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39 ダンジョン部vs骨の軍勢❸
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各ステージで次々と進みゆく戦況、1ページ1ページ、確かな力をもって敵を打ち倒しクリアされてゆく。
バラバラになっていたダンジョン部のメンバーたちは、それぞれの目一杯で目の前目の前の状況と戦っていた。
ここにも然り、ボーンクイーンの生と死の天秤、骨を用いた契約と奇跡により蘇った……未知の世界の未知の執念情念に取り憑かれた敵と────
「恋、恋、恋、こいいいいいいいい、!!! どうして君は俺のモノにならないッえっ?合理的に言ってみろおおおおお!!! 恋叶わなくばナニも意味をなさず!!! 人類はこのバグった感情を綺麗にクリーニングする術を確立するのだあああ!!! ナニを怠けている人類いいいいい!!! 貴様らはこんな重大な恋を解き明かさず幾星霜の交尾ばかりを紡いでナニをやっていたあああ!!!」
学士の熱ある演説もそのオレンジイヤホンの耳には聞こえない。ただただ大きな少女は戦う。敵として立ちはだかる障害をクリアするため。
バズーカから発射される灰色の爆撃をくぐり抜け、ただ背の高いダルメシアン柄ツナギと追いかけっこをする銀色の美人集団。
やがて、爆撃音は鳴り止み────追いつかれてしまった牛頭梢は複数の銀色美集団に抱きつかれ、どうにも動けず。
叫び疲れた男はやっと捕らえた上質な素体の元へと近付いていった。
「ハァハァ…ははは…そうだ君に恋をすると宣言した。私はそうだった、よくある学生の取り持つパーティーの中の戯言、ただの暇つぶしの実験だったんだ! 彼女はそれは面白いねと言ったんだ! ははははは見ろよあの笑顔を、笑顔だ、えっがっおっ!!!」
黒いアカデミックドレスを着た狂った男は、拘束していた灰髪の少女にビンタをした。
それでも飽き足らず往復する平手。
幾度も幾度も、暴力をふるう。
それは学士の体験を反芻するように、似た髪色をした生の少女相手におきかえて繰り返される。
灰髪の少女はこれ程ビンタされた事はない…容赦のない痛みに、頭がただ行ったり来たりぐらつき────
繰り返される男の支配する時間に、パリンとするどく鳴ったのは、その止まった平手打ちではなく。
緑の液体が辺りに飛び散る。
円柱に模られたガラスを破り目覚めた……一体の真新しい素体は、ゆっくりと一歩一歩あるき方をたしかめるように生まれたての裸のまま…おどろく学士の元へと近づいていく。
それは様子がおかしい、学士は知っている。
生まれた素体は学士の命令を聞かず、まったく違った反応が見られた。
常軌を逸していた学士は反転大人しくなり、感情豊かな驚き眼でふらり…濡れた銀髪の彼女の元へと近づいた。
「エリアか!? エリア・マナハイム…なのか!!!」
チラリと余所見をしたエリアはまた学士を見てゆっくりとそう彼の言葉をきき頷いた。
「オオォ会いたかったぞ!!! エリアぁ…!」
「っ──わたしも!」
生まれたてのエリアはつっかえながらも初めての肉声を発した。エリア・マナハイムは陽気に笑う。
ただ笑っているだけ────
「エリアはそんなこと言わないいいいいい!!!」
学士は知っている。エリア・マナハイムはそんなことを言わないのだと。
このエリアは偽物、失敗作、自分の恋したエリアではない。
沸々と込み上げるのは怒り、そして振りかぶるのは右の平手。
しかしあらたしく生まれた銀髪の素体は叫ぶ見知らぬ男のことなど────
「なはははは、そんな物語知らないってのビンタ男!!! 【パンジーパンチライブラリ】!!!」
銀髪の素体は学士に手痛い右の平手打ちを貰い、そのままカウンター右のストレートを繰り出した。
紫だいだい赤きいろ、ページを散らしてパンチ一発に出力されたパンジーの花は咲き誇っていく。
見知らぬ学士を吹き飛ばす挨拶代わりの右ストレート、生まれてはじめての右ストレートは豪快に決まった。
命令を下していた学士がやられたことで、銀色美集団の拘束と気が少し緩んだ。
その隙に、ひそひそと遠隔でオーラ操作していた牛頭梢のバズーカ砲はひとりでに宙に浮かびその種を吐き出し、自分の背までを灰色に爆撃した。
「いつつつ………ちょっこし、自爆────どちらさま?」
差し伸ばされた濡れたつめたい手を取り、自爆し拘束を脱した牛頭梢は起き上がり見つめる。
銀髪の美人などやはり知らない。
銀髪の素体はそっと両手を伸ばし灰髪をかきあげる────耳を塞いでいたオレンジのイヤホンを外した。
