Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

文字の大きさ
上 下
208 / 256
断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

Side-白: 白閃炸裂

しおりを挟む
*◇*◇*◇*◇

 同時刻。サナとくいなは、床が青く染まった回廊を歩き続けていた。

 ……サナに関してはくいなのサイドツーに乗せてもらっているため、歩いているとは言い難いのだが。


「気味が悪いわね、こんな場所……ずっと先も暗いまんまだし、横も後ろも暗い……一回倒れたら、どっちが進む方向か分からなくなりそう」

『…………でも、アイ……サイドツーの、おかげで…………意外と、見える』

「ぶっちゃけどうなってるわけ、この辺?」


『横の、壁に…………デカい』 
「はあっ?!」

 くいなの発言を受け、サナは一瞬にしてその体内の魔力を開放する。

「ちょちょちょっと、もうちょっと早くそういいうこと言ってよ!……え、でも何で襲ってこないの……?」
『アイが…………分かる、ワケ……ないでしょ』
「……それもそっか、でも警戒は怠らないで、いつ動き出すかも分からないから」

 そうして、一度は歩みを止めたくいなのサイドツーが、もう一度足を進めた時。


『っ!』
「ひうっ?! なになになに、今のなにぃ?!」

 彼女らのすぐ後ろより発せられた音———着地音?

『サナさん、戦い!…………動いてる、ヤツら!』

 一面の暗がり———横にまで広がっていたそれらに生え始めた、赤い点が爛々と煌めく。


「嘘でしょ、まさかコレ全部…………敵ぃーーーーっ?!」

 彼女らに、その腕の銃を向ける人型機動兵器、その数———18。

 最初は横だけだったものの、いつの間にかそれらは移動しており———いつの間にか、彼女ら2人を取り囲んでいた。

『…………コレ、まさか……!』
「ええ、オリュンポス周辺で発見された機動兵器……ケイと戦った、アイツら……!」

 言葉を発しながらも、サナは頭の中でイメージを固める。

「グレイシア・フリーズクリスタルッ!」

 サナはそう言い放つと、自分の右手に持った木製の杖を、地面に思いっきり突き立てる。……瞬間、敵機の直下より浮かび上がるは、氷の結晶体。

「くいな、今よ!」
『分かって……るっ!』

 一部の機体は逃げ出したものの、巻き込まれた機体にくいなは照準を合わせ、その引き金を引く———途端、暗がりに光が灯り、1機目が爆散した。

「後18機……コレ、魔力足りるかしら……?」
『サナさん、上に逃げたヤツらは……!』
「大丈夫、今からや———っ?!」

 サナが上を見上げた瞬間、彼女は横から接近する巨大な影を一見してしまう。

「ま———っっ……!!」

 悲鳴を上げる間もなく、接触してしまう。……一瞬、ほんの一瞬、死を覚悟して———それでもまだ、抗おうと心に決めた瞬間だった。



『———背水の、陣ッ!!!!』


 一閃———それを両断するように、光が影を貫いた。


「はぇ……っ」
「…………危ねぇ、よかった、助けられて」


 光の下に、立っていたのは……金色の刀を携えた、白髪の少年だった。
 勇者をやっていた頃の、古ぼけた服と、イデアの昔の服をマフラー代わりに纏った、とても救世主とは思えないほどに薄汚れた姿。

 ……しかし、その刃は、その髪は、その顔は、その声は———。

「し…………白ぉっ!」

 誰もが待ち焦がれていた、救世主の姿だった。
しおりを挟む
感想 203

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

グレイス・サガ ~ルーフェイア/戦場で育った少女の、夢と学園と運命の物語~

こっこ
ファンタジー
◇街角で、その少女は泣いていた……。出会った少年は、夢への入り口か。◇ 戦いの中で育った少女、ルーフェイア。彼女は用があって立ち寄った町で、少年イマドと出会う。 そしてルーフェイアはイマドに連れられ、シエラ学園へ。ついに念願の学園生活が始まる。 ◇◇第16回ファンタジー大賞、応募中です。応援していただけたら嬉しいです ◇◇一人称(たまに三人称)ですが、語り手が変わります。  誰の視点かは「◇(名前)」という形で書かれていますので、参考にしてください ◇◇コンテスト期間中(9月末まで)は、このペースで更新していると思います  しおり機能で、読んだ場所までジャンプするのを推奨です…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

由紀と真一

廣瀬純一
大衆娯楽
夫婦の体が入れ替わる話

処理中です...