15 / 41
15 マリオネットクラウド
しおりを挟む
【月山夜の道場編】
木剣の音は鳴り止まず、熱気を帯び祭りは終わらない。
あんぱんを片手に喰らい…口に咥えながら子供たちを退けたJK月山雨楽楽は、そのまま我先に手合わせと代わりばんこにやってきた男衆を、アレよあれよとなんとか返り討ちに葬り、ひどく詰まり渇いたのどを紙パックの牛乳で流し込んだ。
敗れたもの同士でまた立ち合い試し合い、かんかんかん、と威勢よくさわがしい剣音と気迫がこだまする。取っ替え引っ替え踊るように剣と剣の真剣なコミュニケーションはつづいている。流水流の道場出身のムスイが血の気の多い栃木の男たちのために経験に基づき流用した【流水流流舞踏祭剣】と言われるアソビである。
CDプレイヤーから流れるのはムスイが集めたさまざまなレトロゲームの戦闘BGM集である。これが流れている間は男衆は止まらず競うよう剣を振り続け、乗り気でない夜の道場の細かいメニューを考えずに済むので便利で気が楽なのである。
そして、敗者がいれば勝者もいる。途中で下りることは許されず勝ち続けた者が勝ち逃げるにはまた勝つしかない。
「こ、この人、できる!?」
「夏ちゃんやムスイちゃんやドーちゃん直々に鍛えられた(何かと暇な時にボコられた)この柴髭のげんぞう一筋縄ではいかんぜ、気を付けなこしあんのJKen士ちゃん!」
「こ、こしあっ!? ん! つ、つよい!! この《かましチカラ》、小結級!? ってなにこの音楽なんでこうなってんのおおおっはぁあああ!」
二回りは離れた歳の両者は鍔迫り合い自己紹介をし離れた。
頬まで黒い立派な髭面をしたダンディ剣士は防御型、夜の道場の女剣士たちから自身の身を守り生き残るためムスイに倣い中段に構える正眼の構えを体得していた。
月山雨楽楽は超硬RIKiSHIゴッチャンでいうところの小結級の強さをたしかに誇る男げんぞうに対して油断はしない、口元のあんこを拭いしっかりと両手で木剣を素人握りで構える。
《柴髭のげんぞうvsこしあんのJKen士》
道場仲間の周りから認められ勝手につけられた異名をもつ2人の実力者は、歳も性別も関係ない、己のプライドを剣に懸けてぶつかり合い熱くなる────────。
【牛頭梢編】
探していた本はみつかった、ちぎられた52ページ目を挟み込み物語は今ひらかれていく。
【イノチトンカチ】:
と題されたその一冊の本の内容は、ひょんな失敗からイノチを欲する寝具職人の話である。
彼はよく仕事中寝ぼけておりついにある日振り下ろしたトンカチで自分の小指を潰してしまった。その間抜け話がおもしろいということで彼は職人仲間にここを紹介されたのだ。
おもしろい話の代わりに命を貸し与える、永遠の命を持つとささやかれる貴族の館に、
「何故イノチを求める?」
「はっ貴族様、もっと寝たいからです!」
「なに?」
「もっともっと眠るために命が欲しいのです! なのでもうっ起きている時間がそれはそれは理不尽なのです!」
「何を言っている寝具職人、時間をいたずらに無にする眠りになんの意味がある」
「意味? ではではこれをお飲みください」
「なんだこれは」
「乾燥させた眠り草を煎じたお茶です、貴族様はもう仕えてから数えて数10年一睡もしていないと館の侍女たちに気味悪がられています、これを飲めばそれを解決できますよ」
「それがどうした、そんなことは貴様が私にイノチを欲することと関係ない」
「人は眠るものです、それが至って普通健康的であり、眠りにつくことで人は日々のイノチを維持しているのです」
「それでも私が眠る必要はない」
「眠りは人生の半分つまり半生、眠らないという貴族様は永遠のイノチを持ちながらも半分死んでいるといえます」
「それならば貴様もだ、貴様は商売道具であるだいじな小指を潰してしまうほど眠ってばかり職人としては半人前、役立たずであり半分死んでいる。我はそうならないように眠らないとする」
「何をいいますか私はちゃんと日々憂いつつもふらふらとこうして起きております、そして此度小指を自ら潰しはっきりと目覚めてしまったのです! それがもう理不尽で理不尽でやるせなくたまりませんッ、なのでもっと寝たいともうしました! 私は私の人生においてもう十分に目覚めつづけ左の小指が潰れるほどに木をたたき働きました、後は自分の作った最後のコユビの寝具の上で寝ていたいのです、そうすればこの紫の小指も夢の中で取り戻すことができますよ? 知っていますか夢? 起きているじかんや小指の苦痛を忘れるほどの見たこともない福の国が私の眠るそこにはありますよ」
「…目覚め起きているのが理不尽とはおもしろい、よかろう。ならば私をブジ眠らせその福の国をみせることができた暁には望み通り貴様に我のイノチの一部をわけ与えよう」
ぼーっと耽り一冊読み終えた牛頭梢は、向かい席の茶髪の本で隠れた顔を上から覗き見た。
「ほぁぁ…はふ…──つづきどこ?」
「なぁはは、あそれ? あー、どこだっけなぁ? あ、どだったそれおもしろい?」
「きゅうにぐろい、貴族様トンカチされるのびびった、いみふめい」
「なはは…わっかるぅー、ちょい待ち。えーどこどこ──」
椅子を引き、静寂に音を立て立ち上がる。
牛頭梢小谷螺夢また本の迷宮を2人謎を追い求め探し出す。
【ムスイ雷夏ダンジョン編】
あの炭酸がバチバチに効いていた緑蜜サイダーの空き瓶を手持ち、赤髪は集中しオーラを中へと送り込む。
すると蓋をされた空瓶内のオーラ密度が上がり自分だけのセカイは生まれていき──水を呼び起こし海となる。
「!!!── 水か…何故青いこれはお前とは違う? 雷夏?」
「先輩ダンジョナーの物知りシデンレーラによるとオーラ色が似ていても必ずしも同じとは限らんらしい。属性系は分かってるだけでも20種以上存在するからな。フフフしかし驚いたぞ! りゅうすいの美剣士に違わぬ属性オーラだな、ははは才能がちゃぷちゃぷぅーっ、だ!」
手持つ空き瓶内は不思議と湧き上がる水に満たされていき、ムスイはとうとう満タンになったそれを怪訝な表情で見つめている。
「いちばん遠い私が水とは……──るすいだ、間違えるな。それでお前はそれか」
「あぁるぅすいの美剣士が水なら、緑蜜の勇者こと夏ちゃんはもちろんバチバチのサイダーだろ♡絶対的に、サンダー♡」