「小谷螺夢、いつぞやの放課後の図書室ぶり。なはははなぁーーんか生き返ったっぽい!」
そう言って銀髪は笑った。カタチはまったく違えどその喋り方その笑い方そのイヤホンをはずした手つきは何か……牛頭梢はここ一学期ぶん数ヶ月の記憶に忘れられずに憶えていた。
それはまったく物語にしてもデタラメな邂逅、灰色の瞳をまんまると見開いて────かがやく。
「おぉー。なにそれ────…………ちょっこしヤバイ? あははは? あれぇ、なんかちょっこし綺麗になった?」
「あぁなんか知らない身体だけど超絶美人でラッキー…ってやかましいっ?」
「「あははははは」」
はずしたオレンジイヤホンから漏れ出る音はふたりを奏でる────
復活したのは緑蜜高等学校2年生図書委員の小谷螺夢。
あの日の図書室からはじまった放課後のまどろんだ夢のつづきは、薄暗いラボの見知らぬカラダから。
灰色ダルメシアンツナギと銀髪素っ裸、おでこをくっつけながら訳の分からないじぶんたちふたりの物語を笑い合った。
「ついに記憶クリーニング除去装置は完成しなかった」
「記憶クリーニング除去装置…?」
銀髪の素体に宿った小谷螺夢は濡れた裸に黒いアカデミックドレスを纏い、ぐったりと倒れる同じ衣装の男ののたまうことを問い返した。
「人としてのバグを除去する。そうすれば人の情念、恋というバグは解明できなくても失くすことにより到達できると考えた…」
「なはは…なるほど。でもリサイクル創生ってのは? それとは別物?」
「それは応用、記憶クリーニング除去装置は完成しなかったが、素体をこのリサイクル創生装置に浸すことで人は著しく赤ちゃん帰りする、長い眠りにつかせることで記憶分野を退行させ眠っている間に刷り込むことでより白紙の状態ですげ替え育てることは可能であった。人はその身を1度で腐らせただ死ぬだけではなく、リサイクル可能だとかんがえた…」
「ちょっこし、何いってる?」
「なはは…たぶん人を赤ちゃんに戻してエリアって子の人格を完璧に植え付けて生まれ変わらせるってことだよね?」
「いやちがう……それは過程であり私はエリアの魂をエリア・マナハイム自身をこの世に蘇らせようとした。私が呪われ契約したボーンクイーンは契約を結ばせないとそれは蘇ることはできないと言ったが、同じくそうであったようだ。エリアは私を拒否しつづける、似た性質の器を用意すれば再び贋作ではなくホンモノの魂が舞い戻ってくると……」
「ちょっこし、どゆこと?」
「なはは…エリアって子のことをひどく愛してたってことじゃない」
「おぉー」
「愛じゃない……恋だ…はつこ………」
天を見上げながら学士は灰色に燃えてゆく、覗き込む銀髪のその子に見守られながら────
「おぉ? なんか燃え尽きた?」
「なはは……燃え尽きたねぇ」
一途な恋、初恋。
学士はついに叶わず────蘇った肉体と骨の記憶は燃え尽きてゆく。
学士の男の奇妙な物語はただの恋心。
初恋の物語に巻き込まれて復活を果たした小谷螺夢はせめてもと、燃え尽きる間際まで彼の顔を見守ってあげることにした。
▽
▽
激しい踊りはつづく、天にぶら下がるシャンデリアは派手に落ち、テーブルクロスは豪勢をひっくり返し台無しに彩る。
シデンレイラは服着た人形一体をダイヤのチェーンで巻き付け、引き寄せ──飛んできた銀のナイフとフォークを無機質な肉壁を盾にし防いだ。
しかし勢いよく、人形を貫いたレイピア。
ずぷりと貫いたのはひらひらと舞う白黒リバーシブルのロングマント。
身軽なシデンレイラは華麗に回転し踊りながら、左腕に装備した緑クラブの盾でゴツリ──赤ドレスの女の側面を叩いた。
盾を用いた鮮やかな裏拳、春風を纏いながら赤ドレスの女はアレアレと回転していき、やがて人形の集団へと吹き飛んでいった。
(厄介なのはこの人形。動き回らないと常に1対多、流れるバイオリンの音にそいプログラミングされたように踊っているとおもい演奏する人形を壊せど自爆するフェイクでした。おかげで残りシールド値は心許無く)
(しかし一つ分かったのは執着していたやはり服。おそらく普通のオーラでは対抗できない特別強力なものであり、共通概念として設定されているということです。例えば人形はただの飾りでそのレイピアで貫き死を遂げた服は踊り続ける強力な呪いになるなど。服に人格を染み込ませもたせる…………など。この身と先程のこのマントも何度か貫かれた際にも、奇妙なオーラのぐねりを感じました)
(つまり)
