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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
緋色のカミ( Ⅱ )
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『……なぜにそう、無謀なまでに命を散らす……もうしばらくで、人類は永遠を手にすることになると言うのに。
そこまでして死にたかった……と言うのなら、遠慮なく———冥府まで送り込むまでだが』
「…………刹那」
『しかし……無駄でしたね、あまりにも。無抵抗の人間を殺すと言うのは、いつになっても———』
「刹那ぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
怒りのままに。技術、性能、思考———そんなものは今は関係ない。今はただ、感情のままに。
「テメェだけは、絶対にっ!」
『斬っ!』
怒りを込めた刃。渾身の力で振り払ったソレは、あまりにもあっけなくヤツの前に弾き飛ばされる。
「っぐぎぃ……っ!」
『所詮、無駄でしかない……今までのお前たちの努力は、奮戦は、その全てが徒労に終わる!
何の決意をしたかは知らない、何の覚悟を決めたのかも知らない……だがしかし言えることは、その全てが———!』
弾き飛ばされた刀。
既に、俺の体を守るものは何もなく。
『無意味だった、ということのみなのだ……!』
「———っ、か……っ、ごぶぉっ……!」
言葉を発そうとしても、その全てが逆流する血液によってもみ消される。
『終わりだ、救世主……お前の決意も、努力も、奮戦も! 全てが!……無駄だったのだ!』
喉元を掴まれた後、ゴミのように地面に投げ捨てられる。
立ちあがろうとしても、俺の足は動かない。
もう、どこにも力は入らない。
◆◇◆◇◆◇◆◇
奇跡なんて———なかった。理想なんて、追い求めるだけ無駄だった。
そう、無駄、無駄だったんだ。悔しいけど、アイツの言う通り。結局アイツにとって『人類を永遠の存在にする』という目的は、人類にとっての栄光でもある。
……だからこそ、ソレに歯向かう俺たちも、死にゆく俺たちの姿も、アイツにとっては全てが無意味に見えて仕方がないんだ。
無駄、だったのか?
「そう……なのか。俺がここまで来たのは、全部無駄だったって言うのか、ディル……!」
『無駄なわけ、ないじゃないか。……何のために、お前をわざわざ助けに来たと思ってんだ、白』
「———!」
幻想かもしれない。俺の見てる幻覚かもしれない。
それでも俺は、それが偽物と知りながら———伸ばされた手に、応えてしまった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「奇跡…………なんて、起こらない…………そう、思ってた」
朧げな頭を無理矢理叩いて立ち上がる。視界は紅の闘気に包まれる。
ここで立たないと、俺はどこで立てばいいんだ。
「…………でも、奇跡と言えるようなものを———見せてくれた人たちがいた」
脳裏に浮かぶは、『雪斬ツバサ』と接し続け、ソイツに寄り添っていた人々のユメ。
「ソレは俺にとって……そのような人生自体を、奇跡だと思わせてくれたんだ」
虚像の人生、虚無の楽園は、あの時外部から来た侵入者によって、終わりを告げた。
———だけど。『本者』としての自分にとっても、ソレは———何の罪にも囚われない、奇跡のような日常だった。
もう既にいなくなってしまったその人たちを見つめ、そして。
「…………だから俺は、その奇跡に恩返しするために———、
お前を、打ち砕く」
俺に虚像の奇跡を見せてくれた、アイツらに———『雪斬ツバサ』という名前を、真の意味で覚えてくれていた人たちの、ためにも。
「来いよ———神の、永遠の奇跡とやらを見せてみろ……!
お前が相対するは、本物の———無謀者だ…………っ!!!!」
ソレを見ていた刹那の顔色が一変する。
『…………フ、フフフハハハハ、そうだソレだ、その情動だ!……ハハハハハハハハ! 計画はここに成った!
目覚めの時だ、『Savior』!……器はようやく、覚醒へと相成った!!!!』
「……貴様の相手は俺だ、刹那!」
『そう焦らなくとも』
一瞬のうちに交差する刃。———しかし、打ち勝ったのは。
「………………無駄なんだよ、今の俺の前にはなっ!」
『か…………はっ……見……事』
打ち勝った。今の一瞬で俺は、コイツの体を切り刻んでみせた。
力なく倒れゆく刹那の身体。———だが、コイツはまだ死んではいない。
……だけど、勝ってみせた。さっきまで手も足も出なかったはずなのに、俺は———勝ってみせたんだ、この化け物に。
「………………紅い」
ようやく俺は、自分の髪が赤く染まっていることに気付く。前髪しか見えてはいないが、前髪がそのような異常な状態になっていたのだ。
『ッフフ、素晴らしい……素晴らしいですよ、本当に。私はそれをずっと、ずっと待ち望んでいた…………これで、ようやく計画は成就する……!