同じく、同じサイダー瓶にバチバチと轟きはじける活きのいい青い光源がある。だがしかし小さくそのセカイの中へと収まり、蓋もなしにさらに瓶を割ることもなしに制御出来ている。
中学生の頃からこの先輩から教わった遊びを繰り返してきた雷夏はこのぐらいのオーラの外操作はお手のものである。
にんまりと自慢げにワラう雷夏をムスイは鼻で微笑い返した。
「ばからしい、フッ。せまいボトル遊びはもういいさっさと次を教えろ」
「あっれー自分はまともにぃ~教えなかったのにぃ~?♡」
「あれだけ打ち込んでいれば赤ん坊でも成長するだろ(何戦あしらったとおもっている…)、それとも何が追加で望みだ? 代わりに他の流派の剣でも学びたいのか? お前の獣剣に役立つとはおもわんが極端な真似程度なら」
「そうだなぁー。んや、別に何も望んじゃないぞっ♡緑蜜ダンジョン部としてこうして夏ちゃんといっしょにダ~んじょん★してくれるだけでいい。ダンジョン部が強くなるのは夏ちゃんハッピースだからなぁー!」
「なんだそれは…お前はよくもまぁ…まぁこの程度の敵ならば問題ない。試し斬りには…──なッ、一介の剣士としてッッ」
「一介じゃなくて神牙流ーーだろぉ? 夏ちゃんムゥちゃん! げんぞうぅぅド神子おおお!」
「当主が寝ぼけてなければ ナッッ!」
瓶の飲み口を向けて放射された雷オーラは赤い鼠を焼いた、
真似するように噴射した水は青い鼠の喉元を貫く、
背と背は合わせない、追わない。それぞれに前を向き向かう。
入り口から乗り継ぎやってきた濁るシャボンの天の下、紆余曲折ようやく肩を並べた剣と剣は鼠人形のモンスター衆を斬り裂き、遅れは取らない。
剣風と共に靡く青と赤──神牙流の美剣士2人はお互いの果てをめざすためダンジョンで共に魅せ合い高め合っていく。
今日もいつまでも日の落ちることのないビーチで、
ヤドカリのコンセント貝殻にプラグ接続されたホットプレート上、────まるく焼かれていく。
「んー…びりびりクレープグレープ弾……ダメだ、それなら熱熱クレープグレープ弾で間に合ってるよなぁ…今よりいっそう仲間をたより必ずそれを助けるべし……シデン・レイラさんの助言はこうだけど…助言の通りならやっぱり回復? ──いやいやでも同じ回復もってても片方が腐るのはゲームでもよくある気がする……。俺がおそらく先生みたいに剣やら槍やらいっぱい覚えれるわけもないし、…そのアタマやウツワがないってやつ? 俺ってやっぱダンジョンでめちゃくちゃ弱い?? よね…はぁ…。…毒毒クレープグレ──」
迷い、焼かれては、薄皿にさらにうすく重ねられていく────
そうして迷える青年が思考し見慣れた色とカタチと甘いにおいに向き合っていると、
ばふっ、
ばふっ、
砂浜に飾られていく、戦利品の色キャップ。
おおきな、おおきな、ツバつき帽子がふたつ。
白い砂に音を立てて、討伐の証の紫とオレンジが彩る。
その光景に気付いた青年は駆けつけていく。
雷夏、ムスイ、青いジャージと水色の道着姿の2人が部室へと帰還していたのだ。
「え、もう──!? もしかしてまたアイツ! えーっと…れ、レッドキャップたおしたんすか?」
「ははよく見なくてもパープルキャップとオレンジキャップだ、どうしたそんなに柴犬みたいにちこちこ駆けてきてぇ? ふふふ今日はダンジョン部の美剣士2人の初陣だからなァー、これぐらいは余裕の夏ちゃん♡、無双のムゥちゃん♡」
なんとあの手強い工場長の帽子をふたつも一度のダンジョン探索で雷夏とムスイのお初コンビは持ち帰っていたというのだ。
「な、なっむ……ってなんで持ち帰ってんすか…ソレぇ…」
「そりゃもちろんダンジョン部の活動成果だ♡」
「成果…なんで…」
「なんでなんでぇ♡そういうカイト生徒もこの間夏ちゃんに内緒でしれっと持ち帰っていたじゃないか? なぁに自分のバケツを棚に上げてるんだぁ、夏ちゃん大好きかぁ? まったくぅ」
「えっと、あ、たしかに…いやこの緑バケツはたしかシデン・レイラさんがグリフォンの啄んだお宝だって勝手に…あいや、すいません先生…」
「まったくぅ♡まぁなんにせコレクションだと思えばいい、どうだこう並べるとただのビーチより雰囲気が出てかわいいだろ?」
「そ……っすね…(ぶっころした他人の帽子ってのがなんか…)」
「いつまでどうでもいいことを囀っている、雷夏──覚えているな」
低いオンナの声に2人は振り返る。
待っていた赤髪はさっそく道着の右袖下からチップを取り出し、左に剣を手にし──構える。
その切先が見つめる先はもちろん、雷夏。
「何がだ?♡」
「今度は技をスベテ使え。──【流水陣】これがここでの私の技で可視化された間合い…のレベルを上げ技に仕上げたものだ。どこからでも来い」
【流水陣】:
ムスイが地に張り広げていた水のオーラの練度とオーラ量を上げ技に昇華させたオーラ陣の技名である。
ダンジョンにて己の本領がはっきりと可視化されたことにより、より理解したムスイはシデン・レイラのボトル遊びや戦闘を経てオーラの外操作のコツを掴みこの技を習得してみせた。
現世での鍛錬の月日、ぽたりぽたりと流した努力の汗水がいつの間にかここまで広がっていた…。その成果である自分の感覚をそのままダンジョン用に転用できたためその技のレベル、完成度は対峙した他の剣士から見ればおそろしく高いものである。(道場破りにきた雷夏がそのダンジョン生まれの特別な目をもってして初見でバケモノと評すほど)
ビタリ…しっくりと来たこの感覚をスキルチップ技とし確かにおぼえ自身の身に留め、この技を足掛かりに神牙流の美剣士ムスイはダンジョンで強くなる気だ。
「! ははーん……さては夏ちゃんをサプライズで喜ばせるためかぁ? んやんや、水溜まりというより海ッ!」
「海ほど大層な事はできん。だがこの水はお前の獣剣をスベテ受ける。もしそれを超えるのならば、私は私でお前がそうしたようにお前を利用しここでのレベルを上げるだけだ。興が枯れない内に早く来いッッ」
「ほぉ、なるほど! ようするに【爆雷斬】! ──新しいモノを試したくてうずうずなんだなっ、共感♡!」
「遊ぶな、ここで水を得た私は──思っているより強いぞ!」
「そんなのは、知ってるー! じゃあ水は電気を通すって知ってるかァ! それソレっ致命的ィィィ!」
「ここではそうでもないッッデタラメな雷は気合いで通すか!」