(シンプル、上回るオーラのチカラで制御すれば止まると。レイピアを破壊も考えましたが狙えるほど未熟な腕ではなく難しくフェイクの可能性もあり。それにしかし、相手は残念ながら格上のオーラ量、設定された共通概念の技を破るのは一筋縄ではいかない。かと言ってべらべらと熟考してもこの人形劇は止まるものではない。つまりこのまま逃げるか救援を待つのが最善手なのですが)
人形たちに支えられた赤ドレスは、バックバランス、後ろに豪快華麗に反っていた体と面を起こしワラった。
「あなたという人がその服に懸ける思い、なんともまぁ美しくしなやかで素晴らしいですわ。しかしその煌びやかな白黒のお衣装は華麗にミュージカルのようにうごくあなただからこそ似合うのかしら? ふふふまずは友達から初めてみませんか、オシャレな首輪をつけて」
じゃらっと…赤い首輪を見せつけた。
「首輪は似合わないさ、シデンレイラは黄金の守り人、この身を縛れるのはふふ価値ある黄金だけさ」
「あら、黄金のもありましてよ。わたしだけでは着こなせないモノもあると痛感してまして、ちょうど生身のペットも一匹欲しいと思っていたの」
赤い首輪の次は黄金の首輪、ご要望のアナザーカラーもばっちり、赤ドレスの狂人は微笑んだ。
「ふっふ、衣装用のペット……お衣装のことでそこまでアタマが至ることはなかったさ…」
(汚名挽回ではなく返上と行きたかったのですが、どうも上手くいかないものです……溜めた幸運のオーラにキッカケの神風でも吹けば……)
流した汗粒と服に染みゆくものに、吹く風は変わらない。
いつものようにシデンレイラは赤ドレスの首を狙いつつも数多の人形たちと踊る、
────おどる
おどって────ぞわり
「!? ────(死の予感)!!!」
吹いてきた身をよだたせる神風に、ふわり着地し折れた白い右ヒール。
華麗の中に混じった下手なステップを赤ドレスの淑女はニヤリ、上品に微笑み逃さない。
指揮棒代わりに、レイピアが刺し示す。
切先の向かう白黒衣装へと、わらわらと一斉に寄ってたかる人形たち。
「──悪いけど今日はすこしッ、踊らされている訳にはいかないのさ!!!」
銀の銃口を構えたのは赤いドレスのターゲット。
頼りない小銃を持つピエロの元へと、人形がわらわらと群がる。
ヒールの折れた足を挫いた白黒衣装へと飛びかかる、突っ込む────そして生気なく、おちてゆく。
神風、予感、幸運、そろった好条件に解放され広がったシデンレイラの身に封じたパンドラの箱に眠る〝死のオーラ〟はこの舞踏会場スベテをも────
バタバタばたばた…………とてつもないオーラを浴び倒れていく人形たちはぴくりとも立ち上がらない。
そして死のオーラを浴びた白黒衣装と赤ドレスの2人はピタリとも動けない。
「ふぐっ!?? なんでし──ぶべっ!」
その身は固まったまま、されど時は動いたまま。
人形たちの眠りゆくその未来を読んだ銀の銃口は、ダイヤのチェーンをはじめから見据えていた真っ直ぐに発射した。
驚き顔でかたまる、その赤ドレスの細いウエストを巻き付け華麗に強引に踊らせ引き寄せる。
鋭いレイピアは首筋にぴたり…シデンレイラの汗粒を刃にのせて伝わせ。
高貴なお顔の顎下からは黄金の銃。
「ふふっ、あなたは何者でして」
「岬麗でシデンレイラ、はたまたダンジョン救助隊。たのしいワルツはここまでさ」
青白くかがやく。
あつらえた黄金の銃口から天へと放たれた美しきオーラの剣は賭け描いていた決着の未来へ、狂いなく────────
「ふぅー。こんなのは1人と思いたいものです。まさに…棚からぼたもち、それよりこのとてつもない死の予感のアドバイス、牛頭梢は……まぁ心配ないでしょうね…ふふっ。ふぃーちょっと休憩していきましょうか……やはりこのスペードルの死のチカラ、若気の至りでつよいモンスターを相手に発散していたとはいえ。ブランクありで使うべきではありませんねぇー…ふふふふあはははは────」
決着。
折れたヒールは女のフェイクとアピール。古き封印からまた解放されたシデンレイラの共通概念、4つある内のひとつスペードルの死のオーラは己の身さえ指ひとつ動けないほどとてつもなく。
たのしいたのしい舞踏会は、みんな倒れてミナ終わり。
煌びやかなシャンデリアの照らす……そこに赤い赤いドレスをのこして。
惜しみなく、勢いで──秘められた技を解き放った切先の先は、瞬く間にまばゆき閃光が貫き呑み込み、あまりのスピードと風圧とオーラにその光に巻き込まれていない骨骨までもがきしみながら砕け散った。
やがて虹色混沌の光はやみ、一直線に指差していた骨の魔王城にぽっかりと大口は開けり────
体内から体外へと顕現した古い赤い鞘へと熱い刃をゆっくりと仕舞い、さらに用のなくなった赤鞘を胸にまでしっかりと押し込んで己の自力で仕舞い込んだ。
