上 下
8 / 29

第9話 【愛のぼむ・えんど】

しおりを挟む
魔法ソード少女どうしのまりょく補給•譲渡方法は

❶握手

❷ハグ

❸特殊な魔法や武器などを用いた遠隔供給

いずれも一瞬で補給されることはない。
まりょくの質や相性により変換効率の違いもあることだろう。
過去には発熱や体調を崩す事例も見受けられる。


初対面の仲良くもなんともないマリティーポップと真田ふれいは当然❶の握手を選択した。


汗ばんだ手とおなじ手が

ぎゅっと、逃がさないように…握り合うこと1分と45秒。

じわり順調にあたたまってきた、繋いだふたりのまりょくが循環している。
ふれいはもういいかな? と戦況を熱く見守っていた水色の魔法ソード少女のラムネパーカーをちょいちょいと引っ張った。

「何よ? おわっ──ってあんた私のまりょく奪ったああああはああああ!??」

「??」

「はてなはてなじゃないわよ! こんなときにナニやってんのよ!」

「……!」

なんと──ふれいは脅された通りにマリティーポップにまりょくを供給していたつもりが繋いだその手で逆に奪い取っていた。
異変に気付いたときにはもはや遅く、マリティーポップの内在まりょくはすっからかんであった。

すぐさま離した手を繋ぎ直したが……対面する魔法ソード少女は要領を得ないこまり顔をしている。
しかしマリティーポップは知っているこれはそうとうなポンコツの顔だと……。


「はぁもうこの程度の基礎もできないって前代未聞じゃないのっ! あぁもうッちょっと責任とってきなさいあんた! 大魔法で片付けなさい! あんたもあのスカした魔法ソード少女の好きにやらせたくないでしょ!」

「???」

「はぁ…あんたほんとにMS0のぺーぺーの素人なのね! あるでしょ大魔法! 私はあのストローをめっためったにした泡、あんたのいう泡猫よ名付けて【バブルポップ】! あんたは!? あるでしょ! イカした名前が! まさか…恥ずかしいわけ?」

「んー? あーーだいひょう曲…………ある! 【ソぴーず】の曲…さっき名付けた!」

「あるならソレをやるの!!!! ってさっきって!!! え【ソぴーず】!? ちょっ何言って…って誰がわたしの曲名よ!!! だ・い・ま・ほうッってったでしょ!!! なんでソぴーずの代表曲になるのよ……ありすぎて困るんだけど…」

「んー、ちがったかぁ?」

「もうそれでいいからさっさといってかましてきなさーい!!!(ソぴーずの代表曲…【ダイナミックソード】か【ソ・ファンタズム】よね? 個人的には頭からっぽにたのしくなれる【愛のぼむ・えんど】だけど? ってわたしはナニを言ってるの…!? もはや頭がソ・ファンタズムなんだけど…)」

ソぴーずの代表曲の話ほど時間を取られることはない、いやそれどころではない。大魔法をかましてこいという話から明らかに脱線しすぎた。
マリティーポップはどこかぬけている真田ふれいの背にむりやり喝を入れ送り出した。

バチンと背を叩かれ、送り出された真田ふれいはよろけた頼りない背を立て直しながら──走った。

しっかりと持たされた剣を両手に、


(青いぶくぶく代表曲【ばぶるぽっぷん】と

【みさいるぱっくんろっく】黒いばくだん。)


(ぶくぶくふくらむばくだ……んっ! お母さんが好きでわたしの好きな──ヤツ)


握る柄に──込め、熱帯びる手のひらに熱帯びるままに任せる。



「──斬るよ!」



聞いたことのない魔法ソード少女の声に、大型の金ピカカエルを独り、相手にしていたマリティーブランはチラっと振り返った。


「なんであな──」

その勇ましい顔を見て、魔法ソード少女は正面に向き直る。

マリティーブランは相手していた金ピカにサマーソルトしながら蹴りつけた、ローファーコンベアⅡの足裏の出力を上げ勢いよく顎を砕き──そのまま後退しつつ抜刀したMT2のまりょくビームを連射。


出力を上げた特殊なカッチュー装備の手痛い蹴りを貰いおおきくノックバックするオオガエルは、ビーム連射に直撃した黒い小爆発に彩られていく。

これ以上のお膳立てアシストはない、そんな意思が垣間見えるブランの攻勢に、

駆けていく。

その両手に刀身に膨らんだ期待感はトメラレナイ。

垂れ流れる黒いビームを背景に、真田ふれいはだいけい公園を走りゆく!

倒すべきターゲットに接近、両腕のMT4はかますだけ、

そして──

「ってただの斬りーーーだと思ったバカーーーにっにげなさい!!!」

「いや……! 高まるまりょく……水色はなれなさい! にげるのはあなたよ!!!」



「え!? ま・さ・か…愛の──」



ポンコツを送り出してしまった責任感からか剣を手に取り助けにいこうとしたマリティーポップにブランはきつい語気で命令した。

あわてて蜻蛉返り、マリティーポップはぞわり…そういえば吸い込まれるような公園の微風にあらがい走った。

イチはやく自分の技を察した黒セーラーは、木陰で呑気している銀色のドレスをそそくさとかかえ木々緑を抜けて行った。


体を反るほどかかげた巨大な蛙の手を叩きつける、

チカラ任せの斬撃でこのボディに傷をつけてくれた相手に強烈なカウンターを浴びせる、

メタルバイオで構成されたストローは思考するそして選んだそのコマンド。

既に斬られていることを知らずに、選んでしまった。

巡るまりょくはそれよりも速く──

熱せられる紅色のナナメ真っ直ぐな切り口に、ぶくぶくと膨らんでゆく期待感はトメラレナイ。


「【ふれいぼむ・】」


金ピカオオガエル、銀色お玉杓子、今更遊びにきた犬型、


そしてギラつく赤目は見開かれ──左の口角をひきつり上げ、キラっと苦笑った。


「【えんど】!!!」


▼さかいデータゾーン8だいけい公園▼は赤い巨大ドームに包まれ……スベテ呑み込まれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

魔闘少女プディカベリー 〜淫欲なる戦い〜

おっぱいもみもみ怪人
恋愛
ひきこもりの魔法少女がグチュグチュに凌辱されるお話し^^

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

【R18】淫魔の道具〈開発される女子大生〉

ちゅー
ファンタジー
現代の都市部に潜み、淫魔は探していた。 餌食とするヒトを。 まず狙われたのは男性経験が無い清楚な女子大生だった。 淫魔は超常的な力を用い彼女らを堕落させていく…

女の子なんてなりたくない?

我破破
恋愛
これは、「男」を取り戻す為の戦いだ――― 突如として「金の玉」を奪われ、女体化させられた桜田憧太は、「金の玉」を取り戻す為の戦いに巻き込まれてしまう。 魔法少女となった桜田憧太は大好きなあの娘に思いを告げる為、「男」を取り戻そうと奮闘するが……? ついにコミカライズ版も出ました。待望の新作を見届けよ‼ https://www.alphapolis.co.jp/manga/216382439/225307113

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...