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第五章 花にケダモノ
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もう誰かに振り回されて、心を乱されるのは御免だ。
何者にも心乱されず自分のペースで生きていくには、常に他人を掌握し続けなければならない。
今度はこちらが踊らせる立場になるんだ。全員を振り回せるような。
絶対的な勝者。それには、絶対的な権力が必要だ。支配する力が。
もう、誰にも僕たちが脅かされない為に。
あの日から、サーシャは目に見えて衰弱していった。身体だけではなく、心も。
何か大事なものが欠けたのがわかっているのに、僕には治せない。
イザベラが男児を出産して、現在、国内はすっかりお祭り騒ぎだ。
ジークフリートと名付けられた王太子は、金髪碧眼で光の魔力を持ち、王族の特徴を色濃く受け継いでいた。
イザベラの懐妊から半年後に、ダンテの愛しのジル妃も懐妊した。ジル妃の出産もまもなくだ。
もしかしたら、“ダンテは種無しだ”というのは、僕の思い違いだったのかもしれない。
ルイがイザベラを孕ませたなんていうのも、奴の妄想だったのかも。
そもそも、あの三人での時間は幻だったのではないかとすら思う。
何故なら、あの後ルイの家は何者かに火をつけられ、跡形もなく消え去ったからだ。残されたルイの兄弟も、判別できないほど黒焦げになって焼け跡から発見された。
ルイの存在が、この世から抹消されてしまった。
残っているのは、このあやふやな記憶の中だけ。
ダンテ国王は、王太子の誕生にさして興味がないようで、相変わらず身重のジル妃の元に甲斐甲斐しく通っている。
シャーリン公爵となった僕は、前ほどサーシャの所には通えていない。
父の死により、宰相の座がラスター公爵に奪われてしまったが、そのうち僕が取り戻す。そうしたら必然的に王宮へ足を運ぶことも増え、サーシャに会う機会も増えるだろう。
しばらくサーシャに会わなかったのは、サーシャに対しての罪悪感もあったかもしれない。
僕はサーシャの瞳から輝きを奪ってしまった。
サーシャの何も映さない空虚な瞳は、別れ際の母を連想させた。
女というのは、本当に欲深く醜悪な生き物だ。
ジークフリート誕生から半年後、ダンテ待望のジル妃の子が生まれた。男児だった。
エルヴィンと名付けられたその子どもは、ジル妃そっくりだったが、瞳はロイヤルブルーとは似て非なる藍色だった。
あんなに愛されていたのに、あれ以上何が欲しかったのか。
イザベラが懐妊して焦ったのだろうか。それとも、誰かに唆されたのか。
ロイヤルブルーを持たない子どもは、正に不義の生きた証だった。
王家の血筋は、必ず瞳に現れる。
ここぞとばかりにイザベラに糾弾されたジル妃は心を病み、自ら命を絶った。
それからは、ダンテもおかしくなった。政は疎かになり、女を取っかえ引っ変えするような自堕落な生活を送るようになった。
ジル妃が亡くなってから二年後、実質、政治を執るのはイザベラとなり、僕は宰相になった。
僕は王宮での仕事を終え、久しぶりにサーシャに呼び出されて会いに行った。
サーシャがあの薔薇の庭園に居ると聞き、僕は、あの日以来足を踏み入れていなかった庭園へと向かった。
「オズ!」
久しぶりに見たサーシャは、陽の光の中で笑っていた。少女の面影は消え、女性の美しさが際立っていた。
「……姫……久しぶり……」
彼女の瞳に輝きが戻っていた。
時間が彼女の心を癒したのかと思ったが……そうではなかった。
「サーシャ!」
子どもの声が、彼女の名を呼んだ。
サーシャは振り返り、満面の笑みを浮かべた。
既視感。
この光景を、僕は知っている。
きみはこの後、まるで悪戯が成功した子どものような無邪気な笑顔で僕を見るんだ。
「…………碧い……瞳……」
陽に透ける金髪を揺らしてサーシャに駆け寄るロイヤルブルーの瞳を持つ子ども。
無意識に会わないようにしていた、王太子。
「……はじめまして。ジークフリート殿下」
「だれ?」
「この国の宰相をしています。オズワルド・ガイル・シャーリンと申します。以後お見知りおきを」
きみが瞳の輝きを取り戻せた理由はこれか。
……やっぱり僕は、無力だな。
「うん。よろしく、オズワルド」
齢三歳の彼の笑顔に、息を飲む。
ハッとしてサーシャを見ると、彼女は例の笑顔で囁いた。
「そっくりでしょ」
「ああ……」
ルイ、きみはここに居たのか。
イザベラが産んだ王太子ジークフリートは、ルイにそっくりだった。彼は確かにルイの遺伝子を受け継いでいた。
ルイの容姿は隔世遺伝だと言っていなかったか? うまくロイヤルブルーを受け継げたものだ。
……だが、ジークフリートの子が必ずしもロイヤルブルーを持って生まれるとは限らない。ルイの父も、祖父も、兄弟も茶髪に茶色い瞳だった。
その時になって、ようやくイザベラの不義がバレるのだろうか。それとも、ジークフリートは伴侶のしてもいない不義を嘆くことになるのだろうか。
「ねえ、オズ。私いいこと思いついたのよ」
サーシャは、まだあの笑顔を崩さない。
まだ何か企んでいるのか?