ひとつ安堵の息を吐き、元ある場所に赤鞘の秘刀を戻した古井戸神子はながしたいい汗をパジャマの袖で拭い、作ったまるい轍道にそいながら、おもむろに先へと進んだ。
▼
▽
恐れもなく意気揚々とパジャマ姿と剣ひとつで乗り込んだ先に、エンカウントした生きる骨の衛兵たちを剣でかるく撫でて死をくれてやり、
ここまで骨の軍勢と城門ブロックを吹き飛ばした無双の刃はだれの拝謁の許可も得ず、より一層濃い魔の潜む謁見の間へと到達した。
「弟子をイジメたのって、はは、あんた」
途中出会ったタキシード姿の鼠に案内され、
王座へとつづく赤い絨毯の上に立ち止まった。剣を右手に携えた古井戸神子は王座にどうどうと脚組み座る黒ローブの女を見た。
「何が騒ぎ出てくるかと思えば、まさか三日の約束も待てずに来るだけのオルラはあるな、フッフッフ、貴様があやつら小娘どもをおしえた…魔気の不味い矮小なる世界の剣聖か?」
褐色の生脚を組み替えながらワラう。
ボーンクイーンは黒パジャマに珊瑚柄の剣を握る一風変わった剣士を見た。そのダークガーネットの赤目は透かし見た4つに圧縮された内在オルラの輝きに、またニヤリとワラう。
「え、なんて? ほにゃららセカイのけんせー? はは、いまさらホネホネチックな謎世界観はどーでもいいんだけどさ、剣を取りなよ、このままながれで相手してあげるからさ、」
不遜なアクビをしながら刃で肩を打ちほぐす。そしてやがて古井戸神子は刃にオーラを纏わせ、しのごの言わずに戦う素ぶりを見せつけた。
それでもなお、ボーンクイーンは派手なブロック作りの王座に座り動かず。
また脚をゆっくりと組み替えて────
「剣? フッフ、──要らんな」
鋭い白骨が絨毯下から湧き上がる。
肉を貫くいきおいで──
古井戸神子はさっそくのご挨拶の罠を気を抜かずに避けたが、
チラリ目に入れた王座に余裕綽々に座っていた姿はそこにはなく、
湧き上がる骨のマジックを避けたところ、ボーンブレードが襲う。
オーラを纏った骨太な刃が縦に地までを一閃、ひらり黒パジャマの剣士が半身に避けたところ。
ボーンクイーンの共通概念である骨は伸縮成長自在、そのまま右手を変異させて成していた骨刃をちぢめて刺さった地まで効率よく移動する。
素速い判断と反応が迫られる…二太刀目の攻防──やがて初対面の刃と刃は激突し、オーラの火花飛沫を宙に咲かせ鍔迫り合った。
「おぉ、夏ちゃんとジャグチの言ってたとおり骨のある感じだ、おかしいな最初はちょーはつすれば剣でくるときいたんだわ、そこをド神子ドライブでぐさっと、はは、」
「フッフッフ、我の目は節穴ではない我の心骨は誰よりも細やかな震えを感じ取る。じわり外からでも生意気に傾けようとする天秤を見極める必要もない。しかしその剣、ふふ今に100人はいたな。下見したぬしらの世界はよほどオルラを信仰していない不味い葡萄酒のようだ、三日も待てぬ自信はあったようだが満を持して差し向けたのがこの程度ではな、フッフッフ」
「はは、なにそれ、不味いブドウ? 100人に1人の美少女? なんかそれ、はは、節穴 じゃんッ!」
鍔迫り煌めき合う互いのオーラブレードは、不意に一方が極端に膨大に膨らみ、やがて弾けて飛び散った。
ダークガーネットの瞳が見開きまん丸となる間にも、剥き出しの骨の腕ごと素早い一太刀で弾き飛ばされた。
(我のオルラを操られた? …いや、こやつ……交わった刃から増幅させられ分散させられたか…勝手に)
「【握手剣】──悪いけど剣だけじゃないよ、旧ダンジョン部のド神子は、きょうは設計図ゼンブお披露目 あるかもよ? がんばれば? はは、」
長々と探るように鍔迫り合った、一太刀交えたオーラと膂力の単純なパワー勝負。
軍配が上がったのは強靭自由自在な歴ある骨の刃ではなく、己の剣から見知らぬ骨剣へと交わりあった際に相手のオーラを勝手にコントロールした御技をみせた古井戸神子。
パワーで勝れどオーラで勝れど、剣で勝れど一味勝れない高み。ただようオーラの使い方とダンジョンでの戦い方を古井戸神子は知っている。
「フッフ、見たこともない奇剣とオルラ術…我に刻もうとするか──心骨の刻が疼きよるぞ剣聖の小娘…!!!」
神牙流道場当主代行天の才能をもつ古井戸神子と、シーズ、奇妙な悪の繋がりを仄めかす心骨の女王ボーンクイーン。
まったく異なる世界と世界、本来ぶつかり合うことの永劫ない最高級のチカラとオーラは今、確かにぶつかり合っている。
まったくまったく人にとっても骨にとっても未知の領域、迷い込んだダンジョンという世界と世界をおぼろげに繋ぐ世界の狭間の亜空間、怪しい妖しい魔の迷宮で──────誰にも語り継がれたことのない最高級の闘いは始まってしまった。
