Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

Side-レイラ: 末路

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 このままここにいて、いいのかな。
 
 今の私には何もできない。なんかじゃない私には、何もできないままなんだ。

 でも、それじゃダメな気がする。
 変えなきゃいけない気がする、成長しなきゃいけない気がする。

 ———出て行こうかな、この家を。






 そこから私は、自分の荷物集めに奔走した。
 結局親は、私に学校に行けるぐらいの荷物はくれたんだ、だったらまだ私にだって、何かできることがあるはずだ、と。

 
『勝手に出て行ってごめんなさい。でも、やらなきゃいけない事を見つけたから、だから家を出ました。本当にごめんなさい』

 置き手紙だって書いた。
 別にこの家が嫌ってわけじゃない。ただ、今のままじゃ私は自立できないのと、このままここにお世話になりっぱなしにはいけないとそう思ったから。




「あ……あの、ラースのお父さん……ごめんなさい! 私、この家を出て行きます!」


 カーテンに向かって大声で語りかけるも、何の返事ももらえない———そう思っていた。しかし。




『勝手にしろ』

 ……と、一言だけ告げられた。


「あっ……ありがとう、ございましたっ!」


 ……まあ、あのお父さんと全く接点はないし、そもそもこの家では、あのお父さんにお世話になってたことはないのだが。




◇◇◇◇◇◇◇◇



 私はそのドアを開けて、ようやく外へ出た。

 時間は———正午をほんの少し回ったくらい。
 

 陽射しが無差別に身体に照りつけるが、今はこの暖かさが心地良い。

 親のものでもない、友達のものでもない、何かを達成した後のものでもない、勉強しすぎて疲れて泣いて泣いて泣いた後の生温かさでもない、本物の陽の暖かさ。

 そうだ、これが私が踏み出した証だ。

 

 これから私はどこに行くのだろうか、そんなものはわからない。
 ……でも、せめて。

 あのままよりかは進む方が、きっと良い方向に向かっていくだろうと考えたから。


 教科書だかなんだかが、全部一気に詰まった重すぎるバッグを背負い。

 そして、また一歩と前に踏み出す。


「そう言えば、私の学校どこだったっけ」

 ———だなんて、呟きながら。



 今日は木曜日だ。
 週もラストスパート。後1日いけば、休み。

 ホントはそうなんだろうけど、私にとってはそれがスタートだ。

 ……今日から? 明日から?
 ……わからない、でも私は今、前に進み続けてるのだから。

 だったら、歩みを止めたくはなかった。
 どうやって奮起したのか……そんな理由なんていらない、今日からは新しい日々を過ごす、ただそれだけだ。

 成長するために。

 

 さよなら、お父さん、お母さん。
 これは———おそらく、私だけの巣立ちです。

 もう、二度と会うことはないけれど。
 でも、きっと立派になってみせます。
 頑張ってみせます。……誰のためでもない、自分のために。







 ———そうして私は、意気揚々と学校に足を走らせた。
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