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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
幕開きしジハード
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「神威……全権能、起動」
『歓喜の歌だ。怒りの日だ。
慟哭に震えよ。
狂喜し刮目せよ。その耳に焼き付けよ。
各々が生きた時代の、終末の音色を。
十字架を右手に、私は原罪の浄化をここに誓おう。
ありし世には存在せぬ、大願の願望器を用いた救星を、ここに誓おう。
———其は、神墜としの武具たり得る終末の聖槍。
狂気と虚無に満ち満ちた、偽神と人類の世に送る、終末への導き手。
輪廻に囚われた模倣神話に、この神槍によって終止の符を打とう。
———其は原罪に叛く運命の神槍。
唐突に、理不尽に、永遠の時間という終演を与うるための終末装置。
今、その身に帯びた罪の全てを洗い流そう。
我に名を貸せ、我が子孫トバルカインよ。聖槍の担い手は汝より我に。
終演模倣輪廻/永劫回帰世界。
救星の核たる運命の神槍よ、遍く臨終へ全てを導け』
刹那の右腕に、再度赤い二股の槍が構えられる。その形状は禍々しいねじれが加わっており、色も赤黒く染まり始めていた。まさに呪いだ。
———だが関係ない、今はただ脚を、手を動かすだけだ。
「ここで———」
背水の陣、極ノ項、脚ノ項———並列始動。
ヤツのスピードを超え、今その正面に出向く。
「決めるっ!」
突き出した神威。しかしそれは、その切っ先から弾かれる。
あまりにも軽く。まさに遊びのように。
———だが、これは遊びなんかじゃない。
『……なに?』
既に俺の魔力は、神威を通して、ヤツの槍にまで伝達していた。
そう、神威を命中させることが目的じゃない。……その神威に魔力を伝達させ、ヤツの前で魔術を発動することこそ、俺の狙いだ……!
「クラッシュッ!」
そう発した瞬間、イメージは爆発へと変わりゆく。
刹那の前で炸裂した魔力。少しは堪えてくれるといいけどな———、
『馬鹿め』
黒い爆煙の中より、真紅の聖槍が迫り来る———!
「残念だったな……
———馬鹿は、テメェだっ!」
差し出すは神威。———が、その一閃は一閃にあらず。
『ロンギヌス、下がれっ!』
五十三連撃、一極集中!……がしかし、それはヤツの槍には命中せず。
代わりに飛んできたのは、一寸遅れての右脚蹴りであった。
「ふごぉっ?!」
『隙を見せたな……!』
自らの腹に蹴りが入る。重みのある一撃、動けそうにないが、気合いで動かすほかない———!
『呆気ないものだな……さらば』
俺は床にうずくまる。……上から見下ろすヤツに、その手の内を見せないため。
振り下ろされるロンギヌス。……が、ヤツは俺の懐を———俺がたった今、神威を振り上げる動作に入っていることを知らないっ!
『………………っは』
起死回生の一撃———振り上げた神威は、ヤツの体を下から縦に引き裂いた。
「……まだ、これで終わりじゃないんだろ、宗呪羅っ!」
すかさず立ち上がり、その体を今度は横に斬り裂く。
浴びる返り血。そうだ、この血の匂い。俺が求めていたものだった。
「はあ……はあ…………次はどこから来る……?」
寸分の静寂。だがしかしまだ終わっちゃいない。
ヤツは何度でも蘇る。ならば何度でも。
ヤツの戦意が折れるまで、何度でも何度でも何度でも何度でも殺すまで。
殺して殺して殺し尽くす。それしか、今の俺にはできなかった。
『虚空切断』
声が聞こえた———俺の中から。
「…………っ、は………………っ」
見下げた体からは。
俺の体の中からは、真紅に染まった槍が突き出していた。
『歓喜の歌だ。怒りの日だ。
慟哭に震えよ。
狂喜し刮目せよ。その耳に焼き付けよ。
各々が生きた時代の、終末の音色を。
十字架を右手に、私は原罪の浄化をここに誓おう。
ありし世には存在せぬ、大願の願望器を用いた救星を、ここに誓おう。
———其は、神墜としの武具たり得る終末の聖槍。
狂気と虚無に満ち満ちた、偽神と人類の世に送る、終末への導き手。
輪廻に囚われた模倣神話に、この神槍によって終止の符を打とう。
———其は原罪に叛く運命の神槍。
唐突に、理不尽に、永遠の時間という終演を与うるための終末装置。
今、その身に帯びた罪の全てを洗い流そう。
我に名を貸せ、我が子孫トバルカインよ。聖槍の担い手は汝より我に。
終演模倣輪廻/永劫回帰世界。
救星の核たる運命の神槍よ、遍く臨終へ全てを導け』
刹那の右腕に、再度赤い二股の槍が構えられる。その形状は禍々しいねじれが加わっており、色も赤黒く染まり始めていた。まさに呪いだ。
———だが関係ない、今はただ脚を、手を動かすだけだ。
「ここで———」
背水の陣、極ノ項、脚ノ項———並列始動。
ヤツのスピードを超え、今その正面に出向く。
「決めるっ!」
突き出した神威。しかしそれは、その切っ先から弾かれる。
あまりにも軽く。まさに遊びのように。
———だが、これは遊びなんかじゃない。
『……なに?』
既に俺の魔力は、神威を通して、ヤツの槍にまで伝達していた。
そう、神威を命中させることが目的じゃない。……その神威に魔力を伝達させ、ヤツの前で魔術を発動することこそ、俺の狙いだ……!
「クラッシュッ!」
そう発した瞬間、イメージは爆発へと変わりゆく。
刹那の前で炸裂した魔力。少しは堪えてくれるといいけどな———、
『馬鹿め』
黒い爆煙の中より、真紅の聖槍が迫り来る———!
「残念だったな……
———馬鹿は、テメェだっ!」
差し出すは神威。———が、その一閃は一閃にあらず。
『ロンギヌス、下がれっ!』
五十三連撃、一極集中!……がしかし、それはヤツの槍には命中せず。
代わりに飛んできたのは、一寸遅れての右脚蹴りであった。
「ふごぉっ?!」
『隙を見せたな……!』
自らの腹に蹴りが入る。重みのある一撃、動けそうにないが、気合いで動かすほかない———!
『呆気ないものだな……さらば』
俺は床にうずくまる。……上から見下ろすヤツに、その手の内を見せないため。
振り下ろされるロンギヌス。……が、ヤツは俺の懐を———俺がたった今、神威を振り上げる動作に入っていることを知らないっ!
『………………っは』
起死回生の一撃———振り上げた神威は、ヤツの体を下から縦に引き裂いた。
「……まだ、これで終わりじゃないんだろ、宗呪羅っ!」
すかさず立ち上がり、その体を今度は横に斬り裂く。
浴びる返り血。そうだ、この血の匂い。俺が求めていたものだった。
「はあ……はあ…………次はどこから来る……?」
寸分の静寂。だがしかしまだ終わっちゃいない。
ヤツは何度でも蘇る。ならば何度でも。
ヤツの戦意が折れるまで、何度でも何度でも何度でも何度でも殺すまで。
殺して殺して殺し尽くす。それしか、今の俺にはできなかった。
『虚空切断』
声が聞こえた———俺の中から。
「…………っ、は………………っ」
見下げた体からは。
俺の体の中からは、真紅に染まった槍が突き出していた。
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