悪役令嬢は魔王様の花嫁希望

Dizzy

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第一章 嫁ぎ先は魔王(仮)に決めました

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「わかるわー。この家怪しいものね。国王様もお父様の言いなりだし。調べさせたくもなるわよねぇ。誰に頼まれたのかしら。やっぱり王太子様辺りかしら?」

「…………それを……どこで……?」

 あらー。ちょっとカマかけただけなのに、早くも認めちゃった。流石にまだまだ若いわね、アルフレッド。
 どこで知ったかって? そりゃゲームでに決まってますけど、それは言えないし。
 ゲームの中でアルフレッドは、第一王子の側近だったのよね。若い頃はこの怪しい屋敷の怪しい公爵に鍛えられていたとは知らなかったけど。……そのせいで少し壊れちゃったのかしら?性癖が。

「さあ。どこだったかしら?」

 私がまた微笑んでみせると、アルフレッドは立ち上がって片手で前髪をクシャリと掻き上げた。スラリとした長身から見下ろされる。シャツとトラウザーズだけの簡素な格好だが、シャツの前ボタンを数個外していて、開いた胸元から色気がだだ漏れだ。恐るべし16歳!!

「……成る程。その少年を手に入れたから、今までのようなアホな令嬢の演技は必要なくなったというわけですね。……すっかり騙されましたよ。アリスお嬢様」

 いえ、それは買い被りすぎですよ。アルフレッドさん。アリスは本当にアホな令嬢でした。

「それで? 私に頼みたい事とは何ですか? 王太子殿下に会わせて欲しいというのは無理ですよ? あの方は

 あ。やっぱり、第一王子は私に故意に会わないようにしていたのね。そんなに強調しなくてもわかってますのに。

「王太子殿下になんて、会いたくありません。できれば一生会わないで済む為に、貴方にお願いに来たくらいなのに」

「は?」

 アルフレッドは意味がわからないという顔をする。そりゃそうでしょう。あんなに必死に王太子に会いたがって色んな無茶を重ねていたアホな令嬢の所業が、全て演技だったなんて思えませんわよね。どこの大女優だって話ですわ。

「これは、双方にとって良いお話だと思うの。だからぜひ協力していただきたいわ。……お願いは三つ程あるのだけど」

「……それは興味深いですね」

 私はアルフレッドに椅子に腰掛けるように言い、私とリドはベッドに隣り合わせで座った。アルフレッドの部屋は使用人の部屋にしては広いが、自室を見慣れているせいか、とても狭く感じてしまう。

「お願いの一つ目は、リディアの妹を探し出して欲しいの。これは何よりも優先させて。できれば保護してこの屋敷に連れてきて欲しいわ。二つ目は、リディアを貴方の下で学ばせたいの。執事としてのノウハウとかをね。三つ目は、私にも貴方のようにお父様の息がかかっていない優秀な諜報員……というか、仕事のできる人材が欲しいのよね。表も裏も。誰か紹介してくださらない?住み込みが無理なら通いでいいから」

 一気に捲し立てると、アルフレッドは呆気に取られたような顔をしたが、直ぐに不敵に笑ってみせた。

「……私が欲しいとはおっしゃらないんですね。誰でもいいんですか? お父様の息はかかっていなくても、王家側の人間になりますよ。醜聞が逐一包み隠さず王太子殿下に報告されますけれど」

 もはや、王子のスパイという事を全く隠さなくなったな。この人。

「申し訳ないけど、貴方の事は……何ていうか……その……そう! 生理的に受け付けないの! だから他の人がいいわ。私の代わりに自由に動いてくれる人」

「………………生理的……だと?」

「それと、王子に醜聞が伝わって、ますます私に会いたくなくなれば、もしかしたらあちらから婚約破棄を言い渡して下さるかもしれないから、それは願ったり叶ったりです」

「は? 婚約破棄……?」

 混乱してるわね。生理的に受け付けないは言い過ぎたな。うん。ごめん。
 私の否定は聞き流されたのか、アルフレッドは顎に手を当てて何やら考えてから、呟くように訊ねてきた。

「それを前向きに検討するとして、私のメリットは何かあるのですか?」

 アルフレッドの目の奥が光った。メリットね。あんまり考えてなかったけど。

「私が貴方の事をお父様に報告しない……というだけでは満足しないようね」

「当然でしょう。貴女が公爵に報告するなら、私はその前にここから出て行くまでです。そうしたら貴女の頼み事を実行できる者は居なくなる」

 なるほどね。報告されたら凄く困るでしょうに。そうやって駆け引きするわけね。

「……わかったわ。一つ目のお願いは本当に急を要するから。貴方の欲しいものを何でも言って。叶えられる範囲ならそれで条件を飲むわ」

 背に腹はかえられない。リドの妹さんが、今頃どんな目に遭ってるかわからないもの。
 私の言葉を聞いて、アルフレッドは冷たい目のまま、また口角を上げた。悪い顔してる。言質とったぞって顔してる。……ちょっとしくじったかも。

「では。貴女の脚を……」

「…………はい?」

 我が耳を疑い、聞き返す。ねぇ、今まさか「あし」って言った?

「貴女の脚を私の自由にさせて下さい。今すぐとは言いません。……そうですね。今の私と同じ年齢になってからはどうですか?」

 ちょっ……おいおい!! ヤバイヤバイ!! 目が本気マジですが。

「貴女の性格は好みではありませんし、寧ろ嫌悪する程です。容姿も幼過ぎて食指は動きませんが……その労働というものを全く知らないような貴女の脚は、正直そそられます」

 こ、こいつ……ッ!! 天性の変態だったーーーー!!

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