Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

文字の大きさ
上 下
216 / 256
断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

総帥

しおりを挟む
*◇*◇*◇*◇

 そして———全てを片付けた、白たちは。


『…………戦闘、終了……』
「ほっ、とりあえずここは終わりね……」

 リラックスするサナたちを横目に。

「アテナ、行くぞ」
「サナ……さん、とか、置いてって…………いいの?」

「ああ、コレは俺と———いや、お前が決着をつけるべき話だからな。……部外者は、巻き込みたくないんだ」
「…………しろ、は、自分から…………飛び込むくせに?」

「ああっ?!……お……俺は特別だろ?!

 それにさ———大事な時なんだ、お前の側にいてやりたいしさ、何より和解したら———お前を、お嫁にもらう話し合いを……なんてな」

 少しだけ、アテナの頬が赤らみ、その顔がほどける。
 嬉しいのか———だったら、こっちとしても嬉しい限りだ。


「しっかし、何でこんなところでコイツらが起動したんだろうな…………サナたちも、『別に私たちは何もしてない』って言ってたし、やたら本当にどうしてコイツらは———」




『それ以上、あなた方に進んでもらっては困るからです』

 ピリッとした声。一見しただけでは優しい声だが、その奥にある殺意と呪いを隠しきれてはいなかった。

「…………お前、か……お前が、ここの番人か……!」


『刹那にて 偽神ぎしんもとに 集いしは 永遠とわを夢見る 虚無のむくろ……

 …………理想の前で果てるがいい、アレン・セイバー』


 世界が———世界が、その男に向かって収束していくかのような、そんな抗いようのない威圧感、絶望感。

 すぐさまみんなの前に出てみたはいいものの、なぜだか足が震えている。……まさか、怯えているというのか? たかがコイツ1人に?

『虚勢を張ろうと、心の弱さは隠せない…………散華の刻だ、緋色の救世主よ』

「……お前、誰だ」

『ゴルゴダ機関、総帥…………プロジェクト・エターナル、その統括役、管理者にして機神ゼウス直属の部下———、

 ……と名を言います』

 …………男。
 刀を下げ、ただそこに立っていた和服の男。
 漆黒の仮面を身につけた、長い白髪の男。


 ……見覚えがあった。
 ダークナイト…………かつて魔王軍の幹部だった、その男……そのものだ。

「お前、ダークナイト……じゃないのか」
『それは過去に捨てた名前。同じようなものならば、他にいくらでも存在しますよ。撃墜王———も、その1つでしたね』

「……何の用だ、そこをどけ———俺たちはその先に行かなきゃならないんだ」

『何の用か…………それは、ようやく貴方と戦う時が来た、ということですよ』


 その言葉を聞いた瞬間、俺の足は既に地面を蹴り飛ばしていた。
 瞬間の突風、落雷の如き速さを以て、敵に一瞬で迫る。これを見切れるはずが———、

「もがっ?!……ぐっぐ、うぅう…………っっ!」
『所詮はその程度。お前は何も、変わってはいないのだ』

 見切られた———どころか、そのまま顔面を掴まれた……片手で。

「っ……ぐ、おおぉ……っ!」
『護る剣も、何も……お前には何もないっ!』

 そのまま投げ飛ばされ、俺の身体は無様にも地面に転げ回る。
 …………そんなことが、あるか……!

「白、大丈夫なの?!」
「…………私、も、やる……っ!」


「……お前らは、来るな! 特にアテナ、お前はさっさと……お父さんとこ行ってこい、婚約はまだ後ででいいから!」

「そういう……こと、じゃ、ない…………白の話!」

「うるっ……せえ、コイツは俺が……殺す!」

 ……その言葉を聞いたアテナは、かなりの速さで飛び始めるが、そこに刹那を手を出そうとする。…………させてたまるか。


『…………ほぉ?』
「お前の相手は俺だ、よそ見すんじゃねえっ!」

 刹那が伸ばした刀に、俺の神威で拮抗する。……コイツはただものじゃねえ、だからこそ———!
しおりを挟む
感想 203

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

グレイス・サガ ~ルーフェイア/戦場で育った少女の、夢と学園と運命の物語~

こっこ
ファンタジー
◇街角で、その少女は泣いていた……。出会った少年は、夢への入り口か。◇ 戦いの中で育った少女、ルーフェイア。彼女は用があって立ち寄った町で、少年イマドと出会う。 そしてルーフェイアはイマドに連れられ、シエラ学園へ。ついに念願の学園生活が始まる。 ◇◇第16回ファンタジー大賞、応募中です。応援していただけたら嬉しいです ◇◇一人称(たまに三人称)ですが、語り手が変わります。  誰の視点かは「◇(名前)」という形で書かれていますので、参考にしてください ◇◇コンテスト期間中(9月末まで)は、このペースで更新していると思います  しおり機能で、読んだ場所までジャンプするのを推奨です…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

噂(うわさ)―誰よりも近くにいるのは私だと思ってたのに―

日室千種・ちぐ
ファンタジー
身に覚えのない噂で、知らぬ間に婚約者を失いそうになった男が挽回するお話。男主人公です。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...