バラバラになっていたダンジョン部のメンバーたちは、それぞれの目一杯で目の前目の前の状況と戦っていた。
ここにも然り、ボーンクイーンの生と死の天秤、骨を用いた契約と奇跡により蘇った……未知の世界の未知の執念情念に取り憑かれた敵と────
「恋、恋、恋、こいいいいいいいい、!!! どうして君は俺のモノにならないッえっ?合理的に言ってみろおおおおお!!! 恋叶わなくばナニも意味をなさず!!! 人類はこのバグった感情を綺麗にクリーニングする術を確立するのだあああ!!! ナニを怠けている人類いいいいい!!! 貴様らはこんな重大な恋を解き明かさず幾星霜の交尾ばかりを紡いでナニをやっていたあああ!!!」
学士の熱ある演説もそのオレンジイヤホンの耳には聞こえない。ただただ大きな少女は戦う。敵として立ちはだかる障害をクリアするため。
バズーカから発射される灰色の爆撃をくぐり抜け、ただ背の高いダルメシアン柄ツナギと追いかけっこをする銀色の美人集団。
やがて、爆撃音は鳴り止み────追いつかれてしまった牛頭梢は複数の銀色美集団に抱きつかれ、どうにも動けず。
叫び疲れた男はやっと捕らえた上質な素体の元へと近付いていった。
「ハァハァ…ははは…そうだ君に恋をすると宣言した。私はそうだった、よくある学生の取り持つパーティーの中の戯言、ただの暇つぶしの実験だったんだ! 彼女はそれは面白いねと言ったんだ! ははははは見ろよあの笑顔を、笑顔だ、えっがっおっ!!!」
黒いアカデミックドレスを着た狂った男は、拘束していた灰髪の少女にビンタをした。
それでも飽き足らず往復する平手。
幾度も幾度も、暴力をふるう。
それは学士の体験を反芻するように、似た髪色をした生の少女相手におきかえて繰り返される。
灰髪の少女はこれ程ビンタされた事はない…容赦のない痛みに、頭がただ行ったり来たりぐらつき────
繰り返される男の支配する時間に、パリンとするどく鳴ったのは、その止まった平手打ちではなく。
緑の液体が辺りに飛び散る。
円柱に模られたガラスを破り目覚めた……一体の真新しい素体は、ゆっくりと一歩一歩あるき方をたしかめるように生まれたての裸のまま…おどろく学士の元へと近づいていく。
それは様子がおかしい、学士は知っている。
生まれた素体は学士の命令を聞かず、まったく違った反応が見られた。
常軌を逸していた学士は反転大人しくなり、感情豊かな驚き眼でふらり…濡れた銀髪の彼女の元へと近づいた。
「エリアか!? エリア・マナハイム…なのか!!!」
チラリと余所見をしたエリアはまた学士を見てゆっくりとそう彼の言葉をきき頷いた。
「オオォ会いたかったぞ!!! エリアぁ…!」
「っ──わたしも!」
生まれたてのエリアはつっかえながらも初めての肉声を発した。エリア・マナハイムは陽気に笑う。
ただ笑っているだけ────
「エリアはそんなこと言わないいいいいい!!!」
学士は知っている。エリア・マナハイムはそんなことを言わないのだと。
このエリアは偽物、失敗作、自分の恋したエリアではない。
沸々と込み上げるのは怒り、そして振りかぶるのは右の平手。
しかしあらたしく生まれた銀髪の素体は叫ぶ見知らぬ男のことなど────
「なはははは、そんな物語知らないってのビンタ男!!! 【パンジーパンチライブラリ】!!!」
銀髪の素体は学士に手痛い右の平手打ちを貰い、そのままカウンター右のストレートを繰り出した。
紫だいだい赤きいろ、ページを散らしてパンチ一発に出力されたパンジーの花は咲き誇っていく。
見知らぬ学士を吹き飛ばす挨拶代わりの右ストレート、生まれてはじめての右ストレートは豪快に決まった。
命令を下していた学士がやられたことで、銀色美集団の拘束と気が少し緩んだ。
その隙に、ひそひそと遠隔でオーラ操作していた牛頭梢のバズーカ砲はひとりでに宙に浮かびその種を吐き出し、自分の背までを灰色に爆撃した。
「いつつつ………ちょっこし、自爆────どちらさま?」
差し伸ばされた濡れたつめたい手を取り、自爆し拘束を脱した牛頭梢は起き上がり見つめる。
銀髪の美人などやはり知らない。
銀髪の素体はそっと両手を伸ばし灰髪をかきあげる────耳を塞いでいたオレンジのイヤホンを外した。
「小谷螺夢、いつぞやの放課後の図書室ぶり。なはははなぁーーんか生き返ったっぽい!」
そう言って銀髪は笑った。カタチはまったく違えどその喋り方その笑い方そのイヤホンをはずした手つきは何か……牛頭梢はここ一学期ぶん数ヶ月の記憶に忘れられずに憶えていた。
