Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

目覚め

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 暗闇を超えて。光の筋に向かって走り続ける。

『生きて』
 俺はそう、隊長に———お母さんに願われたんだ。

「生きてやるさ……生きて、生きて———幸せになってやる……!」

 だから今はただ、がむしゃらに走り続けるのみ。

「そして、また———またアイツに、会うために…………っ!!!!」


◆◇◆◇◆◇◆◇

 白い筋に飛び込んだ瞬間、俺は一面が白い世界に放り込まれた。
「まだ……行けねえってのか……っ!」

 視界は変わる。白から赤へ。赤から青へ。青から緑へ。緑から黄色へ。黄色から赤へ。

 ———そして、白へ。

◆◇◆◇◆◇◆◇


「………………ああっ! っはあ、はあ、はあ……おお、おおおおおおっ……!!!!

 帰って……これた…………!」

 目を開けた瞬間、暗闇の視界に飛び込んできたのは、俺の上に覆い被さる仲間たちの姿だった。

「白!」
「白さんっ!」

 真っ先に出迎えてくれたのは、センとサナの二人だった。

「…………どう言う状況だ、コレ?」

 アレだけのことがあったのに、意外と体はピンピンしていた。起き上がって見渡した辺りは———空の色に包まれていた。

 アレだけ密閉されたはずの空間に俺たちはいたはずなのに。刹那は、ゼウスは、全員どこへ行ってしまったのか。

「白。……もうちょっと、休んでてもいいのよ」
「僕……も、サナさんに同意見です」

「———いいや、休んでいる暇はないさ。……計画を止めなきゃいけない。俺は生きて、自分の為すべきことを為さなきゃいけないから」

 気の毒だが、サナの心配は今は関係ない。
 俺は隊長にそうしろと言われたんだ。だから俺が行くしかないわけだし、何より———。


「何をしようにも、決着はこの手で付けなきゃなんないからな。……ここは、ここだけは———俺たちに任せてくれ。

 …………それにさ、お前がそんなこと言えないんじゃないのか———サナ?……腹のキズ、見えてんぞ」

「…………それでも、行かなきゃいけない……でしょ?」

 立ち上がったサナの肩を掴む。……止めるしかなかった。

「それでも…………俺がやるんだ。……俺が、『雪斬ツバサ』がやらなきゃ…………誰がやる」

 サナはその目に涙を浮かべていた。『どうしてそうなの』と言わんばかりの、哀愁漂う表情をしながら。

「さて………………とりあえず、機神ゼウスはどこにいる?……色々と聞きたい、そして早めに手を打つ。ヤツらの思い通りには、させない」

「機神ゼウスがどこかと言われると…………です」

 センが指差した、青白い空の果て。
 そこに浮いていたのは、どこか見覚えのある巨大な鉄の球体だった。

 鉄の球体は、同じ高度ながらも浮遊し移動し続けている。目的地は簡単だ。

 ヤツらは願いを叶える。俺の『器』だか何だか全くもって知ったこっちゃなかったが、機神ゼウス———その真体だと告げられたあの身体は、間違いなくほぼ100%俺のものだった。

 ヤツらなりの『救世主』……そうとまで言われたあの身体は、おそらく『鍵』の権能を使うことだってできる。でなければヤツらは、あの大穴を目指して行きはしないはずだ。


「俺たちが力づくで止めるしか、ないってわけか…………

 サナ、ちょっと尋ねていいか?」

「ほえ?……何よ急に、やっぱり着いてきてくれとでも言うつも———」



「RX-3654…………今、手元にあるか?」
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