目覚めよ真体、機神ゼウスッ! 約束の刻は、訪れた!』
そこまでして死にたかった……と言うのなら、遠慮なく———冥府まで送り込むまでだが』
「…………刹那」
『しかし……無駄でしたね、あまりにも。無抵抗の人間を殺すと言うのは、いつになっても———』
「刹那ぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
怒りのままに。技術、性能、思考———そんなものは今は関係ない。今はただ、感情のままに。
「テメェだけは、絶対にっ!」
『斬っ!』
怒りを込めた刃。渾身の力で振り払ったソレは、あまりにもあっけなくヤツの前に弾き飛ばされる。
「っぐぎぃ……っ!」
『所詮、無駄でしかない……今までのお前たちの努力は、奮戦は、その全てが徒労に終わる!
何の決意をしたかは知らない、何の覚悟を決めたのかも知らない……だがしかし言えることは、その全てが———!』
弾き飛ばされた刀。
既に、俺の体を守るものは何もなく。
『無意味だった、ということのみなのだ……!』
「———っ、か……っ、ごぶぉっ……!」
言葉を発そうとしても、その全てが逆流する血液によってもみ消される。
『終わりだ、救世主……お前の決意も、努力も、奮戦も! 全てが!……無駄だったのだ!』
喉元を掴まれた後、ゴミのように地面に投げ捨てられる。
立ちあがろうとしても、俺の足は動かない。
もう、どこにも力は入らない。
◆◇◆◇◆◇◆◇
奇跡なんて———なかった。理想なんて、追い求めるだけ無駄だった。
そう、無駄、無駄だったんだ。悔しいけど、アイツの言う通り。結局アイツにとって『人類を永遠の存在にする』という目的は、人類にとっての栄光でもある。
……だからこそ、ソレに歯向かう俺たちも、死にゆく俺たちの姿も、アイツにとっては全てが無意味に見えて仕方がないんだ。
無駄、だったのか?
「そう……なのか。俺がここまで来たのは、全部無駄だったって言うのか、ディル……!」
『無駄なわけ、ないじゃないか。……何のために、お前をわざわざ助けに来たと思ってんだ、白』
「———!」
幻想かもしれない。俺の見てる幻覚かもしれない。
それでも俺は、それが偽物と知りながら———伸ばされた手に、応えてしまった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「奇跡…………なんて、起こらない…………そう、思ってた」
朧げな頭を無理矢理叩いて立ち上がる。視界は紅の闘気に包まれる。
ここで立たないと、俺はどこで立てばいいんだ。
「…………でも、奇跡と言えるようなものを———見せてくれた人たちがいた」
脳裏に浮かぶは、『雪斬ツバサ』と接し続け、ソイツに寄り添っていた人々のユメ。
「ソレは俺にとって……そのような人生自体を、奇跡だと思わせてくれたんだ」
虚像の人生、虚無の楽園は、あの時外部から来た侵入者によって、終わりを告げた。
———だけど。『本者』としての自分にとっても、ソレは———何の罪にも囚われない、奇跡のような日常だった。
もう既にいなくなってしまったその人たちを見つめ、そして。
「…………だから俺は、その奇跡に恩返しするために———、
お前を、打ち砕く」
俺に虚像の奇跡を見せてくれた、アイツらに———『雪斬ツバサ』という名前を、真の意味で覚えてくれていた人たちの、ためにも。
「来いよ———神の、永遠の奇跡とやらを見せてみろ……!
お前が相対するは、本物の———無謀者だ…………っ!!!!」
ソレを見ていた刹那の顔色が一変する。
『…………フ、フフフハハハハ、そうだソレだ、その情動だ!……ハハハハハハハハ! 計画はここに成った!
目覚めの時だ、『Savior』!……器はようやく、覚醒へと相成った!!!!』
「……貴様の相手は俺だ、刹那!」
『そう焦らなくとも』
一瞬のうちに交差する刃。———しかし、打ち勝ったのは。
「………………無駄なんだよ、今の俺の前にはなっ!」
『か…………はっ……見……事』
打ち勝った。今の一瞬で俺は、コイツの体を切り刻んでみせた。
力なく倒れゆく刹那の身体。———だが、コイツはまだ死んではいない。
……だけど、勝ってみせた。さっきまで手も足も出なかったはずなのに、俺は———勝ってみせたんだ、この化け物に。
「………………紅い」
ようやく俺は、自分の髪が赤く染まっていることに気付く。前髪しか見えてはいないが、前髪がそのような異常な状態になっていたのだ。
『ッフフ、素晴らしい……素晴らしいですよ、本当に。私はそれをずっと、ずっと待ち望んでいた…………これで、ようやく計画は成就する……!
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