「ははは、どっちがデタラメでッ、シンピテキッ、ダ~んッじょんんんん!!!」
渦巻く【流水陣】のテリトリーに臆せず飛び込んでいった雷夏。両者の剣はバチバチと音を鳴らして技を打ち、それをまた受ける。
オーラ量を増し混ざり合った轟く雷剣と吸い集めはなった水剣は激しい爆発音と共に────
「また、た、たたかって…るウワッ!??────」
焼かれていたプレート上のクレープの裏面は風にひっくり返っていく。
へこんだ砂浜から二つの影が飛び離れていく。
雷夏とムスイ、2人が暴れ生じた爆風に晒された青年はまた尻餅をついた。
▽
▽
【牛頭梢図書室編】
積まれている、さいごはパラパラと流し読み……またそれも読み終えた本の上に無造作に積んだ。
「ぜんぶおなじなんだけどこれ」
「なははぁ……だよね」
トンカチで貴族様の頭を打ち不敵に笑っていた寝具職人…そのすこしおかしなお話のつづきを探していたはずが、小谷螺夢が牛頭梢に渡し読ませた本はほぼ全て同じところで展開が止まっていた。
貴族様と同じく永遠の命を持つものや長命を誇る者を煮たり焼いたり刻んだり絞めたり毒を盛ったりさまざまな方法で…結末は最後に〝どちらか〟が不敵に笑うだけ。ほとんど後味のすこし悪いこれであった。
「でもここにあるのは全部違うのに全部同じなんだよねぇ」
「それがおなじ、びっくり、まつぼっくり、ぱっくり、…パクリ?」
「なははは、そうかも。なーぁ、だから、──一度気になってそのつづき調べたことあるよ」
「あるの? どこ」
「なぁー、ここには置けないしうちかな? ──! めっちゃ見つめてくるその目は…────だよねぇ…? なはははぁ…」
もう何冊も帰れず付き合わされた放課後の図書委員小谷螺夢は、牛頭梢の見つめる灰色のひそかな熱意には逆らえない。ここまでこの謎の不思議っ子が本を読むものだとは思わず…また椅子を引き、とりあえず本を元の棚へと戻すために立ち上がった。
それはただの本であった。52ページ目の破かれた。
シデン・レイラは【イノチトンカチ】の他に永遠の命と…をテーマに扱う類似性のある作品が存在するのを知っていた。
謎が謎を呼ぶ、それも意味が薄いほどに…それに快感を覚える彼女が牛頭梢に施したささやかないたずらであった。
しかしシデン・レイラはその意味ありげな物語のつづきを知らない。
謎が謎を呼び思わぬ方向へと、灰色髪の少女は虚空に脱線した糸釣りのレールの上へと導かれていく。
▽
▽
【月山ド神子夜の道場編】
一汗、────美少女の面にながれていく汗。
遣われ駆けてきた子供に手渡された1枚の気の利いたタオルをありがたく受け取り礼を言う。
青髪の美剣士の愛らしくウインクする姿が刺繍され映る……東京に売っていない栃木限定のタオルと睨めっこし──拭われていく。
月山雨楽楽はまだバチバチと剣音の止まない道場の壁にもたれながら座り込んだ。
「だはぁ~…10分もやったのに…負けた…」
「だはあー…10分も茹でたのに…げんぞうはタコの唐揚げぐらいつぅよいよ、」
「ってなんでいんの!? そのたとえかなり意味不明なんだけど…というか会話自体なってないんだけど…(真似もしないで…)」
「ツキヤマはまじ、どうしたい、」
「?? は、いきなりなにがァ?(こっちは小結級にかまされてつかれてるんだけど…)」
「ダンジョンってハズレひくと死ぬよ、やめといたら、」
「はぁ!? 死ぬって…!? たしかにそうだった…かな、死にかけ…イヤイヤ大袈裟ッ! と、とにかくみんなで準備万端でやればバケツ頭相手でもそんなに死なないんでしょ? ダンジョン部っていうぐらいじゃん。そそ雷先生も強すぎだし今度は野暮用ってポカしなきゃ…楽天くんは後ろでこそこそ回復してるしッ! こずえは意味不明にかましチカラが元から強いしっ、アレもいるじゃんシデンレイラ! ゴッチャンに出てくる〝海のマイ〟みたいにめちゃくちゃかまし方がスタイリッシュでちょー強い人! ふふん、さすがにこれだけのメンバーで死ぬなんてよっぽどでしょ…!」
月山はふらり話しかけてきた隣に座るド神子に、立ち上がり──手持つタオルをひろげてみせた、映るは青髪赤目お茶目にウインクするあの絶対的な人物。
さすがにダンジョン部にこれだけの戦力があれば負けないでしょとド神子がふっかけてきた不安要素を払う程の笑みで言いたげだ。
※〝海のマイ〟
超硬RIKiSHIゴッチャンの主人公アレックス・真田・サンダーランスの仲間であり、ひらりひらりと敵を華麗にいなしたたかう様がシデン・レイラに似ているため。最も得意な切り返しの他に、内掛け、外掛け、たすき反り、猫騙し、八艘飛び、一本背負い、などをよく繰り出す計34種の技のデパートを誇る。
刺繍されても元気な赤目と目が合う──座る。道着姿のド神子はぼーっと成長したその目を見つめて、
「んー、たしかにね。──知らないけど、(バケツ頭なにそれ)」
「知らないけどって!?」
「死なないけど、」
「自分からはじめたシリアスなら真面目にやって…はぁ、変に(くそちいさい)ギャグ入れられると思ったよりうざいんだけど…っ」
「ド神子うざいってよ。──やっぱ無限チョップより甘噛みされるほうがきもちぃいいわ、絶妙な噛み加減だわ、よっカピバラ遊撃手、」
「なんでなにがカピバラが遊撃手なの……(やっぱり頭おかしいでしょ…)」
「知らないけど、」
「それ、ほんっっとっ人前で2度は使わないで…(こういうめんどくさい無意味なノリが無限増殖で生まれては相手する懸念があるから…)」
「ツゥキぃぃヤぁマぁ~~」
「ちょっとおおなんで抱きついて!?? はぁちょ!?たおれ────」
無意味なノリをボテボテのゴロで量産するド神子との会話に、ゴロを丁寧に拾い投げては返しまた打たれ……。
なんとか会話のキャッチボールを試みた遊撃手ツキヤマは、何故か今そのゴロバッターに密着しもたれかかられ──ドテッと道場の床に2人して倒れた。
決まり手──寄り倒し。
「なんでこうなってんの…はぁさいあく」
「なんでだろう、はぁさいあく…はぁぁあ」
「ちょっ♡あっ──ってのけえええ」
「ごめんごめん、あー、──あそれ、クリティカルショット、栗照れるテンション、」
「ナ、なんなのそれぇ…もはや、なんもいえない……はぁ」
両手を屋根のように下ろして芸人のように無意味に横ステップし奇怪に踊る。
