Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

KHAOS°

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 あんなものが……あんな機動兵器が、オリュンポスにあったなんて。
 


『あ……ふ、ふふふふふっ!……そう、そう! 貴方もいたのね、だったら尚更……殺してあげるっ!』


 ……この声、もしかしてあの黒い機体から発されてるものなのか?

 ……え、俺って……味方なのに狙われてる?? もしかして?? もしかしなくともそうなの????


『バレエ———』

 黒の機体が跳び上がる。……

 ……いや、いやいやいや、アレ一体何する気だよ、俺だっているんだぞ、俺はゴルゴダ機関、お前らの仲間なんだぞ??



『スカーレットっ!!』



 黒の機体は、俺たちの真上にて———急速に方向転換。
 その脚部からは突如として紅い刃が飛び出す。その脚部を、その刃を下にして、こっちに一直線に落ちてくる。


 ……あ、あの刃で斬り裂く気だ。

「ちくしょう……サイドツー、動いてくれええええっ!」

 別に俺がサイドツーを動かしてるわけじゃない、というかそもそもこの中に人がいるのかどうかすら

 ただ、もはや願うしかなかったがために出てきた言葉が、今の敵に縋るような言葉だったのだ。




『逃げられちゃった……?』

 ……やった。
 機体と接触する一瞬前にて、サイドツーは急速発進、クイックブーストを決めてみせた。


 そのままサイドツーは外壁外縁部を飛び越える。それに応じ、俺もサイドツーより飛び降り、外壁外縁部への復帰を果たした。




「……なんか、君、すごいね」



「うぅわあっ?!」

 俺のすぐ後ろには、なぜかイチゴ隊長が既に立っていた。


「……まさか、あそこで落ちて……戻ってくる、なんて」
「いやー、そんなに言われるとこっちだって照れますよ、ハハ———」


「ちなみに、そのままだと

 え?
 な、何———言ってんだ????



『みいつけたぁっ!』

 無邪気にも、眼前から聞こえてきた声。
 じゃあその、俺の目の前には何がいたかと言うと———例の黒いロボットだった。


ネクサス・カオスドアヴァロンリメンバー Nexus-Chaos°Avalon:Remember……まさか、量産体制に入ってた……なんて」

「———隊長、今なんて?」

 カオスド……何つった?!

『今度こそ死んでもらうから、待っててね、私とめいっぱい遊びましょうっ!!!!』

 その機体は、槍と思しきものをその腕に構え、そのままこちらへと接近してくる。
 ちくしょう、最初から狙いは俺だったと……!


 とりあえず、第3メンバーに被害の出ないところに行かないと……!


「……ツバサ君、大丈夫。……私も手伝うから」
「え……いやでも、アレってオリュンポス側の兵器なんじゃ……?」



「いいや、アレはオリュンポス側の兵器にしろ……本当に危険な代物。……それはこの第3番隊のが証明してくれた。……

 …………だから、1機でも……多く、破壊すべき」

 え……ええ……?

「ぼさっとしないで、来る!」

 

 なんとか身を揺らしその突進を避ける、が。

『あっははははは! うまく……かかったねっ!』

 ———まずい、何か妙な胸騒ぎが……

『メカニック・ハイエンド!』


 機体の背から6本の棒が飛び出し、それらは地にめり込むようにして機体全体を固定する。

 瞬間、俺の中には頭が歪むような激痛が。

「っ、あ……あっああああああっ!!!!」
『歪め……歪め、歪めっ! 溶けちゃえ消えちゃえ乱れちゃえぇえっ!!!!』



 ———死ぬ……のか。

 一瞬、いいや、もうずっと何も聞こえなくなる。

 激痛———そんな感覚も完全に消え失せる。
 もはや自分は何をしているのか、それすらも分からなくなってしまいそうな混濁の最中。


 
 フードを脱ぎ捨てる、隊長の姿が見えた。



『———な、あ……なあっ?!……どうして、どうして? なんで消えちゃうの?! あのまま……あのまま、殺さなきゃ……殺さなきゃいけないのにぃっ!!』

「……っは、ああ……っはあ」

 そうだった。隊長がフードを投げ捨てたあの瞬間、死にそうだった俺の体は解放された。

 原理も、カラクリも分からない———が、何か一瞬にして感覚がした。



「ち……くしょう、やってくれたじゃねえか……」


『———あーあ…………もう、消えちゃえっ!!!!』

 ロボットの目線が———その頭部についた複眼が、確実にこちらに寄せられる。

 なぜだ、なぜだか本当に分からないが———どうやら、完全ロックオンらしい。
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