「何? 姫」
「ふふ……」
「……その笑顔、怖いな」
サーシャは僕に笑顔を向けた。だがよく見ると、その瞳には何も映していなかった。
「私と結婚しない? オズ」
「……………………はい?」
「私とオズが結婚して、子どもをつくるの。女の子よ。そして、ルイの子どもと結婚させるのよ。素敵でしょ!」
壊れた。
……否、彼女はあの時壊れたままだった。
壊したのは、きみか? ルイ。
それともイザベラ?
返してくれよ。僕の小さな花を。
彼女の瞳の奥は、輝きを失い仄暗いままだ。
頭の中に響き渡る、ルイの最期の言葉。
『……絶対に……許さない……お前を…………呪って……や…………』
これは、呪いか。
「…………いいかもね、結婚。僕と姫、家柄も申し分ないし」
僕は誰からも愛されない。
そんな運命。
何者にも心乱されず自分のペースで生きていくには、常に他人を掌握し続けなければならない。
今度はこちらが踊らせる立場になるんだ。全員を振り回せるような。
絶対的な勝者。それには、絶対的な権力が必要だ。支配する力が。
もう、誰にも僕たちが脅かされない為に。
あの日から、サーシャは目に見えて衰弱していった。身体だけではなく、心も。
何か大事なものが欠けたのがわかっているのに、僕には治せない。
イザベラが男児を出産して、現在、国内はすっかりお祭り騒ぎだ。
ジークフリートと名付けられた王太子は、金髪碧眼で光の魔力を持ち、王族の特徴を色濃く受け継いでいた。
イザベラの懐妊から半年後に、ダンテの愛しのジル妃も懐妊した。ジル妃の出産もまもなくだ。
もしかしたら、“ダンテは種無しだ”というのは、僕の思い違いだったのかもしれない。
ルイがイザベラを孕ませたなんていうのも、奴の妄想だったのかも。
そもそも、あの三人での時間は幻だったのではないかとすら思う。
何故なら、あの後ルイの家は何者かに火をつけられ、跡形もなく消え去ったからだ。残されたルイの兄弟も、判別できないほど黒焦げになって焼け跡から発見された。
ルイの存在が、この世から抹消されてしまった。
残っているのは、このあやふやな記憶の中だけ。
ダンテ国王は、王太子の誕生にさして興味がないようで、相変わらず身重のジル妃の元に甲斐甲斐しく通っている。
シャーリン公爵となった僕は、前ほどサーシャの所には通えていない。
父の死により、宰相の座がラスター公爵に奪われてしまったが、そのうち僕が取り戻す。そうしたら必然的に王宮へ足を運ぶことも増え、サーシャに会う機会も増えるだろう。
しばらくサーシャに会わなかったのは、サーシャに対しての罪悪感もあったかもしれない。
僕はサーシャの瞳から輝きを奪ってしまった。
サーシャの何も映さない空虚な瞳は、別れ際の母を連想させた。
女というのは、本当に欲深く醜悪な生き物だ。
ジークフリート誕生から半年後、ダンテ待望のジル妃の子が生まれた。男児だった。
エルヴィンと名付けられたその子どもは、ジル妃そっくりだったが、瞳はロイヤルブルーとは似て非なる藍色だった。
あんなに愛されていたのに、あれ以上何が欲しかったのか。
イザベラが懐妊して焦ったのだろうか。それとも、誰かに唆されたのか。
ロイヤルブルーを持たない子どもは、正に不義の生きた証だった。
王家の血筋は、必ず瞳に現れる。