月山の中にあるド神子との会話ログを漁ってもない…脈絡のない奇怪な韻を踏んで。
さいごは下げていた両腕を上にしY字に堂々と開く。
──間を起き、頭上に△をつくる〝マロンポーズ〟
古井戸神子は最後まで貪欲に笑いをあきらめない。
どこを突っ込めばいいかが分からない。
けだるく起き上がったぼさぼさ髪の月山雨楽楽は、とりあえず奇人相手に出る呆れ顔の汗マークを拭くより……枯れてきた喉をなんでもいいので潤したいと思うのであった。
「ぶらいぎっどの月光盗賊団?」
「──うん、それがあいつら寝具職人やらの正体っぽいよ」
「なんで?」
「なぁはは、ストレート…」
緑蜜高校の図書室から田舎夜道を歩き頼りない街灯を頼りにたどり着いた、普通の一軒家。
そのちいさな部屋の中にお邪魔している。
天井に手をつき、牛頭梢は図書室で座り読み耽り数ページぶん縮んだ背を伸ばしながら、部屋主小谷螺夢の話を聞いていた。
「はいこれ、そんなとこに指つけてないで耳かして」
「おぉ? なにぃ? ちょっこしなら」
伸びをやめ、天井から手を離した。
お辞儀するようにかがんだ灰色のショートカットを両耳にかきあげてあげて、小谷螺夢はオレンジ色のイヤホンを挿入した。
『おもってたけど背たか…普通の売れないヴィジュアル系バンドの曲なんだけど…マァ、吹き出さないようにだらっとよく聴いてみて』
彼女はくしゃりと微笑み、さん、に、いち。
指折り始めて今は懐かしのウォークマンから前奏が流れていく。
『これが歌詞』
「おぉ? おぉお? 俺たちゃとうぞくぅ、なんでこれ?」
男性ボーカルのやけにアップテンポでみじかい一曲が流れ終わる。
コードで繋がっているウォークマンを操作し停止した。
ウォークマンを手持ちイチニ歩の距離にいる小谷螺夢は、イヤホンをしたままのノッポを見つめながら疑問に答えていく。
「トンカチ打った小指だったり指輪を盗んだ薬指だったりつま先。今日ねむーく読まされた本にもあったと思うけどとにかく指だね。まぁなんとなくさっ、そんな話ばかりかき集めて並べたらこう…でこいつらのバンド名がなんだと思う? なははクレープグレープ団?なにそれ全然ちがうんだけどっ──〝ルナティックフィンガーズ〟! なぁはは、なははははッ…アホっぽかった? ウケた? なはは、だよね? もったいぶったのにうっすくてははは」
「なんかいいかも、音だけちょっこし」
「ええ?! それ、ダサいじゃんなははぁ売れないよねぇ」
「うん、栃木でも宇都宮テカルより売れないルナフィン」
「なははぁナニソレ? 知らないわはははってルナフィンってもう略されてるのウケるんですけどっ、よく見つかったなぁこいつら。やーよく見つけたよ。あ、こっちの曲もヤバいよメロディー以外壊滅なのに真面目にうたって…ぷぷ────」
さん、
に、
いち、
指折りまた流れていく今度はバラード、勢いで誤魔化せないぶん余計に珍妙な詩が邪魔をする。
────にらめっこしながら聞く、対面の誘う茶髪ギャルの笑い顔にオレンジの糸でつながっていた灰色髪は釣られてしまった。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
⬛︎⬛︎ ⬛︎⬛︎ ⬛︎⬛︎
⬛︎⬛︎
浮世をのぞく ななつの月
愛しいぼくら 旅をしてるんだ
水面にのぞく ながめた月
微かに揺られ 死をワラうdancing
つまらぬつまさき鳴り響く
アナタにささげる
STORY
灰色の糸でもっと踊ろうよ?
自由
責任
混沌
幻想
(アナタがはじめたのならば…)
マリオネットクラウド!
マリオネットクラウド!
マリオネットクラウド!
マリオネットクラウド!
俺たちゃ とうぞく
ぬすんだ果て
月のかけらがいたずらにサイタぁ…
ブライギッド
ブライギッド…
▼▼▼
▽▽▽
〝ジリリリりりりりりゴッチャぁぁぁぁ〟
力士を模した目覚まし時計はさけび鳴る、朝が来たからだ。
カーテン隙間からの日の光が顔に射し込んで肌をあたためていて、まぶしい。
灰色の瞳を隠していた瞼が開かれていく──
「ほぁ……おぉアレ、寝てた? なんだっけ?」
「起きたかぁ、不法侵入娘」
「あ、こたにらむ、いめちぇん…老けたぁ?」
だれかのベッドの上に寝ている。起きたらエプロンをした左からたれさがるおさげの茶髪がいる。
ギャル風から随分とおとなしくイメージチェンジした小谷螺夢が笑わず牛頭梢の目に突っ立つ。
「何言ってんの? いないよそんなの寝起きそうそう失礼じゃない」
「……おぉ?」
鳩が豆鉄砲を食ったよう、寝起きの牛頭梢は驚き唇をクチバシにしている。
たしかに目を擦り見てみると随分と性別と髪の色以外見た目が違うようだ。
「はぁん、こんなとこで寝てっから夢でも見たんだな。──かわいそうだからそのままにして置いてんの、私が赤ん坊のときからオシメかえてもらってたらしいんだけど…はぁもう何年になるかなぁ。ちなみに私、小谷命ことし祝さんじゅう」
「……さんじゅう?」
「反応するのはそこじゃないでしょ。──で、警察か朝メシ、どっちす?」
軽い感じで言いはなったエプロン姿の女は手持ちのフライパンを振った、テニスラケットのように。
牛頭梢は頷きベッドから立ち上がる。
玉手箱でも開けたのか、スマホに映るじぶんの顔を見てみると、寝癖のひどい女子高生ただのいつもの牛頭梢であった。
なんのこっちゃと、超硬RIKiSHIゴッチャンの目覚まし時計を見つめ────くしゃついた白紙と、オレンジ色のイヤホンと黒い機器を見つけた。
おぼえている──夢にしては彼女に関する物が出てくる。
おもむろに、天を見上げてみた。
しかしまだ何か思い出せず忘れているのでは……。
天井には灰色埃が消えた生々しい部分がある。
側頭の感覚がいつもより冷たい、きっとと…オレンジイヤホンを両耳に詰め込み、
慣れない機器で一曲再生してみた。
残されていたメロディーは初々しい女性のボーカルに唄われ流れる──牛頭梢はそのサプライズには思わず微笑み、忘れていたアップテンポのメロディーと歌詞を口ずさむ。
いつまでも出てこない不法侵入娘を気にかけて、フライパン娘がふたたび部屋の入口にやってきたので──そのまま、灰色の寝癖髪は古いウォークマンを握りしめ歩き出した。
★☆牛頭梢は【マリオネットクラウド】を覚えた。☆★