それはまったく物語にしてもデタラメな邂逅、灰色の瞳をまんまると見開いて────かがやく。
「おぉー。なにそれ────…………ちょっこしヤバイ? あははは? あれぇ、なんかちょっこし綺麗になった?」
「あぁなんか知らない身体だけど超絶美人でラッキー…ってやかましいっ?」
「「あははははは」」
はずしたオレンジイヤホンから漏れ出る音はふたりを奏でる────
復活したのは緑蜜高等学校2年生図書委員の小谷螺夢。
あの日の図書室からはじまった放課後のまどろんだ夢のつづきは、薄暗いラボの見知らぬカラダから。
灰色ダルメシアンツナギと銀髪素っ裸、おでこをくっつけながら訳の分からないじぶんたちふたりの物語を笑い合った。
「ついに記憶クリーニング除去装置は完成しなかった」
「記憶クリーニング除去装置…?」
銀髪の素体に宿った小谷螺夢は濡れた裸に黒いアカデミックドレスを纏い、ぐったりと倒れる同じ衣装の男ののたまうことを問い返した。
「人としてのバグを除去する。そうすれば人の情念、恋というバグは解明できなくても失くすことにより到達できると考えた…」
「なはは…なるほど。でもリサイクル創生ってのは? それとは別物?」
「それは応用、記憶クリーニング除去装置は完成しなかったが、素体をこのリサイクル創生装置に浸すことで人は著しく赤ちゃん帰りする、長い眠りにつかせることで記憶分野を退行させ眠っている間に刷り込むことでより白紙の状態ですげ替え育てることは可能であった。人はその身を1度で腐らせただ死ぬだけではなく、リサイクル可能だとかんがえた…」
「ちょっこし、何いってる?」
「なはは…たぶん人を赤ちゃんに戻してエリアって子の人格を完璧に植え付けて生まれ変わらせるってことだよね?」
「いやちがう……それは過程であり私はエリアの魂をエリア・マナハイム自身をこの世に蘇らせようとした。私が呪われ契約したボーンクイーンは契約を結ばせないとそれは蘇ることはできないと言ったが、同じくそうであったようだ。エリアは私を拒否しつづける、似た性質の器を用意すれば再び贋作ではなくホンモノの魂が舞い戻ってくると……」
「ちょっこし、どゆこと?」
「なはは…エリアって子のことをひどく愛してたってことじゃない」
「おぉー」
「愛じゃない……恋だ…はつこ………」
天を見上げながら学士は灰色に燃えてゆく、覗き込む銀髪のその子に見守られながら────
「おぉ? なんか燃え尽きた?」
「なはは……燃え尽きたねぇ」
一途な恋、初恋。
学士はついに叶わず────蘇った肉体と骨の記憶は燃え尽きてゆく。
学士の男の奇妙な物語はただの恋心。
初恋の物語に巻き込まれて復活を果たした小谷螺夢はせめてもと、燃え尽きる間際まで彼の顔を見守ってあげることにした。
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激しい踊りはつづく、天にぶら下がるシャンデリアは派手に落ち、テーブルクロスは豪勢をひっくり返し台無しに彩る。
シデンレイラは服着た人形一体をダイヤのチェーンで巻き付け、引き寄せ──飛んできた銀のナイフとフォークを無機質な肉壁を盾にし防いだ。
しかし勢いよく、人形を貫いたレイピア。
ずぷりと貫いたのはひらひらと舞う白黒リバーシブルのロングマント。
身軽なシデンレイラは華麗に回転し踊りながら、左腕に装備した緑クラブの盾でゴツリ──赤ドレスの女の側面を叩いた。
盾を用いた鮮やかな裏拳、春風を纏いながら赤ドレスの女はアレアレと回転していき、やがて人形の集団へと吹き飛んでいった。
(厄介なのはこの人形。動き回らないと常に1対多、流れるバイオリンの音にそいプログラミングされたように踊っているとおもい演奏する人形を壊せど自爆するフェイクでした。おかげで残りシールド値は心許無く)
(しかし一つ分かったのは執着していたやはり服。おそらく普通のオーラでは対抗できない特別強力なものであり、共通概念として設定されているということです。例えば人形はただの飾りでそのレイピアで貫き死を遂げた服は踊り続ける強力な呪いになるなど。服に人格を染み込ませもたせる…………など。この身と先程のこのマントも何度か貫かれた際にも、奇妙なオーラのぐねりを感じました)
(つまり)
(シンプル、上回るオーラのチカラで制御すれば止まると。レイピアを破壊も考えましたが狙えるほど未熟な腕ではなく難しくフェイクの可能性もあり。それにしかし、相手は残念ながら格上のオーラ量、設定された共通概念の技を破るのは一筋縄ではいかない。かと言ってべらべらと熟考してもこの人形劇は止まるものではない。つまりこのまま逃げるか救援を待つのが最善手なのですが)