ここぞとばかりにイザベラに糾弾されたジル妃は心を病み、自ら命を絶った。
それからは、ダンテもおかしくなった。政は疎かになり、女を取っかえ引っ変えするような自堕落な生活を送るようになった。
ジル妃が亡くなってから二年後、実質、政治を執るのはイザベラとなり、僕は宰相になった。
僕は王宮での仕事を終え、久しぶりにサーシャに呼び出されて会いに行った。
サーシャがあの薔薇の庭園に居ると聞き、僕は、あの日以来足を踏み入れていなかった庭園へと向かった。
「オズ!」
久しぶりに見たサーシャは、陽の光の中で笑っていた。少女の面影は消え、女性の美しさが際立っていた。
「……姫……久しぶり……」
彼女の瞳に輝きが戻っていた。
時間が彼女の心を癒したのかと思ったが……そうではなかった。
「サーシャ!」
子どもの声が、彼女の名を呼んだ。
サーシャは振り返り、満面の笑みを浮かべた。
既視感。
この光景を、僕は知っている。
きみはこの後、まるで悪戯が成功した子どものような無邪気な笑顔で僕を見るんだ。
「…………碧い……瞳……」
陽に透ける金髪を揺らしてサーシャに駆け寄るロイヤルブルーの瞳を持つ子ども。
無意識に会わないようにしていた、王太子。
「……はじめまして。ジークフリート殿下」
「だれ?」
「この国の宰相をしています。オズワルド・ガイル・シャーリンと申します。以後お見知りおきを」
きみが瞳の輝きを取り戻せた理由はこれか。
……やっぱり僕は、無力だな。
「うん。よろしく、オズワルド」
齢三歳の彼の笑顔に、息を飲む。
ハッとしてサーシャを見ると、彼女は例の笑顔で囁いた。
「そっくりでしょ」
「ああ……」
ルイ、きみはここに居たのか。
イザベラが産んだ王太子ジークフリートは、ルイにそっくりだった。彼は確かにルイの遺伝子を受け継いでいた。
ルイの容姿は隔世遺伝だと言っていなかったか? うまくロイヤルブルーを受け継げたものだ。
……だが、ジークフリートの子が必ずしもロイヤルブルーを持って生まれるとは限らない。ルイの父も、祖父も、兄弟も茶髪に茶色い瞳だった。
その時になって、ようやくイザベラの不義がバレるのだろうか。それとも、ジークフリートは伴侶のしてもいない不義を嘆くことになるのだろうか。
「ねえ、オズ。私いいこと思いついたのよ」
サーシャは、まだあの笑顔を崩さない。
まだ何か企んでいるのか?
「何? 姫」
「ふふ……」
「……その笑顔、怖いな」
サーシャは僕に笑顔を向けた。だがよく見ると、その瞳には何も映していなかった。
「私と結婚しない? オズ」
「……………………はい?」
「私とオズが結婚して、子どもをつくるの。女の子よ。そして、ルイの子どもと結婚させるのよ。素敵でしょ!」
壊れた。
……否、彼女はあの時壊れたままだった。
壊したのは、きみか? ルイ。
それともイザベラ?
返してくれよ。僕の小さな花を。
彼女の瞳の奥は、輝きを失い仄暗いままだ。
頭の中に響き渡る、ルイの最期の言葉。
『……絶対に……許さない……お前を…………呪って……や…………』
これは、呪いか。
「…………いいかもね、結婚。僕と姫、家柄も申し分ないし」
僕は誰からも愛されない。
そんな運命。
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