木剣の音は鳴り止まず、熱気を帯び祭りは終わらない。
あんぱんを片手に喰らい…口に咥えながら子供たちを退けたJK月山雨楽楽は、そのまま我先に手合わせと代わりばんこにやってきた男衆を、アレよあれよとなんとか返り討ちに葬り、ひどく詰まり渇いたのどを紙パックの牛乳で流し込んだ。
敗れたもの同士でまた立ち合い試し合い、かんかんかん、と威勢よくさわがしい剣音と気迫がこだまする。取っ替え引っ替え踊るように剣と剣の真剣なコミュニケーションはつづいている。流水流の道場出身のムスイが血の気の多い栃木の男たちのために経験に基づき流用した【流水流流舞踏祭剣】と言われるアソビである。
CDプレイヤーから流れるのはムスイが集めたさまざまなレトロゲームの戦闘BGM集である。これが流れている間は男衆は止まらず競うよう剣を振り続け、乗り気でない夜の道場の細かいメニューを考えずに済むので便利で気が楽なのである。
そして、敗者がいれば勝者もいる。途中で下りることは許されず勝ち続けた者が勝ち逃げるにはまた勝つしかない。
「こ、この人、できる!?」
「夏ちゃんやムスイちゃんやドーちゃん直々に鍛えられた(何かと暇な時にボコられた)この柴髭のげんぞう一筋縄ではいかんぜ、気を付けなこしあんのJKen士ちゃん!」
「こ、こしあっ!? ん! つ、つよい!! この《かましチカラ》、小結級!? ってなにこの音楽なんでこうなってんのおおおっはぁあああ!」
二回りは離れた歳の両者は鍔迫り合い自己紹介をし離れた。
頬まで黒い立派な髭面をしたダンディ剣士は防御型、夜の道場の女剣士たちから自身の身を守り生き残るためムスイに倣い中段に構える正眼の構えを体得していた。
月山雨楽楽は超硬RIKiSHIゴッチャンでいうところの小結級の強さをたしかに誇る男げんぞうに対して油断はしない、口元のあんこを拭いしっかりと両手で木剣を素人握りで構える。
《柴髭のげんぞうvsこしあんのJKen士》
道場仲間の周りから認められ勝手につけられた異名をもつ2人の実力者は、歳も性別も関係ない、己のプライドを剣に懸けてぶつかり合い熱くなる────────。
【牛頭梢編】
探していた本はみつかった、ちぎられた52ページ目を挟み込み物語は今ひらかれていく。
【イノチトンカチ】:
と題されたその一冊の本の内容は、ひょんな失敗からイノチを欲する寝具職人の話である。
彼はよく仕事中寝ぼけておりついにある日振り下ろしたトンカチで自分の小指を潰してしまった。その間抜け話がおもしろいということで彼は職人仲間にここを紹介されたのだ。
おもしろい話の代わりに命を貸し与える、永遠の命を持つとささやかれる貴族の館に、
「何故イノチを求める?」
「はっ貴族様、もっと寝たいからです!」
「なに?」
「もっともっと眠るために命が欲しいのです! なのでもうっ起きている時間がそれはそれは理不尽なのです!」
「何を言っている寝具職人、時間をいたずらに無にする眠りになんの意味がある」
「意味? ではではこれをお飲みください」
「なんだこれは」
「乾燥させた眠り草を煎じたお茶です、貴族様はもう仕えてから数えて数10年一睡もしていないと館の侍女たちに気味悪がられています、これを飲めばそれを解決できますよ」
「それがどうした、そんなことは貴様が私にイノチを欲することと関係ない」
「人は眠るものです、それが至って普通健康的であり、眠りにつくことで人は日々のイノチを維持しているのです」
「それでも私が眠る必要はない」
「眠りは人生の半分つまり半生、眠らないという貴族様は永遠のイノチを持ちながらも半分死んでいるといえます」
「それならば貴様もだ、貴様は商売道具であるだいじな小指を潰してしまうほど眠ってばかり職人としては半人前、役立たずであり半分死んでいる。我はそうならないように眠らないとする」
「何をいいますか私はちゃんと日々憂いつつもふらふらとこうして起きております、そして此度小指を自ら潰しはっきりと目覚めてしまったのです! それがもう理不尽で理不尽でやるせなくたまりませんッ、なのでもっと寝たいともうしました! 私は私の人生においてもう十分に目覚めつづけ左の小指が潰れるほどに木をたたき働きました、後は自分の作った最後のコユビの寝具の上で寝ていたいのです、そうすればこの紫の小指も夢の中で取り戻すことができますよ? 知っていますか夢? 起きているじかんや小指の苦痛を忘れるほどの見たこともない福の国が私の眠るそこにはありますよ」
「…目覚め起きているのが理不尽とはおもしろい、よかろう。ならば私をブジ眠らせその福の国をみせることができた暁には望み通り貴様に我のイノチの一部をわけ与えよう」
ぼーっと耽り一冊読み終えた牛頭梢は、向かい席の茶髪の本で隠れた顔を上から覗き見た。
「ほぁぁ…はふ…──つづきどこ?」
「なぁはは、あそれ? あー、どこだっけなぁ? あ、どだったそれおもしろい?」
「きゅうにぐろい、貴族様トンカチされるのびびった、いみふめい」
「なはは…わっかるぅー、ちょい待ち。えーどこどこ──」
椅子を引き、静寂に音を立て立ち上がる。
牛頭梢小谷螺夢また本の迷宮を2人謎を追い求め探し出す。
【ムスイ雷夏ダンジョン編】
あの炭酸がバチバチに効いていた緑蜜サイダーの空き瓶を手持ち、赤髪は集中しオーラを中へと送り込む。
すると蓋をされた空瓶内のオーラ密度が上がり自分だけのセカイは生まれていき──水を呼び起こし海となる。
「!!!── 水か…何故青いこれはお前とは違う? 雷夏?」
「先輩ダンジョナーの物知りシデンレーラによるとオーラ色が似ていても必ずしも同じとは限らんらしい。属性系は分かってるだけでも20種以上存在するからな。フフフしかし驚いたぞ! りゅうすいの美剣士に違わぬ属性オーラだな、ははは才能がちゃぷちゃぷぅーっ、だ!」
手持つ空き瓶内は不思議と湧き上がる水に満たされていき、ムスイはとうとう満タンになったそれを怪訝な表情で見つめている。
「いちばん遠い私が水とは……──るすいだ、間違えるな。それでお前はそれか」
「あぁるぅすいの美剣士が水なら、緑蜜の勇者こと夏ちゃんはもちろんバチバチのサイダーだろ♡絶対的に、サンダー♡」
同じく、同じサイダー瓶にバチバチと轟きはじける活きのいい青い光源がある。だがしかし小さくそのセカイの中へと収まり、蓋もなしにさらに瓶を割ることもなしに制御出来ている。
