Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

Side-レイラ: 置換法の果て

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「っ、っっ……何……で、押されて……!」

 覚醒に呼応し、パイルバンカーより果てた十字大剣。

 あまりにも重いソレを、これでもかと振り回す———が、意外にもソレはスムーズに動いてくれた。

 ……というか、今までにもあれほど重いパイルバンカーを振り回していたんだ、いくら女の子だからって……!


「あっしを、舐めるなあああああっ!!!!」
「ぐ…………っ、ふぐっ……まさか……嘘……!」

 ようやく……ようやく、ヤツの姿勢が崩れた。……薙ぎ払った大剣———振り下ろせば、勝ちっ!

「やあああああああっ!!!!」

 ヤツは大鎌———しかし、それでもなお、振り下ろすのはあっしの方が速かった。……というより、あちらの受けた衝撃が大きすぎたのだ。

「———なーーーんてっ!」

 振り下ろした刃は、ラースの前で淡いモザイクに包まれる。…………何を、された?


「なっ?!」

「あっははははっ!……反応、いいねっ!」

 すかさず押し寄せてくる大鎌を、何とか大剣で凌いだ後、地面を脚で蹴って何とか後退する。

 ……ただ、今のは———何だ?


「す……すごいわねレイラちゃん……それがあの———とでも言うのかしらね……」

 ずっと傍観していたカーオが口を開く。……その前に手伝ってほしいんだけどなぁ……

「……ところで、何なんすかソレ……? 初耳の単語が今更になって飛び出してきたんすけど、っというかカーオも戦うっすよ!」

「いやあ、あたしは傷が……ちょっと、ね……

 存在覚醒は……神殿国から帰ってきたイチゴ隊長が教えてくれたものよ。……『面白いモノを見つけてきた』って教えてくれて……」


「私は、蚊帳の外っ?!」

 まずい、話を聞いていたらいつの間にか接近されていた……!

「ふうっ!……あ…………あっしを、そんな簡単に殺せると……思わないことっすね!」

 またも大剣で防ぐものの———このままじゃラチがあかない。何よりまず、こっちの体力が根負けする!

 どうするどうする、どうすればあっちのスピードを上回れる!
 今はまだ、ほんの少し上というだけ———あっちだって慣れてきて、その気になれば一瞬でやられるかもしれない……どうすれば、いい……!

「はあっ!」

 大剣を振り上げ、拮抗していたヤツの鎌とともに、ラースは宙を舞う。

 ……が、その影が直下に傾いた瞬間、あっしは即座に行動を始める。


 スピードで上回れないというのなら、判断で上回るのみだ……!

「ふっ……んんんんっ!!!!」

 姿勢をできる限り屈め、大がかりに左足を前に突き出し、そのまま大剣を上に振り上げる!

 武器の届く範囲は、こっちが圧倒的!……まだヤツは振り下ろす体制にすら入っていないはずだ……!

「ざーんねんっ!……あーあ、アレだけやっても気付かないなんてねっ!」

 見上げたそこには———確実に大剣によって、体を縦に貫かれているはずなのに———その体には、またあの時の白いモヤがかかっていた。

「うそ……何なの、ソレ……っ!」

「さようなら、失敗作さん!……結局、貴女の代わりなんていくらでも———いるのよっ!」

 ……まずいっ、ここから動くのは、流石に無理———!





「かかったわねぇーーーっ! 残念なのはそっちよ、赤髪のお嬢ちゃぁんっ!」

「何っ、何がどうして———」

 突如奥の方より響いたのはカーオの声だった。……まさか、こんな時の秘策でもあるって言うの———いぃっ?!

「うわうわああああっ?!……な、何すかこれ……血?」

 少し遠くの方から爆発音が響く———まさか、祝福儀礼の爆剣?

「ひぎっ、あああああっ!!!!」

 今度はラースの悲鳴……何、何々何っ?!
 何が起きたの、ホントに?!



「は…………ハメられた……クソっ……!」

 地面に落ちるやいなや、その地面を転げ回ったラースの正面———と言うより、股間から顔面にかけて、あっしの大剣が通過したはずのそこのみから、彼女は血を流していた。

 ……いや、よく見ると血を流しているどころの話じゃない、どこか焼けただれているようにも見えて———まさか、爆剣を命中させたって言うの、カーオが?!


「レイラちゃん、彼女が使っていたのは置換の神技よ。

 それを用いて、自らの身体ごと、空間を別の場所と置換させた……ただ、あたしはその置換されて置き換わった場所を、1回目の時に見抜いていたのよ」

「す……すごいっす! なんかこんなにカッコいいなんていつものカーオらしくないっすね!!」

「何ですってぇぇぇぇぇっ!!!!」

 ……頭を拳でぐりぐりされた。……こんなことされるの、第3の時以来で懐かしい———って痛い!!!!

「いだいいいいだいだ痛いっす今はソレやめてくれっす! 目の前に敵がいるんすから!」





「は……っ、はあっ、…………ぐぐぅ……っ!!!!

 ……はーーっ、はーーっ、ふぅ…………っ、んんんんっ……、この、クソ……共が……っ!」

 ラースはよろけ、四つん這いになりながらも———その顔だけは、その瞳だけは……確実にこちらを向いていた。……まさに化け物の形相だった。


「アレだけの爆剣を喰らってなお生きてるなんて……大した生命力の持ち主よね……

 レイラちゃん、トドメはやるかしら?」

「まあ……一応知り合いなので、トドメはあっしにさせてください」

「なるほどね、それじゃあ任せたわよ、そっちは———





 ———ぇ…………っ?」

 おかしいな、と。どうして急に、そんなに声が弱々しくなったのかな、と。

 そんなことを呑気に思いながら———目をやった横、カーオの胸をいたのは。


「は———?」

 そう、だった。絶対に、動けるはずはないだろうと思っていた、のに。

 むしろ、それだからこそだろうか。
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