人形たちに支えられた赤ドレスは、バックバランス、後ろに豪快華麗に反っていた体と面を起こしワラった。
「あなたという人がその服に懸ける思い、なんともまぁ美しくしなやかで素晴らしいですわ。しかしその煌びやかな白黒のお衣装は華麗にミュージカルのようにうごくあなただからこそ似合うのかしら? ふふふまずは友達から初めてみませんか、オシャレな首輪をつけて」
じゃらっと…赤い首輪を見せつけた。
「首輪は似合わないさ、シデンレイラは黄金の守り人、この身を縛れるのはふふ価値ある黄金だけさ」
「あら、黄金のもありましてよ。わたしだけでは着こなせないモノもあると痛感してまして、ちょうど生身のペットも一匹欲しいと思っていたの」
赤い首輪の次は黄金の首輪、ご要望のアナザーカラーもばっちり、赤ドレスの狂人は微笑んだ。
「ふっふ、衣装用のペット……お衣装のことでそこまでアタマが至ることはなかったさ…」
(汚名挽回ではなく返上と行きたかったのですが、どうも上手くいかないものです……溜めた幸運のオーラにキッカケの神風でも吹けば……)
流した汗粒と服に染みゆくものに、吹く風は変わらない。
いつものようにシデンレイラは赤ドレスの首を狙いつつも数多の人形たちと踊る、
────おどる
おどって────ぞわり
「!? ────(死の予感)!!!」
吹いてきた身をよだたせる神風に、ふわり着地し折れた白い右ヒール。
華麗の中に混じった下手なステップを赤ドレスの淑女はニヤリ、上品に微笑み逃さない。
指揮棒代わりに、レイピアが刺し示す。
切先の向かう白黒衣装へと、わらわらと一斉に寄ってたかる人形たち。
「──悪いけど今日はすこしッ、踊らされている訳にはいかないのさ!!!」
銀の銃口を構えたのは赤いドレスのターゲット。
頼りない小銃を持つピエロの元へと、人形がわらわらと群がる。
ヒールの折れた足を挫いた白黒衣装へと飛びかかる、突っ込む────そして生気なく、おちてゆく。
神風、予感、幸運、そろった好条件に解放され広がったシデンレイラの身に封じたパンドラの箱に眠る〝死のオーラ〟はこの舞踏会場スベテをも────
バタバタばたばた…………とてつもないオーラを浴び倒れていく人形たちはぴくりとも立ち上がらない。
そして死のオーラを浴びた白黒衣装と赤ドレスの2人はピタリとも動けない。
「ふぐっ!?? なんでし──ぶべっ!」
その身は固まったまま、されど時は動いたまま。
人形たちの眠りゆくその未来を読んだ銀の銃口は、ダイヤのチェーンをはじめから見据えていた真っ直ぐに発射した。
驚き顔でかたまる、その赤ドレスの細いウエストを巻き付け華麗に強引に踊らせ引き寄せる。
鋭いレイピアは首筋にぴたり…シデンレイラの汗粒を刃にのせて伝わせ。
高貴なお顔の顎下からは黄金の銃。
「ふふっ、あなたは何者でして」
「岬麗でシデンレイラ、はたまたダンジョン救助隊。たのしいワルツはここまでさ」
青白くかがやく。
あつらえた黄金の銃口から天へと放たれた美しきオーラの剣は賭け描いていた決着の未来へ、狂いなく────────
「ふぅー。こんなのは1人と思いたいものです。まさに…棚からぼたもち、それよりこのとてつもない死の予感のアドバイス、牛頭梢は……まぁ心配ないでしょうね…ふふっ。ふぃーちょっと休憩していきましょうか……やはりこのスペードルの死のチカラ、若気の至りでつよいモンスターを相手に発散していたとはいえ。ブランクありで使うべきではありませんねぇー…ふふふふあはははは────」
決着。
折れたヒールは女のフェイクとアピール。古き封印からまた解放されたシデンレイラの共通概念、4つある内のひとつスペードルの死のオーラは己の身さえ指ひとつ動けないほどとてつもなく。
たのしいたのしい舞踏会は、みんな倒れてミナ終わり。
煌びやかなシャンデリアの照らす……そこに赤い赤いドレスをのこして。
惜しみなく、勢いで──秘められた技を解き放った切先の先は、瞬く間にまばゆき閃光が貫き呑み込み、あまりのスピードと風圧とオーラにその光に巻き込まれていない骨骨までもがきしみながら砕け散った。
やがて虹色混沌の光はやみ、一直線に指差していた骨の魔王城にぽっかりと大口は開けり────
体内から体外へと顕現した古い赤い鞘へと熱い刃をゆっくりと仕舞い、さらに用のなくなった赤鞘を胸にまでしっかりと押し込んで己の自力で仕舞い込んだ。
ひとつ安堵の息を吐き、元ある場所に赤鞘の秘刀を戻した古井戸神子はながしたいい汗をパジャマの袖で拭い、作ったまるい轍道にそいながら、おもむろに先へと進んだ。