中学生の頃からこの先輩から教わった遊びを繰り返してきた雷夏はこのぐらいのオーラの外操作はお手のものである。
にんまりと自慢げにワラう雷夏をムスイは鼻で微笑い返した。
「ばからしい、フッ。せまいボトル遊びはもういいさっさと次を教えろ」
「あっれー自分はまともにぃ~教えなかったのにぃ~?♡」
「あれだけ打ち込んでいれば赤ん坊でも成長するだろ(何戦あしらったとおもっている…)、それとも何が追加で望みだ? 代わりに他の流派の剣でも学びたいのか? お前の獣剣に役立つとはおもわんが極端な真似程度なら」
「そうだなぁー。んや、別に何も望んじゃないぞっ♡緑蜜ダンジョン部としてこうして夏ちゃんといっしょにダ~んじょん★してくれるだけでいい。ダンジョン部が強くなるのは夏ちゃんハッピースだからなぁー!」
「なんだそれは…お前はよくもまぁ…まぁこの程度の敵ならば問題ない。試し斬りには…──なッ、一介の剣士としてッッ」
「一介じゃなくて神牙流ーーだろぉ? 夏ちゃんムゥちゃん! げんぞうぅぅド神子おおお!」
「当主が寝ぼけてなければ ナッッ!」
瓶の飲み口を向けて放射された雷オーラは赤い鼠を焼いた、
真似するように噴射した水は青い鼠の喉元を貫く、
背と背は合わせない、追わない。それぞれに前を向き向かう。
入り口から乗り継ぎやってきた濁るシャボンの天の下、紆余曲折ようやく肩を並べた剣と剣は鼠人形のモンスター衆を斬り裂き、遅れは取らない。
剣風と共に靡く青と赤──神牙流の美剣士2人はお互いの果てをめざすためダンジョンで共に魅せ合い高め合っていく。
今日もいつまでも日の落ちることのないビーチで、
ヤドカリのコンセント貝殻にプラグ接続されたホットプレート上、────まるく焼かれていく。
「んー…びりびりクレープグレープ弾……ダメだ、それなら熱熱クレープグレープ弾で間に合ってるよなぁ…今よりいっそう仲間をたより必ずそれを助けるべし……シデン・レイラさんの助言はこうだけど…助言の通りならやっぱり回復? ──いやいやでも同じ回復もってても片方が腐るのはゲームでもよくある気がする……。俺がおそらく先生みたいに剣やら槍やらいっぱい覚えれるわけもないし、…そのアタマやウツワがないってやつ? 俺ってやっぱダンジョンでめちゃくちゃ弱い?? よね…はぁ…。…毒毒クレープグレ──」
迷い、焼かれては、薄皿にさらにうすく重ねられていく────
そうして迷える青年が思考し見慣れた色とカタチと甘いにおいに向き合っていると、
ばふっ、
ばふっ、
砂浜に飾られていく、戦利品の色キャップ。
おおきな、おおきな、ツバつき帽子がふたつ。
白い砂に音を立てて、討伐の証の紫とオレンジが彩る。
その光景に気付いた青年は駆けつけていく。
雷夏、ムスイ、青いジャージと水色の道着姿の2人が部室へと帰還していたのだ。
「え、もう──!? もしかしてまたアイツ! えーっと…れ、レッドキャップたおしたんすか?」
「ははよく見なくてもパープルキャップとオレンジキャップだ、どうしたそんなに柴犬みたいにちこちこ駆けてきてぇ? ふふふ今日はダンジョン部の美剣士2人の初陣だからなァー、これぐらいは余裕の夏ちゃん♡、無双のムゥちゃん♡」
なんとあの手強い工場長の帽子をふたつも一度のダンジョン探索で雷夏とムスイのお初コンビは持ち帰っていたというのだ。
「な、なっむ……ってなんで持ち帰ってんすか…ソレぇ…」
「そりゃもちろんダンジョン部の活動成果だ♡」
「成果…なんで…」
「なんでなんでぇ♡そういうカイト生徒もこの間夏ちゃんに内緒でしれっと持ち帰っていたじゃないか? なぁに自分のバケツを棚に上げてるんだぁ、夏ちゃん大好きかぁ? まったくぅ」
「えっと、あ、たしかに…いやこの緑バケツはたしかシデン・レイラさんがグリフォンの啄んだお宝だって勝手に…あいや、すいません先生…」
「まったくぅ♡まぁなんにせコレクションだと思えばいい、どうだこう並べるとただのビーチより雰囲気が出てかわいいだろ?」
「そ……っすね…(ぶっころした他人の帽子ってのがなんか…)」
「いつまでどうでもいいことを囀っている、雷夏──覚えているな」
低いオンナの声に2人は振り返る。
待っていた赤髪はさっそく道着の右袖下からチップを取り出し、左に剣を手にし──構える。
その切先が見つめる先はもちろん、雷夏。
「何がだ?♡」
「今度は技をスベテ使え。──【流水陣】これがここでの私の技で可視化された間合い…のレベルを上げ技に仕上げたものだ。どこからでも来い」
【流水陣】:
ムスイが地に張り広げていた水のオーラの練度とオーラ量を上げ技に昇華させたオーラ陣の技名である。
ダンジョンにて己の本領がはっきりと可視化されたことにより、より理解したムスイはシデン・レイラのボトル遊びや戦闘を経てオーラの外操作のコツを掴みこの技を習得してみせた。
現世での鍛錬の月日、ぽたりぽたりと流した努力の汗水がいつの間にかここまで広がっていた…。その成果である自分の感覚をそのままダンジョン用に転用できたためその技のレベル、完成度は対峙した他の剣士から見ればおそろしく高いものである。(道場破りにきた雷夏がそのダンジョン生まれの特別な目をもってして初見でバケモノと評すほど)
ビタリ…しっくりと来たこの感覚をスキルチップ技とし確かにおぼえ自身の身に留め、この技を足掛かりに神牙流の美剣士ムスイはダンジョンで強くなる気だ。
「! ははーん……さては夏ちゃんをサプライズで喜ばせるためかぁ? んやんや、水溜まりというより海ッ!」
「海ほど大層な事はできん。だがこの水はお前の獣剣をスベテ受ける。もしそれを超えるのならば、私は私でお前がそうしたようにお前を利用しここでのレベルを上げるだけだ。興が枯れない内に早く来いッッ」
「ほぉ、なるほど! ようするに【爆雷斬】! ──新しいモノを試したくてうずうずなんだなっ、共感♡!」
「遊ぶな、ここで水を得た私は──思っているより強いぞ!」
「そんなのは、知ってるー! じゃあ水は電気を通すって知ってるかァ! それソレっ致命的ィィィ!」
「ここではそうでもないッッデタラメな雷は気合いで通すか!」
「ははは、どっちがデタラメでッ、シンピテキッ、ダ~んッじょんんんん!!!」
