった。
「あとはお姉さんにまかせてぇい!!! 10体目桁違いのおてがらもらったーーーー!!!」
「ちょっと待って待って待ってオレンジ!!!」
「うおおおお一度走り出したこのイヨポンが待てるか!! 早い者勝ちフレぇぇシュ!!!」
「待って待って待って…だから待てや!!!」
「フレぇぇぇ──ひゅっ!!? ごべぇーーーー!!? 痛たたた……ゴラァ!!! 馬鹿もじゃこナニしてんだ!!!」
バグナウの爪を剥き出し獲物に向かい真っ直ぐと走り出したイヨポンが、ずっこけた。
地を這った水の紐に足を取られたイヨポンはまさかのフレンドリーファイアに、うつ伏せから地面にへこんだ顔面をあげ怒った。
「このこ、敵意がない」
「はぁ? 敵意? って魔物をアンタあぶな……」
鼻先に土をつけたイヨポンが見たその背はかがみ、鼠にじぶんの手の甲をさしだし嗅がせる。俺が見た緑もじゃ髪の少女の横顔と灰鼠の魔物⭐︎型の白い腹模様が珍しい。
〝スターラット〟そのレア魔物は出会えたら超ラッキーレベルの鼠系魔物。なおかつ敵意がないのは途方もない確率。それを見抜ける才能や人材も。
魔物を仲間にできるシステムは20年前もひそかに存在した、ごくごく低確率なので仲間にできずに旅を終えてしまう者もでてしまうほどの。しかしそんなプレイヤーが立てた野暮な確率計算というよりは、彼女が彼女らしくより活躍できるようにブラッシュアップされて用意された特殊イベント? それともただの運命か?
「クピンにはかなわないな、あはは」
素振りしていた剣を鞘にしまったアモンはその光景に笑っている。
静まり返る洞窟内でクピン・シープルがスターラットと心を通わすそんな1人と1匹の光景に、一介のプレイヤーの俺はひそかに流れ出た汗をぬぐった。
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