▼
▽
恐れもなく意気揚々とパジャマ姿と剣ひとつで乗り込んだ先に、エンカウントした生きる骨の衛兵たちを剣でかるく撫でて死をくれてやり、
ここまで骨の軍勢と城門ブロックを吹き飛ばした無双の刃はだれの拝謁の許可も得ず、より一層濃い魔の潜む謁見の間へと到達した。
「弟子をイジメたのって、はは、あんた」
途中出会ったタキシード姿の鼠に案内され、
王座へとつづく赤い絨毯の上に立ち止まった。剣を右手に携えた古井戸神子は王座にどうどうと脚組み座る黒ローブの女を見た。
「何が騒ぎ出てくるかと思えば、まさか三日の約束も待てずに来るだけのオルラはあるな、フッフッフ、貴様があやつら小娘どもをおしえた…魔気の不味い矮小なる世界の剣聖か?」
褐色の生脚を組み替えながらワラう。
ボーンクイーンは黒パジャマに珊瑚柄の剣を握る一風変わった剣士を見た。そのダークガーネットの赤目は透かし見た4つに圧縮された内在オルラの輝きに、またニヤリとワラう。
「え、なんて? ほにゃららセカイのけんせー? はは、いまさらホネホネチックな謎世界観はどーでもいいんだけどさ、剣を取りなよ、このままながれで相手してあげるからさ、」
不遜なアクビをしながら刃で肩を打ちほぐす。そしてやがて古井戸神子は刃にオーラを纏わせ、しのごの言わずに戦う素ぶりを見せつけた。
それでもなお、ボーンクイーンは派手なブロック作りの王座に座り動かず。
また脚をゆっくりと組み替えて────
「剣? フッフ、──要らんな」
鋭い白骨が絨毯下から湧き上がる。
肉を貫くいきおいで──
古井戸神子はさっそくのご挨拶の罠を気を抜かずに避けたが、
チラリ目に入れた王座に余裕綽々に座っていた姿はそこにはなく、
湧き上がる骨のマジックを避けたところ、ボーンブレードが襲う。
オーラを纏った骨太な刃が縦に地までを一閃、ひらり黒パジャマの剣士が半身に避けたところ。
ボーンクイーンの共通概念である骨は伸縮成長自在、そのまま右手を変異させて成していた骨刃をちぢめて刺さった地まで効率よく移動する。
素速い判断と反応が迫られる…二太刀目の攻防──やがて初対面の刃と刃は激突し、オーラの火花飛沫を宙に咲かせ鍔迫り合った。
「おぉ、夏ちゃんとジャグチの言ってたとおり骨のある感じだ、おかしいな最初はちょーはつすれば剣でくるときいたんだわ、そこをド神子ドライブでぐさっと、はは、」
「フッフッフ、我の目は節穴ではない我の心骨は誰よりも細やかな震えを感じ取る。じわり外からでも生意気に傾けようとする天秤を見極める必要もない。しかしその剣、ふふ今に100人はいたな。下見したぬしらの世界はよほどオルラを信仰していない不味い葡萄酒のようだ、三日も待てぬ自信はあったようだが満を持して差し向けたのがこの程度ではな、フッフッフ」
「はは、なにそれ、不味いブドウ? 100人に1人の美少女? なんかそれ、はは、節穴 じゃんッ!」
鍔迫り煌めき合う互いのオーラブレードは、不意に一方が極端に膨大に膨らみ、やがて弾けて飛び散った。
ダークガーネットの瞳が見開きまん丸となる間にも、剥き出しの骨の腕ごと素早い一太刀で弾き飛ばされた。
(我のオルラを操られた? …いや、こやつ……交わった刃から増幅させられ分散させられたか…勝手に)
「【握手剣】──悪いけど剣だけじゃないよ、旧ダンジョン部のド神子は、きょうは設計図ゼンブお披露目 あるかもよ? がんばれば? はは、」
長々と探るように鍔迫り合った、一太刀交えたオーラと膂力の単純なパワー勝負。
軍配が上がったのは強靭自由自在な歴ある骨の刃ではなく、己の剣から見知らぬ骨剣へと交わりあった際に相手のオーラを勝手にコントロールした御技をみせた古井戸神子。
パワーで勝れどオーラで勝れど、剣で勝れど一味勝れない高み。ただようオーラの使い方とダンジョンでの戦い方を古井戸神子は知っている。
「フッフ、見たこともない奇剣とオルラ術…我に刻もうとするか──心骨の刻が疼きよるぞ剣聖の小娘…!!!」
神牙流道場当主代行天の才能をもつ古井戸神子と、シーズ、奇妙な悪の繋がりを仄めかす心骨の女王ボーンクイーン。
まったく異なる世界と世界、本来ぶつかり合うことの永劫ない最高級のチカラとオーラは今、確かにぶつかり合っている。
まったくまったく人にとっても骨にとっても未知の領域、迷い込んだダンジョンという世界と世界をおぼろげに繋ぐ世界の狭間の亜空間、怪しい妖しい魔の迷宮で──────誰にも語り継がれたことのない最高級の闘いは始まってしまった。
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