渦巻く【流水陣】のテリトリーに臆せず飛び込んでいった雷夏。両者の剣はバチバチと音を鳴らして技を打ち、それをまた受ける。
オーラ量を増し混ざり合った轟く雷剣と吸い集めはなった水剣は激しい爆発音と共に────
「また、た、たたかって…るウワッ!??────」
焼かれていたプレート上のクレープの裏面は風にひっくり返っていく。
へこんだ砂浜から二つの影が飛び離れていく。
雷夏とムスイ、2人が暴れ生じた爆風に晒された青年はまた尻餅をついた。
▽
▽
【牛頭梢図書室編】
積まれている、さいごはパラパラと流し読み……またそれも読み終えた本の上に無造作に積んだ。
「ぜんぶおなじなんだけどこれ」
「なははぁ……だよね」
トンカチで貴族様の頭を打ち不敵に笑っていた寝具職人…そのすこしおかしなお話のつづきを探していたはずが、小谷螺夢が牛頭梢に渡し読ませた本はほぼ全て同じところで展開が止まっていた。
貴族様と同じく永遠の命を持つものや長命を誇る者を煮たり焼いたり刻んだり絞めたり毒を盛ったりさまざまな方法で…結末は最後に〝どちらか〟が不敵に笑うだけ。ほとんど後味のすこし悪いこれであった。
「でもここにあるのは全部違うのに全部同じなんだよねぇ」
「それがおなじ、びっくり、まつぼっくり、ぱっくり、…パクリ?」
「なははは、そうかも。なーぁ、だから、──一度気になってそのつづき調べたことあるよ」
「あるの? どこ」
「なぁー、ここには置けないしうちかな? ──! めっちゃ見つめてくるその目は…────だよねぇ…? なはははぁ…」
もう何冊も帰れず付き合わされた放課後の図書委員小谷螺夢は、牛頭梢の見つめる灰色のひそかな熱意には逆らえない。ここまでこの謎の不思議っ子が本を読むものだとは思わず…また椅子を引き、とりあえず本を元の棚へと戻すために立ち上がった。
それはただの本であった。52ページ目の破かれた。
シデン・レイラは【イノチトンカチ】の他に永遠の命と…をテーマに扱う類似性のある作品が存在するのを知っていた。
謎が謎を呼ぶ、それも意味が薄いほどに…それに快感を覚える彼女が牛頭梢に施したささやかないたずらであった。
しかしシデン・レイラはその意味ありげな物語のつづきを知らない。
謎が謎を呼び思わぬ方向へと、灰色髪の少女は虚空に脱線した糸釣りのレールの上へと導かれていく。
▽
▽
【月山ド神子夜の道場編】
一汗、────美少女の面にながれていく汗。
遣われ駆けてきた子供に手渡された1枚の気の利いたタオルをありがたく受け取り礼を言う。
青髪の美剣士の愛らしくウインクする姿が刺繍され映る……東京に売っていない栃木限定のタオルと睨めっこし──拭われていく。
月山雨楽楽はまだバチバチと剣音の止まない道場の壁にもたれながら座り込んだ。
「だはぁ~…10分もやったのに…負けた…」
「だはあー…10分も茹でたのに…げんぞうはタコの唐揚げぐらいつぅよいよ、」
「ってなんでいんの!? そのたとえかなり意味不明なんだけど…というか会話自体なってないんだけど…(真似もしないで…)」
「ツキヤマはまじ、どうしたい、」
「?? は、いきなりなにがァ?(こっちは小結級にかまされてつかれてるんだけど…)」
「ダンジョンってハズレひくと死ぬよ、やめといたら、」
「はぁ!? 死ぬって…!? たしかにそうだった…かな、死にかけ…イヤイヤ大袈裟ッ! と、とにかくみんなで準備万端でやればバケツ頭相手でもそんなに死なないんでしょ? ダンジョン部っていうぐらいじゃん。そそ雷先生も強すぎだし今度は野暮用ってポカしなきゃ…楽天くんは後ろでこそこそ回復してるしッ! こずえは意味不明にかましチカラが元から強いしっ、アレもいるじゃんシデンレイラ! ゴッチャンに出てくる〝海のマイ〟みたいにめちゃくちゃかまし方がスタイリッシュでちょー強い人! ふふん、さすがにこれだけのメンバーで死ぬなんてよっぽどでしょ…!」
月山はふらり話しかけてきた隣に座るド神子に、立ち上がり──手持つタオルをひろげてみせた、映るは青髪赤目お茶目にウインクするあの絶対的な人物。
さすがにダンジョン部にこれだけの戦力があれば負けないでしょとド神子がふっかけてきた不安要素を払う程の笑みで言いたげだ。
※〝海のマイ〟
超硬RIKiSHIゴッチャンの主人公アレックス・真田・サンダーランスの仲間であり、ひらりひらりと敵を華麗にいなしたたかう様がシデン・レイラに似ているため。最も得意な切り返しの他に、内掛け、外掛け、たすき反り、猫騙し、八艘飛び、一本背負い、などをよく繰り出す計34種の技のデパートを誇る。
刺繍されても元気な赤目と目が合う──座る。道着姿のド神子はぼーっと成長したその目を見つめて、
「んー、たしかにね。──知らないけど、(バケツ頭なにそれ)」
「知らないけどって!?」
「死なないけど、」
「自分からはじめたシリアスなら真面目にやって…はぁ、変に(くそちいさい)ギャグ入れられると思ったよりうざいんだけど…っ」
「ド神子うざいってよ。──やっぱ無限チョップより甘噛みされるほうがきもちぃいいわ、絶妙な噛み加減だわ、よっカピバラ遊撃手、」
「なんでなにがカピバラが遊撃手なの……(やっぱり頭おかしいでしょ…)」
「知らないけど、」
「それ、ほんっっとっ人前で2度は使わないで…(こういうめんどくさい無意味なノリが無限増殖で生まれては相手する懸念があるから…)」
「ツゥキぃぃヤぁマぁ~~」
「ちょっとおおなんで抱きついて!?? はぁちょ!?たおれ────」
無意味なノリをボテボテのゴロで量産するド神子との会話に、ゴロを丁寧に拾い投げては返しまた打たれ……。
なんとか会話のキャッチボールを試みた遊撃手ツキヤマは、何故か今そのゴロバッターに密着しもたれかかられ──ドテッと道場の床に2人して倒れた。
決まり手──寄り倒し。
「なんでこうなってんの…はぁさいあく」
「なんでだろう、はぁさいあく…はぁぁあ」
「ちょっ♡あっ──ってのけえええ」
「ごめんごめん、あー、──あそれ、クリティカルショット、栗照れるテンション、」
「ナ、なんなのそれぇ…もはや、なんもいえない……はぁ」
両手を屋根のように下ろして芸人のように無意味に横ステップし奇怪に踊る。
月山の中にあるド神子との会話ログを漁ってもない…脈絡のない奇怪な韻を踏んで。
