Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

最後の戦い

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 妙に落ち着いていた。
 本当は泣き喚いて、何もかも投げ捨てながら、その刀で腹を貫きたかったのに。

 それができない理由があったんだ。
 アイツに託されたものと、みんなに託されたもの。

 天罰だろうか。神様のつもりなのだろうか。本当に神様だが、俺にここまでして何が楽しいのだろうか。…………言いなりになんてなるか。





 本当に、何もかも。


 クソッタレな世界だよ。



「———刹那」


 崩れゆく、ゼウスの真体。
 本体の神核が貫かれ、ゼウスそのものが死んだが故の現象。

 ……がそれは、この大穴深くまでは届かない。



 大穴、最深部。
 初めて訪れた時は、そう……コックと出会った時だった。

「刹那」

 今となっては、なぜかその床、壁、全てが黒く覆われている。
 ここだけ現世と隔絶された、地獄のように。


 地の果て。人が願いを叶える場所。究極たる願望器の眠る場所、大穴の奥底。



 ———まだ、に叶えさせるわけには、いかない。


「———雪斬、宗呪羅」


『…………まだ……生きて、いたとは』



 これはそう、決別の戦いだ。
 俺とお前。弟子と師匠。
 互いに同じ理想を持ちながら、互いに相容れぬ道に落ちた者の戦い。

 人を救いたいと願いながら、その手を容赦なく斬り捨ててきた人でなし同士の、最後の戦い。



 ———でも、俺には……継いだ想いがある。
 譲れないものが、ある。
 

 護るんだ、この世界を。
 アイツがいた、この世界を。

『……ほう。

 最後の機神も、ようやく死に絶えましたか』


「機神じゃねえ。


 ———俺の、モノだ」


 みんなが護りたかった世界を。その命を賭けてでも戦った、その証を。


 その全てを守るために、俺は救世主アレンとして———雪斬白郎として、白として、雪斬ツバサとして、最後の戦いに挑む。

 これで最後だ。
 ここで終わらせる。
 例え本当に外道に堕ちようと、確実に。


「お前を…………殺すよ、師匠」

『ここに来てまで、まだ私に噛みつこうと言うのですか。

 もう絶対に、勝てはしないということを分かっているのに』


「分かっているさ。……でも、俺はお前を許せない。

 ここに来るまで、いろいろな想いがあった。俺に想いを託して死んだ者。俺にじゃなくても、ここに来るまでに散った者。

 こんな狂った計画に踊らされて死んだ者。最後の最後まで気高く戦い抜き、死んだ者。


 ソイツらのために、俺は———俺の、最後の戦いを始める。



 ……だから、お前を殺すよ、師匠。


 神がどうとか、正義がどうとか、そんなものは関係ない。
 今はただ、お前が許せない。


 もう———俺は何もしたくない。死にたいんだ。この手で、自分で、死んでしまいたい。



 ………………でも、まだ。
 まだ、生きて———やるべきことがある……!!!!」


『そうですか。

 言うまでもないことですが、もう一度教えて差し上げますよ。……その想いの全てが、無意味だったと言うことを』


「勝負だ…………っ!」
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