さいごは下げていた両腕を上にしY字に堂々と開く。
──間を起き、頭上に△をつくる〝マロンポーズ〟
古井戸神子は最後まで貪欲に笑いをあきらめない。
どこを突っ込めばいいかが分からない。
けだるく起き上がったぼさぼさ髪の月山雨楽楽は、とりあえず奇人相手に出る呆れ顔の汗マークを拭くより……枯れてきた喉をなんでもいいので潤したいと思うのであった。
「ぶらいぎっどの月光盗賊団?」
「──うん、それがあいつら寝具職人やらの正体っぽいよ」
「なんで?」
「なぁはは、ストレート…」
緑蜜高校の図書室から田舎夜道を歩き頼りない街灯を頼りにたどり着いた、普通の一軒家。
そのちいさな部屋の中にお邪魔している。
天井に手をつき、牛頭梢は図書室で座り読み耽り数ページぶん縮んだ背を伸ばしながら、部屋主小谷螺夢の話を聞いていた。
「はいこれ、そんなとこに指つけてないで耳かして」
「おぉ? なにぃ? ちょっこしなら」
伸びをやめ、天井から手を離した。
お辞儀するようにかがんだ灰色のショートカットを両耳にかきあげてあげて、小谷螺夢はオレンジ色のイヤホンを挿入した。
『おもってたけど背たか…普通の売れないヴィジュアル系バンドの曲なんだけど…マァ、吹き出さないようにだらっとよく聴いてみて』
彼女はくしゃりと微笑み、さん、に、いち。
指折り始めて今は懐かしのウォークマンから前奏が流れていく。
『これが歌詞』
「おぉ? おぉお? 俺たちゃとうぞくぅ、なんでこれ?」
男性ボーカルのやけにアップテンポでみじかい一曲が流れ終わる。
コードで繋がっているウォークマンを操作し停止した。
ウォークマンを手持ちイチニ歩の距離にいる小谷螺夢は、イヤホンをしたままのノッポを見つめながら疑問に答えていく。
「トンカチ打った小指だったり指輪を盗んだ薬指だったりつま先。今日ねむーく読まされた本にもあったと思うけどとにかく指だね。まぁなんとなくさっ、そんな話ばかりかき集めて並べたらこう…でこいつらのバンド名がなんだと思う? なははクレープグレープ団?なにそれ全然ちがうんだけどっ──〝ルナティックフィンガーズ〟! なぁはは、なははははッ…アホっぽかった? ウケた? なはは、だよね? もったいぶったのにうっすくてははは」
「なんかいいかも、音だけちょっこし」
「ええ?! それ、ダサいじゃんなははぁ売れないよねぇ」
「うん、栃木でも宇都宮テカルより売れないルナフィン」
「なははぁナニソレ? 知らないわはははってルナフィンってもう略されてるのウケるんですけどっ、よく見つかったなぁこいつら。やーよく見つけたよ。あ、こっちの曲もヤバいよメロディー以外壊滅なのに真面目にうたって…ぷぷ────」
さん、
に、
いち、
指折りまた流れていく今度はバラード、勢いで誤魔化せないぶん余計に珍妙な詩が邪魔をする。
────にらめっこしながら聞く、対面の誘う茶髪ギャルの笑い顔にオレンジの糸でつながっていた灰色髪は釣られてしまった。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
⬛︎⬛︎ ⬛︎⬛︎ ⬛︎⬛︎
⬛︎⬛︎
浮世をのぞく ななつの月
愛しいぼくら 旅をしてるんだ
水面にのぞく ながめた月
微かに揺られ 死をワラうdancing
つまらぬつまさき鳴り響く
アナタにささげる
STORY
灰色の糸でもっと踊ろうよ?
自由
責任
混沌
幻想
(アナタがはじめたのならば…)
マリオネットクラウド!
マリオネットクラウド!
マリオネットクラウド!
マリオネットクラウド!
俺たちゃ とうぞく
ぬすんだ果て
月のかけらがいたずらにサイタぁ…
ブライギッド
ブライギッド…
▼▼▼
▽▽▽
〝ジリリリりりりりりゴッチャぁぁぁぁ〟
力士を模した目覚まし時計はさけび鳴る、朝が来たからだ。
カーテン隙間からの日の光が顔に射し込んで肌をあたためていて、まぶしい。
灰色の瞳を隠していた瞼が開かれていく──
「ほぁ……おぉアレ、寝てた? なんだっけ?」
「起きたかぁ、不法侵入娘」
「あ、こたにらむ、いめちぇん…老けたぁ?」
だれかのベッドの上に寝ている。起きたらエプロンをした左からたれさがるおさげの茶髪がいる。
ギャル風から随分とおとなしくイメージチェンジした小谷螺夢が笑わず牛頭梢の目に突っ立つ。
「何言ってんの? いないよそんなの寝起きそうそう失礼じゃない」
「……おぉ?」
鳩が豆鉄砲を食ったよう、寝起きの牛頭梢は驚き唇をクチバシにしている。
たしかに目を擦り見てみると随分と性別と髪の色以外見た目が違うようだ。
「はぁん、こんなとこで寝てっから夢でも見たんだな。──かわいそうだからそのままにして置いてんの、私が赤ん坊のときからオシメかえてもらってたらしいんだけど…はぁもう何年になるかなぁ。ちなみに私、小谷命ことし祝さんじゅう」
「……さんじゅう?」
「反応するのはそこじゃないでしょ。──で、警察か朝メシ、どっちす?」
軽い感じで言いはなったエプロン姿の女は手持ちのフライパンを振った、テニスラケットのように。
牛頭梢は頷きベッドから立ち上がる。
玉手箱でも開けたのか、スマホに映るじぶんの顔を見てみると、寝癖のひどい女子高生ただのいつもの牛頭梢であった。
なんのこっちゃと、超硬RIKiSHIゴッチャンの目覚まし時計を見つめ────くしゃついた白紙と、オレンジ色のイヤホンと黒い機器を見つけた。
おぼえている──夢にしては彼女に関する物が出てくる。
おもむろに、天を見上げてみた。
しかしまだ何か思い出せず忘れているのでは……。
天井には灰色埃が消えた生々しい部分がある。
側頭の感覚がいつもより冷たい、きっとと…オレンジイヤホンを両耳に詰め込み、
慣れない機器で一曲再生してみた。
残されていたメロディーは初々しい女性のボーカルに唄われ流れる──牛頭梢はそのサプライズには思わず微笑み、忘れていたアップテンポのメロディーと歌詞を口ずさむ。
いつまでも出てこない不法侵入娘を気にかけて、フライパン娘がふたたび部屋の入口にやってきたので──そのまま、灰色の寝癖髪は古いウォークマンを握りしめ歩き出した。
★☆牛頭梢は【マリオネットクラウド】を覚えた。☆★
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる